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リーダー

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佐野から連絡があり、待ち合わせ場所に行くと、車の後部座席から佐野が現れた。

「ありがとう。来てくれて」

「約束ですから」

「まぁ、そうなんだが、あんまり構えないでくれ。今日は話し合うだけだから」

「そうだといいですけど」

「まぁ、いい。乗ってくれ」

「目隠しとかはいいんですか?」

「おいおい、私達は悪の組織じゃないって、言っても説得力ないか」

「フフフッ、そうですね」

「目隠しはしないから、安心してくれ」

「はい、分かりました」

僕と佐野は後部座席に乗り噛む。
運転手は何も言わずに車を走らせた。

「この辺って、国会議事堂が有るんですよね?」

「そうだが、来たことあるのか?」

「小学校の社会科見学で来ました」

「そうか」

すると、道の奥に国会議事堂が見えてきた。手前で曲がり進んていく。

「ここだ」

僕は下りて、見上げる。けっこう古そうなビルだ。

佐野について2人きりで歩く。
佐野の革靴の足音が廊下に木霊する。

扉の前で佐野が止まった。
「ここだ。リーダーはもう来ている」

「分かりました」

佐野が入り、僕が続く。

広い会議室のようだ。

僕はリーダーらしい男が座る反対側に立つ。

すると、リーダーは立ち上がり、スーツの胸元から何かを取り出した。

そして「バーン」と銃声がした。

「マスター右後ろからも来ます」


「トキノ、後ろは任せる」

僕は手を目の前に出して、銃弾を掴んだ。

後ろの銃弾は、カーンと音がした。そして、「ううっ!」と呻き声がした。

「佐野さん、何もしないなら、僕は何もしないと言う約束でしたよね」

掌を上にあげ、黒い塊が大きくなっていく。

やっぱり・・・ここに入った時に、魔法が使えるような気がしていた。塊はどんどん大きくなる。

佐野は慌てて、僕の前に立つ。

「そうり!なんてことしてくれたんですか!」と叫ぶ。

そして、僕に「本当に申し訳無い。約束を破ったのは、こっちだ。気が済むまで謝るから、なんとか怒りを収めてほしい」

「分かりました」とあっさりと言う。魔法も消滅させる。

「そこのおじさん、試験はもういいのかな?もう分かっただろ。僕が本物で、どれだけ危険なのか」

「あぁ、分かった。試すようなことをして、悪かった」リーダーは頭を下げた。

「マスター、後ろの女性が」

「女性?」振り返った。

女性の肩から血が溢れていた。

「早く医者を!」佐野が叫ぶ。

「僕がやる!」女性に近づいて、手を当てる。

「ダメだ。直接触らないと、届かない。脱がせて良いですか?」

女性は苦悶の表情をしながら、頷いた。

ジャケットを脱がせる。まだダメだ。
「すいません、肌に触れたいんですけど、大丈夫ですか?」

女性はもう片方の手で、シャツのボタンを外そうとするが、手が震えている。

「すいません」僕がボタンを外し始める。
中にはキャミソールを着ているようだ。少しホッとした。

シャツをめくり、肩を出して、直接両側から手を当てる。

「マスター、壁に弾痕がないので、銃弾が体内に残っていると推測されます」

銃弾を外に出すイメージ・・・

「ああっ!」と女性が声を出す。

「少しだけ我慢してください」

女性を見ると、凄い汗だ。
手に何かが当たった。手をどけると、銃弾らしきものが出てきていた。

「もう少しです」

かなり出てきて、掴めそうだが、痛いかもしれない。我慢して待つ。

カランと音を立て銃弾が落ちる。

「よし」また両手を傷口に当てる。

何分経ったのだろう。頭がふらついてくる、

「マスターの体力が持ちません。止めてください」

「もう少し、もう少し、こんな綺麗な人の肌に傷は残せないよ」と呟く。実際に頭がふらつく。

「大丈夫、私の体は既に傷だらけだから」

「ダメ・・・です・・・こんなにきれいなんだから・・・」呟きながら、意識が飛びそうになる。

「はっ!」僕は頭を振って、集中する。

「マスター!」

「もう少しだけ!」

「完治しました」というナビちゃんの声が聞こえたか、どうかで僕は倒れ込んだ。




あっ、頬に柔らかい感触がある。瑞希の膝枕、気持ちいい、と頭の中でボンヤリと思う。

「はっ!」と頭を上げる。
目の前に知らない綺麗な人の顔が近づき、また、頭を下ろす。

「目が覚めた?」

「はい。あっ!傷は?」

「大丈夫、きれいに治ってるわ。これで2度目ね。助けてくれたのは」

「2度目?」

「私達が軍事施設の地下に、魔族に監禁されていたのを助けてくれたのは、あなたでしょ?」

「あぁ、あの時にいたんですか?どうして、そう思ったんですか?」

「あなたは自分の身体より、人のことを心配するから。あの時は、何もお礼ができなかったけど、ありがとう」と顔が近づいてきて、軽く唇が重なった。

柔らかい。

「これ以上は、彼女に悪いから」

「そうですね」

「美杉くん、そろそろいいかな?」

「はい、そうり」
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