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第一章 王の生まれ変わり
10 この世界で初めての。
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「脱ぐ必要なんてありませんわ」
ハリエットはそう言うとユウタを立たせ、服の上から寸法していく。
「それで体にあった服が作れるのか?」
「もちろんですわ。アタシの腕を信じてくださいませ」
タリダスとハリエットのやり取りを聞きながら、ユウタはされるがままに寸法される。
裸にならないといけないと思っていたので、心の底からほっとしていた。
「さあ、寸法は十分です。どのような服装がご所望です?」
ハリエットは桃色がかった金色のツインテールを振り回しながら、ユウタに聞く。
その髪、動きに勢いがありすぎて、彼は後ずさる。
二人の間に入り込んだのがタリダスで、ハリエットをひと睨みした。
「ユータ様に迫るな。質問なら私にしろ」
「ああ、でも着る方の要望が一番大事ですわ」
「それは、そうだが」
「えっと、僕の要望は別にないです。えっと、派手なものは避けてほしいです」
「まあ、可愛らしい」
ハリエットが両手を組んでうっとりしてユウタを見るので、タリダスがまた睨みをきかせる。
「怒りやすいのはよくありませんわよ。ではヘルベル卿。正装、外出用、普段着、どれぐらいご所望でしょうか?」
ユウタから視線をタリダスに向けて、ハリエットは問う。
「そうだな。正装は二着、外出用は三着、普段着は五着にしようか」
「そんなに?!」
ユウタはびっくりして声を出してしまった。
「ユータ様?少ないくらいですわよ」
「少ないのか?どれくらい頼んだほうがいいと思う?」
「アタシならば、正装三着、外出用は五着、普段着は十着くらいかしら」
「それでは、その分頼もう。色や形は任せていいか?」
「アタシにお任せですか?」
ハリエットが嬉しそうに笑い、その桃色ツインテールが跳ねる。
「おかしな服を作ったら、どうなるかわかっているな?」
「もちろんですわ。ユータ様にぴったりな服を仕立てて見せます」
「それならいい」
ユウタが口を挟む間もなく、話はまとまり、ハリエットはあわただしく出ていった。
「あ、あの。服、多くありませんか?」
「普通ではありませんか?ハリエットもそう言っていたでしょう?」
ハリエットは、「アタシならば」と言っており、一般的な意見ではなかった。しかしタリダスは一般論としてとったらしく、ユウタは口答えする勇気もないので、口をつぐむ。
ただ金額だけが気になった。
「あの、高いですよね?」
「高い?料金のことでしょうか?ユータ様はお気になさらず。私は騎士団長なので、王宮では高給取りですよ」
タリダスが冗談なのか、そんなことを言い、ユウタは少しだけおかしくなり、口元を綻ばせる。
「笑ってくださいましたね。ユータ様ももっとゆったりされてください。ここをあなたの家だと思ってくださって」
「僕の家?」
「そうです。異世界のことは忘れてしまいましょう」
「忘れる?」
「そうです」
「……ありがとう」
日本での思い出は何一つ楽しいものはなかった。
忘れるのは難しい。
しかし、この世界に、この屋敷にきて日本のことを考えることが少なくなってきた。
それはいいことかもしれない。
腐っていない。変な味がしないものも毎日食べられて、ユウタはこれが幸せかもしれないと思い始めてた。
ただ、その幸せを享受できるのは、彼がアルローであるから。
その考えに至ると、幸せな気分がとたんになくなる。
「どうしました?お疲れですか?」
「そんなことはないです。あの、あの本を読み終わったので、別の本を借りてもいいですか?少し難しくても大丈夫です」
聖剣に触れるのは最後にしたい。
その前に色々この世界のことが、アルローのことが知りたいとタリダスに頼む。
「わかりました。持ってきましょう」
タリダスはそう言って、ユウタを部屋に残して出て行った。
部屋の中に一人取り残され、緊張が解ける。
同時に寂しく、おかしなものだとユウタは思った。
「こちらの本をどうぞ。この国の歴史も書かれているのでお役に立つと思います」
「ありがとうございます」
戻ってきたタリダスから本を受け取り、借りていた絵本を返す。
「それではまた昼食時に」
「はい」
タリダスが退室し、本を読み始めたユウタは、急に生理現象に苦しめられた。
お腹が痛くなってしまったのだ。
小便はこの部屋についている小部屋の壺にすることをわかっていたが、大便はどうだろうかとユウタは悩む。
迷ってるうちにどんどんお腹が痛くなり、ベッドの上でうなっていると扉が叩かれた。
「ど、どうぞ」
これは救いかもしれない。
救いを求めて、開かれた扉を見るとそこにいたのはタリダスで安堵する。
しかし油断すると出てしまう。
「あ、あのタリダス」
「ユータ様!どうされたのですか?」
ベッドに向かってタリダスは猛突進してきた。そしてひょいとユウタを抱き上げる。
「何があったのです?」
「あ、あの。お腹痛いだけだから。えっと、どうしたらいいのかな?」
「ああ、そういうことですね。大きめの壺をすぐに持ってきますので、待ってください!」
タリダスはゆっくりユウタをベッドに下すと、足早に部屋を出ていき、すぐに口の大きな壺を持ってきた。
「どうぞ」
「え?あの、あっちに置いてもらってもいい?あと、拭くものありますか?」
「もちろんです。気が利かず、すみません。それも持ってきます。まずはこれを厠に置いてきますね」
「厠」
「はい」
トイレを厠と呼ぶことをユウタは知っていた。
なので、タリダスが壺を厠に運ぶとすぐにベッドから降りようとした。ところが彼がすぐに飛んできて、ユウタを抱き上げ、厠まで連れていく。
まさか一緒に入るつもりかと心配したが、それはなくて、心底ユウタは安堵した。
「どうぞ、ごゆっくり。拭くものは厠の外に置いておきます。終わったら教えてくださいね」
大便の処理までさせることには抵抗があったが、ユウタは頷く。
扉を閉め、すべての恥を捨ててこの世界で初めての大をした。
ハリエットはそう言うとユウタを立たせ、服の上から寸法していく。
「それで体にあった服が作れるのか?」
「もちろんですわ。アタシの腕を信じてくださいませ」
タリダスとハリエットのやり取りを聞きながら、ユウタはされるがままに寸法される。
裸にならないといけないと思っていたので、心の底からほっとしていた。
「さあ、寸法は十分です。どのような服装がご所望です?」
ハリエットは桃色がかった金色のツインテールを振り回しながら、ユウタに聞く。
その髪、動きに勢いがありすぎて、彼は後ずさる。
二人の間に入り込んだのがタリダスで、ハリエットをひと睨みした。
「ユータ様に迫るな。質問なら私にしろ」
「ああ、でも着る方の要望が一番大事ですわ」
「それは、そうだが」
「えっと、僕の要望は別にないです。えっと、派手なものは避けてほしいです」
「まあ、可愛らしい」
ハリエットが両手を組んでうっとりしてユウタを見るので、タリダスがまた睨みをきかせる。
「怒りやすいのはよくありませんわよ。ではヘルベル卿。正装、外出用、普段着、どれぐらいご所望でしょうか?」
ユウタから視線をタリダスに向けて、ハリエットは問う。
「そうだな。正装は二着、外出用は三着、普段着は五着にしようか」
「そんなに?!」
ユウタはびっくりして声を出してしまった。
「ユータ様?少ないくらいですわよ」
「少ないのか?どれくらい頼んだほうがいいと思う?」
「アタシならば、正装三着、外出用は五着、普段着は十着くらいかしら」
「それでは、その分頼もう。色や形は任せていいか?」
「アタシにお任せですか?」
ハリエットが嬉しそうに笑い、その桃色ツインテールが跳ねる。
「おかしな服を作ったら、どうなるかわかっているな?」
「もちろんですわ。ユータ様にぴったりな服を仕立てて見せます」
「それならいい」
ユウタが口を挟む間もなく、話はまとまり、ハリエットはあわただしく出ていった。
「あ、あの。服、多くありませんか?」
「普通ではありませんか?ハリエットもそう言っていたでしょう?」
ハリエットは、「アタシならば」と言っており、一般的な意見ではなかった。しかしタリダスは一般論としてとったらしく、ユウタは口答えする勇気もないので、口をつぐむ。
ただ金額だけが気になった。
「あの、高いですよね?」
「高い?料金のことでしょうか?ユータ様はお気になさらず。私は騎士団長なので、王宮では高給取りですよ」
タリダスが冗談なのか、そんなことを言い、ユウタは少しだけおかしくなり、口元を綻ばせる。
「笑ってくださいましたね。ユータ様ももっとゆったりされてください。ここをあなたの家だと思ってくださって」
「僕の家?」
「そうです。異世界のことは忘れてしまいましょう」
「忘れる?」
「そうです」
「……ありがとう」
日本での思い出は何一つ楽しいものはなかった。
忘れるのは難しい。
しかし、この世界に、この屋敷にきて日本のことを考えることが少なくなってきた。
それはいいことかもしれない。
腐っていない。変な味がしないものも毎日食べられて、ユウタはこれが幸せかもしれないと思い始めてた。
ただ、その幸せを享受できるのは、彼がアルローであるから。
その考えに至ると、幸せな気分がとたんになくなる。
「どうしました?お疲れですか?」
「そんなことはないです。あの、あの本を読み終わったので、別の本を借りてもいいですか?少し難しくても大丈夫です」
聖剣に触れるのは最後にしたい。
その前に色々この世界のことが、アルローのことが知りたいとタリダスに頼む。
「わかりました。持ってきましょう」
タリダスはそう言って、ユウタを部屋に残して出て行った。
部屋の中に一人取り残され、緊張が解ける。
同時に寂しく、おかしなものだとユウタは思った。
「こちらの本をどうぞ。この国の歴史も書かれているのでお役に立つと思います」
「ありがとうございます」
戻ってきたタリダスから本を受け取り、借りていた絵本を返す。
「それではまた昼食時に」
「はい」
タリダスが退室し、本を読み始めたユウタは、急に生理現象に苦しめられた。
お腹が痛くなってしまったのだ。
小便はこの部屋についている小部屋の壺にすることをわかっていたが、大便はどうだろうかとユウタは悩む。
迷ってるうちにどんどんお腹が痛くなり、ベッドの上でうなっていると扉が叩かれた。
「ど、どうぞ」
これは救いかもしれない。
救いを求めて、開かれた扉を見るとそこにいたのはタリダスで安堵する。
しかし油断すると出てしまう。
「あ、あのタリダス」
「ユータ様!どうされたのですか?」
ベッドに向かってタリダスは猛突進してきた。そしてひょいとユウタを抱き上げる。
「何があったのです?」
「あ、あの。お腹痛いだけだから。えっと、どうしたらいいのかな?」
「ああ、そういうことですね。大きめの壺をすぐに持ってきますので、待ってください!」
タリダスはゆっくりユウタをベッドに下すと、足早に部屋を出ていき、すぐに口の大きな壺を持ってきた。
「どうぞ」
「え?あの、あっちに置いてもらってもいい?あと、拭くものありますか?」
「もちろんです。気が利かず、すみません。それも持ってきます。まずはこれを厠に置いてきますね」
「厠」
「はい」
トイレを厠と呼ぶことをユウタは知っていた。
なので、タリダスが壺を厠に運ぶとすぐにベッドから降りようとした。ところが彼がすぐに飛んできて、ユウタを抱き上げ、厠まで連れていく。
まさか一緒に入るつもりかと心配したが、それはなくて、心底ユウタは安堵した。
「どうぞ、ごゆっくり。拭くものは厠の外に置いておきます。終わったら教えてくださいね」
大便の処理までさせることには抵抗があったが、ユウタは頷く。
扉を閉め、すべての恥を捨ててこの世界で初めての大をした。
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