上 下
3 / 58

彼女への違和感

しおりを挟む
 一緒に登校してから4時間がたち、今から昼食が始まる。
 周りのみんなに付き合ってることがバレないように学校前からは星澤とは離れて登校した。
 モテたくないならみんなに見せつけるように歩け!って言われるかもしれんが、こんなブスを隣に連れて歩くほど俺のプライドは低くない。まぁ俺も今はブスだから似たもの同士か。

 チラッと窓側の1番左後ろの席にいる星澤を見る。
 彼女は弁当が無いのか、本をずっと読んでいる。休み時間が来る度に本を読むもんだから誰も近づこうとしない。 
 まぁ見た目が見た目だからな。誰も近づかんか。

 俺はバッグから黒色の弁当袋を取り出す。
 あいつが弁当を忘れたからと言って俺の弁当をあげようとは思わない。
 忘れた自分が悪い。自業自得だ。
 俺はうんうんと頷きながら自分の弁当を食べ始める。
 自慢じゃないが俺は料理ができる方だ。この弁当も俺の手作りだ。
 自分で言うのもなんだが、イケメンで料理の作れる優しい彼氏がいる星澤って幸せもんだな。

 ニヤニヤとしながら弁当を食べる。その間に星澤が移動していたことに俺は気づかなかった。

 昼食が終わり、5時間目の授業の準備をしていると体操服姿の星澤が教室に戻ってくる。

 あーまた水かけられたか。
 あんな陰キャがいたらいじめる人間はそりゃ出てくる。  
 もちろん俺もいじめられているがな。
 星澤は女の的。そして俺は男の的。俺らみたいな人間が1番いじめやすいんだろうな、と考えながらいつもいじめられている。

 筋トレしてるからあんまり体へのダメージはないんだけどね。めんどくさいとは思うけど。

 星澤を見ながらそんなことを考えていると星澤が目を合わせてきてニコッと微笑む。俺も作りの笑顔を星澤に向けて、前を向く。
 あいつも特に気にしてはいなさそうだ。だけど一つだけ気になったことがある。
 少しだけメイク落ちてないか?
 あいつにメイク?なんでだ?メイクをしてもあんなにブスなのか?
 色々な思考が頭をよぎるが全く分からなかった。

 残りの授業は星澤のメイクのことを考えていたらいつの間にか終わっていた。
 
 俺たちは昨日決めた場所で待ち合わせをして一緒に帰る。

「服大丈夫か?」
「大丈夫です」
「そうか」

 今日の朝と同じように会話は短い。あんまりこいつとは話したくないが、俺は一つだけ聞きたいことがある。

「気の所為かもしれんが少しメイクが落ちてるぞ」
「え!?落ちてます!?」
「え、いや、わかる人にはわかるぐらいだけど……どうした……?」
「いえ、お気になさらず」

 すごい勢いで肩を掴んで来たと思ったら、いきなり大人しくなる。
 なんなんだこいつ……初めて慌ててるとこ見たし……。
 いつも静かで本しか読まない人でもこんな感情的になるのか。なんか隠してるのか?
 まぁこいつの秘密を知ったところでなんの価値にもならないから知る気は無いんだけどな。
 すると星澤は俺のほうを見ずに口を開く。

「あの、もしメイクが落ちそうになっていたら教えてくれませんか?」

 なんで俺がこいつにそんなことを教えなくちゃいけねぇんだよ。めんどくさい。
 さすがにこんなことは言葉に出来ないので素直に頷く。

「わかった」
「ありがとうございます」

 その後の会話は特になし。手を繋ぐとか笑うとかは一切なく、彼女への違和感を残して初めての下校が幕を閉じた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

3年振りに帰ってきた地元で幼馴染が女の子とエッチしていた

ねんごろ
恋愛
3年ぶりに帰ってきた地元は、何かが違っていた。 俺が変わったのか…… 地元が変わったのか…… 主人公は倒錯した日常を過ごすことになる。 ※他Web小説サイトで連載していた作品です

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

夜の公園、誰かが喘いでる

ヘロディア
恋愛
塾の居残りに引っかかった主人公。 しかし、帰り道に近道をしたところ、夜の公園から喘ぎ声が聞こえてきて…

処理中です...