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1『セイン』
1 第三章第二十六話「ゼノへの相談」
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レイデンフォート王国の自室でゼノは大きなベッドでぐっすりと熟睡していた。レイデンフォート王国の復興は着実に進み、ほぼ終わりかけていると言っても過言ではない。ゼノもここ最近は復興に力を入れており、あまり眠れない日々を送っていたが、ようやく眠れる時間を確保できたのである。
そんなゼノだったが、唐突に誰かに呼ばれている気がした。そして、それが夢なのか現実なのかの区別もつかないまま、ゼノは目を覚ましてしまった。
ゼノ:
「……なんなんだ……ふぁあ…………」
ゼノは苛立ちを覚えながら上体を起こす。そして周囲を見渡して二つの変化を発見した。一つ目が隣に寝ているセラだ。いつの間にか眠っているゼノのベッドに潜り込んだらしい。
そのセラの頭を撫でてあげると、綺麗な金髪がゼノの指の隙間を滑らかに通っていく。寝ているセラがくすぐったそうに微笑みながら身をよじった。
ゼノ:
「……いつ見てもマジで美人だよなー」
大きな瞳に整った顔立ち、そして美しい肢体に豊満な胸。セラはまさに老若男女が羨む絶世の美女であった。ゼノは正直隣に立つのが恥ずかしいと思っている。
ゼノ:
「(セラと比べたら俺なんて塵に等しいからな……)」
そう思いながら寝ているセラを見つめ、やがて視線をもう一つの変化へと向けた。
もう一つの変化。それはゼノの部屋の中央に浮かんでいる四角い画面であった。そしてそこには映像が映っており、そして声が届けられている。
エイラ:
「『ゼノ様、全然でないですね』」
カイ:
「『いや、実際今何時だと思ってんだよ……。親父だって絶対寝てっから』」
エイラ:
「『寝てるなら叩き起こせばいいんですよ』」
カイ:
「『鬼か。おまえ王に対しても変わらなすぎだろ』」
エイラ:
「『自分を貫くことって大切ですよね』」
カイ:
「『貫きすぎだよ』」
そんな声と共に画面にはエイラとカイが映っていた。
ゼノ:
「(《ヴィジョン》か……)」
そう呟きながらゼノはベッドから降りた。
《ヴィジョン》という魔法は指定した座標と唱えた人物の場の映像をそれぞれに繋ぐ魔法である。
ゼノは目をこすり、頭を掻きながらその画面の前に立った。
ゼノ:
「おまえ達、本当に何時だと思ってるんだ……」
エイラ:
「『あ、ゼノ様起きたみたいですよ』」
カイ:
「『王とは思えない酷い恰好だな……』」
ゼノの頭は寝癖だらけで衣服もだいぶはだけている。
ゼノ:
「起きたばかりだから仕方ないだろう……」
ミーア:
「『あ、お父さん久しぶり!』」
ゼノ:
「ん、ミーアか。元気してるか」
ミーア:
「『してるよー!』」
元気そうなミーアの姿にゼノも思わず微笑む。そしてミーアの隣に今度はイデアが姿を見せた。
イデア:
「『お義父様、お久しぶりです』」
ゼノ:
「イデアちゃん! 元気してたか!」
イデア:
「『はい、元気です』」
ミーア:
「『なに、このわたしとの反応の差……』」
イデアの隣でミーアがふくれっ面を浮かべていた。
それに苦笑しながら、ゼノは尋ねる。
ゼノ:
「それで、こんな早い時間に何の用だ? 元気そうだからな、旅は順調なんだろ?」
まだフィールス王国には着いていないだろうという推測の元そう尋ねると、カイが頷いた。
カイ:
「『まぁ、順調といえば順調なんだけどな。だけど一つ、相談があるんだってさ』」
ゼノ:
「だってさ、って誰の相談だ?」
すると、画面にゼノの予想だにしない人物が姿を見せる。その人物を見た瞬間ゼノの眠気は一気に吹き飛んだ。
ゼノ:
「っ、ジェガロか!?」
ジェガロ:
「『久しぶりじゃのぅ、ゼノよ』」
人化しているジェガロがゼノへと微笑む。
ジェガロ:
「『お主は何も変わっておらんようじゃのぅ』」
ゼノ:
「いや、これでも歳はとったけどな。にしてもあんたは変わってないな!」
ジェガロ:
「『当たり前じゃ。儂が意図的にこの姿にしておるんじゃ。歳もとらん』」
ゼノ:
「ミーアくらい幼女に人化してもいいんじゃないか?」
ジェガロ:
「『出来なくもないが、儂は嫌じゃ』」
ミーア:
「『ていうか誰が幼女よ!』」
キーンと耳をつんざくようなミーアの叫び声にゼノもジェガロも耳を塞いでいた。
そして、耳から手を離してゼノは声をかける。
ゼノ:
「ジェガロがいるってこと、そこは天地谷か?」
ジェガロ:
「『そうじゃ。それでちと相談したいことがあるのじゃが……』」
ゼノ:
「ジェガロが相談なんて珍しいな」
ゼノの記憶だと、ゼノがジェガロに色々相談してばっかりだった覚えがある。
ジェガロ:
「『カイ達にのぅ、フィールス王国へ連れて行ってほしいと頼まれたのじゃがの、儂はここを離れられん。じゃが、その頼みを無下にもしたくないのじゃ。どうにかならんかのぅ』」
その相談に、ゼノは思わず驚いていた。
ゼノ:
「(へぇ、ジェガロがここまで親身になるとは、カイ達は相当気に入られたようだな……)」
ジェガロはほとんど人を信用したりはしない。ゼノが初めて出会った時もゼノ達に攻撃を仕掛けていたほどだ。
ゼノ:
「(ま、俺の息子ってことと、エイラがいるからってのもあるだろうが、それでも流石俺の息子達と言ったところか……)」
にやけそうになる頬を片手で押さえながら、ゼノは返事をした。
ゼノ:
「ふむ、そうだな。確かにそこからジェガロが離れるのはマズい」
ジェガロが天地谷から離れられない理由は、天地谷にあるとあるものを監視する役割を担っているからである。その監視は、絶対に必要なのだ。
ジェガロ:
「『やはりか……』」
ジェガロが落胆するように俯く。そんなジェガロへゼノは言葉を続けた。
ゼノ:
「だが、ジェガロの代わりがいれば問題ないだろう」
ジェガロ:
「『っ、代わりじゃと?』」
ゼノの言葉にジェガロが顔を上げる。
ゼノ:
「ああ。丁度時間が出来たところだ。俺が代わりに天地谷で役目を果たそう」
ジェガロ:
「『……よいのか?』」
ゼノ:
「ああ、息子達が世話になるんだ。これぐらい構わないぞ」
ジェガロ:
「『……すまないな』」
ジェガロがそう言ってくるが、ゼノは苦笑して返した。
ゼノ:
「こっちこそ悪いな、うちのアホ息子をよろしく頼む」
カイ:
「『誰がアホ息子だ!』」
カイの大声にゼノとジェガロは再び耳を塞ぐ。カイといいミーアといい、大声には定評があった。
そしてエイラがゼノへと言う。
エイラ:
「『ゼノ様、すみませんね』」
ゼノ:
「いや大丈夫だ。それよりこっから天地谷には正午くらいまでかかるが、大丈夫か?」
エイラ:
「『はい、私達もそれくらいに発とうと思ってますので』」
ゼノ:
「わかった。今から向かうわ」
エイラ:
「『それでは、お待ちしてますね』」
エイラがそう言った直後、浮かんでいた四角い画面が一瞬にして消えた。
ゼノは少しの間消えた画面があった虚空を見ていた。
ゼノ:
「(成長、してるようだな……)」
ゼノが無意識のまま微笑む。すると、その時扉がノックされた。
デイナ:
「失礼するよ、父上」
そう言ってデイナが姿を見せる。
ゼノ:
「デイナか。こんな朝っぱらからなんだ?」
こんな朝早くにデイナが訪れることなどあまりない。訝しそうにするゼノへ、デイナは一度寝ているセラを一瞥してから尋ねた。
デイナ:
「あのさ、ライナスの奴を知らないか?」
ゼノ:
「ん、ライナス? なんだ、いないのか?」
デイナ:
「……その様子じゃ父上が何か指示したわけでもないんだな」
デイナが一人納得したように頷く。
ゼノ:
「どうした、ライナスがどうにかしたのか?」
デイナ:
「いや、知らないならいいんだ。じゃあな」
そしてデイナが部屋を出て行く。それを見送りながらゼノは困ったように後頭部を掻いた。
ゼノ:
「まいったな、ライナスに留守番を頼もうと思ってたんだが……」
すると、ベッドの方から声がかけられた。
セラ:
「あら、留守番なら私がしますよ」
ゼノ:
「ん、起きたのか、セラ」
そちらへ視線を向けると、そこには起きたばかりのセラの姿があった。着ている薄い桃色の寝着が少しはだけていて妖艶さを醸し出している。寝起きのゼノもはだけていたのだが、天と地の差があった。
ゼノ:
「ていうかいつの間にベッドに潜り込んだんだ?」
そう尋ねると、セラが微笑む。
セラ:
「本当はただ顔を見るつもりで訪ねたのですが、ゼノが気持ちよく寝ていたので思わず私も寝たくなったんです」
ゼノ:
「隣でか?」
セラ:
「隣でです」
笑顔を崩さないセラにゼノは苦笑する。
ゼノ:
「でも、留守番任せていいのか? あっちにはいつ戻るんだ?」
セラ:
「まだ二、三日はこちらにいる予定ですから。それより、どこに行くんですか?」
眠い目を擦りながらセラが尋ねる。それにゼノは支度をしながら答えた。
ゼノ:
「天地谷。何でもジェガロが天地谷を離れたいらしくてな。代わりに俺がちょっと天地谷で見張ってくるわ」
セラ:
「まぁ、ジェガロさんですか? 懐かしいですね……」
そう言ってセラが本当に懐かしそうな顔を浮かべる。ジェガロとはセラもそれなりに長い付き合いであり、色々助けてもらったりもしているのである。
ゼノ:
「なんでもカイ達を助けてくれるらしい」
セラ:
「そうなんですか!? 親子共々ジェガロさんにはお世話になってますね」
ゼノ:
「そうだな。今度菓子折りの一つや二つでも持って行かなきゃいけないな」
セラ:
「そんなのでジェガロさんは喜びますかね?」
ゼノ:
「案外喜びそうなもんだぞ?」
話しながらゼノは無事着替えて準備を終える。そしてゼノはベッドへと近づき、セラと軽くキスを交わした。
ゼノ:
「それじゃ行ってくる。なるべく早めに帰ろうとは思うけど、とりあえず留守番は任せた」
セラ:
「はい、いってらっしゃい」
ゼノ:
「おう!」
その後、ゼノは大きな窓を開け放ち、そこから外へ飛び出したのだった。
そんなゼノだったが、唐突に誰かに呼ばれている気がした。そして、それが夢なのか現実なのかの区別もつかないまま、ゼノは目を覚ましてしまった。
ゼノ:
「……なんなんだ……ふぁあ…………」
ゼノは苛立ちを覚えながら上体を起こす。そして周囲を見渡して二つの変化を発見した。一つ目が隣に寝ているセラだ。いつの間にか眠っているゼノのベッドに潜り込んだらしい。
そのセラの頭を撫でてあげると、綺麗な金髪がゼノの指の隙間を滑らかに通っていく。寝ているセラがくすぐったそうに微笑みながら身をよじった。
ゼノ:
「……いつ見てもマジで美人だよなー」
大きな瞳に整った顔立ち、そして美しい肢体に豊満な胸。セラはまさに老若男女が羨む絶世の美女であった。ゼノは正直隣に立つのが恥ずかしいと思っている。
ゼノ:
「(セラと比べたら俺なんて塵に等しいからな……)」
そう思いながら寝ているセラを見つめ、やがて視線をもう一つの変化へと向けた。
もう一つの変化。それはゼノの部屋の中央に浮かんでいる四角い画面であった。そしてそこには映像が映っており、そして声が届けられている。
エイラ:
「『ゼノ様、全然でないですね』」
カイ:
「『いや、実際今何時だと思ってんだよ……。親父だって絶対寝てっから』」
エイラ:
「『寝てるなら叩き起こせばいいんですよ』」
カイ:
「『鬼か。おまえ王に対しても変わらなすぎだろ』」
エイラ:
「『自分を貫くことって大切ですよね』」
カイ:
「『貫きすぎだよ』」
そんな声と共に画面にはエイラとカイが映っていた。
ゼノ:
「(《ヴィジョン》か……)」
そう呟きながらゼノはベッドから降りた。
《ヴィジョン》という魔法は指定した座標と唱えた人物の場の映像をそれぞれに繋ぐ魔法である。
ゼノは目をこすり、頭を掻きながらその画面の前に立った。
ゼノ:
「おまえ達、本当に何時だと思ってるんだ……」
エイラ:
「『あ、ゼノ様起きたみたいですよ』」
カイ:
「『王とは思えない酷い恰好だな……』」
ゼノの頭は寝癖だらけで衣服もだいぶはだけている。
ゼノ:
「起きたばかりだから仕方ないだろう……」
ミーア:
「『あ、お父さん久しぶり!』」
ゼノ:
「ん、ミーアか。元気してるか」
ミーア:
「『してるよー!』」
元気そうなミーアの姿にゼノも思わず微笑む。そしてミーアの隣に今度はイデアが姿を見せた。
イデア:
「『お義父様、お久しぶりです』」
ゼノ:
「イデアちゃん! 元気してたか!」
イデア:
「『はい、元気です』」
ミーア:
「『なに、このわたしとの反応の差……』」
イデアの隣でミーアがふくれっ面を浮かべていた。
それに苦笑しながら、ゼノは尋ねる。
ゼノ:
「それで、こんな早い時間に何の用だ? 元気そうだからな、旅は順調なんだろ?」
まだフィールス王国には着いていないだろうという推測の元そう尋ねると、カイが頷いた。
カイ:
「『まぁ、順調といえば順調なんだけどな。だけど一つ、相談があるんだってさ』」
ゼノ:
「だってさ、って誰の相談だ?」
すると、画面にゼノの予想だにしない人物が姿を見せる。その人物を見た瞬間ゼノの眠気は一気に吹き飛んだ。
ゼノ:
「っ、ジェガロか!?」
ジェガロ:
「『久しぶりじゃのぅ、ゼノよ』」
人化しているジェガロがゼノへと微笑む。
ジェガロ:
「『お主は何も変わっておらんようじゃのぅ』」
ゼノ:
「いや、これでも歳はとったけどな。にしてもあんたは変わってないな!」
ジェガロ:
「『当たり前じゃ。儂が意図的にこの姿にしておるんじゃ。歳もとらん』」
ゼノ:
「ミーアくらい幼女に人化してもいいんじゃないか?」
ジェガロ:
「『出来なくもないが、儂は嫌じゃ』」
ミーア:
「『ていうか誰が幼女よ!』」
キーンと耳をつんざくようなミーアの叫び声にゼノもジェガロも耳を塞いでいた。
そして、耳から手を離してゼノは声をかける。
ゼノ:
「ジェガロがいるってこと、そこは天地谷か?」
ジェガロ:
「『そうじゃ。それでちと相談したいことがあるのじゃが……』」
ゼノ:
「ジェガロが相談なんて珍しいな」
ゼノの記憶だと、ゼノがジェガロに色々相談してばっかりだった覚えがある。
ジェガロ:
「『カイ達にのぅ、フィールス王国へ連れて行ってほしいと頼まれたのじゃがの、儂はここを離れられん。じゃが、その頼みを無下にもしたくないのじゃ。どうにかならんかのぅ』」
その相談に、ゼノは思わず驚いていた。
ゼノ:
「(へぇ、ジェガロがここまで親身になるとは、カイ達は相当気に入られたようだな……)」
ジェガロはほとんど人を信用したりはしない。ゼノが初めて出会った時もゼノ達に攻撃を仕掛けていたほどだ。
ゼノ:
「(ま、俺の息子ってことと、エイラがいるからってのもあるだろうが、それでも流石俺の息子達と言ったところか……)」
にやけそうになる頬を片手で押さえながら、ゼノは返事をした。
ゼノ:
「ふむ、そうだな。確かにそこからジェガロが離れるのはマズい」
ジェガロが天地谷から離れられない理由は、天地谷にあるとあるものを監視する役割を担っているからである。その監視は、絶対に必要なのだ。
ジェガロ:
「『やはりか……』」
ジェガロが落胆するように俯く。そんなジェガロへゼノは言葉を続けた。
ゼノ:
「だが、ジェガロの代わりがいれば問題ないだろう」
ジェガロ:
「『っ、代わりじゃと?』」
ゼノの言葉にジェガロが顔を上げる。
ゼノ:
「ああ。丁度時間が出来たところだ。俺が代わりに天地谷で役目を果たそう」
ジェガロ:
「『……よいのか?』」
ゼノ:
「ああ、息子達が世話になるんだ。これぐらい構わないぞ」
ジェガロ:
「『……すまないな』」
ジェガロがそう言ってくるが、ゼノは苦笑して返した。
ゼノ:
「こっちこそ悪いな、うちのアホ息子をよろしく頼む」
カイ:
「『誰がアホ息子だ!』」
カイの大声にゼノとジェガロは再び耳を塞ぐ。カイといいミーアといい、大声には定評があった。
そしてエイラがゼノへと言う。
エイラ:
「『ゼノ様、すみませんね』」
ゼノ:
「いや大丈夫だ。それよりこっから天地谷には正午くらいまでかかるが、大丈夫か?」
エイラ:
「『はい、私達もそれくらいに発とうと思ってますので』」
ゼノ:
「わかった。今から向かうわ」
エイラ:
「『それでは、お待ちしてますね』」
エイラがそう言った直後、浮かんでいた四角い画面が一瞬にして消えた。
ゼノは少しの間消えた画面があった虚空を見ていた。
ゼノ:
「(成長、してるようだな……)」
ゼノが無意識のまま微笑む。すると、その時扉がノックされた。
デイナ:
「失礼するよ、父上」
そう言ってデイナが姿を見せる。
ゼノ:
「デイナか。こんな朝っぱらからなんだ?」
こんな朝早くにデイナが訪れることなどあまりない。訝しそうにするゼノへ、デイナは一度寝ているセラを一瞥してから尋ねた。
デイナ:
「あのさ、ライナスの奴を知らないか?」
ゼノ:
「ん、ライナス? なんだ、いないのか?」
デイナ:
「……その様子じゃ父上が何か指示したわけでもないんだな」
デイナが一人納得したように頷く。
ゼノ:
「どうした、ライナスがどうにかしたのか?」
デイナ:
「いや、知らないならいいんだ。じゃあな」
そしてデイナが部屋を出て行く。それを見送りながらゼノは困ったように後頭部を掻いた。
ゼノ:
「まいったな、ライナスに留守番を頼もうと思ってたんだが……」
すると、ベッドの方から声がかけられた。
セラ:
「あら、留守番なら私がしますよ」
ゼノ:
「ん、起きたのか、セラ」
そちらへ視線を向けると、そこには起きたばかりのセラの姿があった。着ている薄い桃色の寝着が少しはだけていて妖艶さを醸し出している。寝起きのゼノもはだけていたのだが、天と地の差があった。
ゼノ:
「ていうかいつの間にベッドに潜り込んだんだ?」
そう尋ねると、セラが微笑む。
セラ:
「本当はただ顔を見るつもりで訪ねたのですが、ゼノが気持ちよく寝ていたので思わず私も寝たくなったんです」
ゼノ:
「隣でか?」
セラ:
「隣でです」
笑顔を崩さないセラにゼノは苦笑する。
ゼノ:
「でも、留守番任せていいのか? あっちにはいつ戻るんだ?」
セラ:
「まだ二、三日はこちらにいる予定ですから。それより、どこに行くんですか?」
眠い目を擦りながらセラが尋ねる。それにゼノは支度をしながら答えた。
ゼノ:
「天地谷。何でもジェガロが天地谷を離れたいらしくてな。代わりに俺がちょっと天地谷で見張ってくるわ」
セラ:
「まぁ、ジェガロさんですか? 懐かしいですね……」
そう言ってセラが本当に懐かしそうな顔を浮かべる。ジェガロとはセラもそれなりに長い付き合いであり、色々助けてもらったりもしているのである。
ゼノ:
「なんでもカイ達を助けてくれるらしい」
セラ:
「そうなんですか!? 親子共々ジェガロさんにはお世話になってますね」
ゼノ:
「そうだな。今度菓子折りの一つや二つでも持って行かなきゃいけないな」
セラ:
「そんなのでジェガロさんは喜びますかね?」
ゼノ:
「案外喜びそうなもんだぞ?」
話しながらゼノは無事着替えて準備を終える。そしてゼノはベッドへと近づき、セラと軽くキスを交わした。
ゼノ:
「それじゃ行ってくる。なるべく早めに帰ろうとは思うけど、とりあえず留守番は任せた」
セラ:
「はい、いってらっしゃい」
ゼノ:
「おう!」
その後、ゼノは大きな窓を開け放ち、そこから外へ飛び出したのだった。
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