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第26話 みっちゃん 3

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 大島先生に掴まれたときとは違って、当たっている手が柔らかくって、柑橘系の甘い匂いの空気がふわっと漂ってくるんだもん。

 全然違う「胸ぐらを掴まれた」だよねって、わっバストまでのワンピースの下は、眼福モノの物体が揺れてる。

 ダメだ、見ちゃダメだ、見ちゃダメだ、見ちゃダメだ。

「そのくらいは見て良いですよ」
「え? 良いの? っていうか、視線がバレてる!」
「そんなの、どーでも良いから。ほら、教えて、そこを詳しくってば」
「え~っと、ミツキって読み方をするあだ名のこと?」
「そう。ちゃんと教えて」
「それは、その、木山さんって女の子がいて、その子はみっきーって。後は……」
「後は?」
「えっと、あの、教えるのはぜんぜん良いんだけど、それを聞いてどうするの?」

 いきなり、紺野さんは ぷく~っと膨れたんだ。

「いけずぅ」
「いや、いけずって、あのぉ」

 前髪で目が隠れちゃってるけど、確かに、この感じは、すごく可愛い子だよ。

 ドキドキしてしまう。

 あ、みず・ひなちゃん。これは浮気じゃないからね! ドキドキしちゃうのは男の子のサガなんだ!

「ほら、もう一つは? あ、それとも思い出せないの?」
「思い出せるって言うか、忘れるようなことでもないよ。でも、えっと、あんまり言いたくないんだよなぁ。その呼び方をした子のことがちょっと、あってさ」
「それって、悪い思い出なの?」
「ううん、逆だよ。オレにとっては、これ以上ないほどに最高の思い出の子なんだ。だから、かえって人に話したこともないんだ」
「♡ね♡ あえて、お願いしたいの。教えて? あ、そうだ、みっちゃんの最高の思い出だもんね。タダとは言わないわ」
「えっと、それは?」
「ちゃんと教えてくれたら、これ、あげる♡    あ、私は初めてだから安心して?」

 ええええ!

 だって、紺野さんが「これ」って言った時、唇を押さえていたんだよ? まさかキス? いや、まさかだよね。

「ね、お、ね、が、い。みっちゃん、教えて。私のファーストキスくらい、あげちゃうからぁ」
「えっと、あの、き、キスくらいって、あの…… 話すのは別に良いんだけど、えっと、君にとっては面白くないかも」
「ううん、そんなことない。教えて? ね、なんて呼ばれてたの?」
「えっと、君が今呼んだみたいに『みっちゃん』って呼ばれてたんだ。その子は近所の同い年の子でさ」
「うん、うん」

 スルッと、隣に座り込んで、腕ごと抱きかかえるようにしてくっついてきた。

「あの、えっと、話すけど、あの~ なんか、当たってるんですけど」

 ヤバい。この感触。

 ぜったい、みずほと同じくらい…… いや、もうはあるよ。

「いいの。これはワザと当ててるんだから。ほら、そんなことに気を取られてないで、ちゃんと教えて」

 ギュッとしがみつかれているオレはベッドに並んで座りながら、幼い頃のことを思いだしていたんだ。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
作者より
もう、読者の皆さまは、お気付きですよね。
「幼い頃の呼び方って大切な思い出だよね」という意味で
本話と27話は25話が伏線になってます。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
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