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第2章
お出かけ許可
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ミゼルには、なにがなんだか分からなかった。
「俺、アンソニー様を怒らせるようなこと言っちゃった?」
「ううん、よく分からないけど、アンソニー様は僕が勝手に部屋を出たりしたら怒るから、アンソニー様から離れてお祭りに行くって言ったから、怒っちゃったのかも」
「へえ……」
アンソニーはできるだけアイルを手元から離したくないらしい。随分とご執心なんだな、とミゼルは改めて思った。
「まあ、いいか。じゃあ、お前が休みの日に、殿下には内緒でこっそり祭りに行こうよ。アイルはいつが休みなの?」
「僕ね。お休みがないんだ……」
「……は?」
「僕、ここに来てから一度もお休みってもらったことなくて、一度だけアンソニー様にお休みくださいってお願いしてみたことあるんだけど、すごく怒られてお休みはもらえなかったんだ」
「え!? じゃあ、アイルは一日も休んだことはないってこと?」
「うん……。でも、アンソニー様がお仕事をしている間は実質休んでいるようなものだし、そんなにつらくはないよ」
アイルはそう言うが、アンソニーはほとんどの時間をアイルを連れまわしているし、アイルの感覚が麻痺しているだけで実際はかなりの激務だと思う。
「お休みは貰った方がいいよ」
ミゼルのことばに、アイルは顔を曇らせる。
「前、ものすごく怒られたんだよ。お休みが欲しいなんてもう二度と言えないよ。」
それ以上、ミゼルは何も言えなかった。
その夜、ミゼルは勇気を出してアンソニーに拝謁を申し出た。アンソニーは結構簡単に応じてくれた。
「あの……殿下」
恐る恐る、ミゼルはアンソニーに切り出した。
「どうして、アイルにはお休みがないのでしょう?」
アンソニーは苦虫をかみつぶしたような顔でミゼルを見た。
「なんだ。アイルが休みを欲しいとでも言ったのか?」
「いえ、そうではないです」
ミゼルは慌てて言った。
「ただ、僕があいつをお祭りに連れて行ってやりたくて。俺たちは田舎育ちだし、王都の祭りなんて見たことがないから。それに、あいつはずっと王宮に閉じこもったままで退屈だろうから、気晴らしもさせてやりたくて……」
アンソニーはしばらく黙っていた。怒ったのだろうか。そう思ってミゼルは気が気でなかった。しばらくして、アンソニーはハァッとため息を吐いた。
「アイルはまだ未熟すぎて、一人で勝手にうろうろさせるのは心配すぎて許可できない。しかし、お前の言う通りあいつにも気晴らしは必要だ。お前がずっと目を離さず付いていくなら、今回のお祭りに行くことは特別に許可する」
「本当ですか?」
ミゼルは喜んだ。
「ただし、一切目を離さないこと。それから、アイルの容姿は一部の国民には知られているから顔を隠させること。いいな?」
こうやって心配性のアンソニーに条件はつけられたが、アイルはお祭りに行けることになった。お祭りに行く前日、アイルは興奮して寝付けなかったらしい。アイルの顔はベールで被われ、目立たないベージュの服を着せられて、その華やかな容姿が人の目を引かないようにされた。ミゼルもごく質素な服を着て、二人は一般市民に完全に紛れることができた。
「俺、アンソニー様を怒らせるようなこと言っちゃった?」
「ううん、よく分からないけど、アンソニー様は僕が勝手に部屋を出たりしたら怒るから、アンソニー様から離れてお祭りに行くって言ったから、怒っちゃったのかも」
「へえ……」
アンソニーはできるだけアイルを手元から離したくないらしい。随分とご執心なんだな、とミゼルは改めて思った。
「まあ、いいか。じゃあ、お前が休みの日に、殿下には内緒でこっそり祭りに行こうよ。アイルはいつが休みなの?」
「僕ね。お休みがないんだ……」
「……は?」
「僕、ここに来てから一度もお休みってもらったことなくて、一度だけアンソニー様にお休みくださいってお願いしてみたことあるんだけど、すごく怒られてお休みはもらえなかったんだ」
「え!? じゃあ、アイルは一日も休んだことはないってこと?」
「うん……。でも、アンソニー様がお仕事をしている間は実質休んでいるようなものだし、そんなにつらくはないよ」
アイルはそう言うが、アンソニーはほとんどの時間をアイルを連れまわしているし、アイルの感覚が麻痺しているだけで実際はかなりの激務だと思う。
「お休みは貰った方がいいよ」
ミゼルのことばに、アイルは顔を曇らせる。
「前、ものすごく怒られたんだよ。お休みが欲しいなんてもう二度と言えないよ。」
それ以上、ミゼルは何も言えなかった。
その夜、ミゼルは勇気を出してアンソニーに拝謁を申し出た。アンソニーは結構簡単に応じてくれた。
「あの……殿下」
恐る恐る、ミゼルはアンソニーに切り出した。
「どうして、アイルにはお休みがないのでしょう?」
アンソニーは苦虫をかみつぶしたような顔でミゼルを見た。
「なんだ。アイルが休みを欲しいとでも言ったのか?」
「いえ、そうではないです」
ミゼルは慌てて言った。
「ただ、僕があいつをお祭りに連れて行ってやりたくて。俺たちは田舎育ちだし、王都の祭りなんて見たことがないから。それに、あいつはずっと王宮に閉じこもったままで退屈だろうから、気晴らしもさせてやりたくて……」
アンソニーはしばらく黙っていた。怒ったのだろうか。そう思ってミゼルは気が気でなかった。しばらくして、アンソニーはハァッとため息を吐いた。
「アイルはまだ未熟すぎて、一人で勝手にうろうろさせるのは心配すぎて許可できない。しかし、お前の言う通りあいつにも気晴らしは必要だ。お前がずっと目を離さず付いていくなら、今回のお祭りに行くことは特別に許可する」
「本当ですか?」
ミゼルは喜んだ。
「ただし、一切目を離さないこと。それから、アイルの容姿は一部の国民には知られているから顔を隠させること。いいな?」
こうやって心配性のアンソニーに条件はつけられたが、アイルはお祭りに行けることになった。お祭りに行く前日、アイルは興奮して寝付けなかったらしい。アイルの顔はベールで被われ、目立たないベージュの服を着せられて、その華やかな容姿が人の目を引かないようにされた。ミゼルもごく質素な服を着て、二人は一般市民に完全に紛れることができた。
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