カイ~魔法の使えない王子~

愛野進

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1『セイン』

1 第三章第十六話「シオルン」

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 吊り橋を渡った先には広場同様広く平たい場所があり、それを巨大な岩が囲っていた。その広場にはいくつかの住居があった。その全てが石造りである。そして、他に目立ったものは特になく、人の影すらなかった。
ジェガロ:
「ここが村じゃ」
 なのに、ジェガロはそれを村と言ってのけた。全員に困惑の表情が浮かぶ。
カイ:
「……なぁ、人は? ていうか建築物少なくね?」
ジェガロ:
「人は住んでおらん」
カイ:
「じゃあこの建物達はなに!? ていうか全然村じゃねえだろ!」
ジェガロ:
「あの石造りの住居は雰囲気で作っただけじゃ。村というのは……別によかろう」
 そう言ってジェガロが先に進んでしまう。カイ達は顔を見合わせて首を傾げた。
カイ:
「誰だよ、竜を崇拝している村があるって噂を最初に流した奴は」
エイラ:
「さぁ。案外ジェガロじゃないですか?」
カイ:
「だったら、何か悲しいな……」
 カイは少しジェガロの背中が寂しく見えたのだった。
 村、らしき場所を進んでいく。辺り一面岩ばかりで作物などは全く育ちそうにない。この中で自給自足は誰の目から見ても不可能であった。
レン:
「この村に仲間がいるのだろう。一体どうやって生活しているんだ?」
 レンの問いにジェガロが簡単だとばかりに答える。
ジェガロ:
「食糧に関しては儂がチェイル王国まで下りてわざわざ調達しておる」
ミーア:
「人の姿で? それとも竜の姿で?」
ジェガロ:
「馬鹿を言うな。わしは今でさえ人に化けているのじゃぞ。小さな鳥に化けてチェイル王国の近くまで飛び、それから人に化けているのじゃ」
ミーア:
「へー、便利だね」
 ジェガロが歩きながら唐突に説明を始める。
ジェガロ:
「一応、儂がお主達の仲間に出会った経緯を今説明しておく。そやつの名はシオルン。四日前に先程の広場のぎりぎりに機械が落ちてきての。その中から出てきたのじゃ」
コルン:
「……シオルンか。聞いたこともないな。城に出入りするものや兵士や侍女の名前なら頭に入っているのだが」
 コルンはその名前に心当たりがなかった。
 ジェガロが続ける。
ジェガロ:
「シオルンはその機械から出てきたと思うたら、いきなり儂に抱きついてこう言ったのじゃ。『どうか! どうかわたしを匿って下さい!』とな。幸い住居は余っておるし、何よりシオルンの必死な懇願に負けて、儂はシオルンを匿うことにしたのじゃ」
 その話を聞きながらレンが考える。
レン:
「そいつは兵士でも侍女でもないのかもしれないな。随分と弱いようだ」
 そして、ジェガロがある石造りの家の前で立ち止まった。
ジェガロ:
「ここじゃ、ここにシオルンがおる」
 そう言ってから、ジェガロは入り口の前にかけられている布をくぐって家の中に入っていった。それにカイ達も続く。
 その家の中は居間と寝室の二つしかなく、居間の中心は四角くくりぬかれており、そこで火が焚かれていた。そしてその上に鍋が天井から吊るされている。
 そして寝室には布がかなり重なって敷き詰められており、その上に銀髪の少女シオルンは座っていた。長い髪を後ろで編み込んでいて一本にしており、身なりはボロボロで、布を纏っているだけに見えた。
 そのシオルンがジェガロが帰ってきたことに気付いて顔を上げる。
シオルン:
「あ、ジェガロさ―――ひぃっ!」
 だが、その直後にカイ達に気付いて、シオルンはすぐさま寝床の毛布に包まってしまった。
シオルン:
「な、何で人が!? ジェ、ジェガロさん! 匿ってくれるんじゃなかったんですか!」
 シオルンが震えているのが毛布の上から分かる。そのシオルンを落ち着かせようとジェガロが言った。
ジェガロ:
「まぁ待て。シオルン、どうやらお主と同じ国から来た者がいるようじゃ」
シオルン:
「え?」
 そう言われてシオルンが毛布から頭だけを出してカイ達を観察する。そして、イデアとレンに気付いた瞬間、毛布を吹き飛ばしながら飛び跳ねて驚いた。
シオルン:
「イ、 イデア様あああああ!? それにレン様もおおおお!?」
レン:
「うるさい奴だな」
イデア:
「面白い方ですね」
 イデアとレンの感想は真逆で、表情も真逆であった。
 シオルンはすぐさま寝床から飛び出して居間まで来ると、イデア達の前に正座し、血に頭をつけた。
シオルン:
「こ、これは! 来客者がイデア様とレン様とはいざ知らず! 大変なご無礼を!」
 その大袈裟な様子にイデアが苦笑しながら声をかける。
イデア:
「シオルンさん、頭を上げてください」
シオルン:
「し、しかし……!」
レン:
「俺の妹が頭をあげろと言っているんだ。聞けないのか」
シオルン:
「はいぃ!」
 レンの気迫にシオルンはすぐさまびしっと上体を起こして姿勢を正した。
 それに頷いた後、レンが尋ねる。
レン:
「さて、シオルンと言ったか。貴様は見たところ市民だな?」
シオルン:
「は、はい! その通りでございます!」
 元気よく返事するシオルンへカイは不思議そうな視線を向けていた。
カイ:
「なぁ、確かフィールス王国って男女ともに戦場に赴くんだよな。あいつ、全然戦えそうな体じゃないぞ。華奢すぎやしないか?」
エイラ:
「カイ様、そうやってすぐに体へ注目向けるの良くないですよ。セクハラですよ、捕まりますよ」
カイ:
「いや違えし! そういう目で見てねえから! 単なる疑問だから!」
 そのカイの疑問には、なんとイデアが目を閉じて記憶を思い出すようにしながら答えた。
イデア:
「えっと……確かに男性も女性も戦うけど、例外もいるの。戦わずに家事にのみ専念する人だったりとか、武器や防具を作ったりする職業の人とか」
エイラ:
「ですが、確かセインは夫婦の距離によって力を発揮するんでしたよね。では、家事しか行わない女性や職業についている女性と結婚した場合はどうなるんですか?」
イデア:
「んーと、そういう方々はあまり結婚出来ないんです。そういう方々は戦闘の才能がないから仕方なく家事や職業についているので、あまり男性に人気はありません。男性はやっぱり戦地に共に赴いてくれる女性が良いようです。わたしの場合は、お父様に剣を握るなと言われて育ちましたけれど」
エイラ:
「フィールス王国でそれは珍しいですね。とんだ親バカということでしょうか」
カイ:
「でも、なるほどなー」
 カイが納得したように頷く。すると、気付いたようでイデアへ問いかけていた。
カイ:
「ていうかイデア、記憶が戻ったのか?」
イデア:
「うん、レン兄様とたくさんお話したらだいぶ戻ってきたの」
カイ:
「よかったじゃん!」
 カイがイデアの頭をくしゃくしゃに掻き回すように撫でる。イデアは小さな悲鳴をあげながらも嬉しそうにしていた。
 カイ達の会話と同時進行で、レンはシオルンにさらに続けて尋ねていた。
レン:
「何故貴様が脱出ポッドを使用できた? あれは城にのみ置いてあったはずだ」
シオルン:
「そ、それはですね。わたし、逃げ遅れまして。自宅でプルプル震えていたんです。そしたら屋根を突き破って何かが落ちてきたんですね。それが脱出ポッドでして。どうやら脱出の途中で撃ち落とされたみたいで煙を上げていました。ですが、わたし職人をやっていまして、幸いにも機械に強くてですね。必死に直したんです。あ、元々乗っていらした方は残念ながら亡くなっていました。それでどうにか直したので早速乗ってフィールス王国を脱出したわけなんですが、天地谷の上で故障しまして。まぁ、その場に会った素材での応急処置だったので仕方が無いのですが。それで天地谷に落ちてしまって開けてみたら、目の前にジェガロさんがいまして。泣きながら匿ってくれと必死に頼んだんです。そしたら、今匿ってくれています」
 長々と説明を終えて、シオルンは近くに置いてあったお茶を一飲みした。マイペースである。
レン:
「……なるほど、そういうことか」
 納得したように頷くと、レンがカイ達へ振り向いて告げた。
レン:
「あいつはフィールス王国へ連れて行かずにここに置いておいた方がいいな。戦闘では役に立たない」
カイ:
「なかなかザックリと切り捨てるな」
レン:
「俺達は国を取り戻すためにここまで来ているのだ。必要か不必要かは見極める必要がある」
カイ:
「んー、まぁ戦えないならここはジェガロもいるし安全だもんな。匿ってくれるならそのまま匿ってもらった方がシオルンのためか」
 爺さん、と呼んでいたカイだが、竜だと分かったためジェガロと呼んでいた。
 カイ達が話していると、シオルンがおずおずと尋ねる。
シオルン:
「あのぅ、イデア様とレン様は一体どのような事情でこちらに? それにそのほかの方々は?」
レン:
「おまえに教える必要は―――」
イデア:
「ええと、それはですね」
 レンの言葉を遮って、イデアが丁寧に、かつ要約して説明を開始する。シオルンの顔は話の途中途中で感情によって様々な形に変化していた。
イデア:
「―――というわけです」
シオルン:
「なるほど! では、あなたはイデア様の夫ということですか!」
カイ:
「あー、そういうこと。カイだ。よろしく」
シオルン:
「よろしくお願いします! なかなかフランクな方ですね!」
カイ:
「お、おう、おまえもな」
 カイとシオルンが握手を交わす。すると、レンが怒鳴った。
レン:
「おい! 俺達には時間が無いんだ! 馴れ合いは後にしろ!」
カイ:
「あー、そうだな。なぁジェガロ、その強くなるのってすぐ出来るのか?」
 その問いにジェガロが頷く。
ジェガロ:
「ああ、すぐにでも始められる。全員、準備が出来たら先程の大きな広場まですぐに来い」
 そう言ってジェガロは家を出て行った。
 それに合わせてカイ達は荷物を置いてジェガロを追いかけていった。
 そんな中、ダリルが背中に背負ったエリスを指差しながらシオルンに尋ねる。
ダリル:
「すみませんが彼、怪我して気を失っているんです。そこの寝床に寝かせてもいいですか?」
 ダリルがそう尋ねるが、シオルンはエリスを視界の中心に収めた直後、呟いた。
シオルン:
「か、かっこいい……」
ダリル:
「え?」
 シオルンはうっとりとしながらエリスを見ていた。そのシオルンへダリルが不思議そうにしながら再び問いかける。
ダリル:
「シオルンさん?」
シオルン:
「え、あ、ああ! いいです! どうぞ、全力で使ってください!」
ダリル:
「ぜ、全力で……。あ、ありがとうございます」
 ダリルがエリスを寝床へ寝かせる。すると、シオルンが声をあげながら手を挙げた。
シオルン:
「あの!」
ダリル:
「ど、どうしましたか?」
シオルン:
「わたしが看病してもいいですか!」
ダリル:
「え、ええ。むしろ願ったり叶ったりです。おそらくかなりのダメージを受けたので当分目を覚ますことはないと思いますが、エリス様のこと、よろしくお願いします」
シオルン:
「はい! 任せてください!」
 元気なシオルンの返事に苦笑しながら、ダリルも家を出て行った。
 そして、シオルンは横たわっているエリスに近づき一言。
シオルン:
「やっぱり、かっこいい……」
 シオルンは常時うっとりとエリスを見ていた。
………………………………………………………………………………
 辺りはすっかり夜になっていた。ダリルが遅れて広場に到着すると、既に全員準備が出来ていた。
ダリル:
「すみません、エリス様のことをシオルンさんに預けてきました」
ジェガロ:
「うむ。では、お主らの修行を始めるとするか」
 ジェガロが修行宣言をする。その直後、ブツブツと何かを呟き始めた。その様子にカイが首を傾げる。
カイ:
「何してんだ、あれ」
エイラ:
「あれは魔法の詠唱です」
 エイラが答えるも、カイは更に首を傾げた。
カイ:
「え、魔法って魔法名唱えるだけでいいんじゃないの? 詠唱とかあったっけ?」
エイラ:
「いいえ、本来ないですけど、ジェガロの唱えようとしている魔法はあるということです。あのジェガロが詠唱を必要とする魔法ですから、きっと凄い魔法ですよ」
 カイ達がそう会話している間に、ジェガロが詠唱を終え、魔法の名を唱えた。
ジェガロ:
「《タイム・インターセプト》」
 その瞬間、広場を大きく半透明な膜が包んだ。その膜を観察するカイ。だが、特に変化が見られなかった。
カイ:
「……失敗か?」
 だが、カイ以外には失敗とは映っていなかった。
ミーア:
「何言ってるの、お兄ちゃん! さっきまで吹いていた風がぴたりと止まってるよ!」
カイ:
「風を止める魔法か?」
ミーア:
「そうじゃなくて!」
ジェガロ:
「ガハハハハ!」
 カイの反応にジェガロが愉快そうに笑う。
ジェガロ:
「お主、ゼノの息子なだけあってギャグのセンスあるのぅ」
エイラ:
「カイ様、辺りをもっとよく見てください。この光景は滅多に味わえませんよ」
 エイラにそう言われて、カイは辺りをさらに真剣に見渡してみる。
カイ:
「特に変わった様子は見受けられないけどな。さっきと変わらない風景だろ。さっきの戦いで割れた地面だろ。あとは、空で止まったまま動かない鳥……なんだって!?」
ジェガロ:
「ガハハハハ!」
 ジェガロはカイの反応に最早満足していた。口角を上げながらジェガロが魔法の説明をする。
ジェガロ:
「今、この広場の時を他の時から隔離して、時間の進め方をちといじくった。あちらでの約一時間が、こちらでは一日じゃ」
全員:
「っ!」
 カイ達の目に驚きが広がる。それにジェガロがさらに満足そうに笑みを浮かべる。
ジェガロ:
「どうじゃ悪魔。お主の魔法よりも全てが格段に上じゃろ」
エイラ:
「そうですね。あと、次悪魔って言ったら、ゼノに屠ってもらいますよ」
ジェガロ:
「……すまん」
 少し肩を落としたジェガロへ、レンが疑問を投げかける。
レン:
「この魔法が使用できるなら、あの三人組の時間を遅めて簡単に人質を確保し、奴らも倒せるのではないか? それなら修行などに時間を割かずとも……」
ジェガロ:
「確かにそうじゃ。じゃが、果たしてそれでよいのか?」
レン:
「……どういうことだ」
 訝し気なレンにジェガロが髭を撫でながら答える。
ジェガロ:
「確かにそうすれば簡単じゃろう。じゃが、それは全て儂の力によるものじゃ。もし儂が手助けをしてあやつらを倒したとする。じゃが、もしいつかまた儂が居ない状態であのように襲われたら、お主達は果たして生き残れるじゃろうか」
 その問いにレンは生き残れると、言えなかった。その様子にジェガロが頷く。
ジェガロ:
「つまり、そういうことじゃ。これはお主達の次に繋がる大事な修行じゃ。気を抜くでないぞ」
レン:
「……分かった」
 その時、今度はカイがジェガロへ話しかけた。
カイ:
「なぁ、ジェガロ。ちょっと頼み事っていうかお願いなんだけど」
ジェガロ:
「なんじゃ」
カイ:
「たとえ人質を取り戻して、ジェガロの参加が可能になっても頂上での戦いには手を出さないでくれ」
 その頼みにジェガロは目を丸くした。
ジェガロ:
「よいのか? 儂が言いたいのは儂が手伝うにせよこの修業は大切だということじゃ。手伝わんとは言っておらんぞ」
カイ:
「分かってる。でも今回はおれ達の手でどうにかすべきだよ。ここであんたを頼らないと勝てないようじゃ先が思いやられるしさ」
 そして、カイが笑ってジェガロへ告げる。
カイ:
「それに、あの竜に修行をつけてもらうんだ。なら、勝たなきゃあんたに悪い」
 その言葉にジェガロは驚き、やがて口角を上げて頷いた。
ジェガロ:
「分かった、約束しよう。儂は手を出さん。お主達が勝つのを見届けよう」
カイ:
「ああ、ありがとな!」
ジェガロ:
「では、始めようか」
 そして修行が始まる。だが、そこにはまだイデアが残っていた。
カイ:
「あれ、イデアはここにいても戦わないだろ?」
 カイの言葉をイデアは首肯する。そんなイデアにジェガロが尋ねた。
ジェガロ:
「なんじゃ、なら何故ここにおる」
イデア:
「……カイにセインを渡すため?」
 イデアは自身の言葉に疑問形であった。
ジェガロ:
「なら、そのセインとやらをさっさと渡せ。もう始めるぞ」
 促されてイデアがカイにセインを渡した。受け取ってカイがイデアの頭を撫でる。
カイ:
「ありがとな」
イデア:
「頑張ってね」
 渡し終えたイデアにジェガロが指示を送る。
ジェガロ:
「お主はこちらの時からあちらの時に戻るのじゃ。あそこが境界線じゃ」
イデア:
「分かりました」
 言われた通りにイデアが膜から出る。その直後、中からは膜を出たイデアが急に動かなくなったように見えた。
ダリル:
「これが、時間の違いか」
ジェガロ:
「そうじゃ。ちなみにだが、こちらからあちらに行けば、疲労が一気に凝縮されてとんでもないことになるぞ。おそらく今出たあやつも短い期間ではあったが、少しふらつく程度の症状が起こるはずじゃ。もしこちらで相当の時間を過ごしてからあちらへ行った時、凄まじい事になるとは思わんか?」
 ジェガロの言葉に全員が息を呑む。
ジェガロ:
「さて、日の出まであと八時間。つまり八日あるということじゃ。じゃから、六日間全力で修行してもらう。そして、あちらの時に戻って二時間しっかり休め。おそらく体を動かすことすらままならなくなるからの」
 そう言いながらジェガロが全員の顔を見渡す。全員覚悟の出来た表情を浮かべていた。それを見てジェガロがニッと笑う。
ジェガロ:
「いい顔じゃ。ではまず、あやつらの速度についていくための修行じゃ。わしがお主らそっくりの雷人形を用意する。そやつは高速でこのフィールドを動き回る。お主らは自分そっくりの雷人形に一撃与えればクリアじゃ」
カイ:
「え、一撃だけでいいのか?」
ジェガロ:
「そうじゃぞ。しかし、スピードを甘くみるでない。《エレクトリックマリオ》」
 そう言って早速ジェガロが一体雷人形を作る。それはカイそっくりであった。
カイ:
「へー、本当にまんまおれじゃん……」
 カイが感嘆の声をあげていた時だった。カイ(偽)が一瞬で姿を消したのだ。
カイ:
「なに!?」
 実際は消えたのではない。雷の速さで高速で移動しているのだ。それにしても高速すぎたため、ダークネスの転移のように消えて見えたのである。
 そしてカイ(偽)はカイの背後に瞬時に移動すると、カイの背中を強く殴った。
カイ:
「痛って!」
 衝撃でカイが前のめりに倒れる。それを見ながらジェガロが説明を続ける。
ジェガロ:
「雷人形は攻撃も仕掛けてくる。決して油断せんようにな。雷人形の一撃を喰らえば死ぬと思うんじゃ」
カイ:
「っ、了解!」
ジェガロ:
「この修業が終われば、エイラとミーアには儂が直々に魔法を教えよう。後の奴らは適当に雷人形を相手に自分の技に磨きをかけるんじゃな」
カイ:
「最後のおれ達だけ手抜きすぎない!?」
ジェガロ:
「馬鹿を言うな。精錬された技はそれだけ桁違いの力となる。自分の出来ることをもっとよく見つめるのじゃ」
 そして、ジェガロが全員分の雷人形を作り終える。
ジェガロ:
「では、よいか。始めるぞ」
 その言葉にカイ達が身構える。そして、雷人形達は動き始めた。
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