上 下
2 / 87
第1章

動物好きに悪い人はいない、とは限らない

しおりを挟む
 家政試験、最初の検査項目は「性的魅力」だ。

 王族付奴隷の大事な仕事の一つが、功あった家臣への「褒美」である。王族が大事に調教した奴隷を、功あった家臣に貸し出して好きに使わせる。王族の持ち物を使わせてもらえるというのは、もちろんそれだけで栄誉なことだが、たとえ王族の持ち物でなくとも思わず抱きたくなるような性的魅力をそなえた奴隷であれば、その「褒美」としての価値はより高まる。
 そこで「性的魅力」調査では、王子の奴隷たちが城内の男を誘惑して回り、だれが一番多くの男を惹きつけられるか競うのである。普段は王族付の奴隷を勝手に犯したりしたら重罪だが、今日だけは無礼講。身分を問わず、城内の男は魅力を感じた王子の奴隷を犯してよいのだ。城内の男たちにはあらかじめその身分に応じた色の小さな球が配られており、彼らは奴隷を犯したら、奴隷のアナルにその球を詰め込む。最後にこの球の数を集計して得点を出すというルールだ。球は身分ごとに点数が異なり、20人の下働きを相手するより、1人の大臣を相手にしたほうが高得点になる。

 競技がはじまる前に、アンソニー王子はアイルに二つだけ約束させた。最後まで泣かずに頑張ること。制限時間前にあきらめてギブアップしないこと。
「相手する人数は、まあできる範囲でいい。お前なりに結果を出せ」
 アンソニー王子はそう言ったが、でもアイルはちゃんと、これがアンソニー王子が皇太子になるために必要な試験であることを理解していた。アンソニー様は優秀だけど、他の王子たちも優秀だと聞いている。
「僕がちゃんとやらないと、アンソニー様が皇太子になれないかもしれない……!」
 アイルは並々ならぬ決意で試験をスタートさせた。

「大量得点を狙うなら、兵舎へ行くのがいいって聞いたけど……」
 兵士はさほど身分は高くないが、国防という大事な職務についているので、身分の割に高得点がもらえる。
「でも僕、ちょっと兵隊さん怖いんだよね」
 アイルは兵隊の訓練を見たことがあったが、大きな声で怒鳴ったり、取っ組み合ったり、みんなガタイがいい人ばかりで、あんな人たちをたくさん相手するのかと思うと恐怖があった。
「最初はもっと優しい人がいいな」
 そうだ、馬丁さんなんかどうだろう。馬丁さんが馬の手入れをしているところを見たことがあるけど、すごく優しい手つきでブラッシングしてあげていた。僕のこともお馬さんのように、優しく扱ってくれるかもしれない。
「動物好きな人に、悪い人はいないよね」
 アイルは馬小屋の隣の馬丁の詰め所へ行くと、ドアをノックした。
「すみませーん」
 しかし中からは返事がない。
「おかしいな。留守なのかな」
 ドンドンドン。
 アイルがしつこくドアを叩いていると、突然そのドアが荒々しく開いた。
「うるせえな、誰だ!」
 怒鳴られて、アイルはひゅっと息をのんだ。
「……あ? お前、王子付の奴隷か?」
 男はアイルの全身を眺めて言った。今日のアイルは奴隷のしるしである首輪に、体の線がぴったり浮き出る競技用のウェアである。芯を持って立ち上がる乳首も、ペニスの形もはっきりと浮き上がり、ペニスとアナルの部分にはスリットが入って、すぐに挿入できるようになっていた。
「は、はい……」
 馬丁は優しい人たちだと思い込んでいたアイルは、早くも逃げたくなって一歩後退った。
「待ちな」
 ガシッと腕をつかまれ、小屋の中に引きずり込まれる。
「みんな、起きろよ」
 小屋の中にはいくつかの粗末なベッドがあり、そこに寝ころんでいた男たちが次々と身を起こした。アイルは知らなかったが、馬丁は朝早くから馬の世話をしなければならないので、一仕事終えた後のこの時間は、仮眠の時間なのだ。
「なんだったんだ、さっきのうるさいノック野郎は」
「それが王子付の奴隷だったんだ」
 その言葉で小屋中の男の視線がアイルに集まった。
「へえ……」
 皆興味津々でアイルに近寄ってきた。
「なんだ、あんた、犯されに来たのか」
「……は、はい」
 震える声でアイルが答える。
「だがお前、分かってるのか? 今は大事な仮眠の時間だったんだ。それを叩き起こしやがって」
「申し訳ありません……」
「申し訳ありませんで済むか!」
 怒鳴られて、アイルは泣きそうになった。
「午後の仕事に響くだろうが!」
「どう責任取ってくれるんだ!」
 パシン! パシン! と今度は四方から馬用の短鞭で叩かれた。
「あっ、あうっ、ごめんなさ…、あっ」
「なんでわざわざここまで来たんだ? 言ってみろ」
「ば、馬丁さんたちに……、お馬さんみたいに扱ってほしいと思って……」
「へえ」
 男たちはニヤリと笑った。
「じゃあ、お馬さんにしてやろうな」
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

【連載再開】絶対支配×快楽耐性ゼロすぎる受けの短編集

あかさたな!
BL
※全話おとな向けな内容です。 こちらの短編集は 絶対支配な攻めが、 快楽耐性ゼロな受けと楽しい一晩を過ごす 1話完結のハッピーエンドなお話の詰め合わせです。 不定期更新ですが、 1話ごと読切なので、サクッと楽しめるように作っていくつもりです。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 書きかけの長編が止まってますが、 短編集から久々に、肩慣らししていく予定です。 よろしくお願いします!

捜査員達は木馬の上で過敏な反応を見せる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

R指定

ヤミイ
BL
ハードです。

処理中です...