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第33話 勉強会 3

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 突然だった。

「光樹、この問題って、どっちで教えたら良いと思う?」

 ひながノートごと身を乗り出してきたのを「どれ?」と迎えるように見たのがいけなかった。

 ゆったりした服、緩んだ胸元の前屈みである。これが、つばさかみずほのボリュームだったら、服をちゃんと押し上げていただろう。

 膨らみのすそ野は見えても、中身は服が覆っているはずだ。

 だが、相手はひなである。

 おまけに、ちょっと大人っぽいブラを意識して付けるようになったのは最近のこと。

 カップサイズが合ってなかったらしい!

 まさに胸の中をモロに覗きこむ形だった。

『そうか。こういう時は、ひなの方がヤバいのか』

 ガビーン

 見てしまった……  見えてしまった…… 

 強烈な衝撃が背中を駆け上ってくる。

『え? しかも、みずほに気付かれた?』

 目がまん丸に見開いて、こっちを見ていた。視線の先も確認されてしまった。

 すなわち、光樹が「目撃したこと」を知られてしまったのだ。

 強烈な羞恥と、オトコ特有の衝動、そして、さっきから女子達の良い匂いに包まれてきた反応が、光樹を限界に追い込んでしまったのだ。

 背中をすごい勢いで駆け上っている「ダメ」の感覚。まさか、ここで、それはダメだ。それだけはダメだ。

 もう、恥ずかしがってる場合ではなかった。

「ご、ごめん、ちょっとトイレを貸して」

「あ、ど、どうぞ」
「うん。いってらっしゃ~い」
「待ってるね」

 三人三様の返事を聞くどころではない。

 通い慣れたみずほの家である。階段を駆け下りた1階。

 文字通りトイレにのだ。

 スッキリしてしまえば、あっと言う間かもしれない。だが、まさか他人の家、それも女の子の家で、そんなことをするわけにもいかない。

 ともかくも鎮《しず》めなければ、と光樹は焦る。

『えっと、こういう時は、素数だよ。素数を数えればいいんだ』

 年の近い妹がやたらと肉弾攻撃をしてくるせいで、たまに、反応してしまう時がある。そういう時の対処の仕方に慣れている。

『1,3、5、7.9……  101、103……』

 100台までは、ほとんどのレベルだ。鎮まるどころではない。
  
『419、421、431、えっと、えっと439…… あ、433もか』

 ようやく、少し冷静になってきた。

『そう言えば、1と9は素数じゃなかったっけ』

 思い出せるだけ頭が回るようになった時には、既に十分以上経過している。

 恐る恐る、部屋に戻ろうとしたのだ。
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