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外伝 コロッケとボク 2

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 でも、去年の春、はじめて「もう、親分にはついて行けませーん」って感じで、コロッケが道にへたり込んだんだ。

 その時に「あ、コロッケもおばあちゃんなんだ」って気が付いたんだよね。

 あまりにも強い犬だから、ついつい忘れちゃってた。

 なにしろ、いつでも、どんな犬に対してもコロッケは強かった。

 この辺の犬たちのリーダーらしい。ボクは、そのリーダー犬のってことで、お散歩してる時に出会う犬達は、ボクに対してもすごく愛想良くしてくれる。

 ただし、ボクは絶対に、その犬達を撫でられないのが笑えるだろ?

 だって、手を伸ばした瞬間、サッとコロッケの頭が入ってくるんだもん。

 コロッケはボクを黒い瞳で見上げて嬉しそうだ。

「わたし! ね? ね? ね? ほら、わたしがいますよ。撫でるんなら、私を撫でませんか?」

 そんなセリフが顔に書いてあるんだ。他の犬を撫でられるわけがない。

「ははは。ごめんごめん。君だけだよ」

 そんな風にコロッケの頭を撫でると、実に気持ちよさそうに目を細めて耳を後ろに伏せるんだ。そして、頭を撫でられたまま、今度は相手の犬にドヤ顔してみせるのが常だった。

 わかるかい? 犬もドヤ顔するんだよ。ちぎれんばかりに振っている尾っぽからは「私の親分って、ステキでしょ」って言葉が聞こえるみたいだったよ。

 コロッケは無条件で、ボクが好き。
 ボクは無条件でコロッケが好き。
 コロッケは大事な家族なんだ。
 だから、ボクの大切な家族は
 コロッケにとっても大切な家族になる。
 
 ということで、である未玖が、ピアノのお稽古から帰る時間に合わせて、お迎えがてらのお散歩も、にとっては楽しくて、しかも大事な時間だった。

「よし。いつもの通りオヤツだぞ」

 ビシッ

 ほら、犬の「お座り」にも、いろいろとあるじゃん? コロッケは、ボクが「お座り」って声を出さなくても、まるで心の中が伝わってるみたいに、背中を伸ばした、見事なお座りをしてみせるんだ。

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