懐かしい空を見る望遠鏡

にゃあ

文字の大きさ
上 下
3 / 9

オール五つ星のアイテム

しおりを挟む
 駅近くのカフェに行くと、コーヒーとホットドッグを二つ買って席に着いた。
 真結の用意してくれた夕食を食べないで、こんな物を買って食べるなんて相当なクズっぷりだが、腹が減っているんだからしょうがない。

 もう遅い時間なので、いつもはごった返している店内もちらほら客がいるだけだ。
 スマホを取り出すと、メールやLINEのチェックをする。
 どれもたいしたメッセージは来ていない。真結からもなかった。

 暇つぶしに、ネット通販のサイトを覗いてみる。
 お気に入りに登録している商品の値下がりを期待してみるが、どれも価格は下がっていない。ポイントが500貯まっていたので、何か安い電子書籍でも買って暇を潰そうかと漁っていると、それに気がついた。
 【あなたにお勧めコーナー】に、変な商品が表示されている。

 【懐かしい空を見る望遠鏡】

 何の気なしに見てみると、黒い筒みたいな画像と、たった一行の説明文。

 【懐かしい空が見られます】

 「なんだこれ。陳腐なコピーだな」

 出品者は【なつかし本舗】という人を食ったような名前の会社。
 思わず失笑が漏れた。

 だが、下にスクロールすると更に不自然なものに遭遇することに。

 この商品のレビュー数だ。
 なんと1000を超えている。
 全て 

 ★★★★★ 

 オール星五つ。

「ええー。何これ」

 そこには、商品に対する最大限の賛辞が書き連ねられている。

 『…………これは凄いアイテムです。商品が届いてから私の人生が変わりました』

 『…………理屈は考えないで、ただ楽しんでください』

 『…………本当は星を四つにしたいところです。なぜなら、この商品のおかげで、全く仕事が手に付かなくなったからです(笑)』

 呆れるほどわざとらしく大げさに商品を褒め称えるレビューが、ずらっと並んでいるのは、壮観と言っても良いほどだった。普通、好意的なレビューの中にも少しは商品の不具合やクレームが混じっているものだ。
 よっぽど大規模にサクラでも雇っているのか。

 しかし、値段を見て更に驚く。
 なんと、【500円】。

 たった500円の商品でこんなにサクラを雇う意味がわからない。
 でも、少なくとも1000以上のレビューが付いているのだから、薄利多売で利益が出るって事か?
 他の商品のステマになっているとか。
 しかし、関連付けられている商品に、この商品と同じ出品者は無かった。

 それとも、みんな商品に騙された腹いせに、他にも仲間を作ってやろうと嘘のレビューを書き込んでいるのかな?

 そんな妄想まで沸き起こってしまう。

「それにしても、レビューが1000以上か」

 ちょうど余っているポイントが500あるんだし、ものは試しで買ってみるか?

 僕はなぜか魅入られたように、そのアイテムを購入してしまった。
 そして、それきりその商品のことも忘れてしまっていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とわ骨董店

藤和
ライト文芸
とある骨董店と、そこに訪れる人々の話。 日常物の短編連作です。長編の箸休めにどうぞ。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

地獄三番街

arche
ライト文芸
羽ノ浦市で暮らす中学生・遥人は家族や友人に囲まれ、平凡ながらも穏やかな毎日を過ごしていた。しかし自宅に突如届いた“鈴のついた荷物”をきっかけに、日常はじわじわと崩れていく。そしてある日曜日の夕暮れ、想像を絶する出来事が遥人を襲う。 父が最後に遺した言葉「三番街に向かえ」。理由も分からぬまま逃げ出した遥人が辿り着いたのは“地獄の釜”と呼ばれる歓楽街・千暮新市街だった。そしてそこで出会ったのは、“地獄の番人”を名乗る怪しい男。 突如として裏社会へと足を踏み入れた遥人を待ち受けるものとは──。

十年目の結婚記念日

あさの紅茶
ライト文芸
結婚して十年目。 特別なことはなにもしない。 だけどふと思い立った妻は手紙をしたためることに……。 妻と夫の愛する気持ち。 短編です。 ********** このお話は他のサイトにも掲載しています

パワハラ女上司からのラッキースケベが止まらない

セカイ
ライト文芸
新入社員の『俺』草野新一は入社して半年以上の間、上司である椿原麗香からの執拗なパワハラに苦しめられていた。 しかしそんな屈辱的な時間の中で毎回発生するラッキースケベな展開が、パワハラによる苦しみを相殺させている。 高身長でスタイルのいい超美人。おまけにすごく巨乳。性格以外は最高に魅力的な美人上司が、パワハラ中に引き起こす無自覚ラッキースケベの数々。 パワハラはしんどくて嫌だけれど、ムフフが美味しすぎて堪らない。そんな彼の日常の中のとある日の物語。 ※他サイト(小説家になろう・カクヨム・ノベルアッププラス)でも掲載。

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...