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プロローグ 〜思い知らされた過去〜
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私は山上花音、現在、大手パソコン関連企業で、プログラマーとして働いている。
女性のプログラマーは珍しいが、全く女扱いされず、徹夜の作業も男達に囲まれながら、当たり前にこなしている。
辛くないかって?
別に辛くはない。自分が望んだことだから。
何で望んだのかって?
それしか自分が生きる道はないから、と話されても分からないだろうから、これまでの私のことを話そう。
私は至って普通の家庭に産まれた長女である。6歳下の弟がいる。
共働きの両親なので、保育所に通った。每日、服を泥だらけにして帰るような子供だった。
そして小学生になった。男の子と遊ぶのが当たり前となっていた私には、おませな幼稚園出身の女子達が新鮮だった。
しかし、昼休みには男子とサッカーボールを追い続けた。
しかし、こんな私でも意識を変えなくてはならない時期がやってきた。体の変化である。
学校では、何も変わらないフリを続けたが、共働きの両親は帰ってきても、忙しかった。弟の風呂入れも私の役目のまま続いた。
弟は母さんのように膨らんできた胸に興味津々だった。痛いと泣いたふりをしても、次の日にはまた触ろうとしてくる。母親に何度も言ったが、もう少しだけと言われた。
とうとう私も男子を恋愛の対象とする時が訪れた。いつも仲良くしていたS君だ。
しかし、ある日、お前とは一生親友だ。大人になっても一緒に遊ぼうな、と言われ、何もしないまま失恋して泣いた。
まぁ、今でも仲良くはしているが。
そして中学生になった。ずっとズボンでいたので、スカートを履くことに違和感はあった。しかし、自分が女の子らしくなれると思い、嬉しかった。
小学校から仲の良かった男子は、それぞれ部活動を始めた。ただ走り回って楽しかった時代は終わったんだと少し寂しく感じた。
私は特にやりたいこともなかったので、弟の面倒を見た。イタズラ盛りの弟には、何度もスカートをめくられたり、中に入られたりした。
そして、ある日、S君が女の子と2人で歩いているのを見てしまった。私はからかうつもりで近づき、S君を怒らせてしまった。
でも、私はただの親友ならきっとこうしただろうと思ってやっただけだ。その夜、S君から怒鳴って悪かったと連絡があった。
そして、女の子とどう接したらいいか分からないと相談された。
私のことを全然女として見てないんだなと改めて思い知らされた。
しかし、S君のそのままを好きになってくれる相手なら、変に構えないほうがいい。本当の自分を見せたほうがいいんじゃないかとアドバイスした。
本当の自分って何だよ、と言われた。
そうだね、本当の自分を見せてない人に言われたくないよね、と心の中で思った。でも今更、私が素直になって何を言っても、困らせるだけだ。
相手のことを好きなら、好きって素直に言うのがS君でしょ。カッコつけたいなんて笑っちゃうよ。
そうだな、俺がカッコつけたところで、笑えるだけだな。やっぱり花音は俺の最高の親友だ、と言い残し、電話は切れた。
もう涙は出なかった。親友らしくS君には幸せになって欲しい、と思うことにした。
そして、高校生になった。入学式で壇上に立った生徒会長がイケメンだったので、興味本位で生徒会に参加しようと申し込んだ。
他の女子生徒も同じだったらしく、多くの申込みがあったらしい。
先生から、中間テストの結果で決めると、まさかの提案が出された。
勉強だけは自信があったので、無事に通過したが、最後は生徒会長と女子の副会長が面接することになった。
これも無事に通り、生徒会に参加することになった。私の他、男子2人と女子1人だ。
後で、他の上級生に聞いた話だが、生徒会長と副会長は付き合っていて、お互いに心配する必要がない人間を選んだということだった。
中学までの私への評価は間違っていなかったんだと、また思い知らされた。それから1年は地獄だったが、その2人が卒業した後は、みんなと楽しく過ごすことができた。
そして大学生になった。
サークルの飲み会で飲みすぎてしまい泥酔した。最後は男の先輩と2人だったと少し記憶がある。
朝起きると、裸で知らない大きなベッドにいた。シーツには血がついていた。よく考えると、痛かったことを思い出した。
その先輩は、誰が見ても付き合ったことがないと分かるような人だった。しかし、その先輩はいなかった。
シャワーを浴びようと風呂場に向かったら、小さいテーブルに一万円があった。
別に大切に守っていたわけじゃないが、こんな初めてになってしまったことを忘れようと思った。
会計をしたら、お釣りとして、二千円が戻された。
今から大学に行くためには、着替えないとならない。面倒なのでサボることにした。
次の日、先輩に2千円を渡そうとしてら、
「いらない。でも、この前のことはなかったことにして欲しい。気が済まないなら、2、3万なら払える」と言われた。私は2千円を投げつけ、家に帰った。
あんなヤツに!涙が止まらなかった。
でも、気が済んだら、無償に腹が立ったので、普通にサークルには参加した。そのうち、先輩は来なくなった。
私はそれまで、結婚しないで、普通の会社で定年まで働くつもりだった。しかし、所詮は見た目の世界である。ずっと同じ会社で働くなんてできないと思うようになった。
見た目じゃなくて、仕事内容で評価され、実力で認められる仕事を探す事にした。
真っ先に浮かんだのが、弁護士や税理士だったが、とてもじゃないが、今からは無理だ。
医療事務、学校事務も考えたが、トップの意向が反映されやすく、パワハラで辞めるように追い込まれそうなイメージがあったので、止めた。
そうして辿り着いたのが、プログラマーだった。
両親には、これまでワガママらしいことを言ったことがない。今回だけはワガママを聞いて欲しいと言った。
そうして、大学を辞め、専門学校に通い始めた。
そして、現在の会社に就職した。
女性のプログラマーは珍しいが、全く女扱いされず、徹夜の作業も男達に囲まれながら、当たり前にこなしている。
辛くないかって?
別に辛くはない。自分が望んだことだから。
何で望んだのかって?
それしか自分が生きる道はないから、と話されても分からないだろうから、これまでの私のことを話そう。
私は至って普通の家庭に産まれた長女である。6歳下の弟がいる。
共働きの両親なので、保育所に通った。每日、服を泥だらけにして帰るような子供だった。
そして小学生になった。男の子と遊ぶのが当たり前となっていた私には、おませな幼稚園出身の女子達が新鮮だった。
しかし、昼休みには男子とサッカーボールを追い続けた。
しかし、こんな私でも意識を変えなくてはならない時期がやってきた。体の変化である。
学校では、何も変わらないフリを続けたが、共働きの両親は帰ってきても、忙しかった。弟の風呂入れも私の役目のまま続いた。
弟は母さんのように膨らんできた胸に興味津々だった。痛いと泣いたふりをしても、次の日にはまた触ろうとしてくる。母親に何度も言ったが、もう少しだけと言われた。
とうとう私も男子を恋愛の対象とする時が訪れた。いつも仲良くしていたS君だ。
しかし、ある日、お前とは一生親友だ。大人になっても一緒に遊ぼうな、と言われ、何もしないまま失恋して泣いた。
まぁ、今でも仲良くはしているが。
そして中学生になった。ずっとズボンでいたので、スカートを履くことに違和感はあった。しかし、自分が女の子らしくなれると思い、嬉しかった。
小学校から仲の良かった男子は、それぞれ部活動を始めた。ただ走り回って楽しかった時代は終わったんだと少し寂しく感じた。
私は特にやりたいこともなかったので、弟の面倒を見た。イタズラ盛りの弟には、何度もスカートをめくられたり、中に入られたりした。
そして、ある日、S君が女の子と2人で歩いているのを見てしまった。私はからかうつもりで近づき、S君を怒らせてしまった。
でも、私はただの親友ならきっとこうしただろうと思ってやっただけだ。その夜、S君から怒鳴って悪かったと連絡があった。
そして、女の子とどう接したらいいか分からないと相談された。
私のことを全然女として見てないんだなと改めて思い知らされた。
しかし、S君のそのままを好きになってくれる相手なら、変に構えないほうがいい。本当の自分を見せたほうがいいんじゃないかとアドバイスした。
本当の自分って何だよ、と言われた。
そうだね、本当の自分を見せてない人に言われたくないよね、と心の中で思った。でも今更、私が素直になって何を言っても、困らせるだけだ。
相手のことを好きなら、好きって素直に言うのがS君でしょ。カッコつけたいなんて笑っちゃうよ。
そうだな、俺がカッコつけたところで、笑えるだけだな。やっぱり花音は俺の最高の親友だ、と言い残し、電話は切れた。
もう涙は出なかった。親友らしくS君には幸せになって欲しい、と思うことにした。
そして、高校生になった。入学式で壇上に立った生徒会長がイケメンだったので、興味本位で生徒会に参加しようと申し込んだ。
他の女子生徒も同じだったらしく、多くの申込みがあったらしい。
先生から、中間テストの結果で決めると、まさかの提案が出された。
勉強だけは自信があったので、無事に通過したが、最後は生徒会長と女子の副会長が面接することになった。
これも無事に通り、生徒会に参加することになった。私の他、男子2人と女子1人だ。
後で、他の上級生に聞いた話だが、生徒会長と副会長は付き合っていて、お互いに心配する必要がない人間を選んだということだった。
中学までの私への評価は間違っていなかったんだと、また思い知らされた。それから1年は地獄だったが、その2人が卒業した後は、みんなと楽しく過ごすことができた。
そして大学生になった。
サークルの飲み会で飲みすぎてしまい泥酔した。最後は男の先輩と2人だったと少し記憶がある。
朝起きると、裸で知らない大きなベッドにいた。シーツには血がついていた。よく考えると、痛かったことを思い出した。
その先輩は、誰が見ても付き合ったことがないと分かるような人だった。しかし、その先輩はいなかった。
シャワーを浴びようと風呂場に向かったら、小さいテーブルに一万円があった。
別に大切に守っていたわけじゃないが、こんな初めてになってしまったことを忘れようと思った。
会計をしたら、お釣りとして、二千円が戻された。
今から大学に行くためには、着替えないとならない。面倒なのでサボることにした。
次の日、先輩に2千円を渡そうとしてら、
「いらない。でも、この前のことはなかったことにして欲しい。気が済まないなら、2、3万なら払える」と言われた。私は2千円を投げつけ、家に帰った。
あんなヤツに!涙が止まらなかった。
でも、気が済んだら、無償に腹が立ったので、普通にサークルには参加した。そのうち、先輩は来なくなった。
私はそれまで、結婚しないで、普通の会社で定年まで働くつもりだった。しかし、所詮は見た目の世界である。ずっと同じ会社で働くなんてできないと思うようになった。
見た目じゃなくて、仕事内容で評価され、実力で認められる仕事を探す事にした。
真っ先に浮かんだのが、弁護士や税理士だったが、とてもじゃないが、今からは無理だ。
医療事務、学校事務も考えたが、トップの意向が反映されやすく、パワハラで辞めるように追い込まれそうなイメージがあったので、止めた。
そうして辿り着いたのが、プログラマーだった。
両親には、これまでワガママらしいことを言ったことがない。今回だけはワガママを聞いて欲しいと言った。
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