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4『理想のその先へ』
4 第二章第十八話「記憶の濁流」
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ミーアが立ち上がってから二日。
つまり、シーナの命が尽きるまで、あと一日となっていた。
ミーアは資料室に籠ったかと思えば、今度は天界に行きたいと話したり、続いてイデアと話したいと言い出したり、忙しない様子だった。一切休みを取ることなく、ただシーナの命を繋ぐ為に前へと踏み出していた。
そんなミーアを再び天界へ送ってから、カイはレイデンフォート城内を歩いていた。
ゼノが抜けた穴は遥かに大きい。ゼノという英雄の存在が何とかバラバラだった人族陣営を束ねていたと言っても間違いない。そのゼノが倒れてしまった今、繋がりが途端に崩れ始めていた。
現状は、天界の女王としてセラがどうにか一致団結するよう声を掛けている状態。チェイル王国の王ハンも協力してくれてはいるものの、やはり天使族との溝が簡単に埋まるわけもなく、続々と魔法による通信に対する反応は悪くなっていった。
四列島は壊滅し、既に五大国の一つも消えて無くなったと言うのに、未だに三王都の彼らは重い腰を上げようとしない。三王都は元々天使族反対派閥が集まって出来た国である為、天使族であるセラの呼びかけに反応しないのはある意味では当然と言える。
ただ、反応しないのは三王都だけではない。
ウィンドル王国もまた、ある瞬間から全く反応しなくなっていた。
ウィンドル王国の王ウェルム・ウィンドルは、以前天界での戦闘に自ら加勢に名乗り出た人物である。カイ達と共に天使族達の危機を退けた仲であるはずだが。
カイの脳裏にウェルムの冷静沈着な表情が思い浮かぶ。冷静沈着と言えば聞こえはいいが、逆に言うと何を考えているのか分からない。
意味の無いことをするような奴じゃない。反応しない事には何か意味があるはずなんだ。
ミーアの方は心配いらない。もう痺れを切らしてウィンドル王国へ乗り込むか。丁度昼時も過ぎる頃だ。
「カイ!」
そう考えているカイの元へ声がかけられた。振り向くと、メリルが廊下の曲がり角から顔を出していた。
「メリル……ってことは――」
メリルはずっとベグリフにやられたダリルの看病をしていたはずだ。一時も離れようとせず、彼が目を覚ますのを祈るように待っていたのである。
そんな彼女が部屋を出てきたということは。
「ダリルが目を覚ましたのか!」
「え、う、うん、そうなのっ! ついさっきね!」
言う前に当てられて、多少なりともメリルは驚いた。
カイって戦闘の時といい、意外と頭が良く回るのね。
それに、少し見ない間にどこか顔つきが大人に近づいた気がしなくもない。
ヴァリウスの死が彼に与えた影響なのかもしれないと、口に出すのは何故か憚られた。
そのままメリルかカイを手招きした。
「それで、ダリルがカイを呼んで欲しいって」
「俺を? 何だ、助けたお礼かな」
それ以外、特に思いつかない。全く律義な奴だ。
「うーん、それにしては神妙な表情だったけど……まぁ行ってみたら分かるでしょ。早く来て!」
急かすようにメリルが何度もカイを手で招く。
一旦ウィンドル王国の事は頭の片隅に追いやり、メリルと共にダリルの元へ向かった。
「さては、二人きりの時間を早く作りたいから急かしてるんだろ?」
「そりゃそうよ。起きたと思ったら『カイを呼んできてほしい』なんだもん。感動の再会もあったもんじゃないわ」
本当に呆れたと言いたげに、メリルが溜め息をつく。
「感動の再会なら、あの時その場でしたろ……」
そんな彼女の様子にカイも呆れながら、漸くダリルのいる部屋へと辿り着いた。
別にノックもいらないだろうと、というかダリルの方がカイの部屋へ入る時ノックしない事が多い。そのお返しのつもりで、いきなり扉を開けてやった。
「よっ、眼が覚めたって?」
勢いよく開けたから、少しくらい驚くだろうと思ったカイだったが。
ダリルは寝起きで早々に剣による素振りを始めていた。上裸で既に汗を掻き始める程に集中していて、カイ達の登場に気付かない。
病み上がりって言葉を知っているかな。というか、呼んだのお前だろ。
これにはメリルが驚いていた。
「ちょっ、ダリル! 馬鹿なの!!」
「ん、ああ、メリルに…カイじゃないか。来てくれたんだな」
「「来てくれたんだな」じゃないわ! いいからまだ寝てなさい!」
無理やりにでもメリルがダリルを寝かせようとするが、ダリルは首を振る。
「いや、今回の件は私の精神力と単純な力が足りなかったがゆえに起きたものだ。もう休んでなんていられない。もう二度と操られぬように――」
「寝・な・さ・い・よ?」
すると、カイに背中を向けてメリルがそう言った。途端に、ダリルの顔が引きつる。
「わ、分かりました……」
剣をしまい、服を着ると静かにベッドへと戻っていった。
メリル、どんな顔をしていたんだろう。
ただ、知ると今後メリルを見る目が変わってしまいそうで、カイは尋ねることをやめた。
「んで、俺に用があったんだろ?」
カイから話題を振ると、ダリルはそうだったと頷いた。
「まずは礼からだな。お陰で助かった。ありがとう」
ベッドに座りながら、ダリルが深々と頭を下げる。
ダリルに感謝されることがあまりない為、カイはどこかくすぐったい気持ちがした。
「俺の方が強かった。ただそれだけさ」
だから、カイは煽るような表情でにんまり笑って誤魔化す。
「馬鹿を言うな。正気だったらお前に負けるもんか」
「負け惜しみですねぇ。負け犬のなんとやらですねぇ!」
ダリルの顔に一瞬青筋が浮かんだが、自制心で何とか怒りは収めてくれたらしい。
「まぁだが、確かに強くなったな」
「……おう」
直球な言葉に、カイはやはりムズムズしてしまい、そっぽを向いた。
そのカイをずっと見つめ、ダリルが言った。
「魔力、戻ったんだってな」
それは、ヴァリウスの死に触れる内容のもの。ダリルは、それに遠回しに触れた。
一瞬、メリルがダリルへ窘めるような視線を送るが、ダリルは真っすぐカイを見つめていた。
空気が変わったような感覚がメリルを襲ったが、それは一瞬に過ぎなかった。
カイは、困ったように笑っていたのだった。
「返すなって言ったんだけどな」
「……カイ、無理するなよ」
語り掛けるように、ダリルが告げる。カイの心境を心配してのことだった。
だが、カイは変わらない。
「無理なんてしてない。むしろ調子良いくらいだ。アイツが、俺があげた以上のものを上乗せして返してくれたからかな」
決して悲しみが消えてしまったわけではない。ただ、それも前へ進む力をくれる。
決意に満ちた表情で、カイは答えた。
「だから、大丈夫だ」
カイの表情に、やがてダリルも笑みを浮かべた。
「そうか、本当に強くなったな」
「誰かさんのしごきが酷すぎるお陰でな」
カイとダリルが笑い合う。その様子を見て、メリルも安心したように笑っていた。
「で、用って今のか?」
「ん、いや、ここから本題だよ」
逆にここまでは本題でもなかったのかと、カイは驚いた。これ以上何を話すことがある。
だが、ダリルにはあった。
何故か、カイに話さなくてはならないと思ったことが。
一拍置いて、ダリルが話し始める。
「私は、魔王ベグリフの魔力を半分譲渡されることで悪魔族となった。奴の魔力による洗脳はとても強力で、必死に抗ってはいたんだが身体は完全に支配されてしまった」
「ああ、ダリルの心がまだ戦っているのは何となく感じていたよ」
だからこそ、それを信じてカイ達は戦ったし、そしてダリルの心は戻って来たのだ。
ダリルが頷く。
「ああ、戦っていた。奴の見せる記憶の濁流とな」
「記憶の、濁流?」
「そうだ、洗脳する為には意志を植え付ける必要がある。つまり、ベグリフの意志をな。それに屈した瞬間、私という人格は完全に消え失せてしまっていただろう」
それが《魔魂の儀式》というものである。魔力の譲渡は、ただ渡すだけではなく同時に魔力に宿る記憶による洗脳を担っているのだ。
「つまり、ダリルは魔王の記憶を見たってこと?」
メリルの問いを彼は肯定する。
「ああ、見た。勿論全てではなく断片的ではあるが……奴が何故あれ程力に固執、いや縋るのか、その発端とも言えるだろう記憶をな」
縋る、その言い方にカイは少しの困惑を覚える。
それじゃまるで、力がなければベグリフが壊れてしまうかのようだ。
何かを支えてもらう為に、ベグリフは力を追い求めているのだろうか。
言いながら、ダリルの表情が険しくなる。ダリル自身、まだ整理がついていないのだ。
「正直、あれが本当に起きた出来事なのか、そもそも現実なのかどうか分からない。ただ言えることは――……」
一度言い淀むと、大きく息を吐いてダリルが告げる。
「間違いなくあれはこの世界で起きた出来事ではない」
「え、ちょ、ダリル、何を言ってるの?」
この世界ではない別の世界。その存在に、メリルは当然理解が追い付かない。
だが、カイはゼノ達の過去話でその存在に触れていた。ベグリフという男を語るためには、その別の世界が欠かせないのだと。
結局、ゼノ達もその世界が何なのかは分からなかった。
でも、ダリルがそれを知ることが出来たのなら。
「教えてくれ、ダリル。アイツに何があったのかを」
カイは知りたいと思った。
フィグルは何故ベグリフを救いたいと思ったのか。
ベグリフは何故フィグルを妃にしたのか。
ベグリフは何故あれ程までに力を追い求めるのか。
ベグリフは何を想ってこんな世界にしたのか。
それが分からなかったからこそ、聖戦は決着がつかなかったのではないだろうか。
理想に手が届かなかったのではないだろうか。
きっと、ダリルの話で全てが繋がる。
繋がって。
漸く、この世界の在り方が決まるのだとカイは思った。
ダリルは頷く。長い話になるのは間違いない。別の世界の話というだけで、どう話せばいいかも分からない。
それでも、カイには話さなくてはならないと思った。
誰でもない、カイへ。
「これは、ある悲劇の物語だ」
そう前置き、ダリルは語り始めた。必死に語彙を総動員させて、別の世界を形容していく。形容しながら、主人公である彼の記憶を紐解いてカイへ伝えていく。
カイは黙って話を聞いていた。途中で遮ることもせず、ダリルの話に耳を傾け続ける。
彼の想いに心を傾け続ける。
そして、もうすぐ夕暮れを迎えようとした時、ダリルが語り終わる。
カイの眼からは一筋の涙が零れ落ちていた。
※※※※※
夕陽から差し込む光が、部屋を彩る。
自室にて、イデアは一人ベッドに寝そべっていた。静かに呼吸を整え、瞳を閉じる。
映るのは瞼の裏。けれど、そこにはフィグルの姿が映し出されていた。
イデアとよく似た彼女が、心の中で困ったように笑う。
「今の状態では、イデアさんが魔力を扱うのは難しいでしょう」
「そう、ですか……」
落胆するように、イデアは息を吐いた。
ディゴス島での一件からというもの、イデアは難なくフィグルと心の中で話し合うことが出来ていた。拒絶していたのはやはりイデアの方で、自分から歩み寄ればこれ程容易いこともないという感覚だ。
意識の受け渡しも容易に可能で、先程もフィグルに用があって訪ねてきたミーアの為に、イデアとフィグルの意識を入れ替えて話すことが出来た。
その際、ミーアはフィグルの魔法について尋ねていったわけだが、イデアもふと魔力が使えたらなとフィグルに相談したのがキッカケだった。
「あくまで魔力が宿っているのは私の魂ですから。いずれは私の魂もイデアさんへと溶け込むはずなので、その時になったら使えるはずですが……そもそもソウルス族のイデアさんにとって魔力とは本来宿らない力。簡単に使えはしないでしょう」
「……つまり、魔力を使えるということは、同時にフィグルさんを失うということなのですね。それは、何というか、寂しいです」
イデアの想いに、フィグルは悲しそうに笑う。
イデアは、魔力さえ使えればカイの負担を減らせると、自分にも何かカイを助けることが出来るのではないかと思ってフィグルに相談した。けれど、カイを助けるためには、今まで支えてくれていたフィグルの存在を犠牲にしなければならないという。それは、イデアにとって悲しいものであった。
心の中でのやり取りだから、余計に飾り気のないストレートな言葉としてフィグルへと届く。今のイデアは本気でそう思っているのだ。
それに嬉しく思う反面、悲しくもあった。どう足掻いても、別れは必然だった。
フィグルの魂は、この世界の法則に反した形で存在している。イデアの魂を借りる形で、本来あり得ない形で存続している状態。ゆえに、いずれ消え去るのは必然。
そう、いずれ来る別れは確定していた。
フィグルはその瞬間を、ある程度予測立てていた。
悪魔族の魔力は、あくまでフィグルの魔力。ただ、フィグルの魔力は現在未完成な状態である。全ての力が揃っているわけではない。
イデアがフィグルの存在を理解し、受け入れ始めた今。
フィグルの魂がイデアへと溶けるのは、フィグルの力が全て集まった時だと彼女は直感していた。
そして、もう残りの力の行方は……。
すると、コンコンと扉がノックされる。フィグルとの対話をやめ、イデアは身体を起こした。
「はい」
「失礼します」
そう言って、入って来たのはエイラだった。エイラは、そのまま部屋へ踏み入ることはなく、その場で伝えてくる。
「イデア様、シロがイデア様をお呼びです」
「シロさんが?」
シロと言えば、ベグリフとの戦闘で傷付いて意識を失っていたはずだが。眼が覚めたのか。
何の用かは分からないけれど、イデアは頷く。
「分かりました」
ベッドから降り、足早に部屋を出ようとする。だが、何故だかエイラは扉の前に立ったままだった。
「……エイラ?」
エイラの様子に、イデアは首を傾げた。
だが、エイラはどこか嬉しそうでいて泣きそうに笑っていた。
「イデア様、どうかこれからの失礼をお許しください」
「えっ」
意味が分からず首を傾げるイデアを。
エイラは屈んで力強く抱きしめた。
突然のことに何が何だか分からない。けれど、伝わってくる温かい心。
何かに浸るように、エイラはギュッとイデアを抱きしめていた。
「エイラ……」
戸惑っていたイデアはやがて、エイラへと両腕を回した。
気付けば、イデアは自ら意識を交代させていた。誰に言われたわけでもなく、彼女に頼まれたわけでもなく、まるでそれが必然とでも言うように。
何を分からない人からすれば、イデアとエイラが何故か抱き合っているようにしか見えない。
けれど。
確かに二人は、再会していた。
どれくらいの時間、そうしていたのか。
やがて、多少の名残惜しさと共にエイラが離れる。
やはり、彼女は泣きそうに見えた。
「すみません、どうしてもこうしたかったのです」
エイラの言葉に、何も言わずにイデアが頷く。その瞳から涙が零れた。
その雫は果たしてどちらの人格のものか。外見では全く判別できない。
けれど、人格など関係はない。イデアも彼女も、想いは同じだった。
カイ様も呼んできます、とエイラがその場を後にする。
どうやらシロが呼んでいるのは、イデアとカイの二人のようだった。
一体何の用件だろう。
疑問に思いながら、イデアはシロがいるはずの部屋を尋ねる。
「シロさん、イデアです」
「ええ、入って」
招かれる形で、イデアは扉を開く。
部屋はどこか涼しい。窓が開いているようで、カーテンがゆらゆらと風に揺られていた。そこから見える風景を見つめるように、シロがベッドにもたれるように座っていた。
シロの額だけではない。あちらこちらに包帯が巻かれていて、顔色から判断してもシロはまだ全快ではない事が分かった。
「大丈夫ですか?」
「いいえ、まさかゼノと同じ部屋じゃないなんて。それだけで全然大丈夫ではないわ」
吐き捨てるように告げる彼女に、イデアは苦笑する。その言い分だけで、多少なりとも回復しているのは分かった。本当はシロもゼノの元へ駆け出したいだろうに、それを抑えてシロは二人に時間を作ってくれていた。
全ては、次に繋げる為に。
そこへ、カイも登場する。エイラはどうやら案内だけでその場を後にしたようだ。
「用って何だよ」
カイの登場に、イデアは少し緊張した。
ヴァリウスが亡くなってから、イデアはあまりカイと会話出来ていない。カイが忙しそうに動いているのもそうだが、何と声を掛けていいか分からなかったからだ。
セインからカイの想いは伝わってくる。けれど、複雑で言語化出来ずにいた。光も闇も合わさって、色が混じっているような感覚。そこに、何色を足せばいいと言うのだろう。
すると、カイの瞳が少し潤っているような、眼の周りが腫れているような気がした。
カイ、泣いてた……?
気付いた途端、居ても立ってもいられなくてイデアがカイへ声を掛けようとする。
だが、その直前にシロが話し始めた。
「揃ったわね。それじゃ話させてもらうわ」
なんてタイミングの悪さだ。イデアは一瞬逡巡したが、カイの事を気にしながらもシロの言葉に耳を傾けた。
シロは目覚めたばかりとは思えない真剣な表情で告げていく。
「今回、私とゼノはベグリフに負けたわ。アイツの魔力と《魔》の力を封じた上でね。それはつまり、あの冥界の剣とやらがそれほど強大な力を有しているという事。加えて、次は魔力も《魔》の力も使ってくる。もしかしたら、まだ中途の《魔》の力も完全復活させてくるかもしれない。カイ、貴方がいくらゼノ以上の魔力を手に入れたところで、簡単にその力の差が埋まることはないわ」
全て事実と言わんばかりに、シロが淡々と語る。確かにカイは魔力を手に入れた、ゼノ以上に濃い、強い魔力を。だが、それだけでは、カイは勝てないとシロは言うのだ。
そこで、と彼女は言う。
「正直、ベグリフの力は未知数だけれど。可能性という話で言えば、貴方達もまた無限大の力を秘めている。だから、これから貴方達にはセインやベルセインの更に上の段階を目指してもらうわ」
「上の、段階……」
何となくカイもイデアも、セインとベルセインの更に先が何を指しているのか分かった。
それは二人共間近で見たことがあることも、そして一度体験したことがあることも理由となっている。
二人を見つめ、シロが言った。
「ベルセイン・リングよ」
カイとイデアが顔を見合わせた。
今、二人の想いが確かめられる。
つまり、シーナの命が尽きるまで、あと一日となっていた。
ミーアは資料室に籠ったかと思えば、今度は天界に行きたいと話したり、続いてイデアと話したいと言い出したり、忙しない様子だった。一切休みを取ることなく、ただシーナの命を繋ぐ為に前へと踏み出していた。
そんなミーアを再び天界へ送ってから、カイはレイデンフォート城内を歩いていた。
ゼノが抜けた穴は遥かに大きい。ゼノという英雄の存在が何とかバラバラだった人族陣営を束ねていたと言っても間違いない。そのゼノが倒れてしまった今、繋がりが途端に崩れ始めていた。
現状は、天界の女王としてセラがどうにか一致団結するよう声を掛けている状態。チェイル王国の王ハンも協力してくれてはいるものの、やはり天使族との溝が簡単に埋まるわけもなく、続々と魔法による通信に対する反応は悪くなっていった。
四列島は壊滅し、既に五大国の一つも消えて無くなったと言うのに、未だに三王都の彼らは重い腰を上げようとしない。三王都は元々天使族反対派閥が集まって出来た国である為、天使族であるセラの呼びかけに反応しないのはある意味では当然と言える。
ただ、反応しないのは三王都だけではない。
ウィンドル王国もまた、ある瞬間から全く反応しなくなっていた。
ウィンドル王国の王ウェルム・ウィンドルは、以前天界での戦闘に自ら加勢に名乗り出た人物である。カイ達と共に天使族達の危機を退けた仲であるはずだが。
カイの脳裏にウェルムの冷静沈着な表情が思い浮かぶ。冷静沈着と言えば聞こえはいいが、逆に言うと何を考えているのか分からない。
意味の無いことをするような奴じゃない。反応しない事には何か意味があるはずなんだ。
ミーアの方は心配いらない。もう痺れを切らしてウィンドル王国へ乗り込むか。丁度昼時も過ぎる頃だ。
「カイ!」
そう考えているカイの元へ声がかけられた。振り向くと、メリルが廊下の曲がり角から顔を出していた。
「メリル……ってことは――」
メリルはずっとベグリフにやられたダリルの看病をしていたはずだ。一時も離れようとせず、彼が目を覚ますのを祈るように待っていたのである。
そんな彼女が部屋を出てきたということは。
「ダリルが目を覚ましたのか!」
「え、う、うん、そうなのっ! ついさっきね!」
言う前に当てられて、多少なりともメリルは驚いた。
カイって戦闘の時といい、意外と頭が良く回るのね。
それに、少し見ない間にどこか顔つきが大人に近づいた気がしなくもない。
ヴァリウスの死が彼に与えた影響なのかもしれないと、口に出すのは何故か憚られた。
そのままメリルかカイを手招きした。
「それで、ダリルがカイを呼んで欲しいって」
「俺を? 何だ、助けたお礼かな」
それ以外、特に思いつかない。全く律義な奴だ。
「うーん、それにしては神妙な表情だったけど……まぁ行ってみたら分かるでしょ。早く来て!」
急かすようにメリルが何度もカイを手で招く。
一旦ウィンドル王国の事は頭の片隅に追いやり、メリルと共にダリルの元へ向かった。
「さては、二人きりの時間を早く作りたいから急かしてるんだろ?」
「そりゃそうよ。起きたと思ったら『カイを呼んできてほしい』なんだもん。感動の再会もあったもんじゃないわ」
本当に呆れたと言いたげに、メリルが溜め息をつく。
「感動の再会なら、あの時その場でしたろ……」
そんな彼女の様子にカイも呆れながら、漸くダリルのいる部屋へと辿り着いた。
別にノックもいらないだろうと、というかダリルの方がカイの部屋へ入る時ノックしない事が多い。そのお返しのつもりで、いきなり扉を開けてやった。
「よっ、眼が覚めたって?」
勢いよく開けたから、少しくらい驚くだろうと思ったカイだったが。
ダリルは寝起きで早々に剣による素振りを始めていた。上裸で既に汗を掻き始める程に集中していて、カイ達の登場に気付かない。
病み上がりって言葉を知っているかな。というか、呼んだのお前だろ。
これにはメリルが驚いていた。
「ちょっ、ダリル! 馬鹿なの!!」
「ん、ああ、メリルに…カイじゃないか。来てくれたんだな」
「「来てくれたんだな」じゃないわ! いいからまだ寝てなさい!」
無理やりにでもメリルがダリルを寝かせようとするが、ダリルは首を振る。
「いや、今回の件は私の精神力と単純な力が足りなかったがゆえに起きたものだ。もう休んでなんていられない。もう二度と操られぬように――」
「寝・な・さ・い・よ?」
すると、カイに背中を向けてメリルがそう言った。途端に、ダリルの顔が引きつる。
「わ、分かりました……」
剣をしまい、服を着ると静かにベッドへと戻っていった。
メリル、どんな顔をしていたんだろう。
ただ、知ると今後メリルを見る目が変わってしまいそうで、カイは尋ねることをやめた。
「んで、俺に用があったんだろ?」
カイから話題を振ると、ダリルはそうだったと頷いた。
「まずは礼からだな。お陰で助かった。ありがとう」
ベッドに座りながら、ダリルが深々と頭を下げる。
ダリルに感謝されることがあまりない為、カイはどこかくすぐったい気持ちがした。
「俺の方が強かった。ただそれだけさ」
だから、カイは煽るような表情でにんまり笑って誤魔化す。
「馬鹿を言うな。正気だったらお前に負けるもんか」
「負け惜しみですねぇ。負け犬のなんとやらですねぇ!」
ダリルの顔に一瞬青筋が浮かんだが、自制心で何とか怒りは収めてくれたらしい。
「まぁだが、確かに強くなったな」
「……おう」
直球な言葉に、カイはやはりムズムズしてしまい、そっぽを向いた。
そのカイをずっと見つめ、ダリルが言った。
「魔力、戻ったんだってな」
それは、ヴァリウスの死に触れる内容のもの。ダリルは、それに遠回しに触れた。
一瞬、メリルがダリルへ窘めるような視線を送るが、ダリルは真っすぐカイを見つめていた。
空気が変わったような感覚がメリルを襲ったが、それは一瞬に過ぎなかった。
カイは、困ったように笑っていたのだった。
「返すなって言ったんだけどな」
「……カイ、無理するなよ」
語り掛けるように、ダリルが告げる。カイの心境を心配してのことだった。
だが、カイは変わらない。
「無理なんてしてない。むしろ調子良いくらいだ。アイツが、俺があげた以上のものを上乗せして返してくれたからかな」
決して悲しみが消えてしまったわけではない。ただ、それも前へ進む力をくれる。
決意に満ちた表情で、カイは答えた。
「だから、大丈夫だ」
カイの表情に、やがてダリルも笑みを浮かべた。
「そうか、本当に強くなったな」
「誰かさんのしごきが酷すぎるお陰でな」
カイとダリルが笑い合う。その様子を見て、メリルも安心したように笑っていた。
「で、用って今のか?」
「ん、いや、ここから本題だよ」
逆にここまでは本題でもなかったのかと、カイは驚いた。これ以上何を話すことがある。
だが、ダリルにはあった。
何故か、カイに話さなくてはならないと思ったことが。
一拍置いて、ダリルが話し始める。
「私は、魔王ベグリフの魔力を半分譲渡されることで悪魔族となった。奴の魔力による洗脳はとても強力で、必死に抗ってはいたんだが身体は完全に支配されてしまった」
「ああ、ダリルの心がまだ戦っているのは何となく感じていたよ」
だからこそ、それを信じてカイ達は戦ったし、そしてダリルの心は戻って来たのだ。
ダリルが頷く。
「ああ、戦っていた。奴の見せる記憶の濁流とな」
「記憶の、濁流?」
「そうだ、洗脳する為には意志を植え付ける必要がある。つまり、ベグリフの意志をな。それに屈した瞬間、私という人格は完全に消え失せてしまっていただろう」
それが《魔魂の儀式》というものである。魔力の譲渡は、ただ渡すだけではなく同時に魔力に宿る記憶による洗脳を担っているのだ。
「つまり、ダリルは魔王の記憶を見たってこと?」
メリルの問いを彼は肯定する。
「ああ、見た。勿論全てではなく断片的ではあるが……奴が何故あれ程力に固執、いや縋るのか、その発端とも言えるだろう記憶をな」
縋る、その言い方にカイは少しの困惑を覚える。
それじゃまるで、力がなければベグリフが壊れてしまうかのようだ。
何かを支えてもらう為に、ベグリフは力を追い求めているのだろうか。
言いながら、ダリルの表情が険しくなる。ダリル自身、まだ整理がついていないのだ。
「正直、あれが本当に起きた出来事なのか、そもそも現実なのかどうか分からない。ただ言えることは――……」
一度言い淀むと、大きく息を吐いてダリルが告げる。
「間違いなくあれはこの世界で起きた出来事ではない」
「え、ちょ、ダリル、何を言ってるの?」
この世界ではない別の世界。その存在に、メリルは当然理解が追い付かない。
だが、カイはゼノ達の過去話でその存在に触れていた。ベグリフという男を語るためには、その別の世界が欠かせないのだと。
結局、ゼノ達もその世界が何なのかは分からなかった。
でも、ダリルがそれを知ることが出来たのなら。
「教えてくれ、ダリル。アイツに何があったのかを」
カイは知りたいと思った。
フィグルは何故ベグリフを救いたいと思ったのか。
ベグリフは何故フィグルを妃にしたのか。
ベグリフは何故あれ程までに力を追い求めるのか。
ベグリフは何を想ってこんな世界にしたのか。
それが分からなかったからこそ、聖戦は決着がつかなかったのではないだろうか。
理想に手が届かなかったのではないだろうか。
きっと、ダリルの話で全てが繋がる。
繋がって。
漸く、この世界の在り方が決まるのだとカイは思った。
ダリルは頷く。長い話になるのは間違いない。別の世界の話というだけで、どう話せばいいかも分からない。
それでも、カイには話さなくてはならないと思った。
誰でもない、カイへ。
「これは、ある悲劇の物語だ」
そう前置き、ダリルは語り始めた。必死に語彙を総動員させて、別の世界を形容していく。形容しながら、主人公である彼の記憶を紐解いてカイへ伝えていく。
カイは黙って話を聞いていた。途中で遮ることもせず、ダリルの話に耳を傾け続ける。
彼の想いに心を傾け続ける。
そして、もうすぐ夕暮れを迎えようとした時、ダリルが語り終わる。
カイの眼からは一筋の涙が零れ落ちていた。
※※※※※
夕陽から差し込む光が、部屋を彩る。
自室にて、イデアは一人ベッドに寝そべっていた。静かに呼吸を整え、瞳を閉じる。
映るのは瞼の裏。けれど、そこにはフィグルの姿が映し出されていた。
イデアとよく似た彼女が、心の中で困ったように笑う。
「今の状態では、イデアさんが魔力を扱うのは難しいでしょう」
「そう、ですか……」
落胆するように、イデアは息を吐いた。
ディゴス島での一件からというもの、イデアは難なくフィグルと心の中で話し合うことが出来ていた。拒絶していたのはやはりイデアの方で、自分から歩み寄ればこれ程容易いこともないという感覚だ。
意識の受け渡しも容易に可能で、先程もフィグルに用があって訪ねてきたミーアの為に、イデアとフィグルの意識を入れ替えて話すことが出来た。
その際、ミーアはフィグルの魔法について尋ねていったわけだが、イデアもふと魔力が使えたらなとフィグルに相談したのがキッカケだった。
「あくまで魔力が宿っているのは私の魂ですから。いずれは私の魂もイデアさんへと溶け込むはずなので、その時になったら使えるはずですが……そもそもソウルス族のイデアさんにとって魔力とは本来宿らない力。簡単に使えはしないでしょう」
「……つまり、魔力を使えるということは、同時にフィグルさんを失うということなのですね。それは、何というか、寂しいです」
イデアの想いに、フィグルは悲しそうに笑う。
イデアは、魔力さえ使えればカイの負担を減らせると、自分にも何かカイを助けることが出来るのではないかと思ってフィグルに相談した。けれど、カイを助けるためには、今まで支えてくれていたフィグルの存在を犠牲にしなければならないという。それは、イデアにとって悲しいものであった。
心の中でのやり取りだから、余計に飾り気のないストレートな言葉としてフィグルへと届く。今のイデアは本気でそう思っているのだ。
それに嬉しく思う反面、悲しくもあった。どう足掻いても、別れは必然だった。
フィグルの魂は、この世界の法則に反した形で存在している。イデアの魂を借りる形で、本来あり得ない形で存続している状態。ゆえに、いずれ消え去るのは必然。
そう、いずれ来る別れは確定していた。
フィグルはその瞬間を、ある程度予測立てていた。
悪魔族の魔力は、あくまでフィグルの魔力。ただ、フィグルの魔力は現在未完成な状態である。全ての力が揃っているわけではない。
イデアがフィグルの存在を理解し、受け入れ始めた今。
フィグルの魂がイデアへと溶けるのは、フィグルの力が全て集まった時だと彼女は直感していた。
そして、もう残りの力の行方は……。
すると、コンコンと扉がノックされる。フィグルとの対話をやめ、イデアは身体を起こした。
「はい」
「失礼します」
そう言って、入って来たのはエイラだった。エイラは、そのまま部屋へ踏み入ることはなく、その場で伝えてくる。
「イデア様、シロがイデア様をお呼びです」
「シロさんが?」
シロと言えば、ベグリフとの戦闘で傷付いて意識を失っていたはずだが。眼が覚めたのか。
何の用かは分からないけれど、イデアは頷く。
「分かりました」
ベッドから降り、足早に部屋を出ようとする。だが、何故だかエイラは扉の前に立ったままだった。
「……エイラ?」
エイラの様子に、イデアは首を傾げた。
だが、エイラはどこか嬉しそうでいて泣きそうに笑っていた。
「イデア様、どうかこれからの失礼をお許しください」
「えっ」
意味が分からず首を傾げるイデアを。
エイラは屈んで力強く抱きしめた。
突然のことに何が何だか分からない。けれど、伝わってくる温かい心。
何かに浸るように、エイラはギュッとイデアを抱きしめていた。
「エイラ……」
戸惑っていたイデアはやがて、エイラへと両腕を回した。
気付けば、イデアは自ら意識を交代させていた。誰に言われたわけでもなく、彼女に頼まれたわけでもなく、まるでそれが必然とでも言うように。
何を分からない人からすれば、イデアとエイラが何故か抱き合っているようにしか見えない。
けれど。
確かに二人は、再会していた。
どれくらいの時間、そうしていたのか。
やがて、多少の名残惜しさと共にエイラが離れる。
やはり、彼女は泣きそうに見えた。
「すみません、どうしてもこうしたかったのです」
エイラの言葉に、何も言わずにイデアが頷く。その瞳から涙が零れた。
その雫は果たしてどちらの人格のものか。外見では全く判別できない。
けれど、人格など関係はない。イデアも彼女も、想いは同じだった。
カイ様も呼んできます、とエイラがその場を後にする。
どうやらシロが呼んでいるのは、イデアとカイの二人のようだった。
一体何の用件だろう。
疑問に思いながら、イデアはシロがいるはずの部屋を尋ねる。
「シロさん、イデアです」
「ええ、入って」
招かれる形で、イデアは扉を開く。
部屋はどこか涼しい。窓が開いているようで、カーテンがゆらゆらと風に揺られていた。そこから見える風景を見つめるように、シロがベッドにもたれるように座っていた。
シロの額だけではない。あちらこちらに包帯が巻かれていて、顔色から判断してもシロはまだ全快ではない事が分かった。
「大丈夫ですか?」
「いいえ、まさかゼノと同じ部屋じゃないなんて。それだけで全然大丈夫ではないわ」
吐き捨てるように告げる彼女に、イデアは苦笑する。その言い分だけで、多少なりとも回復しているのは分かった。本当はシロもゼノの元へ駆け出したいだろうに、それを抑えてシロは二人に時間を作ってくれていた。
全ては、次に繋げる為に。
そこへ、カイも登場する。エイラはどうやら案内だけでその場を後にしたようだ。
「用って何だよ」
カイの登場に、イデアは少し緊張した。
ヴァリウスが亡くなってから、イデアはあまりカイと会話出来ていない。カイが忙しそうに動いているのもそうだが、何と声を掛けていいか分からなかったからだ。
セインからカイの想いは伝わってくる。けれど、複雑で言語化出来ずにいた。光も闇も合わさって、色が混じっているような感覚。そこに、何色を足せばいいと言うのだろう。
すると、カイの瞳が少し潤っているような、眼の周りが腫れているような気がした。
カイ、泣いてた……?
気付いた途端、居ても立ってもいられなくてイデアがカイへ声を掛けようとする。
だが、その直前にシロが話し始めた。
「揃ったわね。それじゃ話させてもらうわ」
なんてタイミングの悪さだ。イデアは一瞬逡巡したが、カイの事を気にしながらもシロの言葉に耳を傾けた。
シロは目覚めたばかりとは思えない真剣な表情で告げていく。
「今回、私とゼノはベグリフに負けたわ。アイツの魔力と《魔》の力を封じた上でね。それはつまり、あの冥界の剣とやらがそれほど強大な力を有しているという事。加えて、次は魔力も《魔》の力も使ってくる。もしかしたら、まだ中途の《魔》の力も完全復活させてくるかもしれない。カイ、貴方がいくらゼノ以上の魔力を手に入れたところで、簡単にその力の差が埋まることはないわ」
全て事実と言わんばかりに、シロが淡々と語る。確かにカイは魔力を手に入れた、ゼノ以上に濃い、強い魔力を。だが、それだけでは、カイは勝てないとシロは言うのだ。
そこで、と彼女は言う。
「正直、ベグリフの力は未知数だけれど。可能性という話で言えば、貴方達もまた無限大の力を秘めている。だから、これから貴方達にはセインやベルセインの更に上の段階を目指してもらうわ」
「上の、段階……」
何となくカイもイデアも、セインとベルセインの更に先が何を指しているのか分かった。
それは二人共間近で見たことがあることも、そして一度体験したことがあることも理由となっている。
二人を見つめ、シロが言った。
「ベルセイン・リングよ」
カイとイデアが顔を見合わせた。
今、二人の想いが確かめられる。
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