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エピローグ
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私も会いたくないし、真田さんも気まずいと思ったので、仕事で聞かなければならないことがある時は、ずっとメールでやり取りしていた。
しかし、あれから1ヶ月以上過ぎた金曜日、私は真田さんの職場へと歩いている。
職場につくと、相変わらずどこかの女性社員が、真田さんのそばで話しかけている。いい加減、はっきり断わればいいのに、私はムッとした。
私は女子社員を無視して、真田さんに話しかけた。
「ちょっと作業のことで話したいんですけど」
真田さんは驚いた顔をして、すぐに気まずそうな顔になった。
いつも通り、女子社員には睨まれた。でも、私は気にしない。私は裸を知っているのだ。お前が必死に口説いている相手の。
優越感に浸りながら、肩を落として会議室に向かう真田さんの後をニヤニヤしながらついて行く。
私が中に入ると、真田さんはドアを閉めた。
そして、頭を下げた。
「花音、不快な思いをさせて、悪かった。殴りたいなら、殴ってもいい。だけど、僕は本当に・・・」
私は話を遮った。
「私のことが必要で、私のことを愛している、でしょ?」
「そっ、そうだ。君のことを綺麗だと言ったのも嘘じゃない。他のみんなが振り向かなくても、僕は綺麗だと思ってる」
「真田さん、失礼ですよ。まだ、私のこと傷つけるつもりですか?」
「そっ、そんなつもりはないんだ。あぁ、何て言えばいいんだ」真田さんは頭を掻きむしった。
「私も悪いんです。真田さんの言葉を真に受けて、調子にのってしまったから。私が綺麗なわけないんです」
「花音は悪くない。僕がちゃんと言えば良かったんだ。でも、当然怒ると思ったから、言えなかった」
「真田さんが、本当はそんな人だと知って、とってもショックでした。絶対に許せません。だから、結婚はできません」
「そうだよね。花音にそう思われても・・・。えっ!結婚できないって、その手前ならいいってこと?」
私は、ニッコリと微笑んだ。
「えっ、うそ!やった!嬉しい!」真田さんはガッツポースをした。目も少し潤んでいるようだ。
「冷静に考えたんです。真田さんが私を選んだ理由は、到底許せるものではありません。だけど、裏を返せば、私のこと本当に必要としていて、愛してくれてるんだって思いました」
「そうなんだ。愛していると言ったことに嘘偽りはない」
「一つだけ条件があります」
「何?何でもいいよ」真田さんは満面の笑顔で私を見つめた。
「小百合さんから、あの女の人の話は聞きました」
「あぁ、そうなんだ。恥ずかしいな」真田さんは視線を落とした。
「可愛そうだと思いましたが、ダメダメです。小百合さんに頼りすぎです」
「それは否定できないな」まだ視線を落としている。
「実は、うちの弟もダメダメで、今だに私が体を洗ってあげてます」
「えっ!」真田さんは顔を上げて、目が飛び出るんじゃないかと思えるくらい目を見開いた。
「だから、楓とのことは許してください。私も小百合さんとのことは許します」私は真剣な顔で真田さんの目を見つめた。
真田さんも私が冗談を言っているわけではないことが分かったようだ。
「分かったけど、嫉妬しちゃうな」真田さんは頭をかいた。
「私も楓でガス抜きするから、真田さんも小百合さんでガス抜きして」
「分かった。花音と会えるんなら、僕もそうさせてもらう」抵抗しても無駄なんだろ、と言いたげに肩をすくめた。
「念の為、言っておきますけど、楓は真田さんのこと許さないと思います。もしバレたら・・・」
「分かった。小百合姉さんにも話さないよ」
私は言わなければならないことが終わったので、ホッとして肩の力を抜いた。
「ということで、お腹すいたなぁ、美味しいものでも食べたいなぁ」
「えっ、あ~あ、スッポン?でも、金曜のこの時間は、あの店は無理だ。フグ、フグは、どう?」
「買収ですよ。でも、高そうだから行きます」
「よし!頑張って仕事なんとかする」
「それと、今夜、楓、遠征試合でいないのよ」
「えっ!ホントに!いいの?」また真田さんの目が飛び出そうだ。
私は少し恥ずかしそうに頷いた。
「やった!ホントに仕事頑張らないと!」
真田さんは、会議室に入って来た時とは、正反対のテンションで出ていこうとした。
私は真田さんの袖を掴んだ。
ゆっくりと真田さんが振り向く。
「まさか、うっそぴょ~んとか言わないよね?」
「違います。仕事のことです」
「あぁ、そうだね」
おしまい・・・・
※『続』(未完)を別で掲載しています。よろしかったら、お願いします!
しかし、あれから1ヶ月以上過ぎた金曜日、私は真田さんの職場へと歩いている。
職場につくと、相変わらずどこかの女性社員が、真田さんのそばで話しかけている。いい加減、はっきり断わればいいのに、私はムッとした。
私は女子社員を無視して、真田さんに話しかけた。
「ちょっと作業のことで話したいんですけど」
真田さんは驚いた顔をして、すぐに気まずそうな顔になった。
いつも通り、女子社員には睨まれた。でも、私は気にしない。私は裸を知っているのだ。お前が必死に口説いている相手の。
優越感に浸りながら、肩を落として会議室に向かう真田さんの後をニヤニヤしながらついて行く。
私が中に入ると、真田さんはドアを閉めた。
そして、頭を下げた。
「花音、不快な思いをさせて、悪かった。殴りたいなら、殴ってもいい。だけど、僕は本当に・・・」
私は話を遮った。
「私のことが必要で、私のことを愛している、でしょ?」
「そっ、そうだ。君のことを綺麗だと言ったのも嘘じゃない。他のみんなが振り向かなくても、僕は綺麗だと思ってる」
「真田さん、失礼ですよ。まだ、私のこと傷つけるつもりですか?」
「そっ、そんなつもりはないんだ。あぁ、何て言えばいいんだ」真田さんは頭を掻きむしった。
「私も悪いんです。真田さんの言葉を真に受けて、調子にのってしまったから。私が綺麗なわけないんです」
「花音は悪くない。僕がちゃんと言えば良かったんだ。でも、当然怒ると思ったから、言えなかった」
「真田さんが、本当はそんな人だと知って、とってもショックでした。絶対に許せません。だから、結婚はできません」
「そうだよね。花音にそう思われても・・・。えっ!結婚できないって、その手前ならいいってこと?」
私は、ニッコリと微笑んだ。
「えっ、うそ!やった!嬉しい!」真田さんはガッツポースをした。目も少し潤んでいるようだ。
「冷静に考えたんです。真田さんが私を選んだ理由は、到底許せるものではありません。だけど、裏を返せば、私のこと本当に必要としていて、愛してくれてるんだって思いました」
「そうなんだ。愛していると言ったことに嘘偽りはない」
「一つだけ条件があります」
「何?何でもいいよ」真田さんは満面の笑顔で私を見つめた。
「小百合さんから、あの女の人の話は聞きました」
「あぁ、そうなんだ。恥ずかしいな」真田さんは視線を落とした。
「可愛そうだと思いましたが、ダメダメです。小百合さんに頼りすぎです」
「それは否定できないな」まだ視線を落としている。
「実は、うちの弟もダメダメで、今だに私が体を洗ってあげてます」
「えっ!」真田さんは顔を上げて、目が飛び出るんじゃないかと思えるくらい目を見開いた。
「だから、楓とのことは許してください。私も小百合さんとのことは許します」私は真剣な顔で真田さんの目を見つめた。
真田さんも私が冗談を言っているわけではないことが分かったようだ。
「分かったけど、嫉妬しちゃうな」真田さんは頭をかいた。
「私も楓でガス抜きするから、真田さんも小百合さんでガス抜きして」
「分かった。花音と会えるんなら、僕もそうさせてもらう」抵抗しても無駄なんだろ、と言いたげに肩をすくめた。
「念の為、言っておきますけど、楓は真田さんのこと許さないと思います。もしバレたら・・・」
「分かった。小百合姉さんにも話さないよ」
私は言わなければならないことが終わったので、ホッとして肩の力を抜いた。
「ということで、お腹すいたなぁ、美味しいものでも食べたいなぁ」
「えっ、あ~あ、スッポン?でも、金曜のこの時間は、あの店は無理だ。フグ、フグは、どう?」
「買収ですよ。でも、高そうだから行きます」
「よし!頑張って仕事なんとかする」
「それと、今夜、楓、遠征試合でいないのよ」
「えっ!ホントに!いいの?」また真田さんの目が飛び出そうだ。
私は少し恥ずかしそうに頷いた。
「やった!ホントに仕事頑張らないと!」
真田さんは、会議室に入って来た時とは、正反対のテンションで出ていこうとした。
私は真田さんの袖を掴んだ。
ゆっくりと真田さんが振り向く。
「まさか、うっそぴょ~んとか言わないよね?」
「違います。仕事のことです」
「あぁ、そうだね」
おしまい・・・・
※『続』(未完)を別で掲載しています。よろしかったら、お願いします!
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