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2『天使と悪魔』
2 第二章第十七話「無力」
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カイがシーナと戦闘を行っている頃、王都アイレンゾードでのダリル達の戦闘は熾烈を極めていた。
ヴァリウスの登場とダリルのベルセインによって、ダリル達はようやくバルサを押し始めていたのだった。
ダリル:
「《終の焔、原初の火炎!》」
剣と盾を合体させ、そこから純度の高い高温の炎をレーザーの剣のように放出させる。
ダリルはその炎でバルサの放っていた全てを吸い込む黒い球体を真っ二つに斬り裂いた。本来ならば吸い込まれるはずだが、その存在ごと燃やし尽くしてしまったのである。
と、その瞬間、ダリルの背後にバルサが出現した。そのまま硬質化した腕を突き出そうとする。
バルサ:
「ブラックホールを壊せたからって調子乗るんじゃないよ!」
ヴァリウス:
「君の方こそ調子に乗ってるんじゃないかい! 《雷神の鉄槌!》」
だが、その腕が突き出される前に、ヴァリウスから凄まじいエネルギー量の雷槌がバルサへ叩きつけられた。
バルサ:
「ちっ!」
バルサは左半身を硬質化させてそれをどうにか防ぐ。周囲に眩しいほどの雷が放電していく。
その雷槌がバルサを吹き飛ばすその瞬間であった。
ダリル:
「まだだ!」
ダリルが回転しながら雷槌とは逆方向から炎のレーザーを叩きつけたのである。
バルサ:
「っ!」
右手を硬質化させてどうにかそれを受け止めたバルサだったが、硬質化しているにも関わらず激痛が右手を襲っていた。硬質化された肌を炎が焦がしているのである。
バルサ:
「ぐっ、くそ……!」
左からは雷槌、右からは炎のレーザーに押され、バルサは今にも炎と雷に押し潰されそうであった。
メリル:
「いける!」
光り輝くシールドの中でミーアとメリルがそう思った瞬間であった。
バルサ:
「っ、リベリオン!」
その怒鳴るような声と共に、突如バルサから黒い衝撃波が放たれたのである。
ダリル:
「っ、なんだっ!?」
その衝撃波で炎と雷はいとも容易く消え去り、ダリルも軽く吹き飛ばされる。それをヴァリウスが背後に転移して受け止めてあげた。
ヴァリウス:
「これはやばいねー」
汗を掻き苦笑しながらヴァリウスがそう告げる。
その衝撃波の中心にいるであろうバルサの魔力量が尋常じゃなく跳ね上がっていたのだ。
ヴァリウス:
「いやー、これはなかなかな魔力で。カイの魔力量に近いね結構」
ダリル:
「逆に言えばカイはそれほど持っていたのか……」
その事実に驚くダリルへヴァリウスがにっこり笑いかける。
ヴァリウス:
「ううん、もっとあるよ。彼女がようやく僕と同等ってところかな。今僕が使えているカイの魔力は三分の二程度だからね」
ダリル:
「なっ」
驚きのあまり、ダリルの口が塞がらない。
ヴァリウスは古代魔法やらかなりの大技を何度も使用することが出来ていた。およそヴァリウスの魔力量は常人の十倍くらいなのであるが、つまりカイの本来の魔力量は十五倍くらいだということである。
驚いているダリルの肩を叩いてヴァリウスが前を指差す。
ヴァリウス:
「ほらほら、驚いている暇はないよ。来るよ敵さんが」
その言葉通り、黒い衝撃波は止み、その中から姿の変わったバルサが姿を現した。
全身がほんの少し緑がかった黒色に硬質化しており光沢がところどころに見える。
そして双眸は黒い下地に赤く細長い瞳孔になっていた。
バルサが怒りを露わにしながら叫ぶ。
バルサ:
「あんた達、私を怒らせたな! 殺してやる!」
そのプレッシャーに、無意識の内にダリルとヴァリウスは後ずさってしまっていた。
ダリル:
「これは、ヤバいな……」
ヴァリウス:
「うん、本当にヤバいみたい」
メリル:
「ダリル! ヴァリウス!」
ミーアとメリルが心配して叫ぶが、ダリル達に反応する余裕はなかった。
少しでも隙を見せれば、死が訪れるだろう。
だが、隙を見せなくてもそれは同様であった。
バルサ:
「あんた達は八つ裂きにしてやる!」
その言葉と共にバルサが動き出そうとする。
その時であった。
???:
「はい、ストップだよ」
突如何者かの声が辺りに響いたのだ。そしてその声は、激昂しているはずのバルサを確かに止めていた。
???:
「こら、バルサ。殺してはいけないだろう」
声の方へ苛立ちながらバルサが視線を向ける。
バルサ:
「……ウル。何でここにいるのさ」
バルサの視界の先、連なる建物の内の一つの屋根に、その少年は座っていた。歳は人間でいう十四、五くらいの見た目で童顔、少し青がかった髪の上に青いシルクハットを被っている。
その少年ウルは、見た目に反して足を組み、蔑むような瞳でバルサを見つめていた。
ウル:
「君のことだからね、頭に血が上って命令無視するんじゃないかって思ってね。でも飛んできて正解だったよ。バルサ、彼らはあくまで生け捕りだ。そう王から言われただろう」
バルサ:
「……ちっ、面倒な奴が来たね」
ウルのお陰かバルサの殺気が少し和らぐ。
だが、ダリルとヴァリウスはより状況が悪化していることに気が付いた。その視線はウルを捉えている。
ダリル:
「あの少年、一体何者だ……!?」
ヴァリウス:
「さあね、分からない。でも、彼から放たれているプレッシャーといい、あの四魔将であるバルサって敵と対等に話していることから考えて……四魔将、かな?」
仮にその予想が当たっているとして、それがつまり何を意味するかダリル達は理解していた。
バルサにウル、四魔将二人をダリル達は相手にしなくてはいけないのである。
バルサ一人でもギリギリの闘いを繰り広げていたダリル達に、勝ち目は無かった。
バルサ:
「ねぇウル、分かったよ殺さない。だから、あんたはどっか行ってくれないかい? 気が散ってしょうがないんだ」
ウル:
「ううん、僕は君を見張っているよ。間違って殺さないようにね。それとも、手伝ってあげるかい?」
バルサ:
「それは、私一人じゃ無理だって言いたいのかい……!?」
バルサの怒りの矛先がウルへと移り変わる。
その瞬間を見逃さず、ダリルはヴァリウスへと小さく呟いた。
ダリル:
「……ヴァリウス、おまえはメリルとミーアを連れて逃げろ」
ヴァリウス:
「っ!」
その提案にヴァリウスがダリルを見つめる。その提案の意味が分かったからだ。
ヴァリウス:
「……君はここに残るって言うのかい」
ダリル:
「ああ」
仮にウルが四魔将であったとしてもなかったとしても、ダリルだけが残ってバルサとウルの二人に勝てるわけがない。間違いなく敗北するだろう。
それを分かっていてダリルはそう提案しているのだ。
ダリルが強い意志を持ってヴァリウスを見る。ダリルの眼から読み取れる覚悟に、ヴァリウスはため息をつきながら目を閉じた。
ヴァリウス:
「……死ぬ気は毛頭ないんよね」
ダリル:
「当たり前だ。どうやら奴らは俺達を殺せない事情があるらしい。仮に掴まってもすぐには殺されないはずだ。だから、おまえ達はこの場から脱出してカイとイデア様を全力で捜すんだ。エイラの救出には二人の力が必要なはずだ」
ヴァリウス:
「……君の救出にもね」
ヴァリウスの言葉にダリルが苦笑する。
ダリル:
「情けない話だがそういうことだ。任せたぞ」
そう言ってダリルが前へ視線を戻す。その背中へヴァリウスが告げた。
ヴァリウス:
「必ず、助けに来るよ」
ダリル:
「ああ、待ってるからな」
その瞬間、ミーア達のいるシールドの中にヴァリウスの黒い穴が生まれた。
穴を見て、ミーア達が視線で尋ねてくる。
ヴァリウスは頷いて入るよう誘導した。その誘導に合わせてミーア達が穴の中に入っていく。
後はヴァリウスが転移するだけというところで、ウルがヴァリウス達の動きに気付いた。
ウル:
「おっと、どうやら人族が動き出しているようだよ、バルサ。早く戦ったら?」
バルサ:
「っ、あんたが邪魔したんでしょうが!」
ヴァリウス:
「っ!」
早く転移しようとヴァリウスが背後へ跳躍する。
だが、その背後にバルサが突如現れヴァリウスへと左腕を振り下ろした。
バルサ:
「どこ行こうってのさ!」
ヴァリウス:
「くそっ!」
ヴァリウスがシールドを展開しようと手を伸ばす。しかし、そのバルサの左腕はダリルの盾によって防がれた。
防いだと言っても、ほんの一瞬持ちこたえただけである。だが、ほんの一瞬が重要であった。
ダリルが防ぐと同時にヴァリウスを横に蹴り飛ばす。そしてダリルはヴァリウスの方を見ることなく頷いた。
ヴァリウス:
「(ありがとう、ダリル……!)」
ヴァリウスは蹴り飛ばされると同時にどうにか大地を蹴って跳躍し、次の瞬間転移して姿を消した。
と同時にダリルが堪え切れずに盾ごと大きく吹き飛ばされる。ダリルは背後の建物を破壊しながらかなり吹き飛んでいった。
それを見ていたウルが残念がることなく呟く。
ウル:
「あーあ、逃げられたね」
バルサ:
「あんたが阻止しなよ! 出来たでしょうが!」
ウル:
「まぁね、でも君が邪魔するなって言ったんだ。これは君の落ち度だよ」
バルサ:
「……苛つくガキだよホント!」
ウル:
「見た目で言えばね、でも歳で言えば僕の方が上だよ」
バルサ:
「分かってるさ!」
ウルとのやりとりでバルサの苛立ちがかなり募っていく。
やがて倒壊した瓦礫の中からダリルがボロボロの状態で姿を現した。大きな盾をついてどうにか立ち上がっている。
そのダリルを見てバルサはニヤリと笑みを浮かべた。
バルサ:
「まぁいい、とりあえずはあいつで憂さ晴らしさ!」
冷笑を浮かべながらバルサがダリルへと飛び出していく。
ダリルはこの絶望的な状況の中でも、決して諦めることなく一歩前へと踏み出したのだった。
………………………………………………………………………………
メリル:
「『どうしてダリルがいないのよ!』」
ヴァリウス:
「……そうするしか方法はなかったんだ」
黒い穴の中でメリルは怒りを露わにしていた。ヴァリウスは魔界の見える範囲を点々と転移しながら黒い穴の中から伝わってくる声を聞いていた。カイとイデアが何処にいるか分からないため、とりあえず見える範囲に転移してがむしゃらに見つけるしかないのである。
メリル:
「『そんなことない! あたし達みたいにダリルをこの中に入れることだって出来たはずよ!』」
ヴァリウス:
「君達の場合はシールドが張られていたことと相手の注意が別にあったから上手く行ったんだ。それを証拠に僕の転移は本当にギリギリだったよ、ダリルが手伝ってくれなきゃね。その状況下でダリルを穴に入れさせるのは不可能だ。それに、仮に入れたとしても今度は僕が逃げられない」
メリル:
「『でも……!』」
声を荒げるメリルを、ミーアがなだめる。
ミーア:
「『メリル、気持ちは分かるけど落ち着いてよ。それに、辛いのはメリルだけじゃないよ。実行したヴァリウスだって辛いんだから。仲間を置いていく判断が簡単に出来たと思う?』」
その言葉にメリルが下を向く。そしてぼそりと呟いた。
メリル:
「『……カイなら見捨てない』」
その言葉をヴァリウスは素直に受け止めていた。
ヴァリウス:
「そうだね、カイならきっと見捨てない。やっぱり、僕はカイとどこか違うんだよ。カイの魔力にだいぶ感化されたと言ったって僕は僕なんだもの。でもね、それでもやっぱりカイには感化されちゃってるから。だから僕はダリルを見捨てたつもりはないよ。絶対助けに戻ってくる。でも、それにはカイの力が必要なんだ。だから僕達はこれからカイを探して、そしてダリルとエイラを助けに行くんだ」
そこまで言ってから自嘲気味にヴァリウスが笑う。
ヴァリウス:
「カイに頼ってばっかというか、自分の無力さに呆れちゃうけどね」
メリル:
「『……』」
メリルはやがて消沈したように口を閉ざし、へなへなと座り込んでしまった。
その後、数分の沈黙が続いていき、ヴァリウスが必死にカイ達を捜索するが、簡単には見当たらない。
と、その時だった。
メリル:
「『……無力なのはあたしよ』」
そうメリルがぽつりとつぶやいたのである。
メリル:
「『あの場所であたしは何も出来なかった。ミーアに守られて、ただダリル達の戦っているのを見ているだけ。まるでお荷物だよね。うん、やっぱりあたしはお荷物なんだわ。少しは戦えると自分では思ってた。でも、もうあたしレベルの雑魚は必要ないよね……。あたし、ここに来た意味あったのかしら……』」
滴り落ちそうになる涙を堪えて、メリルが声を震わせる。
ヴァリウスは、メリルが消えて無くなってしまいそうな感覚に陥ったが、どう声をかけていいものか分からなかった。
と、その時ミーアが口を開く。
ミーア:
「『……そうだね、メリルは無力かもしれない』」
メリル:
「『っ!』」
そのミーアの言葉にメリルの眼からは我慢していた涙が零れてしまった。
ヴァリウス:
「(な、何で追い打ちかけてるのさ、ミーアちゃん……!)」
戸惑うヴァリウスだったが、ミーアの言葉はまだ続いていた。
ミーア:
「『じゃあさ、無力さを痛感したなら、立ち止まっている場合じゃないでしょ?』」
メリル:
「『え……?』」
その言葉にメリルが顔を上げる。
ミーアは真っ直ぐにその濡れた瞳を見つめていた。絶望の光を溜めた瞳を。
ミーア:
「『これはお兄ちゃんの話なんだけどね、お兄ちゃんてほら、どこぞのどら猫に魔力奪われちゃったから、魔力ない状態でこの十七年、かな? ずっと生きてきたんだよ』」
ヴァリウス:
「(どこぞのどら猫ですみません……)」
何故か「どこぞのどら猫」という部分が強く聞こえて、ヴァリウスが心の中で謝る。
ミーア:
「『わたし達兄妹の中で兄二人と妹のわたしが凄い魔力を持っているのに、お兄ちゃんだけは魔力を持っていない。それだけじゃない、王族とか関係なく普通の人なら当たり前に持ってるはずの魔力を持っていないの。あ、フィールスの人達も魔力は持ってないか。でもセインがあるでしょ。お兄ちゃんにはセインだってないんだもの。とにかく、誰もが持ってる魔力を持っていないことがどういうことか分かる? 誰にでも当たり前に出来ることがお兄ちゃんには出来ないの。お兄ちゃんは誰よりも無力だったんだから』」
メリル:
「『……』」
ヴァリウスもメリルも黙ってミーアの話を聞いていた。
ミーア:
「『でもね、お兄ちゃんは魔力を持ってないなら剣術だ!ってダリルに凄く指導してもらったんだよ。魔力が使えないなら人一倍剣術を頑張ればいいって。お兄ちゃんは無力なまま終わるつもりなんて毛頭ないんだから。お兄ちゃんは無力な自分を受け入れた上で進もうと前を向いたんだよ。じゃあ、メリルは自分が無力だと分かったら下を向いて立ち止まるの?』」
メリル:
「『あたしは……』」
ミーア:
「『それって凄くもったいないことだと思うな。わたしね、お兄ちゃんを見てて思ったんだけど、無力ってそれだけ伸びしろがあるってことだと思うんだ。無力な分だけ前に進めるんだよ。つまりね、今無力だって自覚したメリルの目の前には道が拓けたの! せっかく道が拓けたのにメリルは進まないの?』」
ミーアが首を傾げて、そう尋ねる。
尋ねられたメリルは自分の両手を見ながら下を向いてしまった。
ミーアは言いたいことは全部言ってしまったため、黙ってただ返事を待つ。
その沈黙がヴァリウスには耐えがたい時間であった。
すると、ミーアの体感で一分ぐらい経った頃、メリルは瞳の涙を拭った。そして笑って告げる。
メリル:
「『まったく、ミーアってなんだかんだブラコンよね』」
ミーア:
「『えっ、なっ、そ、そんなことないよ!』」
顔を真っ赤にしてそう返すミーア。その様子に笑いながらメリルは立ち上がった。先程も濡れていた瞳は、先程と違って希望の光が煌めいていた。
メリル:
「『カイに出来てあたしに出来ないわけないじゃない。上等よ、前に進んでやろうじゃない!』」
ミーア:
「『っ、そうこなくっちゃ!』」
そう言ってミーアがメリルに抱きつく。メリルもまたミーアを抱きしめ返した。
メリル:
「『ありがとね、ミーア』」
ミーア:
「『ううん! むしろ生意気な事言ってごめんね!』」
メリル:
「『そんな! 生意気なんかじゃないわ! 本当にありがとうって思ってるのよ。あなたのおかげであたしは前を向けたんだもの!』」
嬉しそうに声を弾ませる二人の声を、ヴァリウスは微笑みながら聞いていた。
ヴァリウス:
「(カイ、やっぱり君はいろんな人に影響を与えているんだね……。流石僕が感化された男ってところかな)」
そこまで考えて、ヴァリウスは先程のミーアの話を考えてみた。
ヴァリウス:
「(……カイは魔力が無くても決して無力なんかじゃないよ。彼はきっと生まれた瞬間にあの絶大な魔力以上に驚くべき力を持っていた……。カイ、君はどんな人でも変えてしまうような、人を惹きつけるような、そんな不思議な力を宿していたと僕は思うな)」
ヴァリウスがそう考えて笑う。
ヴァリウス:
「(それにしても、ミーアちゃんはやっぱりカイの妹だね。なんだかんだ性格がそっくりだよ)」
そうしてヴァリウスは、カイを捜すべく何度も転移を繰り返すのだった。
ヴァリウスの登場とダリルのベルセインによって、ダリル達はようやくバルサを押し始めていたのだった。
ダリル:
「《終の焔、原初の火炎!》」
剣と盾を合体させ、そこから純度の高い高温の炎をレーザーの剣のように放出させる。
ダリルはその炎でバルサの放っていた全てを吸い込む黒い球体を真っ二つに斬り裂いた。本来ならば吸い込まれるはずだが、その存在ごと燃やし尽くしてしまったのである。
と、その瞬間、ダリルの背後にバルサが出現した。そのまま硬質化した腕を突き出そうとする。
バルサ:
「ブラックホールを壊せたからって調子乗るんじゃないよ!」
ヴァリウス:
「君の方こそ調子に乗ってるんじゃないかい! 《雷神の鉄槌!》」
だが、その腕が突き出される前に、ヴァリウスから凄まじいエネルギー量の雷槌がバルサへ叩きつけられた。
バルサ:
「ちっ!」
バルサは左半身を硬質化させてそれをどうにか防ぐ。周囲に眩しいほどの雷が放電していく。
その雷槌がバルサを吹き飛ばすその瞬間であった。
ダリル:
「まだだ!」
ダリルが回転しながら雷槌とは逆方向から炎のレーザーを叩きつけたのである。
バルサ:
「っ!」
右手を硬質化させてどうにかそれを受け止めたバルサだったが、硬質化しているにも関わらず激痛が右手を襲っていた。硬質化された肌を炎が焦がしているのである。
バルサ:
「ぐっ、くそ……!」
左からは雷槌、右からは炎のレーザーに押され、バルサは今にも炎と雷に押し潰されそうであった。
メリル:
「いける!」
光り輝くシールドの中でミーアとメリルがそう思った瞬間であった。
バルサ:
「っ、リベリオン!」
その怒鳴るような声と共に、突如バルサから黒い衝撃波が放たれたのである。
ダリル:
「っ、なんだっ!?」
その衝撃波で炎と雷はいとも容易く消え去り、ダリルも軽く吹き飛ばされる。それをヴァリウスが背後に転移して受け止めてあげた。
ヴァリウス:
「これはやばいねー」
汗を掻き苦笑しながらヴァリウスがそう告げる。
その衝撃波の中心にいるであろうバルサの魔力量が尋常じゃなく跳ね上がっていたのだ。
ヴァリウス:
「いやー、これはなかなかな魔力で。カイの魔力量に近いね結構」
ダリル:
「逆に言えばカイはそれほど持っていたのか……」
その事実に驚くダリルへヴァリウスがにっこり笑いかける。
ヴァリウス:
「ううん、もっとあるよ。彼女がようやく僕と同等ってところかな。今僕が使えているカイの魔力は三分の二程度だからね」
ダリル:
「なっ」
驚きのあまり、ダリルの口が塞がらない。
ヴァリウスは古代魔法やらかなりの大技を何度も使用することが出来ていた。およそヴァリウスの魔力量は常人の十倍くらいなのであるが、つまりカイの本来の魔力量は十五倍くらいだということである。
驚いているダリルの肩を叩いてヴァリウスが前を指差す。
ヴァリウス:
「ほらほら、驚いている暇はないよ。来るよ敵さんが」
その言葉通り、黒い衝撃波は止み、その中から姿の変わったバルサが姿を現した。
全身がほんの少し緑がかった黒色に硬質化しており光沢がところどころに見える。
そして双眸は黒い下地に赤く細長い瞳孔になっていた。
バルサが怒りを露わにしながら叫ぶ。
バルサ:
「あんた達、私を怒らせたな! 殺してやる!」
そのプレッシャーに、無意識の内にダリルとヴァリウスは後ずさってしまっていた。
ダリル:
「これは、ヤバいな……」
ヴァリウス:
「うん、本当にヤバいみたい」
メリル:
「ダリル! ヴァリウス!」
ミーアとメリルが心配して叫ぶが、ダリル達に反応する余裕はなかった。
少しでも隙を見せれば、死が訪れるだろう。
だが、隙を見せなくてもそれは同様であった。
バルサ:
「あんた達は八つ裂きにしてやる!」
その言葉と共にバルサが動き出そうとする。
その時であった。
???:
「はい、ストップだよ」
突如何者かの声が辺りに響いたのだ。そしてその声は、激昂しているはずのバルサを確かに止めていた。
???:
「こら、バルサ。殺してはいけないだろう」
声の方へ苛立ちながらバルサが視線を向ける。
バルサ:
「……ウル。何でここにいるのさ」
バルサの視界の先、連なる建物の内の一つの屋根に、その少年は座っていた。歳は人間でいう十四、五くらいの見た目で童顔、少し青がかった髪の上に青いシルクハットを被っている。
その少年ウルは、見た目に反して足を組み、蔑むような瞳でバルサを見つめていた。
ウル:
「君のことだからね、頭に血が上って命令無視するんじゃないかって思ってね。でも飛んできて正解だったよ。バルサ、彼らはあくまで生け捕りだ。そう王から言われただろう」
バルサ:
「……ちっ、面倒な奴が来たね」
ウルのお陰かバルサの殺気が少し和らぐ。
だが、ダリルとヴァリウスはより状況が悪化していることに気が付いた。その視線はウルを捉えている。
ダリル:
「あの少年、一体何者だ……!?」
ヴァリウス:
「さあね、分からない。でも、彼から放たれているプレッシャーといい、あの四魔将であるバルサって敵と対等に話していることから考えて……四魔将、かな?」
仮にその予想が当たっているとして、それがつまり何を意味するかダリル達は理解していた。
バルサにウル、四魔将二人をダリル達は相手にしなくてはいけないのである。
バルサ一人でもギリギリの闘いを繰り広げていたダリル達に、勝ち目は無かった。
バルサ:
「ねぇウル、分かったよ殺さない。だから、あんたはどっか行ってくれないかい? 気が散ってしょうがないんだ」
ウル:
「ううん、僕は君を見張っているよ。間違って殺さないようにね。それとも、手伝ってあげるかい?」
バルサ:
「それは、私一人じゃ無理だって言いたいのかい……!?」
バルサの怒りの矛先がウルへと移り変わる。
その瞬間を見逃さず、ダリルはヴァリウスへと小さく呟いた。
ダリル:
「……ヴァリウス、おまえはメリルとミーアを連れて逃げろ」
ヴァリウス:
「っ!」
その提案にヴァリウスがダリルを見つめる。その提案の意味が分かったからだ。
ヴァリウス:
「……君はここに残るって言うのかい」
ダリル:
「ああ」
仮にウルが四魔将であったとしてもなかったとしても、ダリルだけが残ってバルサとウルの二人に勝てるわけがない。間違いなく敗北するだろう。
それを分かっていてダリルはそう提案しているのだ。
ダリルが強い意志を持ってヴァリウスを見る。ダリルの眼から読み取れる覚悟に、ヴァリウスはため息をつきながら目を閉じた。
ヴァリウス:
「……死ぬ気は毛頭ないんよね」
ダリル:
「当たり前だ。どうやら奴らは俺達を殺せない事情があるらしい。仮に掴まってもすぐには殺されないはずだ。だから、おまえ達はこの場から脱出してカイとイデア様を全力で捜すんだ。エイラの救出には二人の力が必要なはずだ」
ヴァリウス:
「……君の救出にもね」
ヴァリウスの言葉にダリルが苦笑する。
ダリル:
「情けない話だがそういうことだ。任せたぞ」
そう言ってダリルが前へ視線を戻す。その背中へヴァリウスが告げた。
ヴァリウス:
「必ず、助けに来るよ」
ダリル:
「ああ、待ってるからな」
その瞬間、ミーア達のいるシールドの中にヴァリウスの黒い穴が生まれた。
穴を見て、ミーア達が視線で尋ねてくる。
ヴァリウスは頷いて入るよう誘導した。その誘導に合わせてミーア達が穴の中に入っていく。
後はヴァリウスが転移するだけというところで、ウルがヴァリウス達の動きに気付いた。
ウル:
「おっと、どうやら人族が動き出しているようだよ、バルサ。早く戦ったら?」
バルサ:
「っ、あんたが邪魔したんでしょうが!」
ヴァリウス:
「っ!」
早く転移しようとヴァリウスが背後へ跳躍する。
だが、その背後にバルサが突如現れヴァリウスへと左腕を振り下ろした。
バルサ:
「どこ行こうってのさ!」
ヴァリウス:
「くそっ!」
ヴァリウスがシールドを展開しようと手を伸ばす。しかし、そのバルサの左腕はダリルの盾によって防がれた。
防いだと言っても、ほんの一瞬持ちこたえただけである。だが、ほんの一瞬が重要であった。
ダリルが防ぐと同時にヴァリウスを横に蹴り飛ばす。そしてダリルはヴァリウスの方を見ることなく頷いた。
ヴァリウス:
「(ありがとう、ダリル……!)」
ヴァリウスは蹴り飛ばされると同時にどうにか大地を蹴って跳躍し、次の瞬間転移して姿を消した。
と同時にダリルが堪え切れずに盾ごと大きく吹き飛ばされる。ダリルは背後の建物を破壊しながらかなり吹き飛んでいった。
それを見ていたウルが残念がることなく呟く。
ウル:
「あーあ、逃げられたね」
バルサ:
「あんたが阻止しなよ! 出来たでしょうが!」
ウル:
「まぁね、でも君が邪魔するなって言ったんだ。これは君の落ち度だよ」
バルサ:
「……苛つくガキだよホント!」
ウル:
「見た目で言えばね、でも歳で言えば僕の方が上だよ」
バルサ:
「分かってるさ!」
ウルとのやりとりでバルサの苛立ちがかなり募っていく。
やがて倒壊した瓦礫の中からダリルがボロボロの状態で姿を現した。大きな盾をついてどうにか立ち上がっている。
そのダリルを見てバルサはニヤリと笑みを浮かべた。
バルサ:
「まぁいい、とりあえずはあいつで憂さ晴らしさ!」
冷笑を浮かべながらバルサがダリルへと飛び出していく。
ダリルはこの絶望的な状況の中でも、決して諦めることなく一歩前へと踏み出したのだった。
………………………………………………………………………………
メリル:
「『どうしてダリルがいないのよ!』」
ヴァリウス:
「……そうするしか方法はなかったんだ」
黒い穴の中でメリルは怒りを露わにしていた。ヴァリウスは魔界の見える範囲を点々と転移しながら黒い穴の中から伝わってくる声を聞いていた。カイとイデアが何処にいるか分からないため、とりあえず見える範囲に転移してがむしゃらに見つけるしかないのである。
メリル:
「『そんなことない! あたし達みたいにダリルをこの中に入れることだって出来たはずよ!』」
ヴァリウス:
「君達の場合はシールドが張られていたことと相手の注意が別にあったから上手く行ったんだ。それを証拠に僕の転移は本当にギリギリだったよ、ダリルが手伝ってくれなきゃね。その状況下でダリルを穴に入れさせるのは不可能だ。それに、仮に入れたとしても今度は僕が逃げられない」
メリル:
「『でも……!』」
声を荒げるメリルを、ミーアがなだめる。
ミーア:
「『メリル、気持ちは分かるけど落ち着いてよ。それに、辛いのはメリルだけじゃないよ。実行したヴァリウスだって辛いんだから。仲間を置いていく判断が簡単に出来たと思う?』」
その言葉にメリルが下を向く。そしてぼそりと呟いた。
メリル:
「『……カイなら見捨てない』」
その言葉をヴァリウスは素直に受け止めていた。
ヴァリウス:
「そうだね、カイならきっと見捨てない。やっぱり、僕はカイとどこか違うんだよ。カイの魔力にだいぶ感化されたと言ったって僕は僕なんだもの。でもね、それでもやっぱりカイには感化されちゃってるから。だから僕はダリルを見捨てたつもりはないよ。絶対助けに戻ってくる。でも、それにはカイの力が必要なんだ。だから僕達はこれからカイを探して、そしてダリルとエイラを助けに行くんだ」
そこまで言ってから自嘲気味にヴァリウスが笑う。
ヴァリウス:
「カイに頼ってばっかというか、自分の無力さに呆れちゃうけどね」
メリル:
「『……』」
メリルはやがて消沈したように口を閉ざし、へなへなと座り込んでしまった。
その後、数分の沈黙が続いていき、ヴァリウスが必死にカイ達を捜索するが、簡単には見当たらない。
と、その時だった。
メリル:
「『……無力なのはあたしよ』」
そうメリルがぽつりとつぶやいたのである。
メリル:
「『あの場所であたしは何も出来なかった。ミーアに守られて、ただダリル達の戦っているのを見ているだけ。まるでお荷物だよね。うん、やっぱりあたしはお荷物なんだわ。少しは戦えると自分では思ってた。でも、もうあたしレベルの雑魚は必要ないよね……。あたし、ここに来た意味あったのかしら……』」
滴り落ちそうになる涙を堪えて、メリルが声を震わせる。
ヴァリウスは、メリルが消えて無くなってしまいそうな感覚に陥ったが、どう声をかけていいものか分からなかった。
と、その時ミーアが口を開く。
ミーア:
「『……そうだね、メリルは無力かもしれない』」
メリル:
「『っ!』」
そのミーアの言葉にメリルの眼からは我慢していた涙が零れてしまった。
ヴァリウス:
「(な、何で追い打ちかけてるのさ、ミーアちゃん……!)」
戸惑うヴァリウスだったが、ミーアの言葉はまだ続いていた。
ミーア:
「『じゃあさ、無力さを痛感したなら、立ち止まっている場合じゃないでしょ?』」
メリル:
「『え……?』」
その言葉にメリルが顔を上げる。
ミーアは真っ直ぐにその濡れた瞳を見つめていた。絶望の光を溜めた瞳を。
ミーア:
「『これはお兄ちゃんの話なんだけどね、お兄ちゃんてほら、どこぞのどら猫に魔力奪われちゃったから、魔力ない状態でこの十七年、かな? ずっと生きてきたんだよ』」
ヴァリウス:
「(どこぞのどら猫ですみません……)」
何故か「どこぞのどら猫」という部分が強く聞こえて、ヴァリウスが心の中で謝る。
ミーア:
「『わたし達兄妹の中で兄二人と妹のわたしが凄い魔力を持っているのに、お兄ちゃんだけは魔力を持っていない。それだけじゃない、王族とか関係なく普通の人なら当たり前に持ってるはずの魔力を持っていないの。あ、フィールスの人達も魔力は持ってないか。でもセインがあるでしょ。お兄ちゃんにはセインだってないんだもの。とにかく、誰もが持ってる魔力を持っていないことがどういうことか分かる? 誰にでも当たり前に出来ることがお兄ちゃんには出来ないの。お兄ちゃんは誰よりも無力だったんだから』」
メリル:
「『……』」
ヴァリウスもメリルも黙ってミーアの話を聞いていた。
ミーア:
「『でもね、お兄ちゃんは魔力を持ってないなら剣術だ!ってダリルに凄く指導してもらったんだよ。魔力が使えないなら人一倍剣術を頑張ればいいって。お兄ちゃんは無力なまま終わるつもりなんて毛頭ないんだから。お兄ちゃんは無力な自分を受け入れた上で進もうと前を向いたんだよ。じゃあ、メリルは自分が無力だと分かったら下を向いて立ち止まるの?』」
メリル:
「『あたしは……』」
ミーア:
「『それって凄くもったいないことだと思うな。わたしね、お兄ちゃんを見てて思ったんだけど、無力ってそれだけ伸びしろがあるってことだと思うんだ。無力な分だけ前に進めるんだよ。つまりね、今無力だって自覚したメリルの目の前には道が拓けたの! せっかく道が拓けたのにメリルは進まないの?』」
ミーアが首を傾げて、そう尋ねる。
尋ねられたメリルは自分の両手を見ながら下を向いてしまった。
ミーアは言いたいことは全部言ってしまったため、黙ってただ返事を待つ。
その沈黙がヴァリウスには耐えがたい時間であった。
すると、ミーアの体感で一分ぐらい経った頃、メリルは瞳の涙を拭った。そして笑って告げる。
メリル:
「『まったく、ミーアってなんだかんだブラコンよね』」
ミーア:
「『えっ、なっ、そ、そんなことないよ!』」
顔を真っ赤にしてそう返すミーア。その様子に笑いながらメリルは立ち上がった。先程も濡れていた瞳は、先程と違って希望の光が煌めいていた。
メリル:
「『カイに出来てあたしに出来ないわけないじゃない。上等よ、前に進んでやろうじゃない!』」
ミーア:
「『っ、そうこなくっちゃ!』」
そう言ってミーアがメリルに抱きつく。メリルもまたミーアを抱きしめ返した。
メリル:
「『ありがとね、ミーア』」
ミーア:
「『ううん! むしろ生意気な事言ってごめんね!』」
メリル:
「『そんな! 生意気なんかじゃないわ! 本当にありがとうって思ってるのよ。あなたのおかげであたしは前を向けたんだもの!』」
嬉しそうに声を弾ませる二人の声を、ヴァリウスは微笑みながら聞いていた。
ヴァリウス:
「(カイ、やっぱり君はいろんな人に影響を与えているんだね……。流石僕が感化された男ってところかな)」
そこまで考えて、ヴァリウスは先程のミーアの話を考えてみた。
ヴァリウス:
「(……カイは魔力が無くても決して無力なんかじゃないよ。彼はきっと生まれた瞬間にあの絶大な魔力以上に驚くべき力を持っていた……。カイ、君はどんな人でも変えてしまうような、人を惹きつけるような、そんな不思議な力を宿していたと僕は思うな)」
ヴァリウスがそう考えて笑う。
ヴァリウス:
「(それにしても、ミーアちゃんはやっぱりカイの妹だね。なんだかんだ性格がそっくりだよ)」
そうしてヴァリウスは、カイを捜すべく何度も転移を繰り返すのだった。
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