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3『過去の聖戦』

3 第五章第六十一話「変の正体」

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ゼノ

「最近、様子が変よ」

唐突にシロが言ってきた。

ここは俺にあてがわれた部屋なわけだが、唐突に扉が開いたと思ったら開口一番それだ。

面食らってジッとシロを見つめてしまったが、すぐに脱力して苦笑する。

「そうか?」

「だって、たまに小鳥や木に話しかけているでしょう」

「実は会話できるんじゃないかと思って」

「その思考に至る時点で変よ。疲れているんじゃないの?」

そう言ってシロが机の上を覗いてくる。俺の向き合っていた机には戦術指南の文献から乱雑に置かれた手書きの紙が幾つも置かれていた。

それを見てシロが嫌そうな顔をする。

「よくそんな字ばっかりの紙読めるわね。そりゃおかしくなるわよ」

「本に失礼か! 面白いぞ、地下にいた時に知らなかったことばっかり書いてあって」

「今のイカれたゼノが言っても説得力ないのよ。呪いの本かと思うわ」

呪いの本て……。

見るのも無理と言いたげにシロがベッドの上に移動する。

「それで、最近やたらと色んな人に尋ねている理由は何なの?」

「あー、それな」

流石にあちこちで聞きまわっているから、噂にもなるか。あまり親しい間柄の奴らの前では避けているんだが……。こういう風に尋ねられるし。

「いや、ただ単に話し相手が欲しいだけだぞ」

「嘘つき」

……。

容易く一蹴される。

「聞いたわよ、聞いてる内容。この世界や種族についてなんでしょ。……もしかして、ゼノ」

シロの奴、こういう勘だけは良いからな。

ごろんとベッドに寝そべりながら淡々とシロが告げる。

「……迷ってるの? 自分達が掲げていた理想が正しいのか間違いなのか。……いえ、違うわね。そう、覚悟なのね。色んな理想や考え方を全て受け止めた上で、自分の理想を貫く覚悟。責任を背負い続ける覚悟。そうなんでしょ?」

あーあ。ほら、これだからシロは。

「分かるわよ、ゼノだってセインから私の感情が伝わったんでしょ。今は手元にないからはっきりは分からないけど、大体そんなことを考えてるんでしょ」

「……はぁ」

深々と溜め息をつく。

全くもってその通りだった。

コーネル事変の一件でケレアを失った。殺意を知った。そして、グリゼンドを殺した。

理想の為に誰かを殺す覚悟をした。誰かの死を背負う覚悟をした。背負ってでも貫き通す覚悟をした。

変えようとしている世界には大勢の生命が芽生えていて、その数だけ理想、思考が存在している。

自分の意志を貫くのは簡単だ。でも、同じ世界に生きている以上、どうやったって周りを巻き込む。だから、巻き込む覚悟をしなければならない。

巻き込んだ結果、ケレアは死んだんだ。

もう間違いたくない。

色んな思いを知って、その上で世界を変えたい。

だから、色んな立場、身分、種族を相手に様々なことを尋ねた。やっぱり全然考え方が違う人もいて、平和なら何でもいいという人から、悪魔族は殲滅しろという考え方の天使族。天使族すらも消滅させろと言う人族だっていた。

たくさんの考えがあって、心があったんだ。

気付いて良かった。

いろんな考えを踏まえて、俺は理想を更に形作っていく。

観念して口を開く。

「何だよ、俺マスターか?」

「何よ、今更気付いたの?」

いや、気付いていました。

苦笑しながら寝そべる彼女へ向き合う。

「その通り、迷ってはない。覚悟も出来た。理想も明確。ただそこへ進む道筋は幾つあってもいいかなって思って。だから色んな話を聞いてたんだ」

三種族共生への辿り着き方はきっと沢山ある。その中で色んな理想を叶えられたらいいと思う。

勿論叶えることの出来ないものもあるだろう。だから、背負うんだ。忘れずに必ず背負う。

理想の途中で失われた理想も命も全部。

俺は、背負った分絶対に叶えるんだ。

そういう覚悟だ。

すると、シロがぽんぽんとベッドを叩いた。

どうやらこっちに来いと言っているらしい。

戦争も近づいていて、正直時間がない。ある程度作戦は出来たが大筋ばかりで細かいところは詰め切れていない。あちこちに出向いては例の質問をしている時間もあるから余計にだ。

渋っていると、更に強くシロがベッドを叩いた。

譲る気はないらしい。

「はいはい……」

諦めて椅子から立ち上がり、シロの横に腰かける。

すると驚いたことに、シロは体を起こすと手を伸ばして俺の頭を撫でてきた。

「……何だよ」

軽く身じろいでも、シロがその手を離すことはない。

優しく、ゆっくりと頭を撫でてくる。

「あまり背負い込み過ぎないこと。ゼノだけじゃないこと、忘れてるんじゃないでしょうね」

「……忘れてねえよ。この理想は俺だけの理想じゃないから」

ケレアと喧嘩した時だって、散々セラやエイラに言われたことだ。

忘れていない。

忘れていないんだよ。だから、

「大丈夫だ。俺は――」

そう言っても、シロは離さない。

「分かるって言ってるでしょ。伝わってくるのよ、ゼノの気持ち。無理してるでしょ」

ジッとシロが見つめてくる。真剣な表情で、真っすぐに俺の眼を見つめてくる。

……。

「別に無理してるつもりはないんだが。いや、割と本当に」

一度だって苦しいとか、限界だとか思ったことはない。

望んでいる事、期待している事だから。

「うーん、今はセインと離れているから具体的な所までは言い当てられないかしら。でも、そうね、疲れているのは確かでしょ」

そう言われて、今度はベッドに押し倒される。

見上げると、至近距離にシロの顔があった。

「たまには休まないと。沢山ある選択肢も、疲れているせいで選べなくなるわよ」

「……そうかな」

「そうよ」

そして、抱きつくようにシロが隣に寝そべって来た。

密着されて、淡いながらも柔らかな胸が押し付けられる。

「……この格好、セラに見られたら殺されるな」

「ゼノが?」

「どっちもだよ」

セラにはまだ告白の答えを返せていない。

俺はセラの事が好きだから。だから、今すぐにでも返事をしたい。

でも、今してもどちらも幸せにならない気がする。

待たせて悪いな、セラ。本当はケレアと出会ったら言うつもりだったけれど。

目前に迫る戦争を終えたら。

いや、止めたら。

必ず答えるよ。幸せに浸る時間を手に入れてから、必ず。

はぁ、とシロが溜め息をつく。何やら不満なご様子だ。

「ていうか、この状況でセラの名前を出す? 忘れてないわよね、『妾でも何でも、ずっと傍にいてやる』って言葉」

「……覚えてるけど」

「じゃあ、早速妾にしてもらおうかしら」

小悪魔のような微笑みをシロが浮かべる。

こいつ……。

俺が困ることを分かっていて、そう言って来ている。

別にあの時の言葉が嘘だったわけじゃない。本心だった。今もそう思っている。

けれど、簡単に妾に出来るかと言われるとそうじゃないだろ。

それが分かっていてシロは笑っているんだ。

困り顔が表に出ていたのだろう。満足げにシロは笑った。

「あー笑った、ごめんごめん嘘よ。妾になるにしてもセラの許可が必要だし。ていうか、正室に認められていない側室とか嫌だし」

そう言いながら、シロは温かな毛布の上から下へと移動する。

そして毛布をめくり、改めてベッドを叩いて俺を中へと誘う。

「今はただ休みましょ。一緒に傍にいてあげるから」

優しくシロが微笑んでくる。

不思議と、今は断る気にならなかった。

誘われるがままに毛布の中に入る。

暖かい。すぐに思考に靄がかかってきた。思ったより身体が疲れていたみたいだ。

少しずつ微睡んできた俺の頭を、またシロが優しく撫でてきた。

「俺は、お前の、子供か……」

「それも悪くないわね」

撫でられる度に、どんどん眠気が襲ってくる。

シロが隣にいる安心感なのだろうか。

シロが甘い声で囁く。

「どんな形でも、私はあなたのパートナーよ。ずっと心は繋がっているから。ずっと傍にいるから。だから、おやすみ」

ずっと傍にいてやるって言ったのは俺なんだけどな……。

ただ、傍にいてくれる事実だけでこんなにも心が安らぐとは思わなかった。

ああ、俺も傍にいるよ。

「おや、すみ……」

そして、瞬く間に俺は眠りの世界へと誘われていったのだった。

 

※※※



ぐっすり眠ったのは久しぶりだったから、随分身体が軽い。

寝るのって本当に大切なんだな。当たり前の事を今思い知った気分だ。

最近は机仕事が多くて体も鈍ってたしな。今のうちに最終調整と行こうか。

と思って寝ぼけているシロにセインを求めたら、

「んぅー……フィグ、に、渡し……」

そう言われた。どうやら今セインはフィグルが持っているらしい。そういえば、昨日も手元にないとか言っていたな。

……フィグルもセインを使って何やってるんだ?

コーネル島から帰ってきてというもの、研究で籠りっきりだからな。会うのも久しぶりだ。

フィグルにあてがわれた部屋の前に到着する。

すると、

「キャーーーーーーー!?」

早朝にも関わらず大きな悲鳴が聞こえてきた。

この声音、間違いなく緊急事態だ。

慌ててノックもせずに部屋の扉を開けると、

 

フィグルが大の字になって壁にくっついていた。

 

そう形容する他なかった。

草木の模様が描かれた壁に、フィグルは宙から足を離して繋がっていた。

「何がどうなってる……?」

どうやらジタバタも出来ず、強い力で壁と繋がっているようだ。

フィグルは俺に気付くと、叫んだ。

「ゼノ、丁度良いところに! 思い切り私を引っ張ってください! まだ完全な結合には至っていません! 外部からの力でどうにか引き剥がせるはずです! お願い、急いで!」

シュールな絵面の中でフィグルが焦っているので、どうにも心と身体が乗りきらない。

どこか気の抜ける展開のような気もするが、とにかく言われた通りにするか。

動けないフィグルの両肩に手を置いて、だんだんと力を入れて引っ張ってみる。

「っ、意外と、外れないな……!」

強く引っ張ってみても、全然外れない。人力では無理か?

しかし、これ以上力を加えるとフィグルを傷つけてしまうかもしれない。

それを察したのか、

「多少荒くて構いません!」

フィグルが叫ぶ。

致し方ない。どうやら本当に時間はかけられないようだ。

それなら、

「《風陣》」

突風を展開し、後ろへと風の道筋を作る。

「行くぞ!」

引っ張ると同時に、追い風で更に力を上げた。

すると、見事にフィグルが壁から離れた。

ただ、どうやら今度は勢いが強すぎたらしい。後ろに引っ張られた勢いで背中から床に倒れこんでしまった。

「いってー……」

朝から背中を強打とは。いい日になりそうだな。

立ち上がろうとすると、フィグルが上に乗っていることに気付いた。というより、先程の引き剥がす際の流れで俺はフィグルをぎゅっと抱きしめてしまっていたらしい。

ほんの少しだけ恥ずかしそうにフィグルは頬を染めて俯いていた。

昨日といい今日といい、セラに見つかったらミンチは避けられないな。

「勢い余った。悪い」

「い、いえ……ありがとうございました」

早々とフィグルが上から避ける。フィグルは考えないようにしたいのか、俺に背を向けて先程拘束されていた壁を見つめた。

「思ったよりも結合力が強かったですね。気を付けていたつもりですが、もっと細心の注意を払わないと。結合力=拘束力という結果が改めて強く得られただけでも良しとしますか。まだ分からない事だらけですが、結合力単体の抽出には成功していますし、先は見えてきましたね」

よく部屋を見渡してみれば、何だか物が散らかっている。先程の壁騒動の際に荒れたのか、それとも元々なのか。

そもそもとして、

「結局フィグルは何の研究をしているんだ?」

シロのセインだって、何に使うつもりなのか。

尋ねると、フィグルは苦笑していた。

「あれ、ゼノに言ってませんでしたっけ?」

「お互い忙しかったからな。会うのも久しぶりだ」

納得したようにフィグルが頷く。

そして、簡潔にこう述べた。

「魔王に勝つ為ですよ」



※※※

 

全てをフィグルは語った。何でもエイラに語っていないこともあるようだ。

「つまり、ベグリフに勝つ為には私の存在が必要不可欠ということです」

先程までずっと真面目な話をしていたフィグルは、最後に冗談を言うように笑った。

「ですから、間違っても彼に一人で特攻しようなんて思わないで下さいね」

フィグルもシロみたいに。

「皆やけに俺の事を子ども扱いするよな」

「意図があるのは分かっているのですが、ゼノの行動はあまりに突飛すぎるんですよ」

突飛すぎて子供に見えるってか。……あまりに不可解な行動をしているつもりはないんだが。むしろ合理的だろっ……て考え方が突飛なのか。

「精々気を付けますよー」

そう言って腰を上げる。

結果からしてまだシロのセインは必要らしい。今日はセイン無しで、剣の素振りでもしようかな。

部屋を出て行こうかと思ったその時、ふとある事が脳裏をよぎった。無視することの出来ない感情。

研究へ戻ろうとしていたフィグルへ、声をかける。

「なぁ、フィグルってベグリフの妻なんだろ」

「そう、ですけど?」

何を聞かれるのかと、フィグルが首を傾げる。

なんて言ったものか。

少し逡巡してから、

「俺はきっとベグリフを倒すよ。いや、もしかしたら殺すかもしれない」

「……」

「フィグルは、その覚悟があるのか?」

ベグリフの力を封じる方法をフィグルは探している。だから、倒す覚悟はあるのかもしれない。奴に勝つ意志はあるのだろう。

ただ、殺す覚悟はどうなのか。なりそめは知らないけれど、妻として生きているのならば特別な感情があってもおかしくない。

フィグルは俺の眼を見つめ、その後ゆっくりと俯いた。

「正直に言うと、分かりません。私は十年彼に寄り添って生きてきました。彼は素っ気なかったけれど、一方で私の事も大切にしてくれていた気がします。私がケレアさん達を匿っていた時も、気付いていて彼は見逃してくれましたから」

ベグリフが悪魔族全体に放っておけと指示を出したのは、奴の優しさだったのか……。

「悪魔族にとってはたった十年ですが、私にとっては初めて誰かと番になった大切な十年だったのです。不思議な感覚でした。きっと、彼は『私』に興味があるわけではありません。でも、何かを取り戻すように私に優しくしてくれました」

そのようなベグリフを見たことがないから、正直驚きだ。てっきり奴はただの戦闘狂なんだとばかり。

「素敵な、十年でした」

思い出すようにフィグルが微笑む。

そうか、やっぱり……。

相手がどれ程理想の敵だとしても、フィグルにとってベグリフは……。

「ただ、それでも彼とは繋がれませんでした。絶対的な力を有しているあまり、彼は力に飲み込まれているんです。或いは最初から力に魅入られ、力を欲したのかもしれません。彼は力にしか目を向けないのです。だから、繋がれない」

フィグルの話を聞いていると、ベグリフがフィグルを大切にする理由は分からない。ただ、力とは別の理由でフィグルは大切にされていた。

ベグリフにも、生き物らしい感情があるんだな。

「だからこそ、私は彼の力を封じたいのです。封じることで私は彼と繋がりたい。心を通じ合わせたい。……そういう意味では、私はきっと彼を殺したくないのだと思います」

困ったようにフィグルが笑う。

「尤も、今となっては彼も私を平然と殺すでしょう。だから、私も殺し殺される覚悟をしなければなりませんね」

「……フィグルの気持ちは分かった」

分かった上で、ベグリフを殺さないとは言えない。きっと、理想の最大の障壁が奴だから。かなりの確率で殺し合いになるだろう。

でも、

「保証は出来ないけれど、善処してみるよ」

「その為に傷付くことのないようにお願いしますね? ゼノはもう私にとっても大切な存在なんですから。二つを比べることは出来ませんが、欠けてほしくない気持ちはどちらも同じです」

「ああ、ありがとな」

フィグルが微笑む。

全く、素敵な嫁さんだな。

そうして、俺は部屋を出た。

今回のフィグルとの話は得るものが多かった。

何故フィグルがベグリフとの戦いに不可欠なのかもわかった。

そして、ベグリフの特異な力のことも。

間違いなく最終決戦は近づいている。

それまでに、あと俺が成すべき事は……。

 

※※※

 

或る日、俺は人族に与えられた都市郊外を訪れていた。

そこは都市から少し離れていて、森が生い茂っている。

木造の家屋は森の中にあった。

わざわざここに家を作ったのには訳がある。

森を抜けて家を確認すると、家の裏から少女が飛び出してきた。

その少女と目が合う。

「あ、ゼノ!」

黒髪を元気よく揺らして少女が胸に飛び込んでくる。

「久しぶりだな、メア」

メアは嬉しさを前面に出して笑顔を見せる。彼女の屈託のない笑顔は、それだけで疲れを吹っ飛ばしてくれる気がした。

「何しに来たの!? 遊ぼう!!」

可愛くメアが誘ってくれるが、生憎今日は別の用件だった。ただ、こうも可愛いと断りづらい。

それに気づいたのか、メアが救世主の手によって引き剥がされる。

「ゼノはね、今日はお仕事で来たのよ?」

アキが優しくメアを離してくれた。アキがアイコンタクトで目的の相手は家の裏にいることを伝えてくれた。

本当に、阿吽の呼吸というやつで助かる。ここに来たのも突発的なのに。

「うー、じゃあお母さんと遊ぶ!」

「お母さんも忙しいの。だから、私が遊んであげる!」

アキがメアを掲げながら走り回っていく。嬉しそうにメアは声を上げていた。

相変わらず仲が良さそうで。

そう思いながら、家の裏へ回ろうとすると目的の人物が姿を見せた。

一瞬俺の姿に立ち止まるが、すぐにまた歩みを進める。

俺は挨拶がてら声をかけた。

「お母さんって呼ばれてるんだな」

出会いが出会いだからか、ため口が抜けない。

しかし相手は気にする様子もなく、首をすくめて見せた。

「何も真実を言っていないのに、メアが勝手にそう呼ぶのよ」

「母性が溢れてるんじゃないか?」

「うるさいわね。しょうがないでしょう」

彼女はそのまま方向を変え、家の中へと足を向ける。

「それで。何の用かしら」

「あんたの意見を聞きたい。元女王の意見を」

そして、アイが振り向いた。天使族の元女王アイ・ハート。

彼女はジッと俺を見つめたと思ったら、何故か鼻で笑って家の中へと消えていった。

「今日はメアと遊ぶ日なの。さっさと済ましてちょうだい」

相変わらずの態度の中に、メアへの愛情を感じて。

どこか微笑ましい後ろ姿に、

「分かったよ」

笑みを浮かべながら家の中へと入っていった。


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