自分隠しのナルシスト達は付き合いたくないようなので、告白します。

せにな

文字の大きさ
上 下
21 / 58

作戦実行①

しおりを挟む
  ♧ ♧


「そういうことだからよろしく!」
「ちょっと無理がある気がするんだけど……」
「大丈夫だって。ワタシ、天才だからさ」
「聡善さんもナルシストなのかよ……」

 聡善さんが顎に手を当ててドヤ顔をするのを苦笑を浮かべながら見ていると、ポテトを食べ終えた姉ちゃんとお兄さんが席を立ち上がる。
 時刻は15時30分という微妙な時間だが、多分あの2人ならそろそろ解散するだろう。
 だけど今回は強引に解散を防がせてもらうよ。

「じゃあそろそろ行こうか、
「了解、

 オレ達は被っていた帽子をとり、つけていたマスクを外し、席を立ち上がって姉ちゃん達の方へと向かう。

 ……本当にこんな作戦で行けるのか?

 心に不安を秘めながらもオレは聡善さんの半歩後ろを歩く。

「あれ?勇じゃん」

 極自然風に、たまたま出会ったかのように振る舞う聡善さんは一瞬だが本物の女優に見えてしまった。
 共犯者であるオレもが勘違いしそうになる完璧な演技に素直に拍手を送りそうになってしまうが、そんなオレをよそにお兄さんが戸惑いながらも言葉を発する。

「な、なんでここに?」
「いや~こいつと買い物に来ててさ~」

 そう言いながら聡善さんはオレの背中を叩いてくる。
 それを合図にオレは聡善さんの前に立って口を開く。

「はじめましてお兄さん」

 軽くお辞儀をしながらオレはお兄さんの横でソワソワとしている姉さんに顔を向けて微笑む。

「姉さんに彼氏いたって本当だったんだなー」
「だ、だからそういったじゃん……」

 オレ達と合うのが相当気まずかったのか、それとも恋人の前だからなのか……2人は全く口を開かなくなってしまう。
 だけど聡善さんはそんなのはお構いなしにグイグイと2人に距離を詰めていく。

「ねぇねぇせっかくだし四人で一緒に行動しないー?ワタシ達の方も買い物終わったしさー」
「いや……でもそれは星澤さん達に迷惑がかかると思うけど……」

 お兄さんはオレと姉ちゃんのことを心配してくれているのか、何度かこちらを見ながらオレの言葉を待つ。

「オレは別にいいっすよ?千咲と2人だけってのも飽きましたし」
「ちょっとーそれはひどくないー?ワタシそんなに面白くなかったー?」
「いつも学校でも一緒にいるじゃん。たまには2人きりじゃないほうが新鮮味もあんじゃん?」
「おー匠海のくせにいいこと言うじゃんー」
「なんだよそれ」

 オレと聡善さんは笑い合いながら先程の作戦会議で作り出した架空のオレ達の話を繰り広げる。
 運がいいことに、オレ達は中学が同じらしい。一回もクラスは一緒になったことはないが、同じ学校というのは活かしやすくて助かる。
 オレと聡善さんの関係は男女の親友という立場、そしてよく遊んでいるという設定にしてある。更に詳しく言うと趣味がメイクということで意気投合してそれ以来仲良くしているっていう感じだ。

 まぁこれ提案したのは聡善さんなんだけどね。てかすべて聡善さんなんだけど。

 するとお兄さんと姉さんはほんの一瞬だけ顔を合わせたあと、オレ達の方に向き直り、口を揃えて言葉を発する。

「「わかった……」」

「ほんと相性がいいな」と心の中で思いながらもオレは拳を握ってわざとらしくガッツポーズをする。
 そんなオレに聡善さんは笑いながらガッツポーズを見つめてくる。

「そんなに嬉しかったの?」
「いやぁ千咲のお兄さんのこと気になってたからさー。よく学校で話してたじゃんー?」
「あーたしかにねー。それを言うとワタシもお姉さん気になってたんだよねー」

 なぜこんな会話をしているかと言うと、姉さんたちにはオレと聡善さんの仲の良さを示しておかないとこのあと困ってしまうからだ。

 オレ達はそんな会話をしながら聡善さんは姉さんの顔を、そしてオレはお兄さんの顔をじっと見つめる。
 そしてニコッと微笑み言葉をかける。

「それじゃあそろそろ行きますか」
「そうだねーお姉さんワタシといっぱい話しましょー」
「え、あ、はい」

 姉さんの反応を最後にオレ達はゲームセンターの方向に──前女子2人、後ろに男子2人という形で──歩き始める。
 その間の会話は極普通の日常会話、でも姉さんと聡善さんはこの前会っていたようですごい話が盛り上がっていた。いや、聡善さんが強引に話を広げているだけか。

   とりあえず、これで第1関門は突破だな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...