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5『冥々たる紅の運命』
間章 デート&デート(前編)
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これは、フィールス王国をダークネスの手から解放するため旅に出た頃の、まだカイがイデアへの想いを自覚していない頃の話である。
「え、チェイル王国散策?」
突然の申し出にカイが首を傾げる。その横には、嬉しそうに目を輝かせるイデアの姿も。
はい、とエイラが言葉を続ける。
「メリルがもう少し宿を出る準備に時間がかかるようです」
「そんなに荷物持ってきてたっけ?」
「カイ様、女性には色々と必要なのですよ。そろそろ女心を覚えないと、イデア様にも逃げられてしまいますよ。ねぇ、イデア様?」
「街の様子を見られる……!」
エイラが声をかけるも、散策に思いを馳せているのかイデアは話を聞いていないようだった。
そんなにチェイル王国内をうろつきたかったのか……。
確かに記憶喪失のイデアとしては目新しいものばかりなのかもしれないが、そんなに目を輝かせなくても。普段の可愛らしさに少し幼さもトッピングされて、更に可愛くなっているじゃないか。
イデアの様子に苦笑するエイラの横で、ミーアが揶揄うようにカイを見る。
「イデアちゃんがこんなだから、代わりに私が答えるね! 『カイのことなんて嫌いになっちゃいそう……!』」
「あ、全然カイのこと大好きですよ?」
だが、どうしてかその部分だけはしっかり聞いていたようで、イデアは当然でしょと言わんばかりに答えていた。その答えにカイは顔を赤く染める。
相変わらずイデアはカイへ好意を言葉にして伝えてきてくれるけど、恥ずかしくないのだろうか。それとも、恥ずかしがるこちらが間違っているのか……?
それに出会ってまだ数日しか経っていないのに、どうしてここまで愛情を育めるのだろう。こちとらまだイデアに対する気持ちが何なのか全く分かっていないというのに。
顔を赤くしながらイデアの方を見ると、可愛らしく首を傾げるイデア。いや、どうしたの、じゃないよ。
話を逸らすべく、元の話に戻す。
「で、でもさ、そんなことしてたらエリスを待たせちゃうだろ」
カイ一行はチェイル王国に寄って、イデアの兄であるレン・フィールスを解放。その過程で発生した、転移と不可思議な魔力を使うダークネスとの戦いを終え、これから天地谷へ向かおうというところである。
そのパーティーに、チェイル王国の第一王子であるエリスが参戦したいと申し出てきた。現在、エリスが父親且つ国王であるハンに許諾を貰いに戻っているところで、後で門前で合流しようという話だったはずだが。
「あのエリス様が簡単に話を進められると思いますか?」
エイラがため息交じりにそう呟く。言われてみると、あのだらしなくて王族としての自覚もなくて、ちゃらんぽらんなエリスが上手く説得できるとも思わない。
「どうせ時間がかかるに決まってます。それなら、空いた時間を有意義に使った方がいいと思いませんか」
結果的にエリスはガチギレのハンから逃げるように合流場所に向かったため、こちらの予想時刻よりも遥かに早く到着していたわけだが、当然そのことをカイ達は知らない。
「イデア様の記憶を戻すきっかけにもなるかもしれませんし、どうぞ二人で市街を歩いてきてください」
「「え、二人で!?」」
「……!」
エイラの発言に驚いたのはカイだけではなくミーアもで、イデアはより一層嬉しそうに表情を弾ませていたのだった。
「待ってよ、エイラ! 私は!? 私もイデアちゃんと一緒に街を回りたいよ!!」
「こらこら、ミーア様。ここはお若い二人に任せようじゃないですか」
「私が一番年下だよ!!?」
ミーアが凄い不満そうにしているが、エイラはまぁまぁとどうにか宥めようとしている。
た、確かに先日はチェイル王国を囲う国壁を見て、イデアはフィールス王国のことを少し思い出したようだった。その流れで街中を回れば無くした記憶が戻っていく可能性も高いけれど。
とはいえ急に二人きりは難易度が高すぎる!
「何をたじろいでいるんですか。昨日だって同じ部屋で寝ているのでしょう。それに、もう事実上お二人は結婚なさっているんですから」
「そ、それは……!」
エイラの言う通り、昨日はエイラの策略で同じ部屋で寝ることになったし(おかげで寝不足だし)、結婚の証であるセインも受け取っているけれど。
だって、二人きりで王国散策って。
まるでデートみたいじゃないか。
「カイ、行こっ!」
「えっ、ちょっ、イデア!?」
二の足を踏んでいたカイの手をイデアが握ったかと思うと、有無を言わさず一緒に宿を飛び出していった。
「そ、そんな慌てなくても……! それに手が――」
「時間は限られてるんだよ、ほら早く!」
宿の外から聞こえてくる二人の声が徐々に遠ざかっていく。どうやらイデアも急いでカイとデートがしたかったと見える。
「いってらっしゃいませ~」
笑顔で手を振るエイラと、その横顔をじっと睨むミーア。ツインテールに結ばれた金髪も心なしか悲しそうに揺れていた。
「……どうするの、二人とも行っちゃったじゃない」
「そう膨れないで下さい。勿論私達もついていくに決まってるじゃないですか」
何を言ってるんだと幼い顔で怪訝そうな表情を浮かべるミーアだったが、やがて理解したのか顔中に笑みが広がっていく。
「そっか! 尾行だね!!」
「ええ、この目でカイ様の慌てふためく顔を見てやりましょう。そしてネタにして強請るのです」
「エイラもワルだねぇ……!」
「悪魔みたいって、よく言われます」
二人して悪い笑みを浮かべているところに、階段から降りてくる音が聞こえてくる。
「あれ、お二人だけですか。イデア様は?」
顔を見合わせていたエイラとミーアが視線を向けると、コルンとラン、そしてレンの三人が荷物の準備が終わって降りてきたところだった。
まずい、と瞬時にエイラの脳内に最悪の未来が描かれる。コルンとランはイデアの従者だし、新しく加わったレンなんてイデアの実兄である。もしカイとデート中なんて知ったら、命を賭して止めに行くかもしれない。……いやそれも面白そうではあるんだけども。
「あ、あー、少し時間ができたので、カイ様と一緒に王国の外を散策しに行くと……」
「な、なに!? それって、つまりデートでは!?」
ちょこっとだけ嘘を混ぜて三人に伝える。王国内か王国外かの違い。たった「な」か「が」かの違いで、それ以外は全て本当だし、四捨五入したら……本当のことでしょう。
やはり新参者のレンは顔を真っ赤にして拒絶反応が出ていた。
「こうしてはおれん、二人とも行くぞ! まだあの男をイデアの夫だと認めた覚えはない!!」
「ええ!」
三人して荷物を置いてこれまた宿を飛び出していく。カイ達とは反対方向へと。
「時間までには戻ってきてくださいね~」
計画通りと笑みを歪ませるエイラに、若干引いたようにミーアが苦笑していた。
「そ、そこまでするとは……って、そういやダリルだけ姿見えないけど、どうしたの?」
メリルが準備に時間を要するのは分かったけれど、同じ部屋のダリルの姿が見えない。
「あー、ダリルなら部屋で寝てますよ」
今日の戦いで疲れたのもあるだろうが、昨日はメリルと同じ部屋で寝不足だったのだろう。ダリルもエリスが簡単に話をつけてくると思っておらず、休息をとることにしたのだ。
「メリルが準備に時間かかると言い始めたのは、ダリルが眠り始めてからでした」
「……何の準備してるんだろうね」
「さあ、乙女には暴いてはならない真実があるのです。というわけで、我々も向かいますか」
「うん! デート尾行大作戦だ!」
おー、と意気込む二人。荷物を宿に預けて、早速カイとイデアの元へと足を進めたのだった。
※※※※※
「い、イデア……!」
「あっちから良い匂いするよ!」
「わ、分かったから、い、一回ストップ……!」
カイの声にイデアが足を止めて、振り返る。どうかしたの、と首を傾げる彼女は何も意識していないようであったが、生憎こちらは心臓バクバクだ。
決して走って向かっていたからじゃない。宿からこれまでずっと手を握っているからだ。手を握るなんて、小さい頃に両親にやってもらったか、幼いミーアと繋いだかくらいの記憶しかない。家族としかしたことない手繋ぎを、こんな可愛らしい女の子とするとは夢にも思っていなかった。
不思議そうなイデアだったが、不安げに顔を歪ませた。
「ごめんね、もしかして……さっきの戦いでどこか痛いの?」
「あ、いや、そういうわけじゃなくてだな……」
確かに数時間前までダークネスと戦闘していたけれど。そういえば、周りを歩く人々の口からもその話題がぽつぽつ聞こえてくる。流石に王城の一部や国壁が壊れたんだ、話題にもなるか。聞く限りじゃ巻き込まれて怪我をした人はいないらしい。良かった。
じゃあ、どうして? とこちらの言葉を待つ彼女にどう返したものか。今だってまだ手は握られたままで。このドキドキが手から伝わってしまうんじゃないかとか、手汗が酷いんじゃないだろうかとか変なことを考えてしまう。
ええい、ままよ!
「な、何でもない! 早く行こうぜ!」
他のことに夢中になれば変な意識をせずに済むはず! ということで先にある商店街へ向かうことを優先することにしたカイだった。
「そう……? ちょっと急ぎすぎだったかもしれないし、歩いていこ」
謎は解決こそしなかったが、何かを反省したのか先程のように走ることはなく、ゆっくりと手を引いてイデアが前を歩いていく。
イデアの純白の髪が風になびかれてきらきらと揺れる。乱れないように髪を押さえる彼女は絵になっていて、行き交う人々の視線がちらちらと向けられていた。
そう、彼女は目立つ。眉目秀麗だからであるが、そんな彼女に手を引かれるこちらもまた目立ってしまって仕方がない。「あれって、レイデンフォート王国の?」なんて声も聞こえてくるが、生憎今は空気になりたい気分で下を向いてしまう。
恥ずかしいのか、照れくさいのか。
知らない街並みなのにイデアの方が堂々と歩いていて、案内のできるカイが縮こまるかのようにその後ろに続いていた。時おり彼女が出してくれる話題にも、何も面白い返しをできず、情けないったらなかった。
「わっ、凄い……!」
漸く辿り着いた商店街でイデアが目を輝かせる。これまでのまあまあの人々とすれ違ったが、この商店街には人々が溢れそうなくらいごった返していた。あちこちで自分の店へ呼び込む声が響いていて、先程の話題をかき消してしまうくらいのエネルギーに満ち溢れている。
その様子を見て、「そう、手を繋いでいるのははぐれないようにするため。そう、迷子にならないように――」とカイは無理やり手を繋いでいることにぶつぶつと理由をつけていた。
「……カイ?」
「大丈夫、邪な気持ちは一切――」
「むー、カイっ!」
「え、わ、な、なに!?」
自分の世界に入っていたカイが、イデアの声で現実に戻される。見れば、彼女は少し頬を膨らませていた。怒っているのだろうか。
と思ったら、眉をひそめて悲しそうな表情を見せる。
「折角のデートなのに、カイは私のこと見てくれないの?」
「――っ!」
その顔でその言葉は、反則だろ……!
顔を真っ赤にするカイへ、イデアが追撃する。
「カイとの初めてのデートだから、私凄いドキドキで。でも嬉しくて、一緒に歩いているだけで楽しいけど……カイは違うのかな」
よく見ると、イデアの頬も少し朱に染まっていて。いつもぐいぐい来るイデアだが、デートという状況にドキドキしているらしい。確かに二人きりでどこかへ出かけるのは初めてで……イデアも俺のことをドキドキするくらいは意識してくれているんだ。
「……悪かった、イデア」
「カイ……」
デートだろうと何だろうと、一緒に居てくれる彼女にこんな悲しい顔させたら、男失格だろう。空いている手を拳にして額へ打ち付ける。
覚悟を決めろ、カイ・レイデンフォート。この街はお前の方が良く知っているはずだ。なら、エスコートできるだろ!
ギュッと、彼女が握ってくれている手に力を籠める。
「行こう、イデア。俺がこの商店街を案内するよ」
そう言って、イデアよりも前にカイは出た。その姿に、イデアは顔中に笑みを広げていく。
「っ、うん!」
「はぐれないように、手は離すなよ!」
それからは二人でいろんなお店を見て回った。お互いに似合いそうな洋服を選んでみたり、小物店ではアクセサリーを二人で選んでみたり。露店で作られていた焼き芋を買って、めちゃくちゃ恥ずかしいけれど「あーん」とお互いに食べさせたりもした。
自分が気にし過ぎていたのかもしれないけれど、何てことはない。楽しい。イデアと二人で回る商店街は楽しくて仕方がなかった。
カイが笑って、イデアが上品に微笑む。
そんな二人を、少し離れてエイラとミーアが物陰に隠れて見つめていた。
「もっとあたふたすると思っていましたが、案外楽しんでおられますね」
「ね、最初はヘタレすぎてあれが実兄だと認めたくなかったけど、今は良い雰囲気じゃない?」
通行人が怪しげな二人に視線を送るが、彼女達はカイとイデアへ視線を送っていて一切気づかない。
「この感じだと、お兄ちゃんはイデアちゃんのこと好きになるんだろうなぁ」
「あら、お兄ちゃんが取られて寂しいんですか?」
どの感情からの発言なのか分からず、揶揄うついでに尋ねるエイラ。だが、それにはしっかりと睨みを利かせてミーアは返す。
「そんなわけないでしょ。……ただ少し不思議なだけ。ついこの間まで、女っ気一つもないお兄ちゃんがだよ。急にあんな可愛い子とくっつくなんてさ。世の中何が起きるか分からないなって」
「それは……」
エイラだってカイとの関係は長いわけだが、今目の前に広がるような未来を想像できたことはなかった。けれど、不思議と違和感があるわけでもない。
だって、カイは彼の息子で、息子の中でも彼に似ていると思うから。そう思うと、案外女たらしなんじゃないかという気さえしてきて。
「……これ以上被害者を作らないように、ここで殺っときますか」
「ちょっと待って、何でそんな話に!?」
突如溢れ出す殺気と飛び出そうとするエイラの身体を、必死になってミーアが止めようとする。これまた通行人としては怪しさ満点なのだが、そうこうしている間にカイとイデアは人混みに紛れて見えなくなっていた。
というか、悪寒がしてカイが少し足早にその場を離れたのである。
「お、これで終わり、かな」
結構の長さを持つ商店街だったが、二人で歩いているとあっという間に思えるくらいで、気づけば端にまで辿り着いていた。それでも時間はちゃんと経っていたようで、日がようやく沈む決心をつけたところのようだった。
「カイ、ありがとう。案内してくれて。すっごい楽しかった!」
「ああ、俺もだ。久々にはしゃいじゃったかも」
名残惜しいけれど、流石にこれ以上はエリスを待たせてしまうことになるだろう。何なら二人揃って遅刻かもしれないけれど。
エリスに迷惑かけても後悔ないくらい、素敵なデートだった。
「「……」」
二人してそこから動こうとしない。分かっているのだ。
帰ってしまえば、この特別な時間が終わってしまう。握り合っていた手を解かなくちゃいけなくなる。カイも最初こそ照れていたけれど、だんだんと彼女の体温を心地よく思えるくらいにはなっていて。
それでも帰らなきゃいけないから、イデアが少し寂しそうに微笑む。
「それじゃ、帰ろっか」
宿へ足を向けようとするイデアだったが、繋いだ手が動かなくて振り返る。
「……カイ?」
「……あの、さ。全部終わったらでいい、から、さ」
少しずつ変わっていく空色のお陰でカイの真っ赤な顔は、きっとイデアに伝わっていない。空に感謝しながら、勇気を出してカイは言った。
「また、デートしてくれるか?」
ああ、言ってよかったな。
カイの言葉に、寂しそうだった彼女の顔がまるで花が咲いたように明るくなる。
「うんっ、絶対だよ!」
その笑顔を見て、自分の陥落も時間の問題だなと思えてしまった。
「じゃあ、今度こそ」
「ああ、帰ろう。待たせてたらエイラ辺りが五月蠅そうだ」
二人並んで帰路につく。変わらず繋がれたお互いの手は、心の高ぶりを熱い温度に変えて伝えあっていたのだった。
※※※※※
それから1年と半年が経って。
近くに人の気配がして、イデアの大きな瞳が少しずつ開いていく。
それを待ってましたと言わんばかりに、彼が言う。
「おはようイデア、久しぶりにデートでも行こうぜ」
「……んぇ?」
レイデンフォート王国の自室で寝ていたイデアの眼に起床早々映ったのは、ニッコリと笑うカイだった。
~続く~
「え、チェイル王国散策?」
突然の申し出にカイが首を傾げる。その横には、嬉しそうに目を輝かせるイデアの姿も。
はい、とエイラが言葉を続ける。
「メリルがもう少し宿を出る準備に時間がかかるようです」
「そんなに荷物持ってきてたっけ?」
「カイ様、女性には色々と必要なのですよ。そろそろ女心を覚えないと、イデア様にも逃げられてしまいますよ。ねぇ、イデア様?」
「街の様子を見られる……!」
エイラが声をかけるも、散策に思いを馳せているのかイデアは話を聞いていないようだった。
そんなにチェイル王国内をうろつきたかったのか……。
確かに記憶喪失のイデアとしては目新しいものばかりなのかもしれないが、そんなに目を輝かせなくても。普段の可愛らしさに少し幼さもトッピングされて、更に可愛くなっているじゃないか。
イデアの様子に苦笑するエイラの横で、ミーアが揶揄うようにカイを見る。
「イデアちゃんがこんなだから、代わりに私が答えるね! 『カイのことなんて嫌いになっちゃいそう……!』」
「あ、全然カイのこと大好きですよ?」
だが、どうしてかその部分だけはしっかり聞いていたようで、イデアは当然でしょと言わんばかりに答えていた。その答えにカイは顔を赤く染める。
相変わらずイデアはカイへ好意を言葉にして伝えてきてくれるけど、恥ずかしくないのだろうか。それとも、恥ずかしがるこちらが間違っているのか……?
それに出会ってまだ数日しか経っていないのに、どうしてここまで愛情を育めるのだろう。こちとらまだイデアに対する気持ちが何なのか全く分かっていないというのに。
顔を赤くしながらイデアの方を見ると、可愛らしく首を傾げるイデア。いや、どうしたの、じゃないよ。
話を逸らすべく、元の話に戻す。
「で、でもさ、そんなことしてたらエリスを待たせちゃうだろ」
カイ一行はチェイル王国に寄って、イデアの兄であるレン・フィールスを解放。その過程で発生した、転移と不可思議な魔力を使うダークネスとの戦いを終え、これから天地谷へ向かおうというところである。
そのパーティーに、チェイル王国の第一王子であるエリスが参戦したいと申し出てきた。現在、エリスが父親且つ国王であるハンに許諾を貰いに戻っているところで、後で門前で合流しようという話だったはずだが。
「あのエリス様が簡単に話を進められると思いますか?」
エイラがため息交じりにそう呟く。言われてみると、あのだらしなくて王族としての自覚もなくて、ちゃらんぽらんなエリスが上手く説得できるとも思わない。
「どうせ時間がかかるに決まってます。それなら、空いた時間を有意義に使った方がいいと思いませんか」
結果的にエリスはガチギレのハンから逃げるように合流場所に向かったため、こちらの予想時刻よりも遥かに早く到着していたわけだが、当然そのことをカイ達は知らない。
「イデア様の記憶を戻すきっかけにもなるかもしれませんし、どうぞ二人で市街を歩いてきてください」
「「え、二人で!?」」
「……!」
エイラの発言に驚いたのはカイだけではなくミーアもで、イデアはより一層嬉しそうに表情を弾ませていたのだった。
「待ってよ、エイラ! 私は!? 私もイデアちゃんと一緒に街を回りたいよ!!」
「こらこら、ミーア様。ここはお若い二人に任せようじゃないですか」
「私が一番年下だよ!!?」
ミーアが凄い不満そうにしているが、エイラはまぁまぁとどうにか宥めようとしている。
た、確かに先日はチェイル王国を囲う国壁を見て、イデアはフィールス王国のことを少し思い出したようだった。その流れで街中を回れば無くした記憶が戻っていく可能性も高いけれど。
とはいえ急に二人きりは難易度が高すぎる!
「何をたじろいでいるんですか。昨日だって同じ部屋で寝ているのでしょう。それに、もう事実上お二人は結婚なさっているんですから」
「そ、それは……!」
エイラの言う通り、昨日はエイラの策略で同じ部屋で寝ることになったし(おかげで寝不足だし)、結婚の証であるセインも受け取っているけれど。
だって、二人きりで王国散策って。
まるでデートみたいじゃないか。
「カイ、行こっ!」
「えっ、ちょっ、イデア!?」
二の足を踏んでいたカイの手をイデアが握ったかと思うと、有無を言わさず一緒に宿を飛び出していった。
「そ、そんな慌てなくても……! それに手が――」
「時間は限られてるんだよ、ほら早く!」
宿の外から聞こえてくる二人の声が徐々に遠ざかっていく。どうやらイデアも急いでカイとデートがしたかったと見える。
「いってらっしゃいませ~」
笑顔で手を振るエイラと、その横顔をじっと睨むミーア。ツインテールに結ばれた金髪も心なしか悲しそうに揺れていた。
「……どうするの、二人とも行っちゃったじゃない」
「そう膨れないで下さい。勿論私達もついていくに決まってるじゃないですか」
何を言ってるんだと幼い顔で怪訝そうな表情を浮かべるミーアだったが、やがて理解したのか顔中に笑みが広がっていく。
「そっか! 尾行だね!!」
「ええ、この目でカイ様の慌てふためく顔を見てやりましょう。そしてネタにして強請るのです」
「エイラもワルだねぇ……!」
「悪魔みたいって、よく言われます」
二人して悪い笑みを浮かべているところに、階段から降りてくる音が聞こえてくる。
「あれ、お二人だけですか。イデア様は?」
顔を見合わせていたエイラとミーアが視線を向けると、コルンとラン、そしてレンの三人が荷物の準備が終わって降りてきたところだった。
まずい、と瞬時にエイラの脳内に最悪の未来が描かれる。コルンとランはイデアの従者だし、新しく加わったレンなんてイデアの実兄である。もしカイとデート中なんて知ったら、命を賭して止めに行くかもしれない。……いやそれも面白そうではあるんだけども。
「あ、あー、少し時間ができたので、カイ様と一緒に王国の外を散策しに行くと……」
「な、なに!? それって、つまりデートでは!?」
ちょこっとだけ嘘を混ぜて三人に伝える。王国内か王国外かの違い。たった「な」か「が」かの違いで、それ以外は全て本当だし、四捨五入したら……本当のことでしょう。
やはり新参者のレンは顔を真っ赤にして拒絶反応が出ていた。
「こうしてはおれん、二人とも行くぞ! まだあの男をイデアの夫だと認めた覚えはない!!」
「ええ!」
三人して荷物を置いてこれまた宿を飛び出していく。カイ達とは反対方向へと。
「時間までには戻ってきてくださいね~」
計画通りと笑みを歪ませるエイラに、若干引いたようにミーアが苦笑していた。
「そ、そこまでするとは……って、そういやダリルだけ姿見えないけど、どうしたの?」
メリルが準備に時間を要するのは分かったけれど、同じ部屋のダリルの姿が見えない。
「あー、ダリルなら部屋で寝てますよ」
今日の戦いで疲れたのもあるだろうが、昨日はメリルと同じ部屋で寝不足だったのだろう。ダリルもエリスが簡単に話をつけてくると思っておらず、休息をとることにしたのだ。
「メリルが準備に時間かかると言い始めたのは、ダリルが眠り始めてからでした」
「……何の準備してるんだろうね」
「さあ、乙女には暴いてはならない真実があるのです。というわけで、我々も向かいますか」
「うん! デート尾行大作戦だ!」
おー、と意気込む二人。荷物を宿に預けて、早速カイとイデアの元へと足を進めたのだった。
※※※※※
「い、イデア……!」
「あっちから良い匂いするよ!」
「わ、分かったから、い、一回ストップ……!」
カイの声にイデアが足を止めて、振り返る。どうかしたの、と首を傾げる彼女は何も意識していないようであったが、生憎こちらは心臓バクバクだ。
決して走って向かっていたからじゃない。宿からこれまでずっと手を握っているからだ。手を握るなんて、小さい頃に両親にやってもらったか、幼いミーアと繋いだかくらいの記憶しかない。家族としかしたことない手繋ぎを、こんな可愛らしい女の子とするとは夢にも思っていなかった。
不思議そうなイデアだったが、不安げに顔を歪ませた。
「ごめんね、もしかして……さっきの戦いでどこか痛いの?」
「あ、いや、そういうわけじゃなくてだな……」
確かに数時間前までダークネスと戦闘していたけれど。そういえば、周りを歩く人々の口からもその話題がぽつぽつ聞こえてくる。流石に王城の一部や国壁が壊れたんだ、話題にもなるか。聞く限りじゃ巻き込まれて怪我をした人はいないらしい。良かった。
じゃあ、どうして? とこちらの言葉を待つ彼女にどう返したものか。今だってまだ手は握られたままで。このドキドキが手から伝わってしまうんじゃないかとか、手汗が酷いんじゃないだろうかとか変なことを考えてしまう。
ええい、ままよ!
「な、何でもない! 早く行こうぜ!」
他のことに夢中になれば変な意識をせずに済むはず! ということで先にある商店街へ向かうことを優先することにしたカイだった。
「そう……? ちょっと急ぎすぎだったかもしれないし、歩いていこ」
謎は解決こそしなかったが、何かを反省したのか先程のように走ることはなく、ゆっくりと手を引いてイデアが前を歩いていく。
イデアの純白の髪が風になびかれてきらきらと揺れる。乱れないように髪を押さえる彼女は絵になっていて、行き交う人々の視線がちらちらと向けられていた。
そう、彼女は目立つ。眉目秀麗だからであるが、そんな彼女に手を引かれるこちらもまた目立ってしまって仕方がない。「あれって、レイデンフォート王国の?」なんて声も聞こえてくるが、生憎今は空気になりたい気分で下を向いてしまう。
恥ずかしいのか、照れくさいのか。
知らない街並みなのにイデアの方が堂々と歩いていて、案内のできるカイが縮こまるかのようにその後ろに続いていた。時おり彼女が出してくれる話題にも、何も面白い返しをできず、情けないったらなかった。
「わっ、凄い……!」
漸く辿り着いた商店街でイデアが目を輝かせる。これまでのまあまあの人々とすれ違ったが、この商店街には人々が溢れそうなくらいごった返していた。あちこちで自分の店へ呼び込む声が響いていて、先程の話題をかき消してしまうくらいのエネルギーに満ち溢れている。
その様子を見て、「そう、手を繋いでいるのははぐれないようにするため。そう、迷子にならないように――」とカイは無理やり手を繋いでいることにぶつぶつと理由をつけていた。
「……カイ?」
「大丈夫、邪な気持ちは一切――」
「むー、カイっ!」
「え、わ、な、なに!?」
自分の世界に入っていたカイが、イデアの声で現実に戻される。見れば、彼女は少し頬を膨らませていた。怒っているのだろうか。
と思ったら、眉をひそめて悲しそうな表情を見せる。
「折角のデートなのに、カイは私のこと見てくれないの?」
「――っ!」
その顔でその言葉は、反則だろ……!
顔を真っ赤にするカイへ、イデアが追撃する。
「カイとの初めてのデートだから、私凄いドキドキで。でも嬉しくて、一緒に歩いているだけで楽しいけど……カイは違うのかな」
よく見ると、イデアの頬も少し朱に染まっていて。いつもぐいぐい来るイデアだが、デートという状況にドキドキしているらしい。確かに二人きりでどこかへ出かけるのは初めてで……イデアも俺のことをドキドキするくらいは意識してくれているんだ。
「……悪かった、イデア」
「カイ……」
デートだろうと何だろうと、一緒に居てくれる彼女にこんな悲しい顔させたら、男失格だろう。空いている手を拳にして額へ打ち付ける。
覚悟を決めろ、カイ・レイデンフォート。この街はお前の方が良く知っているはずだ。なら、エスコートできるだろ!
ギュッと、彼女が握ってくれている手に力を籠める。
「行こう、イデア。俺がこの商店街を案内するよ」
そう言って、イデアよりも前にカイは出た。その姿に、イデアは顔中に笑みを広げていく。
「っ、うん!」
「はぐれないように、手は離すなよ!」
それからは二人でいろんなお店を見て回った。お互いに似合いそうな洋服を選んでみたり、小物店ではアクセサリーを二人で選んでみたり。露店で作られていた焼き芋を買って、めちゃくちゃ恥ずかしいけれど「あーん」とお互いに食べさせたりもした。
自分が気にし過ぎていたのかもしれないけれど、何てことはない。楽しい。イデアと二人で回る商店街は楽しくて仕方がなかった。
カイが笑って、イデアが上品に微笑む。
そんな二人を、少し離れてエイラとミーアが物陰に隠れて見つめていた。
「もっとあたふたすると思っていましたが、案外楽しんでおられますね」
「ね、最初はヘタレすぎてあれが実兄だと認めたくなかったけど、今は良い雰囲気じゃない?」
通行人が怪しげな二人に視線を送るが、彼女達はカイとイデアへ視線を送っていて一切気づかない。
「この感じだと、お兄ちゃんはイデアちゃんのこと好きになるんだろうなぁ」
「あら、お兄ちゃんが取られて寂しいんですか?」
どの感情からの発言なのか分からず、揶揄うついでに尋ねるエイラ。だが、それにはしっかりと睨みを利かせてミーアは返す。
「そんなわけないでしょ。……ただ少し不思議なだけ。ついこの間まで、女っ気一つもないお兄ちゃんがだよ。急にあんな可愛い子とくっつくなんてさ。世の中何が起きるか分からないなって」
「それは……」
エイラだってカイとの関係は長いわけだが、今目の前に広がるような未来を想像できたことはなかった。けれど、不思議と違和感があるわけでもない。
だって、カイは彼の息子で、息子の中でも彼に似ていると思うから。そう思うと、案外女たらしなんじゃないかという気さえしてきて。
「……これ以上被害者を作らないように、ここで殺っときますか」
「ちょっと待って、何でそんな話に!?」
突如溢れ出す殺気と飛び出そうとするエイラの身体を、必死になってミーアが止めようとする。これまた通行人としては怪しさ満点なのだが、そうこうしている間にカイとイデアは人混みに紛れて見えなくなっていた。
というか、悪寒がしてカイが少し足早にその場を離れたのである。
「お、これで終わり、かな」
結構の長さを持つ商店街だったが、二人で歩いているとあっという間に思えるくらいで、気づけば端にまで辿り着いていた。それでも時間はちゃんと経っていたようで、日がようやく沈む決心をつけたところのようだった。
「カイ、ありがとう。案内してくれて。すっごい楽しかった!」
「ああ、俺もだ。久々にはしゃいじゃったかも」
名残惜しいけれど、流石にこれ以上はエリスを待たせてしまうことになるだろう。何なら二人揃って遅刻かもしれないけれど。
エリスに迷惑かけても後悔ないくらい、素敵なデートだった。
「「……」」
二人してそこから動こうとしない。分かっているのだ。
帰ってしまえば、この特別な時間が終わってしまう。握り合っていた手を解かなくちゃいけなくなる。カイも最初こそ照れていたけれど、だんだんと彼女の体温を心地よく思えるくらいにはなっていて。
それでも帰らなきゃいけないから、イデアが少し寂しそうに微笑む。
「それじゃ、帰ろっか」
宿へ足を向けようとするイデアだったが、繋いだ手が動かなくて振り返る。
「……カイ?」
「……あの、さ。全部終わったらでいい、から、さ」
少しずつ変わっていく空色のお陰でカイの真っ赤な顔は、きっとイデアに伝わっていない。空に感謝しながら、勇気を出してカイは言った。
「また、デートしてくれるか?」
ああ、言ってよかったな。
カイの言葉に、寂しそうだった彼女の顔がまるで花が咲いたように明るくなる。
「うんっ、絶対だよ!」
その笑顔を見て、自分の陥落も時間の問題だなと思えてしまった。
「じゃあ、今度こそ」
「ああ、帰ろう。待たせてたらエイラ辺りが五月蠅そうだ」
二人並んで帰路につく。変わらず繋がれたお互いの手は、心の高ぶりを熱い温度に変えて伝えあっていたのだった。
※※※※※
それから1年と半年が経って。
近くに人の気配がして、イデアの大きな瞳が少しずつ開いていく。
それを待ってましたと言わんばかりに、彼が言う。
「おはようイデア、久しぶりにデートでも行こうぜ」
「……んぇ?」
レイデンフォート王国の自室で寝ていたイデアの眼に起床早々映ったのは、ニッコリと笑うカイだった。
~続く~
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