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5『冥々たる紅の運命』
5 第四章第四十五話「魂の原理」
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「それで、なぜお前達は《女王》に認知されない」
桃源郷ラフルスの最奥に建てられていた屋敷の中は、思ったより質素な作りだった。他の家屋に比べて大きかったので、てっきり豪勢なのかと思っていたが。
まぁ、死した世界に豪勢も質素もあってないようなものだろうが。
外を走り回っていた幼きシャーロットは、いつの間にか屋敷の長椅子の上で寝ころんでいた。走り回って疲れたのか、少しうとうとしている様子で、ケレアが苦笑を見せる。シャーロットに目を向けながら、べグリフの問いに答えていた。
「簡単な話さ。バレないように魔力で魂を包んでいるんだよ」
「本当に簡単そうに言うけどさ、魂って魔力で隠せるもんなのかよ」
それもこの《冥界》という世界で。冥界の《女王》は、冥界の魂をすべからく認識している。それほどの相手から、ただ魔力で包んだからと言って隠せるとは思えない。
「隠す、という言い方はあんまり正しくないな」
「……どういうことだ?」
言われてみれば、隠すという言葉をケレアは使っていないけれど。言い回しの問題ではなくてか?
そういや、ここに来るときにケレアが言っていたか。
ここから先、魂の輪郭はあやふやで、奴らにゃ捉えられないのさ。《女王》だって誤認しているはずだよ。
魂の輪郭があやふや、それに誤認って……。
円卓を囲むように座るカイへ、ケレアが尋ねる。
「カイ、魔力はどこに宿ると思う?」
「ん? ……そうだなぁ、思うに魂じゃないか? べグリフが魔力を使えているのも、魂が生きているからかと」
「ご名答。……じゃあ、記憶は?」
「……それも、きっと魂」
「流石。ゼノの息子とは思えないくらい聡明じゃないか」
「あんまそれ、誉め言葉に聞こえないのは何でだろうな」
べグリフだってまだ記憶を有している。それは魂にこれまでの全てが刻み込まれているからじゃないのか。
「なら、魂はどこに宿るんだろうな?」
「魂が、宿る先……?」
カイは顎に手を当てて考えてみる。
魂がどこに宿るかと言われたら、肉体な気もするけれど。なら肉体を持たない今の自分たちはどういう状況なのだろうか。
そして、ケレアは言う。
「思うに、これは相互の関係だ。魔力や記憶は魂に宿る。そして同時に、魂は魔力や記憶に宿るんだよ。だからこそ、冥界に訪れた魂は魔力や記憶を洗い流す。魂を新たなものに作り替えるために」
「そう、なのか……?」
生憎こちらはそうだと断言できる材料を持ち合わせておらず、へーそうなんだとしか答えられない。
その思考がケレアにも伝わっていたのだろう。やれやれと困ったように首を振った後、言うのだ。
「カイなら知っていると思うけどな」
「何をだよ」
「魂と魔力は相互の関係であることを裏付ける魔法があるんだよ」
「……?」
魂と魔力が……。
考えてみても、あまりパッと思いつかない。本当に俺が見たことあるんだろうか。
うんうん唸って考えるカイに、今度は呆れたようにケレアが笑う。
「流石、ゼノの息子とは思えないくらい察しが悪いな」
「今度のは本当にただの悪口だな」
そう言われても分からないものは分からないのだ。仕方ないだろう。
「なぁ、魔王さまなら分かるだろ?」
カイに解けない難問がべグリフへ。これで答えられても何だか癪だ。
いっそ外して恥を掻いてくれたっていいんだぜ?
カイが何やら期待した視線をべグリフに送るが、べグリフは一言。
「《魔魂の儀式》か」
さも知っていたかのように告げた。ケレアが頷く。
「その通り! 伊達にその魔法で人族を蹂躙していないな」
「……ふん」
正解したのに嬉しそうではないべグリフ。まぁここでやったー!と飛び跳ねられても困るけれども。
でも。
「《魔魂の儀式》だって?」
それなら確かに、カイも知っている。というか、カイもイデアから受けたことがあるし。
《魔魂の儀式》。これは悪魔族が自身の魔力を半分人族に分け与える代わりに、悪魔族として強制的に従属させる魔法。以前ダリルがべグリフの魔力を半分与えられたことで、悪魔族側に寝返っていたこともあるし、カイもイデアの魔力を分け与えられて、失った四肢を補ったこともある。カイ達の場合は、カイが天使族のハーフだから精神操作は通用しなかった。
「そうだ。あれは、魔力によって人族の魂を操る魔法。だが、どうやって魔力で操っていたのか、という話さ」
「……そうか、魔力が魂に宿っているように、魂が魔力に宿っているから、魔力を譲渡することで、悪魔族の魂が人族の魂に干渉しているのか」
そう言われると、色々なことに納得が行く。ダリルがべグリフに《魔魂の儀式》をかけられて悪魔族化した時、その中でダリルはべグリフの記憶を覗いていた。魂と魔力、そして記憶が相互に関係しているからこそ、べグリフの魂に干渉されていたダリルは記憶を見ることができたのだ。
もしかしたら、カイが魔魂の儀式によって精神操作されなかったのは、干渉する意志がイデアとフィグルになかったからなのかもしれない。
そもそも世界において魔力は一人一人が特有の型を成していて、例えば誰かの魔力を誰かの体内に流そうとすると、拒絶反応が起きるのだと、以前、それはもうフィールス王国奪還の時くらい以前にエイラが言っていた。
それが何故かと思っていたのだが、なるほど魔力と魂が密接に繋がっているのなら、そう簡単に他人の身体を流れることはないのだろう。その拒絶反応とかいうのも、魂と魂が反発しあったことで起きることなのかもしれない。
「……ん? でも待てよ」
そこまで思考が辿り着いてから、カイは首を傾げる。
「俺、生まれた時にヴァリウスとかいう知り合いに魔力全部盗まれてるんだけど、それって同時に魂も持ってかれたことにならないか?」
ヴァリウスからカイの出生秘話は既に語られているところ。カイは生まれた直後に異常をきたしたという。それは、あまりに莫大な魔力をかかえるあまり、身体が耐えられていなかったというもの。その場に立ち会ってたゼノは、すぐさまカイから魔力全てを一旦切り離したわけだが、その切り離した魔力をヴァリウスが掻っ攫っていったのである。
魔力と魂が繋がっているのなら、魔力全て持っていかれた時点での死亡もあり得そうな話だが。というか、親父よく身体から魔力切り分けたよな。
「そうなのか……正直その時の状況を知っているわけじゃないから、何とも言えないけど」
そりゃそうだ。
「ただ確実に言えるのは『魂は分かつ』ことができる」
「魂を……分けられるって言うのか?」
荒唐無稽に聞こえそうだが、ケレアは確かに頷いた。
「《魔魂の儀式》だってそうだろ。魔力に乗せて魂を分かち、その魂で人族を操るんだ。ソウルス族だって考えてみろ。自分の想いを武器に変える彼らだが、想いは同時に魂と言ってもいい。魂を武器に変えて、意中の相手に渡すんだ」
言われてみれば、確かにそうなのかもしれない。もしかしたら、生まれた時は魔力に魂を全て持っていかれたのではなく、体内にも魂が宿っていたのかもしれない。身体と魂の密接な繋がりは言わずもがな。命の生死は魂と身体の結びつきによって語られるのだから。カイの魂は分かたれ、その片割れがヴァリウスに回収され、結果ヴァリウスの人格にも影響を与えたのだろう。
なるほど、なるほど……ん?
魂というものを考えれば考えるほど、訳が分からなくなる。
「というか、よく考えてみれば変な話じゃないか? 魔力に魂が宿るなら、魔法にだって魂は宿っているはずで、魔法を使うたびに魂を放出していたっていうのかよ」
放出した魂はどうなるんだ。魔法だって放てば消える。乗っていた魂も一緒に消えるのだろうか。
「……カイ、これまでのお前の質問に答えはあるんだけどな」
「え?」
「生まれた時にお前の魂が分かれたんだろ? で、何か違和感あったか?」
「え……いや、別に、普通にこれまで生きてきたけど」
「それにカイの奥さん、イデアちゃんはセインという形で魂を武器にしてお前に渡しているだろ」
そう言われて、手に握るセインを見つめる。これがイデアの想いという魂の一部で構築されているのは、きっと間違いないだろうけれど。
「それで、イデアちゃんの魂に支障はあるのか?」
「……」
「《魔魂の儀式》をしたことで、使用者の魂に異常をきたした例を聞いたことがあるか?」
「……ない」
「それが、答えだよ」
自分自身の身体を見つめるケレア。その身体全てが魂で構築されている彼が、既に亡くなっている彼が言った。
「魂は常に一定なんだよ。そこに量の概念はなく、仮に分かたれたとしても、そのどちらも同様に、等しく、確かにそいつの魂なんだ」
量の、概念がない……。
「なら、その……そもそも一つの魂から魂が放たれて減るっていう考え方が間違ってるってことか」
「そうだ。確かに魔法にはそいつの魂が乗る。たまにないか、土壇場で生まれる火事場の馬鹿力って奴。あれは魔法にも魂が乗っているからこそ、魂の強い想いに呼応して魔法がいつも以上に強くなるのさ」
まさか、そんな仕組みがあったとは。
「けれど、だからと言って本体の魂が減るわけじゃない。本体の魂は何も一切変わらずに、でも本体と同じ魂が確かに魔法に乗っていくのさ」
「……魂が二つに分かれたように思えるけど、その実――」
「ああ。魂は『分かたれる』。でも、分かれた魂全てが、完全に同一のものなんだ。足し引き、増える減るの話じゃなく、その全てが一つのものを表している」
なんとなくケレアの言いたいことが分かってきた。
例えば、林檎を六等分したら、1個だった林檎は質量ごと六つに分けられる。その1個ずつの質量は、元の1個より遥かに減っていることだろう。
だが、魂はそうならない。もし仮に一つの魂が六つに分かたれたら、元の魂と何も変わらない全く同じ魂が六つ生まれていく。でもその六つは一つ以外偽物なのではなく、全てがオリジナルであり、一つの魂を指差すことは、同時に六つの魂を指すことと他ならない。
そして、察するに。
その分かたれた魂同士が干渉することはないのだろう。
仮に六つの内、一つの魂が掻き消えようと、他の五つが影響を受けることはないということだ。
何故なら、魂に量の概念は存在せず、常に一定だからである。
六つ全てが同じ魂を表しているとして、それを1と表現するならば、一つ減って五つになってもその魂は1である。四つでも、三つでも、二つでも、一つでもその魂は1なのだ。
例えばソウルス族の女性たちが作るセインが壊されても、女性側の魂が壊れないのは、こういった魂の仕組みがあるのだと思う。魔法に魂が宿っていて、魔法が消えたからといって、魂に影響がないのも同じだろう。
「……なるほどな」
ここで、黙っていたべグリフが口を開く。
「《女王》を誤認させる方法とは、まさしくこの魂の原理を用いるのか」
既に、べグリフはどうやってこの場の魂が輪郭をあやふやにしているのか、理解したようである。
「どういうことだよ、べグリフ」
「……言ったはずだ、《女王》は魂の位置を全て認識していると」
「そうだよ、だから逃げ道が――……ん、全て?」
全てとは、一体どこまでを全てと呼んでいるのだろう。
魂は魔力と密接に繋がっている。魔力にも確かに魂が宿っており、その質は、本来の魂と変わらないどころか、全く同じである。
魔力に宿る魂すら、《女王》は認識しているとしたら……。
カイはケレアの方を見た。ケレアは自慢げに頷く。
「あちこちに魔力をばら撒いている。《女王》からしたら、至る所から俺の魂を感じているはずだ。どこからも全く同程度俺の魂がするせいで、正しく魂の情報を認識できないのさ」
やはり、ケレアは魂の宿る魔力を煙幕代わりに使っているようだった。
「あの冥界の番人達も、魂を感じ取って攻撃を仕掛けてくるからな。でも逆にあまりの魂の数に魂を感じすぎて、思考がショートして襲いにも来ねえ」
なるほどな。どれがケレアなのか正常な判断ができないからこそ、死兵達は襲いに来ないのだろう。
それは分かったけれど。
「なら、俺達までも襲われなくなった理由はなんだ?」
「言ったろ、魔力で魂を包んでるんだって」
そう言えば、最初にべグリフの質問に対してそう答えていたっけ。
「お前たちの魂を俺の魔法で包んで、別の魂に見えるようにしてんのさ」
「……見えるようにしてんのさ、って簡単に言うけど、そんな魔法あるのかよ」
「あるさ。いや、正確には作った。《魔魂の儀式》を改良してな」
ケレアがニッと笑う。
《魔魂の儀式》はケレアにとって、自身の命を奪った最低で最悪な魔法に過ぎない。きっと、この魔法がなければ、ケレアはこんなにも長く冥界に居座ることもなかっただろう。
けれど、ケレアだからこそ気づいた魂の本質。
使用されたからこそ、《魔魂の儀式》に精通し、精通しているからこそ。
過去を未来に変えるのである。
「魂は一定だ。増えも減りもしない。なら、《魔魂の儀式》を受けた魂は、果たして当人のものと言えるのか、それとも術者である悪魔族のものと言えるのか。どっちだと思う?」
魂に足し引きがないのだとすれば、《魔魂の儀式》による魂の移動は、どのように考えられるのだろう。
「どっちって……俺は、結局は当人のものだと思うけどな」
現に、操られていたと言っても、ダリルは悪魔族の力を有したまま、最終的に心を取り戻したのだから。
だが、カイの答えは正解ではなかったようだ。
「確かに、《魔魂の儀式》を受けたからといって、元の魂が消失するわけではない。けれど、実際に身体を動かすのは術者である別の魂だ。そこから見えてくるのは、《魔魂の儀式》において、二つの魂は反発しあいながらも確かに身体という根幹で共存するということだ」
「それは……つまり、魂が同じ場所に二つ存在する状態ってことか」
「そうだ。そして、それが《女王》達の魂感知を阻害するのさ。一つの魂でありながら、二つの魂を有しているからこそ、魂の輪郭があやふやになる。結局正しく魂を読み取ることができない」
そして、当然と言うように彼は言うのだ。
「カイとべグリフ、二人には既に《霊魂の加護》を付与している。俺の魂が二人に重なっているからこそ、正しく魂を認知することはできないのさ」
「《霊魂の加護》……」
「ああ、俺達が新たに生み出した、《魔魂の儀式》に変わる、魂の譲渡方法だよ」
《魔魂の儀式》が魂による半ば強制の従属をさせていたとするならば、《霊魂の加護》は、術者の魂を対象へと受け渡しながらも、魂同士が身体の所有権限を奪い合うことなく、その身体に魂を共存させることで、魂の輪郭を曖昧なものにするのである。
《霊魂の加護》は、魂が魂を守るために生み出された魔法であった。
「《霊魂の加護》のために使用される魔力量がごく少数でも魂は常に一定だから、魔力が尽きるまでほぼ無数に魂を分かつことができる。てなわけで、《女王》達が訳分からなくなるくらい魂を魔力としてあちこちにばら撒きながら、当の本人は《霊魂の加護》によって魂の輪郭を曖昧にして、気づかれなくする。ラフルスに住む人々は既に《霊魂の加護》が使えるからな。俺含め全員が魂をばら撒きながら魂の輪郭をあやふやにすることで、これまでどうにか《女王》の目をごまかしてきたのさ」
どれだけ微量でも、魔力には魂が宿る。だからこそ、ケレアはこれまで魔力をさまざまな箇所にばら撒いてきた。どれだけばら撒こうと、ばら撒いた際の魔力が100%中のたかが0.1%でも、そこに宿る魂の力は何も変わらないのである。
準備する機会は30年近くあった。
死んでから、《冥界》の現状を理解して動くのに対して時間はかからなかった。
「すべては《女王》の支配から《冥界》を解放するために」
生きるよりも長い時間、ケレアは確かに《女王》を出し抜くために準備してきたのだ。
全ては、未練に突き動かされる形で。
そして。
「ゼノに、もう一度出会うために」
ケレアの理想である、ゼノに突き動かされる形で。
ケレアが長い時間かけて紡いできた魂が、カイとべグリフを助けるのであった。
死してなお、魂は魂へと繋がっていくのである。
桃源郷ラフルスの最奥に建てられていた屋敷の中は、思ったより質素な作りだった。他の家屋に比べて大きかったので、てっきり豪勢なのかと思っていたが。
まぁ、死した世界に豪勢も質素もあってないようなものだろうが。
外を走り回っていた幼きシャーロットは、いつの間にか屋敷の長椅子の上で寝ころんでいた。走り回って疲れたのか、少しうとうとしている様子で、ケレアが苦笑を見せる。シャーロットに目を向けながら、べグリフの問いに答えていた。
「簡単な話さ。バレないように魔力で魂を包んでいるんだよ」
「本当に簡単そうに言うけどさ、魂って魔力で隠せるもんなのかよ」
それもこの《冥界》という世界で。冥界の《女王》は、冥界の魂をすべからく認識している。それほどの相手から、ただ魔力で包んだからと言って隠せるとは思えない。
「隠す、という言い方はあんまり正しくないな」
「……どういうことだ?」
言われてみれば、隠すという言葉をケレアは使っていないけれど。言い回しの問題ではなくてか?
そういや、ここに来るときにケレアが言っていたか。
ここから先、魂の輪郭はあやふやで、奴らにゃ捉えられないのさ。《女王》だって誤認しているはずだよ。
魂の輪郭があやふや、それに誤認って……。
円卓を囲むように座るカイへ、ケレアが尋ねる。
「カイ、魔力はどこに宿ると思う?」
「ん? ……そうだなぁ、思うに魂じゃないか? べグリフが魔力を使えているのも、魂が生きているからかと」
「ご名答。……じゃあ、記憶は?」
「……それも、きっと魂」
「流石。ゼノの息子とは思えないくらい聡明じゃないか」
「あんまそれ、誉め言葉に聞こえないのは何でだろうな」
べグリフだってまだ記憶を有している。それは魂にこれまでの全てが刻み込まれているからじゃないのか。
「なら、魂はどこに宿るんだろうな?」
「魂が、宿る先……?」
カイは顎に手を当てて考えてみる。
魂がどこに宿るかと言われたら、肉体な気もするけれど。なら肉体を持たない今の自分たちはどういう状況なのだろうか。
そして、ケレアは言う。
「思うに、これは相互の関係だ。魔力や記憶は魂に宿る。そして同時に、魂は魔力や記憶に宿るんだよ。だからこそ、冥界に訪れた魂は魔力や記憶を洗い流す。魂を新たなものに作り替えるために」
「そう、なのか……?」
生憎こちらはそうだと断言できる材料を持ち合わせておらず、へーそうなんだとしか答えられない。
その思考がケレアにも伝わっていたのだろう。やれやれと困ったように首を振った後、言うのだ。
「カイなら知っていると思うけどな」
「何をだよ」
「魂と魔力は相互の関係であることを裏付ける魔法があるんだよ」
「……?」
魂と魔力が……。
考えてみても、あまりパッと思いつかない。本当に俺が見たことあるんだろうか。
うんうん唸って考えるカイに、今度は呆れたようにケレアが笑う。
「流石、ゼノの息子とは思えないくらい察しが悪いな」
「今度のは本当にただの悪口だな」
そう言われても分からないものは分からないのだ。仕方ないだろう。
「なぁ、魔王さまなら分かるだろ?」
カイに解けない難問がべグリフへ。これで答えられても何だか癪だ。
いっそ外して恥を掻いてくれたっていいんだぜ?
カイが何やら期待した視線をべグリフに送るが、べグリフは一言。
「《魔魂の儀式》か」
さも知っていたかのように告げた。ケレアが頷く。
「その通り! 伊達にその魔法で人族を蹂躙していないな」
「……ふん」
正解したのに嬉しそうではないべグリフ。まぁここでやったー!と飛び跳ねられても困るけれども。
でも。
「《魔魂の儀式》だって?」
それなら確かに、カイも知っている。というか、カイもイデアから受けたことがあるし。
《魔魂の儀式》。これは悪魔族が自身の魔力を半分人族に分け与える代わりに、悪魔族として強制的に従属させる魔法。以前ダリルがべグリフの魔力を半分与えられたことで、悪魔族側に寝返っていたこともあるし、カイもイデアの魔力を分け与えられて、失った四肢を補ったこともある。カイ達の場合は、カイが天使族のハーフだから精神操作は通用しなかった。
「そうだ。あれは、魔力によって人族の魂を操る魔法。だが、どうやって魔力で操っていたのか、という話さ」
「……そうか、魔力が魂に宿っているように、魂が魔力に宿っているから、魔力を譲渡することで、悪魔族の魂が人族の魂に干渉しているのか」
そう言われると、色々なことに納得が行く。ダリルがべグリフに《魔魂の儀式》をかけられて悪魔族化した時、その中でダリルはべグリフの記憶を覗いていた。魂と魔力、そして記憶が相互に関係しているからこそ、べグリフの魂に干渉されていたダリルは記憶を見ることができたのだ。
もしかしたら、カイが魔魂の儀式によって精神操作されなかったのは、干渉する意志がイデアとフィグルになかったからなのかもしれない。
そもそも世界において魔力は一人一人が特有の型を成していて、例えば誰かの魔力を誰かの体内に流そうとすると、拒絶反応が起きるのだと、以前、それはもうフィールス王国奪還の時くらい以前にエイラが言っていた。
それが何故かと思っていたのだが、なるほど魔力と魂が密接に繋がっているのなら、そう簡単に他人の身体を流れることはないのだろう。その拒絶反応とかいうのも、魂と魂が反発しあったことで起きることなのかもしれない。
「……ん? でも待てよ」
そこまで思考が辿り着いてから、カイは首を傾げる。
「俺、生まれた時にヴァリウスとかいう知り合いに魔力全部盗まれてるんだけど、それって同時に魂も持ってかれたことにならないか?」
ヴァリウスからカイの出生秘話は既に語られているところ。カイは生まれた直後に異常をきたしたという。それは、あまりに莫大な魔力をかかえるあまり、身体が耐えられていなかったというもの。その場に立ち会ってたゼノは、すぐさまカイから魔力全てを一旦切り離したわけだが、その切り離した魔力をヴァリウスが掻っ攫っていったのである。
魔力と魂が繋がっているのなら、魔力全て持っていかれた時点での死亡もあり得そうな話だが。というか、親父よく身体から魔力切り分けたよな。
「そうなのか……正直その時の状況を知っているわけじゃないから、何とも言えないけど」
そりゃそうだ。
「ただ確実に言えるのは『魂は分かつ』ことができる」
「魂を……分けられるって言うのか?」
荒唐無稽に聞こえそうだが、ケレアは確かに頷いた。
「《魔魂の儀式》だってそうだろ。魔力に乗せて魂を分かち、その魂で人族を操るんだ。ソウルス族だって考えてみろ。自分の想いを武器に変える彼らだが、想いは同時に魂と言ってもいい。魂を武器に変えて、意中の相手に渡すんだ」
言われてみれば、確かにそうなのかもしれない。もしかしたら、生まれた時は魔力に魂を全て持っていかれたのではなく、体内にも魂が宿っていたのかもしれない。身体と魂の密接な繋がりは言わずもがな。命の生死は魂と身体の結びつきによって語られるのだから。カイの魂は分かたれ、その片割れがヴァリウスに回収され、結果ヴァリウスの人格にも影響を与えたのだろう。
なるほど、なるほど……ん?
魂というものを考えれば考えるほど、訳が分からなくなる。
「というか、よく考えてみれば変な話じゃないか? 魔力に魂が宿るなら、魔法にだって魂は宿っているはずで、魔法を使うたびに魂を放出していたっていうのかよ」
放出した魂はどうなるんだ。魔法だって放てば消える。乗っていた魂も一緒に消えるのだろうか。
「……カイ、これまでのお前の質問に答えはあるんだけどな」
「え?」
「生まれた時にお前の魂が分かれたんだろ? で、何か違和感あったか?」
「え……いや、別に、普通にこれまで生きてきたけど」
「それにカイの奥さん、イデアちゃんはセインという形で魂を武器にしてお前に渡しているだろ」
そう言われて、手に握るセインを見つめる。これがイデアの想いという魂の一部で構築されているのは、きっと間違いないだろうけれど。
「それで、イデアちゃんの魂に支障はあるのか?」
「……」
「《魔魂の儀式》をしたことで、使用者の魂に異常をきたした例を聞いたことがあるか?」
「……ない」
「それが、答えだよ」
自分自身の身体を見つめるケレア。その身体全てが魂で構築されている彼が、既に亡くなっている彼が言った。
「魂は常に一定なんだよ。そこに量の概念はなく、仮に分かたれたとしても、そのどちらも同様に、等しく、確かにそいつの魂なんだ」
量の、概念がない……。
「なら、その……そもそも一つの魂から魂が放たれて減るっていう考え方が間違ってるってことか」
「そうだ。確かに魔法にはそいつの魂が乗る。たまにないか、土壇場で生まれる火事場の馬鹿力って奴。あれは魔法にも魂が乗っているからこそ、魂の強い想いに呼応して魔法がいつも以上に強くなるのさ」
まさか、そんな仕組みがあったとは。
「けれど、だからと言って本体の魂が減るわけじゃない。本体の魂は何も一切変わらずに、でも本体と同じ魂が確かに魔法に乗っていくのさ」
「……魂が二つに分かれたように思えるけど、その実――」
「ああ。魂は『分かたれる』。でも、分かれた魂全てが、完全に同一のものなんだ。足し引き、増える減るの話じゃなく、その全てが一つのものを表している」
なんとなくケレアの言いたいことが分かってきた。
例えば、林檎を六等分したら、1個だった林檎は質量ごと六つに分けられる。その1個ずつの質量は、元の1個より遥かに減っていることだろう。
だが、魂はそうならない。もし仮に一つの魂が六つに分かたれたら、元の魂と何も変わらない全く同じ魂が六つ生まれていく。でもその六つは一つ以外偽物なのではなく、全てがオリジナルであり、一つの魂を指差すことは、同時に六つの魂を指すことと他ならない。
そして、察するに。
その分かたれた魂同士が干渉することはないのだろう。
仮に六つの内、一つの魂が掻き消えようと、他の五つが影響を受けることはないということだ。
何故なら、魂に量の概念は存在せず、常に一定だからである。
六つ全てが同じ魂を表しているとして、それを1と表現するならば、一つ減って五つになってもその魂は1である。四つでも、三つでも、二つでも、一つでもその魂は1なのだ。
例えばソウルス族の女性たちが作るセインが壊されても、女性側の魂が壊れないのは、こういった魂の仕組みがあるのだと思う。魔法に魂が宿っていて、魔法が消えたからといって、魂に影響がないのも同じだろう。
「……なるほどな」
ここで、黙っていたべグリフが口を開く。
「《女王》を誤認させる方法とは、まさしくこの魂の原理を用いるのか」
既に、べグリフはどうやってこの場の魂が輪郭をあやふやにしているのか、理解したようである。
「どういうことだよ、べグリフ」
「……言ったはずだ、《女王》は魂の位置を全て認識していると」
「そうだよ、だから逃げ道が――……ん、全て?」
全てとは、一体どこまでを全てと呼んでいるのだろう。
魂は魔力と密接に繋がっている。魔力にも確かに魂が宿っており、その質は、本来の魂と変わらないどころか、全く同じである。
魔力に宿る魂すら、《女王》は認識しているとしたら……。
カイはケレアの方を見た。ケレアは自慢げに頷く。
「あちこちに魔力をばら撒いている。《女王》からしたら、至る所から俺の魂を感じているはずだ。どこからも全く同程度俺の魂がするせいで、正しく魂の情報を認識できないのさ」
やはり、ケレアは魂の宿る魔力を煙幕代わりに使っているようだった。
「あの冥界の番人達も、魂を感じ取って攻撃を仕掛けてくるからな。でも逆にあまりの魂の数に魂を感じすぎて、思考がショートして襲いにも来ねえ」
なるほどな。どれがケレアなのか正常な判断ができないからこそ、死兵達は襲いに来ないのだろう。
それは分かったけれど。
「なら、俺達までも襲われなくなった理由はなんだ?」
「言ったろ、魔力で魂を包んでるんだって」
そう言えば、最初にべグリフの質問に対してそう答えていたっけ。
「お前たちの魂を俺の魔法で包んで、別の魂に見えるようにしてんのさ」
「……見えるようにしてんのさ、って簡単に言うけど、そんな魔法あるのかよ」
「あるさ。いや、正確には作った。《魔魂の儀式》を改良してな」
ケレアがニッと笑う。
《魔魂の儀式》はケレアにとって、自身の命を奪った最低で最悪な魔法に過ぎない。きっと、この魔法がなければ、ケレアはこんなにも長く冥界に居座ることもなかっただろう。
けれど、ケレアだからこそ気づいた魂の本質。
使用されたからこそ、《魔魂の儀式》に精通し、精通しているからこそ。
過去を未来に変えるのである。
「魂は一定だ。増えも減りもしない。なら、《魔魂の儀式》を受けた魂は、果たして当人のものと言えるのか、それとも術者である悪魔族のものと言えるのか。どっちだと思う?」
魂に足し引きがないのだとすれば、《魔魂の儀式》による魂の移動は、どのように考えられるのだろう。
「どっちって……俺は、結局は当人のものだと思うけどな」
現に、操られていたと言っても、ダリルは悪魔族の力を有したまま、最終的に心を取り戻したのだから。
だが、カイの答えは正解ではなかったようだ。
「確かに、《魔魂の儀式》を受けたからといって、元の魂が消失するわけではない。けれど、実際に身体を動かすのは術者である別の魂だ。そこから見えてくるのは、《魔魂の儀式》において、二つの魂は反発しあいながらも確かに身体という根幹で共存するということだ」
「それは……つまり、魂が同じ場所に二つ存在する状態ってことか」
「そうだ。そして、それが《女王》達の魂感知を阻害するのさ。一つの魂でありながら、二つの魂を有しているからこそ、魂の輪郭があやふやになる。結局正しく魂を読み取ることができない」
そして、当然と言うように彼は言うのだ。
「カイとべグリフ、二人には既に《霊魂の加護》を付与している。俺の魂が二人に重なっているからこそ、正しく魂を認知することはできないのさ」
「《霊魂の加護》……」
「ああ、俺達が新たに生み出した、《魔魂の儀式》に変わる、魂の譲渡方法だよ」
《魔魂の儀式》が魂による半ば強制の従属をさせていたとするならば、《霊魂の加護》は、術者の魂を対象へと受け渡しながらも、魂同士が身体の所有権限を奪い合うことなく、その身体に魂を共存させることで、魂の輪郭を曖昧なものにするのである。
《霊魂の加護》は、魂が魂を守るために生み出された魔法であった。
「《霊魂の加護》のために使用される魔力量がごく少数でも魂は常に一定だから、魔力が尽きるまでほぼ無数に魂を分かつことができる。てなわけで、《女王》達が訳分からなくなるくらい魂を魔力としてあちこちにばら撒きながら、当の本人は《霊魂の加護》によって魂の輪郭を曖昧にして、気づかれなくする。ラフルスに住む人々は既に《霊魂の加護》が使えるからな。俺含め全員が魂をばら撒きながら魂の輪郭をあやふやにすることで、これまでどうにか《女王》の目をごまかしてきたのさ」
どれだけ微量でも、魔力には魂が宿る。だからこそ、ケレアはこれまで魔力をさまざまな箇所にばら撒いてきた。どれだけばら撒こうと、ばら撒いた際の魔力が100%中のたかが0.1%でも、そこに宿る魂の力は何も変わらないのである。
準備する機会は30年近くあった。
死んでから、《冥界》の現状を理解して動くのに対して時間はかからなかった。
「すべては《女王》の支配から《冥界》を解放するために」
生きるよりも長い時間、ケレアは確かに《女王》を出し抜くために準備してきたのだ。
全ては、未練に突き動かされる形で。
そして。
「ゼノに、もう一度出会うために」
ケレアの理想である、ゼノに突き動かされる形で。
ケレアが長い時間かけて紡いできた魂が、カイとべグリフを助けるのであった。
死してなお、魂は魂へと繋がっていくのである。
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