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学園の日々
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一週間後、学園に登校することになった。
その間、ディオン様から花などが届いて、本当、どうしようかと思った。
うん。
男性から花なんてもらったことないし。
まあ、えっと、お世話になったお姉ちゃん宛なんだよ。きっと。
登校する日、アーベル伯爵家の馬車がやって来た。
「おはよう。迎えにきたよ」
「え?いや、あの。迎えはいらないってことになってましたよね?」
「病み上がりだから、遠慮なく、どうぞ」
前とは違って、強引になってしまったディオン様はぐいぐいと私を馬車に案内する。
そこには当然、ジソエル様がいて、よおっと手を挙げられた。
「ああ、お久しぶりです」
「元気そうでよかったな。ディオンも元気だし」
「エディは余計なことを言うな」
「ははは」
ジソエル様は相変わらず面白い人だな。
こうして三人でいるのはやっぱり楽しい。
「マギー嬢。安心しろ。ディオンがちゃんと教育してあるから、変なことを言う奴もいない」
「え?教育?」
「エディ。黙ってろよ」
「ははは」
ジソエル様は笑いっぱなし、私は腑に落ちないと思いながらも学園へ向かう。
女子の憧れ、ディオン様の馬車で学園に乗り付ける。
前のように鋭い視線を浴びるかと思ったら、そんなことはなかった。
何もなかったように視線を逸らされる。
え?ちょっと怖がられている?
「何かあったんですか?」
「なーにもないさ。なあ、ディオン」
「エディは黙ってろ。さあ、行こう。教室まで案内するから」
「いや、必要ないですから」
「前もそうやって断ったよね。だから事件が起きた。僕はもう見たくない」
新緑のような緑色の瞳は、小さい時から変わっていない。
参った。
「お願いします」
「素直だなあ」
ジソエル様が意味ありげに笑う。
うう。
小さいディオン様を思い出すと前みたいに振る舞えない。
ジソエル様は先に二年の教室へ行くといい、ディオン様だけが一年の教室まで私を送ってくれる。
「今日は図書館へ寄るの?」
「いえ、今日は真っ直ぐ家に戻る予定です」
「だったら、授業終わったら迎えに来るね」
「あの、必要ないですから」
「心配だから送らせて?」
困ったような顔をされると頷くしかない。
だって小さいディオン様と同じ表情だもの。
複雑な気持ちで教室へ入る。今までなら女子が絡んでくる筈なのに、誰も近づいてくる事はなかった。
なんていうかやっぱり怖がられてる?
☆
「体は大丈夫?マギーちゃん」
ベンチでお昼のサンドウォッチを頬張ってるとベルナルド様が声をかけて来た。
小さい時と顔立ちはほとんど変わってない。髪がちょっと長すぎな気がする。鬱陶しくないのかな?
「マギーちゃん?」
「あ、ベルナルド様、ご心配ありがとうございます」
きっと彼も心配してたのかな。
私が消えた時、近くにいた筈だから。ソフィア様に呼ばれたんだよね。あの時
あ、ソフィア様。
「ベルナルド様。ソフィア様はお元気ですか?」
「ソフィア?ああ、やっぱりあなただったんだ。信じられないけど。ソフィアも喜ぶ。ソフィアは今留学中だよ。あなたがここにいると知れば、すぐ戻って来るはずだよ。会いたい?」
「あ、会いたいですけど。そんな留学中に。私の事は伝えなくていいですから」
「伝えるよ。あなたが消えてショックを受けたのはディオンだけじゃないんだから。妹も私もだよ」
「ベルナルド様?」
急に彼は私に接近する。
その手が私に触れようとする前に叩かれた。
「油断も隙もないですね。ベルナルド」
「ディオン。君、こそこそしないで、堂々と側にいればいいのに。今のマギーちゃんなら嫌がらないだろうに」
「あなたには関係ない」
「冷たいな。マギーちゃんを交えて一緒に遊んだ仲なのに」
ねっとばかり目で合図され困ってしまった。
ベルナルド様、顔は同じだけど随分人が変わってたしまったなあ。
「その目、何か嫌な事考えてる?小さい時の私はちょっと無理をしすぎてた。今はとても楽に振る舞わせてもらってるよ」
気楽すぎるような。
まあ、以前は八歳なのに随分大人びてたし。いいのかな。自然体の今の方が。
「もうお邪魔はしないよ。ゆっくり食べてね。マギーちゃん。ソフィアには連絡しておくよ」
「えっと留学終わってからでいいですよ」
「もう終わる頃だよ。ソフィアも喜ぶ」
「……また邪魔者が」
「え?ディオン様?」
「面白いね。マギーちゃんの側の君は。それじゃあ、またね」
ベルナルド様は手をひらひら振ると背を向けて行ってしまった。
「マギーさん。邪魔してごめん。ゆっくり食べて。僕はいなくなるから」
「ちょっと待ってください。ディオン様。お昼ちゃんと召し上がりましたか?」
「まだだけど」
答えるディオン様の目は落ち着きがない。
きっと食べない気だ。これは。
「一緒に食べましょう。どうぞ。私の家の食事がお口に合うかわかりませんけど」
「ありがとういただくよ」
ディオン様は満面の笑みを浮かべると私の隣に座った。私達は他愛もない話をしながらお昼を一緒に過ごした。
その間、ディオン様から花などが届いて、本当、どうしようかと思った。
うん。
男性から花なんてもらったことないし。
まあ、えっと、お世話になったお姉ちゃん宛なんだよ。きっと。
登校する日、アーベル伯爵家の馬車がやって来た。
「おはよう。迎えにきたよ」
「え?いや、あの。迎えはいらないってことになってましたよね?」
「病み上がりだから、遠慮なく、どうぞ」
前とは違って、強引になってしまったディオン様はぐいぐいと私を馬車に案内する。
そこには当然、ジソエル様がいて、よおっと手を挙げられた。
「ああ、お久しぶりです」
「元気そうでよかったな。ディオンも元気だし」
「エディは余計なことを言うな」
「ははは」
ジソエル様は相変わらず面白い人だな。
こうして三人でいるのはやっぱり楽しい。
「マギー嬢。安心しろ。ディオンがちゃんと教育してあるから、変なことを言う奴もいない」
「え?教育?」
「エディ。黙ってろよ」
「ははは」
ジソエル様は笑いっぱなし、私は腑に落ちないと思いながらも学園へ向かう。
女子の憧れ、ディオン様の馬車で学園に乗り付ける。
前のように鋭い視線を浴びるかと思ったら、そんなことはなかった。
何もなかったように視線を逸らされる。
え?ちょっと怖がられている?
「何かあったんですか?」
「なーにもないさ。なあ、ディオン」
「エディは黙ってろ。さあ、行こう。教室まで案内するから」
「いや、必要ないですから」
「前もそうやって断ったよね。だから事件が起きた。僕はもう見たくない」
新緑のような緑色の瞳は、小さい時から変わっていない。
参った。
「お願いします」
「素直だなあ」
ジソエル様が意味ありげに笑う。
うう。
小さいディオン様を思い出すと前みたいに振る舞えない。
ジソエル様は先に二年の教室へ行くといい、ディオン様だけが一年の教室まで私を送ってくれる。
「今日は図書館へ寄るの?」
「いえ、今日は真っ直ぐ家に戻る予定です」
「だったら、授業終わったら迎えに来るね」
「あの、必要ないですから」
「心配だから送らせて?」
困ったような顔をされると頷くしかない。
だって小さいディオン様と同じ表情だもの。
複雑な気持ちで教室へ入る。今までなら女子が絡んでくる筈なのに、誰も近づいてくる事はなかった。
なんていうかやっぱり怖がられてる?
☆
「体は大丈夫?マギーちゃん」
ベンチでお昼のサンドウォッチを頬張ってるとベルナルド様が声をかけて来た。
小さい時と顔立ちはほとんど変わってない。髪がちょっと長すぎな気がする。鬱陶しくないのかな?
「マギーちゃん?」
「あ、ベルナルド様、ご心配ありがとうございます」
きっと彼も心配してたのかな。
私が消えた時、近くにいた筈だから。ソフィア様に呼ばれたんだよね。あの時
あ、ソフィア様。
「ベルナルド様。ソフィア様はお元気ですか?」
「ソフィア?ああ、やっぱりあなただったんだ。信じられないけど。ソフィアも喜ぶ。ソフィアは今留学中だよ。あなたがここにいると知れば、すぐ戻って来るはずだよ。会いたい?」
「あ、会いたいですけど。そんな留学中に。私の事は伝えなくていいですから」
「伝えるよ。あなたが消えてショックを受けたのはディオンだけじゃないんだから。妹も私もだよ」
「ベルナルド様?」
急に彼は私に接近する。
その手が私に触れようとする前に叩かれた。
「油断も隙もないですね。ベルナルド」
「ディオン。君、こそこそしないで、堂々と側にいればいいのに。今のマギーちゃんなら嫌がらないだろうに」
「あなたには関係ない」
「冷たいな。マギーちゃんを交えて一緒に遊んだ仲なのに」
ねっとばかり目で合図され困ってしまった。
ベルナルド様、顔は同じだけど随分人が変わってたしまったなあ。
「その目、何か嫌な事考えてる?小さい時の私はちょっと無理をしすぎてた。今はとても楽に振る舞わせてもらってるよ」
気楽すぎるような。
まあ、以前は八歳なのに随分大人びてたし。いいのかな。自然体の今の方が。
「もうお邪魔はしないよ。ゆっくり食べてね。マギーちゃん。ソフィアには連絡しておくよ」
「えっと留学終わってからでいいですよ」
「もう終わる頃だよ。ソフィアも喜ぶ」
「……また邪魔者が」
「え?ディオン様?」
「面白いね。マギーちゃんの側の君は。それじゃあ、またね」
ベルナルド様は手をひらひら振ると背を向けて行ってしまった。
「マギーさん。邪魔してごめん。ゆっくり食べて。僕はいなくなるから」
「ちょっと待ってください。ディオン様。お昼ちゃんと召し上がりましたか?」
「まだだけど」
答えるディオン様の目は落ち着きがない。
きっと食べない気だ。これは。
「一緒に食べましょう。どうぞ。私の家の食事がお口に合うかわかりませんけど」
「ありがとういただくよ」
ディオン様は満面の笑みを浮かべると私の隣に座った。私達は他愛もない話をしながらお昼を一緒に過ごした。
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