上 下
16 / 26

全面戦争?

しおりを挟む
初めてギンノジョウ様の家に来てから、一ヶ月が過ぎようとしていた。

この周辺にある木の実や山菜等の知識はかなり増えた。さすがに肉は食べられなかったが、数回は泉で魚を捕った。

2人に任せておくと、悲惨な食事になるので、食事は専ら僕が作った。アルコールも近くの果実で色々と作ったので、ハナエ様は満足しているようだ。

昼間は、ギンノジョウ様から自然界と人間の関係など色々と学んだが、特に修行というようなことはなかった。

魔法は、学校よりかは何倍も使えることは分かった。それでも魔力量が増えている実感はなく、精霊達が多いことが理由だと思えた。一回で消費する魔力量が少ないのだ。

夜は、頻繁にハナエ様が布団に忍び込んてきた。いつも執拗に僕に抱きついてくる。時々、マキノと寝言で言っている。何のことか分からなかったが、聞いてはいけない気がして、ほっといた。

僕も、いつの間にか、一人で寝ていると寂しく感じるようになっていた。そういう時は何故かハルカ先生のことが頭に浮かんだ。親が聞いたら悲しむかな?そう思っては苦笑いしたが、無性に先生に会いたくなる。

そんな感じで、日々が過ぎていった。



その頃、王国の城で、ハルカはモンド、ツクシ、シノビと集まっていた。

魔族に不穏な動きがあるという情報があったからだ。

「魔族が色々と準備をしているという情報があった」とシノビが招集をかけた理由を話した。

「魔王のいない魔族なんて、怖くもないけど」ハルカはどうでもいいと言いたげに話す。

「それはそうなんだが、王国や町に被害を出すわけにもいかない。前回と同じく先にこちらから仕掛けるのが、ベストと考えるのだが」シノビは淡々と話す。

「別に反対はしないわ。10年前に全滅させておけば良かったのよ」ハルカは面倒くさいとでも言いたげだった。

「まぁ、そう言うな。ギンノジョウとハナエが、魔族は必要悪だと話して、納得したんだろ」とモンドが言う。

「その時はそうしたわよ。私も若かったし。でも、こうして、また面倒なことをしてくる。たった10年よ。10年」

「まぁ、まぁ、落ち着いて、ハルちゃん。今大切なのは、王国と町を守ることよ」ツクシが間に入る。

「それは分かってます」ハルカは吐き捨てるように言う。

「問題は、魔族の狙いがなんなのか?なんだ」シノビが話を続ける。

皆は黙った。シノビも話していて、理由は分かっていた。

「狙いはユウタなんでしょ」ハルカは沈黙を破った。

「そう考えるのが自然だろうな。ギンノジョウ達が隠してしまったから、王国の民達を人質にして、ユウタを出せと要求してくるんだろう」モンドが応えた。

「勝てないのが分かってるのに?」

「それだけ必死なんだろう」

「いつにするの?こっちは、この4人がいれば十分よ。私だけでもいいくらい」

「まぁ、まぁ、落ち着け。向こうも前回のことがあるから、それなりに対策をしているだろう」シノビが話す。

「いいわよ。私一人でやる」

「ユウタを守りたいのは分かるが、落ち着け!」モンドが大声を出す。

「だって」

「魔族がいなくなれば、ユウタが戻って来れる、そう思ってるんだろ?」モンドが続けた。

ハルカは黙った。その通りだからだ。早くユウタに会いたい。

「とにかく今、偵察隊を派遣している。その結果を踏まえて、乗り込むか決める」シノビが冷静に話した。

そこに、
「マスター」と扉を開けて、駆け込んできて、跪いた。シノビのマスクをしていた。

「偵察隊、全滅との連絡がありました」

マスクで表情は分からないが、マスターと呼ばれたシノビの雰囲気が変わった。

「分かった。さがれ」

「はっ」

扉が閉まった。

「いつにするの?」ハルカは言った。

「3日後だ」シノビはいつものように冷静に言ったつもりだったが、皆は全て分かった。




そんなことになっているとは、ギンノジョウ達は知る由もなかった。

いつものように、のどかな日々が過ぎていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

(完結)足手まといだと言われパーティーをクビになった補助魔法師だけど、足手まといになった覚えは無い!

ちゃむふー
ファンタジー
今までこのパーティーで上手くやってきたと思っていた。 なのに突然のパーティークビ宣言!! 確かに俺は直接の攻撃タイプでは無い。 補助魔法師だ。 俺のお陰で皆の攻撃力防御力回復力は約3倍にはなっていた筈だ。 足手まといだから今日でパーティーはクビ?? そんな理由認められない!!! 俺がいなくなったら攻撃力も防御力も回復力も3分の1になるからな?? 分かってるのか? 俺を追い出した事、絶対後悔するからな!!! ファンタジー初心者です。 温かい目で見てください(*'▽'*) 一万文字以下の短編の予定です!

性癖の館

正妻キドリ
ファンタジー
高校生の姉『美桜』と、小学生の妹『沙羅』は性癖の館へと迷い込んだ。そこは、ありとあらゆる性癖を持った者達が集う、変態達の集会所であった。露出狂、SMの女王様と奴隷、ケモナー、ネクロフィリア、ヴォラレフィリア…。色々な変態達が襲ってくるこの館から、姉妹は無事脱出できるのか!?

新しい自分(女体化しても生きていく)

雪城朝香
ファンタジー
明日から大学生となる節目に突如女性になってしまった少年の話です♪♪ 男では絶対にありえない痛みから始まり、最後には・・・。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

ドレスを着たら…

奈落
SF
TSFの短い話です

処理中です...