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4『理想のその先へ』

4 第三章第五十二話「VSレイニー編② マスカレード」

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縦横無尽に空を駆け回っていく。今出せる全力で、壊れそうな身体を、挫けそうな心を必死に堪えながら、終わらない地獄の中にゼノ達は居た。

目の前に迫る青色の極太レーザーを躱した次の瞬間には、頭上からそれが降り注いでいた。

「くっ」

何とか急転回して体を捩り、ゼノはレーザーを避けた。だが、避けたレーザーが空間に飲み込まれていき、新たな場所から今度はセラを襲っていた。

「セラ!」

ゼノの声で自身に迫る凶撃に気付き、何とか躱すセラ。だが、躱したレーザーが別のレーザーとぶつかり合い、次の瞬間爆発を起こした。

「きゃあああああ!」

爆風に巻き込まれてセラが吹き飛ぶ。その先にレイニーが回り込んでいた。

「まず一人目!」

銀大剣が勢いよくセラへと振り下ろされる。セラは爆風で体勢を崩したままだ。受け止められない。

まずいっ。

「シロ!」

「分かってるわよ!」

ベルセイン・リングが解除され、シロがセインから人へと戻る。ゼノはベルセイン状態になった。

右脚を大きく振りかぶるシロ。その脚にゼノは乗った。

「《風陣!》」

「おらあああああああ!!」

直後に全力でセラの方向へとシロが蹴りだした。同時にゼノも魔法で一気に加速する。

この瞬間、ゼノの速度はレーザーの速度を遥かに超え、レーザーの包囲網を抜け出していた。

セインによる身体能力の向上は強力ではあるが、殊爆発的な加速の話になるとシロの特異的な身体能力とゼノの魔法をかけ合わせた方が上であった。

一瞬の内にセラとレイニーの間に割り込み、銀大剣をセインで受け止める。

「ちっ、邪魔するな!」

受け止めるとは言っても、ただでさえベルセイン・リングを解除した状態だ。力の差は歴然であった。

「ぐあっ」

真下に勢いよくゼノが吹き飛ばされていく。その直下からレーザーが飛び出した。

「ゼノ!」

レーザーに飲み込まれる直前、シロが凄まじい速度でゼノの元へ飛び出してきていた。

その背後にはエイラと風で作られた絨毯が映っていた。

風の絨毯を足場にさせ、更に重力で加速させたのだ。シロの膂力と掛け合わされれば、あれだけの速度は造作もない。

「っ、ベルセイン・リング!」

ゼノとシロが紅く眩い光に包まれ、再びベルセイン・リング状態に戻る。

真下から昇って来ていたレーザーをそのままセインで何とか受け止めた。

「《ゼノ、気張りなさいよ!》」

「わ、からいでかああああああ!」

ゼノとシロの力なら、全力を出せば何とかレーザーを掻き消すことが出来る。

だが、それを待ってくれるレイニーでもない。

「これで終わり!」

急降下して、隙だらけのゼノの背部へと銀大剣を突き下ろしていく。

「エイラ!」

「セラ様!」

そして、それを易々と見守る二人でもなかった。

体勢を立て直していたセラが、レイピアを背後に目一杯引いていた。その彼女へと、極太レーザーを躱しながらエイラが重力場を展開し、ゼノ達へ向けてセラを一気に加速させる。

セラは一瞬でその場を飛び出し、レイニーの元へと。

途中、二本のレーザーが横から飛び出してセラの進路を塞いだ。だが、躊躇うことなくセラは突っ込んでいく。

後ろに引かれたレイピアには、逃げ続けていた間魔力が込められて凝縮されていた。

勿論、凝縮したとはいえ短時間。まだレイニーの防御を壊すに足る力は存在しない。

だが、セラは直感的に魔力を操っていた。

この空間に到達する為に、シェーンの魔力を巻き込んで一緒に凝縮させた、あの時の感覚。

魔力コントロール、凝縮練習による極致。

セラの一撃は、レイニーの魔力すら巻き込んでみせる。

 

「《神鳴り!!》」

 

重力の勢いを乗っけて、全力でレイピアを前に突き出す。と同時に溢れ出す魔力の奔流。光り輝く一撃が、神速で目の前のレーザーに衝突した。

魔力同士がぶつかり合い、お互いの魔力が弾ける。その弾けた魔力を、セラは更に巻き込んで自身の力に変えていた。

一気に《神鳴り》の威力が増大する。二本のレーザーで力を増したそれは、レーザーを打ち消してレイニーまで一瞬で殺到した。

「無駄なっ」

ゼノを突き刺す寸でのところで、レイニーはセラの魔力に気付いて青障壁を展開した。

それで防げると思っていた。だから、銀大剣を止めることはない。

セラの一撃は、その障壁すらも力に変えてしまう。

次の瞬間、青障壁が一瞬で壊れ、レイニーに魔力の奔流が直撃した。

「――――っ!」

予想外の一撃に小柄な体が勢いよく吹き飛び、空間の淵に思い切り叩きつけられていた。

「ぐっ……!」

レイニーの口から血が一筋流れる。衝撃で脳が揺れ、レイニーはすぐに身体を起こせなかった。レイニーの動きが止まったからか、一時レーザーによる攻撃も止んでいた。

その隙にゼノはレーザーを掻き消し、そこにセラとエイラが合流した。

掻き消してすぐ、ゼノはセラを呆然と見ていた。その身体はなぜか震えている。

「セ、セラ、つ、強くなった、な……!」

「何でそんなに声が震えてるんですか?」

「《喧嘩したら半殺しにされると怯えてるのよ》」

「私を何だと思ってるんですか……」

ゼノを睨みつけるセラを横目に、エイラが言った。

「ですが、確かに強力ですね。ようやくセラ様の一撃であちらにダメージが入りました。そのままセラ様中心で戦って倒せないですか?」

「……無理だと思います。青い障壁を壊した一撃でも、あの子はそれ程堪えているようには見えません。やはり魔力が身体の内を流れているからでしょうか、何よりもあの子の身体が一番硬いです」

「そこはほら、さっきの要領で自分の力に出来ないんですか?」

「あそこまで硬いとなると、相当量の魔力を巻き込む必要があって時間がかかります。巻き込んでいる間に掻き消されちゃいますよ」

「むー、子供の癖にやるじゃないですか……」

頭を悩ませるセラとエイラ。

急がないと、レイニーが動き出してしまう。

「……やっぱ、強硬策だな」

「強硬策?」

ゼノの言葉にセラとエイラが首を傾げる。

これまでの攻防の中で、ゼノは既に答えは出していた。

「全員に滅―――――――……茶苦茶無理してもらうけど、いいよな?」

ゼノが不敵に笑う。

その顔を見て、二人は嫌そうな顔をした。

「あー、エイラ、これは……」

「そうですね、嫌な思い出が……」

「《……全員覚悟しておいた方がいいわ》」

心なしかシロの声音もかなり落ち込んでいた。ゼノの想いを汲み取れる彼女は既に理解しているのだ。

ゼノの無茶加減を。

「さぁ、説明するぞ!!」

誰も乗り気ではない中、ゼノが名案とばかりに話し始めた。

 

 

※※※※※

 

 

ガンガンと痛む頭を振ると、余計に痛みが増したが朧げな感覚がハッキリした気がした。

くそっ、無駄なのに! 皆どうせ死ぬのにぃ!

どうにか体を起こし、前を向く。

折角の隙を、奴らは無駄にしたようだ。遠くで集まっているだけ。

話したって無駄だ! 私に勝てるわけないんだもん!

だって、私は魔王に育てられたのだから。

魔王に力を見初められてここにいるのだから。

負けるはずがない。

早く勝って、ベグリフ様の元に行かなくちゃ。行って、たくさん褒めてもらうんだから。

そう思うと、頭の痛みが和らいでいくような気がした。

「よし、頑張らなくちゃ!!」

レイニーは勢いよく前に飛び出した。膂力が高速を実現させる。

まだ先でゼノ達は集まっていた。

まとめて塵になっちゃえ!

再度青障壁をいくつも出現させ、一気に八本ものレーザーをゼノ達へ向けて放った。

別に躱されてもいい。躱された先で空間を通り、好きな所から放てるようになるし。

 

そう思っていたレイニーの予想外が始まっていく。

 

「…っ、どうして!?」

放った八本のレーザーが突如としてギュッと《凝縮》され、一つの超極太レーザーになっていた。

レイニーが決して操ったわけではない。こちらの意図とは関係なく、レーザーが一つに纏め上げられたのだ。

何が起きているの……。

とはいえ、一つになったらなったで攻撃力も上がり、範囲も広がる。ゼノ達にとってはむしろこっちの方が辛いかもしれない。

とんだ想定外だが、これで……。

その希望的観測から状況がズレていく。

放たれた超極太レーザーが動きを止めていた。気付かない程徐々にしか先に進んでいない。一番先でレーザーが何かに押しとどめられているかのよう。

ありえない。さっきまでレーザー一つ一つですら受け止められず、受け止められてもゼノだけだった。そのゼノですら全力でやっとだったのに。

レイニーを直感が襲う。

間違いない、奴だ。

ゼノ・レイデンフォート……!

「一体お前は何を、しているの!」

レーザーが極太過ぎて先が見えない。ゼノ達の姿も見えずにいた。

見える位置に回り込もうとするレイニー。

その前に、黒い羽根がふわりと下りてきた。

「この分担、私が一番無茶だと思うんですが……まぁ、それだけ信頼されていると思っておきましょうか」

悪態をつきながら、彼女が漆黒の翼をはためかせて降りてくる。黒基準のメイド服が、場違いな感じを醸し出していた。

エイラがレイニーへと笑う。

「さて、お手合わせ願いましょうか」

あまりの余裕ぶった雰囲気にレイニーの思考が一瞬停止する。

まさか単騎で挑んでくるとは。

これまでの戦いを踏まえて一人で勝てると思っているのだろうか。

それはそれで腹立たしい。

「私の力を舐めてるの!?」

「まさか、舐めてませんよ。ちゃんと命懸けですし、本気で行きます」

言下、エイラから魔力が溢れていく。

真っ黒な魔力がエイラを包んでいく。黒いのにどこか温かい魔力。

発言通り、エイラは今全力で魔力を練っていた。この人生でこれ程全力だっただろうかと思えるほどに。

魔力に包まれ、エイラの姿が見えなくなる。

レイニーはこの様相を知っていた。

ベグリフがレイニーを連れていったのは、彼女の力を応用してこの力を四魔将たちに発現させる為だったのだから。

「確か、こう唱えるんですよね」

そして、エイラが言う。

 

 

「《リベリオン》」

 

 

黒い魔力の名からエイラが姿を見せる。先程のメイド服と打って変わって、エイラは純白を基調としたボールガウンドレスに身を包んでいた。ところどころ漆黒で彩られているそれはノースリーブで、その腕にはオペラグローブと呼ばれる長い同色の手袋をしている。

肩辺りで揃えられていた黒髪はグンと伸び、膝辺りにかかりそうな勢いだった。それを高い位置で縛ってポニーテールに。ウェーブもかかっており、まるでどこかの舞踏会に出るかのような出で立ちであった。

そして、エイラの皮膚は部分的に黒く硬質化していた。ドレスから覗く美しい肌を守る鎧のように硬質化しているが、決してドレスコードの邪魔をしない。むしろまるでそれが装飾品のように純白のドレスを彩っている。

これが、エイラのリベリオンであった。

「ふん、リベリオンがなに! そんなんで私に勝てるとでも思ってるわけ!!」

レイニーの言葉に、真っ赤な双眸が三日月型に微笑む。

「さて、準備も終わった所で、あなたを舞踏会へ招待いたします」

そう告げるエイラの手には白い仮面。鼻や口を象徴するものはなく、唯一真赤に眼の形が塗られていた。

その仮面を付けながら、エイラは言う。

魔法は想像力だと以前ゼノが言っていた。

だから想像し、創造する。

 

 

「《ブラック・マスカレード》」

 

 

次の瞬間、レイニーはいつの間にか真っ黒な空間にいた。先程までいた自分が作った空間ではない。別の空間。

どこまでも闇が続いているように見えるが、その中に一際目立つ純白のドレス。白い仮面をつけ、エイラが今から踊りだすかのように恭しく低頭している。

そして、レイニーは気付いた。

どういう、こと……!?

異様な気配に振り返ると、そこにはもう一人純白のドレスに身を包んだ仮面姿のエイラがいたのだ。

気付いた途端、最初からそこにいたかのようにどんどんと暗闇に同じ姿のエイラが増え続けていく。レイニーを中心として、彼女を球形に囲むかのように。

そして、全てがドレスのスカートを摘まみ、礼をしていた。

エイラ達が一斉に顔を上げる。仮面のせいでどのような表情をしているか分からないのに。

「《Shall We Dance?》」

全方位からかけられる声。

何故かレイニーには笑っているような気がしたのだった。

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