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クリスマスの夜
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俺は女の子が好きだ。
あの柔らかい体、猫みたいに気まぐれのところ、ふわふわの服。
ぎゃーぎゃーと騒がれて、時たまうるさいと感じるけど、騒いでくれるから寂しさを感じないで済む。
俺は女の子が好きなんだ。
だから、ありえない。
ありえないんだ。
彼氏なんて。
§ § §
俺の友達実田勇はゲイではない。でも、凄く綺麗な中国人に惚れてしまい、付き合うようになってしまった。同棲までして、かなり本気だ。
勇の彼氏、中国人――王さんは女性的色気を持っているかなりの美人だ。
そんな彼に好かれたら、そりゃあその道に転げるのもわかる。
そういう俺も、彼だったらちょっと試してみたいと思ったくらいだ。
でも、迫っていたらすっげぇ怒られ、怖かったけど。
性格は恐ろしく怖い。でも、まあ、見た目は最高だ。
ま、その彼のおかげで、勇はすっかり付き合いが悪くなってしまった。俺は可能なら毎日誰かと一緒にいたい。一人が嫌だ。
だから彼女と会えない日に俺は勇を誘っていた。が、それができなくなり、俺は勇の後輩――忠史とつるむようになった。
背が高く、イケメン。だが、いい奴で俺の話をよく聞いてくれて、笑ってくれる。一緒にいて楽しい。だから良く誘ってしまう。
だが、いかんせん。彼はゲイ。ゲイだった。
誘ったら誤解されるかとも思ったが、彼は俺と普通の友達として付き合ってくれてる。彼にだって好みがあるだろう。俺みたいなイケメンではない奴は友達と思ってくれるらしい。
クリスマスの2週間前。彼女に呼び出された。
「ごめんなさい。好きな人ができたの」
予想していた別れ。前からあやしいと思っていた。電話しても出ないことが多くなった。セックスのほうも回数が減っていた。
俺は既にわかっていたせいか、さほどショックも受けず、「わかった、別れよう」と答えていた。
彼女は安堵したように笑うと、軽やかなステップで俺の前から去って行った。
痛みはなかった。
悲しいことだが、振られることには慣れている。
しかもクリスマス前に。
だからショックはなかった。予想していたといえ、ショックがないということは俺もあんまり彼女を好きじゃなかったかもしれない。
ただ困るのは、一人になってしまうということだ。
回数が少なくても寝るときに彼女が傍にいてくれると嬉しくなる。それだけで安心する。
「新しい彼女見つけなきゃな」
俺は駅に向かって歩きながら、ぼやく。
今年のクリスマスも彼女なしか。
去年もそうだった。
でも去年は勇が付き合ってくれたっけ。他の奴らは彼女との夜を取り上がった。友情は熱くないのか、彼女には負けるのか?そう思いながらも俺も彼女がいたら彼女優先かもなと笑ったものだ。
今年は勇も、彼女じゃなくて彼氏がいる。
さあ、どうしたものか。
一人は嫌だ。
だったら、男だけで騒げばいいか。
二人一緒に誘ったら来るかもしれない。
俺は自分の思いつきが嬉しくなり、別れた彼女のことなどすっかり忘れていた。
それから数日後、俺は忠史と飲んだ。相変わらず優しい彼は、俺の話を楽しそうに聞いてくれた。
「うちでクリスマスパーティーを開こう!」
しかし、俺はそう言うと、その顔がひきつる。
「えっ?!」
しかも眉毛が八の字を書いていた。
予定があるのか?
そういや、彼氏と過ごす可能性もあるわけだよな。
いや、でも俺とこうして会っているってことは、彼氏がいないのか?
それか勘違いしてるとか?俺と二人っきりとか。
いや、それはないから。
「もちろん、勇と王さんも一緒に誘おうぜ」
そうそう、二人っきりじゃないから。
でも……。
「俺が勇を誘うから、王さんのほうのほう頼むな」
俺は王さんを誘えない。だって、あの人怖いし。
聞けば、忠史は王さんとよくメールのやり取りをしているようだ。
俺よりも、彼が誘った方がいいだろうと思って、そう言った。
すると彼はますます困った顔をしてしまった。
なんでだろう?
やっぱり彼も王さんが怖いのだろうか?
でもパーティーだし、大勢と騒ぎたい。他の奴らは彼女がいる。俺は勇達に頼るしかないんだ。
「悪いけど頼むよな。俺、頑張って色々作るからさ。お前、家庭料理好きって言ってただろう?」
そうそう、奴は外で食べるより家の中で食べる方が好きって言っていた。だから、今回は俺が作るつもりだ。俺はこう見えても料理は得意だ。彼女に料理を振る舞ったこともある。
そうすると買い出しが必要だな。4人といっても俺達は男だ。結構食べるし。
クリスマスは今年は火曜日か。それだったらその前の日曜日でも材料買っておくか。
「日本はさあ、クリスマス休みじゃないからむかつくよな。しょうがないから23日、忠史、買い物付き合ってな」
俺がそう言うと、彼は戸惑いながらも頷いた。
忠史って本当にいい奴だな。
あの柔らかい体、猫みたいに気まぐれのところ、ふわふわの服。
ぎゃーぎゃーと騒がれて、時たまうるさいと感じるけど、騒いでくれるから寂しさを感じないで済む。
俺は女の子が好きなんだ。
だから、ありえない。
ありえないんだ。
彼氏なんて。
§ § §
俺の友達実田勇はゲイではない。でも、凄く綺麗な中国人に惚れてしまい、付き合うようになってしまった。同棲までして、かなり本気だ。
勇の彼氏、中国人――王さんは女性的色気を持っているかなりの美人だ。
そんな彼に好かれたら、そりゃあその道に転げるのもわかる。
そういう俺も、彼だったらちょっと試してみたいと思ったくらいだ。
でも、迫っていたらすっげぇ怒られ、怖かったけど。
性格は恐ろしく怖い。でも、まあ、見た目は最高だ。
ま、その彼のおかげで、勇はすっかり付き合いが悪くなってしまった。俺は可能なら毎日誰かと一緒にいたい。一人が嫌だ。
だから彼女と会えない日に俺は勇を誘っていた。が、それができなくなり、俺は勇の後輩――忠史とつるむようになった。
背が高く、イケメン。だが、いい奴で俺の話をよく聞いてくれて、笑ってくれる。一緒にいて楽しい。だから良く誘ってしまう。
だが、いかんせん。彼はゲイ。ゲイだった。
誘ったら誤解されるかとも思ったが、彼は俺と普通の友達として付き合ってくれてる。彼にだって好みがあるだろう。俺みたいなイケメンではない奴は友達と思ってくれるらしい。
クリスマスの2週間前。彼女に呼び出された。
「ごめんなさい。好きな人ができたの」
予想していた別れ。前からあやしいと思っていた。電話しても出ないことが多くなった。セックスのほうも回数が減っていた。
俺は既にわかっていたせいか、さほどショックも受けず、「わかった、別れよう」と答えていた。
彼女は安堵したように笑うと、軽やかなステップで俺の前から去って行った。
痛みはなかった。
悲しいことだが、振られることには慣れている。
しかもクリスマス前に。
だからショックはなかった。予想していたといえ、ショックがないということは俺もあんまり彼女を好きじゃなかったかもしれない。
ただ困るのは、一人になってしまうということだ。
回数が少なくても寝るときに彼女が傍にいてくれると嬉しくなる。それだけで安心する。
「新しい彼女見つけなきゃな」
俺は駅に向かって歩きながら、ぼやく。
今年のクリスマスも彼女なしか。
去年もそうだった。
でも去年は勇が付き合ってくれたっけ。他の奴らは彼女との夜を取り上がった。友情は熱くないのか、彼女には負けるのか?そう思いながらも俺も彼女がいたら彼女優先かもなと笑ったものだ。
今年は勇も、彼女じゃなくて彼氏がいる。
さあ、どうしたものか。
一人は嫌だ。
だったら、男だけで騒げばいいか。
二人一緒に誘ったら来るかもしれない。
俺は自分の思いつきが嬉しくなり、別れた彼女のことなどすっかり忘れていた。
それから数日後、俺は忠史と飲んだ。相変わらず優しい彼は、俺の話を楽しそうに聞いてくれた。
「うちでクリスマスパーティーを開こう!」
しかし、俺はそう言うと、その顔がひきつる。
「えっ?!」
しかも眉毛が八の字を書いていた。
予定があるのか?
そういや、彼氏と過ごす可能性もあるわけだよな。
いや、でも俺とこうして会っているってことは、彼氏がいないのか?
それか勘違いしてるとか?俺と二人っきりとか。
いや、それはないから。
「もちろん、勇と王さんも一緒に誘おうぜ」
そうそう、二人っきりじゃないから。
でも……。
「俺が勇を誘うから、王さんのほうのほう頼むな」
俺は王さんを誘えない。だって、あの人怖いし。
聞けば、忠史は王さんとよくメールのやり取りをしているようだ。
俺よりも、彼が誘った方がいいだろうと思って、そう言った。
すると彼はますます困った顔をしてしまった。
なんでだろう?
やっぱり彼も王さんが怖いのだろうか?
でもパーティーだし、大勢と騒ぎたい。他の奴らは彼女がいる。俺は勇達に頼るしかないんだ。
「悪いけど頼むよな。俺、頑張って色々作るからさ。お前、家庭料理好きって言ってただろう?」
そうそう、奴は外で食べるより家の中で食べる方が好きって言っていた。だから、今回は俺が作るつもりだ。俺はこう見えても料理は得意だ。彼女に料理を振る舞ったこともある。
そうすると買い出しが必要だな。4人といっても俺達は男だ。結構食べるし。
クリスマスは今年は火曜日か。それだったらその前の日曜日でも材料買っておくか。
「日本はさあ、クリスマス休みじゃないからむかつくよな。しょうがないから23日、忠史、買い物付き合ってな」
俺がそう言うと、彼は戸惑いながらも頷いた。
忠史って本当にいい奴だな。
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