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第35話 幸せな夜 2
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毎度おなじみ、みずほの部屋
すっかり二人と馴染んだつばさが、いぇ~いと手を挙げつつ叫んだ。
「ミツキが楽しく家族と温泉に行っている間に!」
みずほとひなはその手にパチン、パチンと合わせて叫んだ。
「第3回、ひみつ会議!」
みずほが、いつになく真剣な顔で口火を切るとひなとつばさがシンクロした。
「「もちろん、本日の話題は!」」
三人の声が揃う。
「「「クリスマス!」」」
そう、本日の話題は「クリスマスイブ」に誘う権利を誰が持つかという超重大なことなのである。
「みんなには悪いけど、これって、絶対に譲れないよ」
ひなの言葉に二人は「私だって!」と大きく頷いた。
もちろん、みずほもつばさも譲る気など無い。
クリスマスイブのデートだ。ロマンチックだし、街は恋人同士だらけになる。
『『『そうなったら、絶対に思いが叶っちゃうよね!』』』
何がどうでも、譲るセンは考えられない。
しかし、いざ決めようとすると難しい。
み「どうやって決める?」
ひ「クジ?」
つ「ジャンケンとか?」
ひ「ダメ、私ジャンケン弱いもん」
つ「それに、ジャンケンで決めたなんて、後からわかったらみっちゃん、きっと悲しむと思うなぁ」
ひ「そうだよね、優しいから」
み「あら、優しいだけじゃなくて、思いやりもあると思うのですけど」
ひ・つ「「さんせー 頼りになるし!」」
話はズレがちだが、本人達は極めて真剣なのだ。
それぞれ、主張したいことは山ほどある。でも、共通の人を好きになった「仲良しの女の子同士」だ。
その上、三人とも相手の気持ちを理解できる、思いやりのある人間同士なのが困りもの。
しかも、前回の話し合いで「早い者勝ちはミツキを困らせるだけ」という結論が出ているから、何かを主張するのも難しい。だからと言って、公平で、なおかつミツキを困らせないやり方を探すのは余計に難しかった。
しかも、ライバルであると同時に、仲間でもある。
好きな人のことを安心してノロケられ、自慢できる仲間だから、ついつい、結論を急ぐよりも、甘やかなガールズトークが展開されがちだ。
結局、喧々諤々《けんけんがくがく》の話し合い…… という名の、ガールズトークを楽しんだ結果、決まったのは、トリプルデートだった。
ひみつ会議は、夜遅くまで、デートに着ていく服の話へと話題が続くのだ。
幸せな夜であった。
・・・・・・・・・・・
箱根の温泉宿にて
『あぁあん、おにぃ、このまま、朝まで一緒だよ。ああ、おにぃの息がかかってるぅ。なんだか頬に当たるだけで気持ち良いよぉ、今夜はこのまま寝かさないからね。一晩中でも良いの♡ あぁ、優しくしてください。ううん、乱暴でも良いよ。ほら、くぱぁって。見てぇ、おにぃ。あぁ、恥ずかしい』
明かりを落とした部屋で、光樹は妹のベッドの横に座ったまま、その手にあるウチワをゆっくりと動かしていた。
クリスマスの予定が決定されてしまったことも知らない本人は、風呂でのぼせた妹の面倒を見ていたのだ。
突然、未玖が、タコのように口をすぼめたかと思うと、ニヘラと笑った。
「夢を見てるのかな?」
ちょっとだけ『なんか、ろくでもない夢な気がするのはなぜなんだろ?』と思ったが、それは胸の内。
「楽しい夢だと良いんだけど。でも、この分じゃ、この子は、きっと朝まで目を覚まさないわねぇ」
母親は「せっかく、楽しみにしていたのにね」としみじみ。
「未玖も昼間は楽しんでたから、きっと満足してるよ! 明日もいろいろと食べ歩こうよ! 定番の温泉卵も食べたいし」
「そうねぇ、この子は残念だったのだろうけど……」
母親は複雑な想いを込めた目で、残念な娘を見つめ、兄はとても優しい目をして妹に、ゆっくりとウチワを動かし続けたのである。
「うへぇ~ おにぃ くぱぁ……」
どんな夢を見ているのだろうか。
幸せな夜であった…… はず。
すっかり二人と馴染んだつばさが、いぇ~いと手を挙げつつ叫んだ。
「ミツキが楽しく家族と温泉に行っている間に!」
みずほとひなはその手にパチン、パチンと合わせて叫んだ。
「第3回、ひみつ会議!」
みずほが、いつになく真剣な顔で口火を切るとひなとつばさがシンクロした。
「「もちろん、本日の話題は!」」
三人の声が揃う。
「「「クリスマス!」」」
そう、本日の話題は「クリスマスイブ」に誘う権利を誰が持つかという超重大なことなのである。
「みんなには悪いけど、これって、絶対に譲れないよ」
ひなの言葉に二人は「私だって!」と大きく頷いた。
もちろん、みずほもつばさも譲る気など無い。
クリスマスイブのデートだ。ロマンチックだし、街は恋人同士だらけになる。
『『『そうなったら、絶対に思いが叶っちゃうよね!』』』
何がどうでも、譲るセンは考えられない。
しかし、いざ決めようとすると難しい。
み「どうやって決める?」
ひ「クジ?」
つ「ジャンケンとか?」
ひ「ダメ、私ジャンケン弱いもん」
つ「それに、ジャンケンで決めたなんて、後からわかったらみっちゃん、きっと悲しむと思うなぁ」
ひ「そうだよね、優しいから」
み「あら、優しいだけじゃなくて、思いやりもあると思うのですけど」
ひ・つ「「さんせー 頼りになるし!」」
話はズレがちだが、本人達は極めて真剣なのだ。
それぞれ、主張したいことは山ほどある。でも、共通の人を好きになった「仲良しの女の子同士」だ。
その上、三人とも相手の気持ちを理解できる、思いやりのある人間同士なのが困りもの。
しかも、前回の話し合いで「早い者勝ちはミツキを困らせるだけ」という結論が出ているから、何かを主張するのも難しい。だからと言って、公平で、なおかつミツキを困らせないやり方を探すのは余計に難しかった。
しかも、ライバルであると同時に、仲間でもある。
好きな人のことを安心してノロケられ、自慢できる仲間だから、ついつい、結論を急ぐよりも、甘やかなガールズトークが展開されがちだ。
結局、喧々諤々《けんけんがくがく》の話し合い…… という名の、ガールズトークを楽しんだ結果、決まったのは、トリプルデートだった。
ひみつ会議は、夜遅くまで、デートに着ていく服の話へと話題が続くのだ。
幸せな夜であった。
・・・・・・・・・・・
箱根の温泉宿にて
『あぁあん、おにぃ、このまま、朝まで一緒だよ。ああ、おにぃの息がかかってるぅ。なんだか頬に当たるだけで気持ち良いよぉ、今夜はこのまま寝かさないからね。一晩中でも良いの♡ あぁ、優しくしてください。ううん、乱暴でも良いよ。ほら、くぱぁって。見てぇ、おにぃ。あぁ、恥ずかしい』
明かりを落とした部屋で、光樹は妹のベッドの横に座ったまま、その手にあるウチワをゆっくりと動かしていた。
クリスマスの予定が決定されてしまったことも知らない本人は、風呂でのぼせた妹の面倒を見ていたのだ。
突然、未玖が、タコのように口をすぼめたかと思うと、ニヘラと笑った。
「夢を見てるのかな?」
ちょっとだけ『なんか、ろくでもない夢な気がするのはなぜなんだろ?』と思ったが、それは胸の内。
「楽しい夢だと良いんだけど。でも、この分じゃ、この子は、きっと朝まで目を覚まさないわねぇ」
母親は「せっかく、楽しみにしていたのにね」としみじみ。
「未玖も昼間は楽しんでたから、きっと満足してるよ! 明日もいろいろと食べ歩こうよ! 定番の温泉卵も食べたいし」
「そうねぇ、この子は残念だったのだろうけど……」
母親は複雑な想いを込めた目で、残念な娘を見つめ、兄はとても優しい目をして妹に、ゆっくりとウチワを動かし続けたのである。
「うへぇ~ おにぃ くぱぁ……」
どんな夢を見ているのだろうか。
幸せな夜であった…… はず。
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