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初デート

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 日曜日になった。

 昨日は疲れて早目に寝たので、目覚ましより早く目が覚めてしまった。

 スエットのままリビングに行くと、母さんはテレビを見ていた。

「おはよう」

「おはよう」と私は返して、キッチンに行くと、朝食ができていた、

「あれ?早いね」

「お父さん、早かったから」

「あぁ、そっだったわね」私は皿に盛り付け、テーブルで食べた。

 テレビは大した内容はなかった。食べ終わると、時間があったので、洗い物をしてから、部屋に戻った。

 まだ着替えるには早すぎるが。落ち着かない。シャワーを浴びることにした。

 今日はホテルに行くのかな?鏡に写った自分の体を見る。私であんなに固くして、いっぱい射精してくれた。

 真田さんと楓の固くなった物を思い出す。胸と股間に手が伸びる。

 私の上で、私の顔をじっと見て、2人は気持ちよさそうに、腰を振っていた。もし目を瞑っていたら、本当に体だけだと思えるけど、違った。私の顔を見ても、2人はいったんだ。

 はぁぁん。私は膣に指を入れた。ここに固くなったものを挿れて。感触を思い出す。

 ビクビクっと体が震えて、我に返った。
 何をしてるんだ、朝っぱらから。

 冷静になり、風呂場を出て、体を拭いた。時計を見たら、いい時間だった。

 よし、準備を始めよう。

 部屋に戻ると、化粧を始めた。仕事の時よりもアイシャドーと口紅を濃くした。
 あんまりやり過ぎると、気合いを入れてきたと思われる。なるべくナチュラルに。

 昔、化粧でなんとかしようと必死になった時期があったので、知識だけは豊富だ。

 よし、こんなものだろう。

 髪は、いつもパソコンの画面が見えづらくならないように留めているが、今日は下ろして行こう。私の顔で服が台無しにならないように。

 そして、服を着た。今になって気がついたが、背中のファスナーは、誰かに閉めてもらわないとならない。もし、私が一人暮らしだったら、どうするつもりだったんだろう?あの店員。

 仕方ないので、母さんに頼もうと、リビングに行った。

「母さん、背中のファスナーを上げて」

 しかし、一向に閉めてくれない。振り返ると、母さんは口を開けて、驚いていた。

「母さん、そういうのいいから、早く閉めてよ」

「あなた、どこに行くのよ」

「えっ!さっ、早苗がいい高級レストラン見つけたから、一緒に行くのよ。早くして」

 母さんは、やっと閉めてくれた。

「ありがとう」ふとテーブルに目をやると、真珠のネックレスとイアリングが置いてあった。

「母さん、これ!』

「あぁ、今日の通夜で付けるのよ』

「ねぇ、母さん。他にもある?」

「えっ!あるけど」

「お願い、貸して。何か足りないと思ってたのよ」

「26にもなって、ネックレスの一つもないの?」

「そんなこと、母さんが一番分かってるでしょ」

「はいはい。待ってて」

 母さんはリビングを出て、箱ごと持って来た。

「好きなの使っていいわよ」

「分かんないよ。選んで」

 母さんは、イアリングをいくつか手に取って、私に当てた、
「うん、これがいいと思う」

「付けて」

「もう!26にもなって」

「分かったから」

 母さんは、眼の前で付け方を説明した後、耳に付けてくれた。
「ありがとう。ネックレスは?」

「これがセットだから」と一つを手にした。

 私が首を出すと、
「はぁ~」と溜め息をつき、また眼の前で付け方を説明してから、首に付けてくれた。
「ありがとう」私は言葉が終わる前に、洗面台へと急いだ。

 鏡を覗き込み、下ろした髪を上げてみる。
「母さん、ありがとう。いい感じだよ」大きな声を上げた。

「無くさないでよ」と母さんが後ろに来ていた。

「うん、気をつけるよ」私はビックリして振り返る。

 母さんは、ニヤニヤしていた。
「それで、誰と会うの?」

 母さんは、顔を近づけてきた。
 もう早苗を登場させるのは無理そうだ。

「会社の人だよ」

「早苗ちゃんだって会社の人でしょ」

「そうだけど。男の人」

「まさか昨日帰ってこなかったのも?」

 私は頷いた。
 母さんの顔が曇った。
 デートよりも泊まるのが先になってしまった、母さんが心配するのも無理なない。

「念の為聞くけど、不倫じゃないわよね?」

「違う。3年上の先輩。結婚歴ナシ」

「それなら、何も言わないわ。楽しんできなさい」

「うん」私は部屋に靴を取りに行こうとしたが、急に立ち止まった。

「母さん」深刻そうな顔で振り向いた。

「分かったわ。待ってなさい」

 あぁ、改めて、女性らしいものを全く持っていないことを思い知らされた。足りないものばかりだ。

 母さんは戻って来て、
「はい」と手渡した。白の小さ目のショルダーバッグだ。

「ありがとう。よく分かったね」

「お母さんが一番、あなたのこと分かってるんでしょ?」

「お母さん、大好き」

「急がなくていいから、いつか連れてきなさいよ」

「うん、分かった」

「あっ、写真は早めにね」母さんは笑った、

「うん」私は部屋へ急いだ。

 部屋に入ると、通勤で使っているリュックから、財布、化粧ポーチ、ティッシュ、スマホを移した。タンスから新しいハンカチを追加する。

 忘れ物はないか?2度確認した。

 時計を見た。少し早いが、じっともしてられない。バッグとサンダルを持って、部屋を出た。

 ちょうど、楓も部屋から出てきた。
 楓は私を見て、一瞬満面の笑顔になったが、すぐに複雑そうな顔をした。

「行くの?」

「行くよ」

 少し間があってから
「姉ちゃん、今度その服を着て、僕とデートしてよ」

「いいけど、楓は何着るの?」

 楓は痛いところを突かれたという顔をした。

「なんとかする」

「分かった。いいよ」

「やった!約束だからね」

「うん、じゃあ行くね」

 私は玄関でサンダルを履いて、玄関を出た。腕時計を見る仕草をした。

 いつもは手首に巻かれているスマートウォッチがない。さすがに今日はしてこれなかった。

 母さん、腕時計、と戻ろうとしたが、スマホで十分だと思い、スマホを手に取り、先を急いだ。



 結局、30分前に待ち合わせ場所に着いてしまった。気ばかり焦って早足になっていた。

 周りを見ると、多くの人がいる。もしかして真田さんがいるかもしれないとキョロキョロした。
 やっぱりいるわけない。

 時間を潰そうと、店を探すために、またキョロキョロした。

 すると、背中から
「お姉さん」と声がかかった。

 真田さん、と思って振り返ると、全然違った。
「待ち合わせの人来ないなら、俺と一緒にゆっくり話さない?」

 あれ?私の顔を見ても、逃げない・・・。

 ごめんなさい、と言ってその場を離れた。少し歩いてから、振り返ると、まだこっちを見ていた。

 怖くなって駅の近くまで来た。

 どうしよう、待ち合わせ場所を離れてしまった。下を向いていると、
「花音?」と声がかかった。

「真司」と言って、顔を上げた。すると、真田さんは驚いた顔をしていた。

「どうしたの?」

「さっき、変な人に声をかけられて」

「あぁ、そうなんだ。それより、その服」

「えっ、変?」

「いや、とっても似合ってるけど。そんな服、持ってたんだ」

「ううん、昨日買ったの」

「気にしなくていいって言ったのに」

 そう言う真田さんは、くるぶし丈のチノパンに軽めのジャケットを着ていた。何を着ても似合っている。

「だって、真司に恥かかせちゃう」

「そんなことないよ。中身さえ来てくれたら、嬉しいよ。でも、本当に綺麗だよ」

「ありがと」私は腕を組んだ。真田さんは少し照れくさそうだった。

 真田さんは腕時計を見た。
「それにしても早いな」

「じっとしてられなくて早く来ちゃった」

「僕もだよ。少し時間潰すか」

 さっきの待ち合わせ場所に来た。声をかけてきた男は、他の女性に声をかけていた。

 その脇を通りすきて行った。

 近くのチェーン店のコーヒーショッに入る、レジで会計し、商品を持って店内を見た。けっこう混雑していたが、席を見つけ、向かい合わせに座った。

「はぁ。落ち着いた」私はひと口、紅茶を飲んだ。真田さんは肘をつきながら手を組んで、私をじっと見ている。

「恥ずかしいよぉ」

「随分、雰囲気変わるんだね。女性は」

「私は普段が酷すぎるだけだよ」

「僕は会社の花音も好きだよ」

「そんなこと言うの。真司だけだよ。全く女扱いされてないんだから」

「今の花音を見たら、みんな考え直すよ」

「それも嫌。私は仕事で認めてもらいたいの」私は組まれた真田さんの手をテーブルに置いて、自分の手を重ねた。

「分かってるよ。花音は頑張ってる」真田さんは掌を返し、私の手を握った。

「うん」

 いつの間にかほとんど満席になっていた。

「混んでるね」

「日曜日だからね」

「映画は、いつも遅い回のを見るようにしてるの。空いてるから。
 女一人でいると、寂しいと思うのか、いいよってくる変なやつがいるのよ」

「えっ、危ないよ」

「大丈夫。あっち行けって言うと。いなくなるから」

「もう止めて。僕が一緒に行くから」

「分かった」

「そろそろ行こうか」

「うん」



 映画館に着いた。
「飲み物は買うとして、何か食べる?」

「いつも小さめのポップコーンを買う」

「うん、そうしよう。2人だから、特大かな?」

「多いよ。大で十分」

 分かった。買い出しを終え、中に入った。
 子供連れとカップル、友達同士と様々だ。さすが日本を代表するアニメだ。

「席どこ?」

「あそこだよ」

「えっ?カップルシート?」

「そう」

「アニメだよ」

「いいじゃん」

 席に着くと、周りもカップルばっかりだった。これなら気にする必要もないか。

 真田さんが座り、隣りに座った。
 真田さんが肩に手を回してきた。私は頭を寄せた。

 真田さんの手が優しく頭を撫でてくる。

 あぁ、幸せだ。こんな日が来るなんて。これが偽りでもいい。今は浸っていよう。

 そんな雰囲気には似つかわしくないアクション満載のアニメが始まった。

 子供たちの、がんばれぇという歓声が響く。

 私もつい声を出したくなるが、手を握って耐える。その手を真田さんが握り、「頑張れ!」と声を出す。私もつられて「頑張れ!」と叫ぶ。

 主人公は無事に危機を乗り越えて、エンディへと向かう。

 すれ違いだった主人公とヒロインが、恥ずかしそうに手を繋いで、エンドロールとなった。

映画の映像が繰り返されるエンドロールが終わり、黒いエンドロールに変わる。

 真田さんは顔を寄せてくる。私も顎を上げる。口紅はポップコーンを食べるので、取ってあった。舌を絡めた。体がビクンと反応した。

 私は真田さんを離した。
「これ以上は、無理」

「あっ、ごめん。こんなとこで夢中になっちゃった」

 すると、またアニメが始まった。最近、こういうのが多い。

 衝撃の事実が明かされた。そして、明るくなり、観客がザワついた。

「まさか、そんなことが」私はすぐに没頭した。

「フフフッ、花音は素直だな」

「だって、こんなこと」

「分かったけど、早く出よ」

 周りを見ると、ほとんど誰もいなかった。

「うん」


 外に出た。
「混んでる中で見るのもいいね」私は言った。

「子供がいるから、みんな素直になる」

「頑張れぇ~!って、良かったね」

「さてと、腹ごなしに歩こうか?」

「そうね」

 少し歩くと公園があった。

 公園内をブラブラと歩き、ベンチに座った。
 少し先で、小さい子供の家族連れが、鬼ごっこをしている。

「子供可愛いね」

「うん、可愛い」

「僕も花音と子供と、あぁやって遊びたいな。産んでくれないか?僕の赤ちゃん」

「えっ?そんなのまだ考えられない」

「もちろん急ぐ必要はないさ。いずれだよ」真田さんは私の手を握った。

「うん。考えておく」

 それから食事をして、明日は仕事だからとキスだけして、また今週末一緒にいようと約束して別れた。

 私は自分の部屋に帰ってきた。
「はぁ、なんか疲れたぁ。でも、楽しかったなぁ」私は服を脱ぎながら、一日を思い出した。

「姉ちゃん」ドアがノックされた。

「ちょっと待って、着替えてるから」

 聞こえたのか、聞こえなかったのか、ドアが開いた。

「ちょっと、閉めてよ」私は小さい声で言った。

 楓は中に入ってきてから、ドアを閉めた。
「なんで、入ってくるのよ。早く出てって」

「姉ちゃん、したい」

「はぁ?父さん達いるのよ。無理に決まってるじゃない」

「静かにするから」楓は下のスエットとパンツを脱いだ。

「何でしなきゃいけないなよ。もう疲れたから、お風呂入って寝るの」

「してきたの?」

「今日はしてない。映画見ただけよ」

「じゃあ、キスだけで我慢する」パンツとスエットを履いた。

「はぁ、もう、しょうがないわね」私は下着姿のまま、楓に近づいて、舌を絡めた。

楓の手がブラや下の下着の中に入ってくる。
私は体を離した。
「そういう事するなら、もう何もしてあげないからね」

「イヤだ、ごめんよ。もう出てくから」

楓は出ていった。

「まったく、もう」

    
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