1 / 10
クリスマスの夜
1
しおりを挟む
俺は女の子が好きだ。
あの柔らかい体、猫みたいに気まぐれのところ、ふわふわの服。
ぎゃーぎゃーと騒がれて、時たまうるさいと感じるけど、騒いでくれるから寂しさを感じないで済む。
俺は女の子が好きなんだ。
だから、ありえない。
ありえないんだ。
彼氏なんて。
§ § §
俺の友達実田勇はゲイではない。でも、凄く綺麗な中国人に惚れてしまい、付き合うようになってしまった。同棲までして、かなり本気だ。
勇の彼氏、中国人――王さんは女性的色気を持っているかなりの美人だ。
そんな彼に好かれたら、そりゃあその道に転げるのもわかる。
そういう俺も、彼だったらちょっと試してみたいと思ったくらいだ。
でも、迫っていたらすっげぇ怒られ、怖かったけど。
性格は恐ろしく怖い。でも、まあ、見た目は最高だ。
ま、その彼のおかげで、勇はすっかり付き合いが悪くなってしまった。俺は可能なら毎日誰かと一緒にいたい。一人が嫌だ。
だから彼女と会えない日に俺は勇を誘っていた。が、それができなくなり、俺は勇の後輩――忠史とつるむようになった。
背が高く、イケメン。だが、いい奴で俺の話をよく聞いてくれて、笑ってくれる。一緒にいて楽しい。だから良く誘ってしまう。
だが、いかんせん。彼はゲイ。ゲイだった。
誘ったら誤解されるかとも思ったが、彼は俺と普通の友達として付き合ってくれてる。彼にだって好みがあるだろう。俺みたいなイケメンではない奴は友達と思ってくれるらしい。
クリスマスの2週間前。彼女に呼び出された。
「ごめんなさい。好きな人ができたの」
予想していた別れ。前からあやしいと思っていた。電話しても出ないことが多くなった。セックスのほうも回数が減っていた。
俺は既にわかっていたせいか、さほどショックも受けず、「わかった、別れよう」と答えていた。
彼女は安堵したように笑うと、軽やかなステップで俺の前から去って行った。
痛みはなかった。
悲しいことだが、振られることには慣れている。
しかもクリスマス前に。
だからショックはなかった。予想していたといえ、ショックがないということは俺もあんまり彼女を好きじゃなかったかもしれない。
ただ困るのは、一人になってしまうということだ。
回数が少なくても寝るときに彼女が傍にいてくれると嬉しくなる。それだけで安心する。
「新しい彼女見つけなきゃな」
俺は駅に向かって歩きながら、ぼやく。
今年のクリスマスも彼女なしか。
去年もそうだった。
でも去年は勇が付き合ってくれたっけ。他の奴らは彼女との夜を取り上がった。友情は熱くないのか、彼女には負けるのか?そう思いながらも俺も彼女がいたら彼女優先かもなと笑ったものだ。
今年は勇も、彼女じゃなくて彼氏がいる。
さあ、どうしたものか。
一人は嫌だ。
だったら、男だけで騒げばいいか。
二人一緒に誘ったら来るかもしれない。
俺は自分の思いつきが嬉しくなり、別れた彼女のことなどすっかり忘れていた。
それから数日後、俺は忠史と飲んだ。相変わらず優しい彼は、俺の話を楽しそうに聞いてくれた。
「うちでクリスマスパーティーを開こう!」
しかし、俺はそう言うと、その顔がひきつる。
「えっ?!」
しかも眉毛が八の字を書いていた。
予定があるのか?
そういや、彼氏と過ごす可能性もあるわけだよな。
いや、でも俺とこうして会っているってことは、彼氏がいないのか?
それか勘違いしてるとか?俺と二人っきりとか。
いや、それはないから。
「もちろん、勇と王さんも一緒に誘おうぜ」
そうそう、二人っきりじゃないから。
でも……。
「俺が勇を誘うから、王さんのほうのほう頼むな」
俺は王さんを誘えない。だって、あの人怖いし。
聞けば、忠史は王さんとよくメールのやり取りをしているようだ。
俺よりも、彼が誘った方がいいだろうと思って、そう言った。
すると彼はますます困った顔をしてしまった。
なんでだろう?
やっぱり彼も王さんが怖いのだろうか?
でもパーティーだし、大勢と騒ぎたい。他の奴らは彼女がいる。俺は勇達に頼るしかないんだ。
「悪いけど頼むよな。俺、頑張って色々作るからさ。お前、家庭料理好きって言ってただろう?」
そうそう、奴は外で食べるより家の中で食べる方が好きって言っていた。だから、今回は俺が作るつもりだ。俺はこう見えても料理は得意だ。彼女に料理を振る舞ったこともある。
そうすると買い出しが必要だな。4人といっても俺達は男だ。結構食べるし。
クリスマスは今年は火曜日か。それだったらその前の日曜日でも材料買っておくか。
「日本はさあ、クリスマス休みじゃないからむかつくよな。しょうがないから23日、忠史、買い物付き合ってな」
俺がそう言うと、彼は戸惑いながらも頷いた。
忠史って本当にいい奴だな。
あの柔らかい体、猫みたいに気まぐれのところ、ふわふわの服。
ぎゃーぎゃーと騒がれて、時たまうるさいと感じるけど、騒いでくれるから寂しさを感じないで済む。
俺は女の子が好きなんだ。
だから、ありえない。
ありえないんだ。
彼氏なんて。
§ § §
俺の友達実田勇はゲイではない。でも、凄く綺麗な中国人に惚れてしまい、付き合うようになってしまった。同棲までして、かなり本気だ。
勇の彼氏、中国人――王さんは女性的色気を持っているかなりの美人だ。
そんな彼に好かれたら、そりゃあその道に転げるのもわかる。
そういう俺も、彼だったらちょっと試してみたいと思ったくらいだ。
でも、迫っていたらすっげぇ怒られ、怖かったけど。
性格は恐ろしく怖い。でも、まあ、見た目は最高だ。
ま、その彼のおかげで、勇はすっかり付き合いが悪くなってしまった。俺は可能なら毎日誰かと一緒にいたい。一人が嫌だ。
だから彼女と会えない日に俺は勇を誘っていた。が、それができなくなり、俺は勇の後輩――忠史とつるむようになった。
背が高く、イケメン。だが、いい奴で俺の話をよく聞いてくれて、笑ってくれる。一緒にいて楽しい。だから良く誘ってしまう。
だが、いかんせん。彼はゲイ。ゲイだった。
誘ったら誤解されるかとも思ったが、彼は俺と普通の友達として付き合ってくれてる。彼にだって好みがあるだろう。俺みたいなイケメンではない奴は友達と思ってくれるらしい。
クリスマスの2週間前。彼女に呼び出された。
「ごめんなさい。好きな人ができたの」
予想していた別れ。前からあやしいと思っていた。電話しても出ないことが多くなった。セックスのほうも回数が減っていた。
俺は既にわかっていたせいか、さほどショックも受けず、「わかった、別れよう」と答えていた。
彼女は安堵したように笑うと、軽やかなステップで俺の前から去って行った。
痛みはなかった。
悲しいことだが、振られることには慣れている。
しかもクリスマス前に。
だからショックはなかった。予想していたといえ、ショックがないということは俺もあんまり彼女を好きじゃなかったかもしれない。
ただ困るのは、一人になってしまうということだ。
回数が少なくても寝るときに彼女が傍にいてくれると嬉しくなる。それだけで安心する。
「新しい彼女見つけなきゃな」
俺は駅に向かって歩きながら、ぼやく。
今年のクリスマスも彼女なしか。
去年もそうだった。
でも去年は勇が付き合ってくれたっけ。他の奴らは彼女との夜を取り上がった。友情は熱くないのか、彼女には負けるのか?そう思いながらも俺も彼女がいたら彼女優先かもなと笑ったものだ。
今年は勇も、彼女じゃなくて彼氏がいる。
さあ、どうしたものか。
一人は嫌だ。
だったら、男だけで騒げばいいか。
二人一緒に誘ったら来るかもしれない。
俺は自分の思いつきが嬉しくなり、別れた彼女のことなどすっかり忘れていた。
それから数日後、俺は忠史と飲んだ。相変わらず優しい彼は、俺の話を楽しそうに聞いてくれた。
「うちでクリスマスパーティーを開こう!」
しかし、俺はそう言うと、その顔がひきつる。
「えっ?!」
しかも眉毛が八の字を書いていた。
予定があるのか?
そういや、彼氏と過ごす可能性もあるわけだよな。
いや、でも俺とこうして会っているってことは、彼氏がいないのか?
それか勘違いしてるとか?俺と二人っきりとか。
いや、それはないから。
「もちろん、勇と王さんも一緒に誘おうぜ」
そうそう、二人っきりじゃないから。
でも……。
「俺が勇を誘うから、王さんのほうのほう頼むな」
俺は王さんを誘えない。だって、あの人怖いし。
聞けば、忠史は王さんとよくメールのやり取りをしているようだ。
俺よりも、彼が誘った方がいいだろうと思って、そう言った。
すると彼はますます困った顔をしてしまった。
なんでだろう?
やっぱり彼も王さんが怖いのだろうか?
でもパーティーだし、大勢と騒ぎたい。他の奴らは彼女がいる。俺は勇達に頼るしかないんだ。
「悪いけど頼むよな。俺、頑張って色々作るからさ。お前、家庭料理好きって言ってただろう?」
そうそう、奴は外で食べるより家の中で食べる方が好きって言っていた。だから、今回は俺が作るつもりだ。俺はこう見えても料理は得意だ。彼女に料理を振る舞ったこともある。
そうすると買い出しが必要だな。4人といっても俺達は男だ。結構食べるし。
クリスマスは今年は火曜日か。それだったらその前の日曜日でも材料買っておくか。
「日本はさあ、クリスマス休みじゃないからむかつくよな。しょうがないから23日、忠史、買い物付き合ってな」
俺がそう言うと、彼は戸惑いながらも頷いた。
忠史って本当にいい奴だな。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
恋人>幼馴染
すずかけあおい
BL
「言わなきゃ伝わらないやつには言い続けるに決まってんだろ」
受けが大好きな攻め×ないものねだりな受け(ちょっと鈍い)。
自分にはないものばかりと、幼馴染の一葉になりたい深來。
その一葉は深來がずっと好きで―――。
〔攻め〕左野 一葉(さの いつは)
〔受け〕本多 深來(ほんだ みらい)
「誕生日前日に世界が始まる」
悠里
BL
真也×凌 大学生(中学からの親友です)
凌の誕生日前日23時過ぎからのお話です(^^
ほっこり読んでいただけたら♡
幸せな誕生日を想像して頂けたらいいなと思います♡
→書きたくなって番外編に少し続けました。

初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
絶対にお嫁さんにするから覚悟してろよ!!!
toki
BL
「ていうかちゃんと寝てなさい」
「すいません……」
ゆるふわ距離感バグ幼馴染の読み切りBLです♪
一応、有馬くんが攻めのつもりで書きましたが、お好きなように解釈していただいて大丈夫です。
作中の表現ではわかりづらいですが、有馬くんはけっこう見目が良いです。でもガチで桜田くんしか眼中にないので自分が目立っている自覚はまったくありません。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!(https://www.pixiv.net/artworks/110931919)

片桐くんはただの幼馴染
ベポ田
BL
俺とアイツは同小同中ってだけなので、そのチョコは直接片桐くんに渡してあげてください。
藤白侑希
バレー部。眠そうな地味顔。知らないうちに部屋に置かれていた水槽にいつの間にか住み着いていた亀が、気付いたらいなくなっていた。
右成夕陽
バレー部。精悍な顔つきの黒髪美形。特に親しくない人の水筒から無断で茶を飲む。
片桐秀司
バスケ部。爽やかな風が吹く黒髪美形。部活生の9割は黒髪か坊主。
佐伯浩平
こーくん。キリッとした塩顔。藤白のジュニアからの先輩。藤白を先輩離れさせようと努力していたが、ちゃんと高校まで追ってきて涙ぐんだ。
僕たち、結婚することになりました
リリーブルー
BL
俺は、なぜか知らないが、会社の後輩(♂)と結婚することになった!
後輩はモテモテな25歳。
俺は37歳。
笑えるBL。ラブコメディ💛
fujossyの結婚テーマコンテスト応募作です。
たまにはゆっくり、歩きませんか?
隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。
よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。
世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる