クラスイチ(推定)ブスだった私が、浮気しない真面目なイケメン彼氏と別れた理由

ぱるゆう

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朝帰り

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あ私は母親に電話した。いきなり
「忙しいのは分かるけど、帰ってこないなら、ちゃんと電話くらいしなさい』と呆れた声が聞こえた。

「ごめん、今から帰るけど、買ってきて欲しいものはある?』

「えっ。そうねぇ。心配させたお詫びとして、チーズケーキ』

「分かったわよ。父さん達は?』

「お父さんはいるけど、楓は試合よ」

楓、私の弟だ。大学で野球をやっている。仲はいい。今だに私に甘えてくる。定番は膝枕だ。

「父さんはいつものショートケーキで、楓には焼き菓子でも買ってくわ」

「それでいいと思うわ』

私は電話を切り、駅前のデパートに入った。エレベーターに乗り、婦人服売り場で降りた。
「久しぶりだな」と思った、いつもは量販店で済ませている。服を選ぶ基準は、動きやすいことくらいだった。

今は痩せた(正確には、やつれた)お陰で、入らないことはないだろう。心配なく店に入れる。店員に、お前のサイズは、うちの店にはないと思われることもない。

しかし、問題は胸だ。会社に入るまでは、ぽっちゃり気味であったから、ウエストをまず心配した。

ブラブラと一周した。目ぼしいものがあったので、次は店の中に入った。

「いらっしゃいませ)と店員の声がする。まだ午前中だ。客の数も少ない。

私はせっかく細くなったので、ウエストのしまった服を着ることにした。太らないように自分を戒めるために。
私の人生のピークの細さを真田さんに見せてしまった。もう後戻りはできない。維持をしなければならない。

はぁ、ずっとは無理かな、と思った。ずっと?いつの間にか、ずっと一緒にいられると思っていた。

すっかり頭の中の悪魔は没落してしまった。真田さんが、そう思っても仕方のない態度を取り過ぎるからだ、と思った。

告白されて、まだ二週間も経ってない。私の人生設計は180度変わってしまった。またイチから練り直さないと。あれ?!いつ元に戻るかも分からないのに?

「・・様、お客様、どうかされましたか?」

我に返ると、商品のスカートを持ったまま、ぼうっと立っていたらしい。

「あぁ、すいません!試着したいんですけど」

「はい。かしこまりました。でも、お逆様なら、もう一つ下のサイズの方がお似合いとなると思いますが?』

ついつい、前のサイズを選んでいたらしい。

「よろしければ、両方、お試しください」と店員は服を持って、歩き始めた。

私は試着室に入った。まずは店員に勧められたサイズを着てみた。

「あっ、入った」すんなりとウエストの金具が閉まった。

後ろ姿を鏡で見てみる。
お尻も小さくなって、太ももも細くなった気がした。

今考えると、履いていたスカートはブカブカで下半身デブになっていたかもしれない。

「いかがですか?」外から声がかかる。

「あぁ、いい感じです」

「あのぉ、お客様ならきっとお似合おになると思うので、ワンピースをお持ちしたんですが』

私はカーテンを開けた。

「そちらも、よくお似合いです」

店員が掲げているワンピースは、胸のところが誇張されて、ウエストがくびれているものだった。丈は問題なさそうだ。色もネイヴィーで落ち着いている。しかし、私に入るのだろうか?

「いかがですか?」

「ちょっと私には無理ですよ」

「いえいえ、これくらい余裕ですよ」店員の目は、嘘を言っているようには見えない。

「はぁ」私はとりあえず着てみることにした。

「背中のファスナーは私が閉めますので」
と言い残し、店員は勢いよくカーテンを閉めた。

私は着始めた。思ったより伸縮性のある生地で着やすかった。ウエストもお尻も、問題の胸も苦しくない。

「よろしいですか?」と店員から声がかかったので、「はい」と答えた。

店員はカーテンを開けずに中に入り、ファスナーを閉めた。そして、カーテンを開けて、外に出た。

「やっぱり、とてもよくお似合いです!」店員の声は、本当に喜んでいるようだった。

私は鏡に写った自分が信じられなかった。こんな服を着るなんて考えたこともなかった。絶対自分では選ばない。

私は体を動かしてみたが、動きづらくもない。

「そちらの生地は伸縮するので、長く着ていても疲れません。本当にお似合いですよ」

昔、無理に着て、店員に呆れた声を出された時とは、天と地の差だ。偽りなく勧めてくれていると感じた。

私もかなり気に入った。こんな女性らしい姿の自分を見たら、両親でさえ驚くだろう。

「でも、お高いんでしょう」場違いな通販番組の定番のセリフが頭に浮かんだ。

「え~っと、おいくらなんですか?」ほとんど使う機会がないので、貯金はそれなりにある。

店員は値段を言った。

安くはないが、全然OKな金額だ。

「では、これで」と私は言った。

「ありがとうございます」店員は自分が勧めたものを気に入ってもらえて、一段高い声を出し、笑顔になった。

そしてファスナーを下ろしてから、カーテンをまた勢いよく閉めた。

私は脱いで、元の服に戻った。もの凄くみすぼらしく感じた。

今度、顧客のところに行く時には買い替えよう、と思った。

会計を済まし、店を出た。
店員は、会計の時に、またお客様に似合いそうな服を仕入れておきますから、是非お越しくださいと言っていた。

もちろん、そんなこと初めて言われた。いつもは、思い込みかもしれないが、邪魔だと思われていたかもしれない。

「あっ!」ワンピースだから 合わせる服の心配はない。しかし、問題は靴だ。
今はパンプスを履いているが、普段はスニーカーで通勤している。

服を思い出した。ちょっとラフにスニーカーでもいけそうな気もしたが、履き潰れそうなスニーカーは、さすがにNGだ。



私は靴屋に来た。
あぁ、どうしよう。高いヒールを履いて、長い間歩くのは無理だ。でも、やっぱり可愛いのは、そこそこヒールが高い。

「いらっしゃいませ。どのようなものをお探しですか?」

「え~っと、紺のワンピースに合うものを」

「ワンピースは、可愛い感じですか?それともエレガントなものですか?」

「どちらかというと、エレガントだと」

「それなら、こちらの白いサンダルはいかがですか?ヒールもそんなに高くなくて、幅広ですから、疲れないですよ」

「あっ、とっても可愛いと思います」 

「靴のサイズは、おいくつですか?』

「23です」

「それでは、こちら履いてみてください」

私は履いてみた。

確かにヒールが幅広で安定する。
だが、ストッキングのせいで滑る、

なんとか立ち上がり、鏡を見た。
服をイメージした。

うん、悪くない。後はデザインだけだな。靴を元に戻し、「少し見て回ります」と言った。

店内を回った。気にしてみると、サンダルコーナーだけでも、似てるようで似ていない。

「あっ!これだ」足首にストラップの付いているサンダルを手に取った。
サイズを出してもらい、履いてみる。
うん、いい感じだ。ホールドがいいので、疲れなさそうだ。

しかし、何か足りない気がした。サンダルを履いた足を眺めた

「あっ」ペディキュア」出ているつま先がもの足りない。

どうしよう?この靴だとペディキュアが欲しい。パンプスのタイプにするか?
でも、このサンダルを気に入ってしまった。

また買わないとならないものが増えた。

如何に、久しく女性らしいものを買っていなかったのか、痛感させられる。

サンダルを買った。いつの間にか結構な荷物になってしまった。

化粧品売り場にいく。さぁ、色はどうしよう?やっぱり赤か?
でも、職場に行ったら、みんな何事かとビックリするかもしれない。無難に薄目のピンクにしておこう。

レジに行こうとすると、化粧品が目に入った。あぁ、買い物をしていると、色んな物が欲しくなってしまう。
でも、気合をいれて化粧して行ったら、真田さんが引くかもしれない。
どんな冗談か分からないが、顔が好きと言ってくれている。いつものナチュラル目で行くことにしよう。

会計を済ませた。

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