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第27話 ボクのおよめさん 4
しおりを挟むあ、そうそう。その後のコロッケは絶対に人を噛まなくなったんだ。
ただ、犬のお散歩をしている人に会うじゃん? 連れている犬を撫でようとすると割り込んできて「私の頭を撫でてよ」って顔をするんだ。そして、どんなに他の犬に吠えられても、一歩も引かなかった。むしろ、オレを守るみたいにして脚を踏ん張って立ち塞がる感じだった。
近所の人は、みんな、オレの犬だと思ってたみたいさ。
不思議だよね。
それにしても、コロッケの飼い主さんて何考えてたんだろう、だよね。いい加減って言うか。だって自由すぎない? 自分の家の犬が、朝夕にお出かけしてるのに、気にしてないんだよ?
ヘンに思わなかったのかなぁ。ま、この飼い主さんにはいろいろと言いたいことがあるんだけどね、今さらか。
今だと考えられないかもっていうか、ちゃんと世話をしろよ、だけど、それが無理だったんだろうね。
あ、そうそう、もう一つが、つんちゃんのおでこのケガのことだ。しばらく跡になっちゃってね。けっこう目立つケガになっちゃったからかなぁ。
「こんな顔になっちゃうなんて」
やっぱり、小さくても女の子だから、すごく気にしてた。だから、ある日言ったんだ。
「気にしなくて良いじゃん」
「でも、こんなお顔じゃおよめさんになれないよ」
「だいじょうぶ。ボクのおよめさんになればいいでしょ」
「ほんとに、わたしをおよめさんにしてくれるの?」
「もちろん! やくそくだよ!」
そんな感じの約束をしたんだけど、ある日、急に来なくなっちゃったんだ。
それで、つんちゃんのアパートに行ってみたら、ガラーンとしててね。引っ越すなんて言ってなかったのに。
今思いだしてみると、あれって、親が借金とかあったんじゃないかなぁ。いろんな張り紙みたいなのがしてあったし、ガラスも割られてたからね。
子ども心に「あ、つんちゃんには、もう会えないんだ」って思ったよ。
ん?
紺野さん、なにか?
ボクの前にしゃがみ込んで前髪の間からオレを見上げてるんだ。
「ねぇ? そのつんちゃんの下のお名前って、もう忘れちゃった?」
「いやあ、だって、子どもの頃だよ? 本名で呼び合ったのも少なかったし。ずっと、つんはつんで…… あ、思いだした」
「思いだした?」
ハッとした。
オレのヒザに手を置くようにして、身体を乗りあげてくる紺野さん。
そして、髪の毛をかきあげると、キラキラした目でこっちを見てる。
「まさか」
記憶の中にあるパッチリした黒目がちの目を潤ませながらオレを見つめてた。理知的なおでこには、傷跡一つ残ってない。
「つばさちゃん?」
「せーかい」
チュッ
人生の半分にもなる長さで会えなかった「嫁」の柔らかな唇と、初めて重なった瞬間だった。
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