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外伝8 指輪 後編 6

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「ごめんなさい」
「いやいやいや。謝る必要なんて無いじゃん。これからは、オレのために、あぁ言うのをたまにしてくれる? もっと、いろいろできるんだろ?」
「あなたがイヤじゃなければ、なんでもします」

 本当だ。しんちゃんのためならなんでもできる。

「最高じゃん。頭が良くて料理が美味くて、エッチが上手な…… オレだけを愛してる奥さんなんて、さ」
「も~」

 思わず唇を尖らせたのは、甘えてしまったからだ。

「エッチが上手は、褒め言葉じゃないと思うのですけど」
「褒めてるよ。君が大好きだから」
「ホントに、ヤじゃない?」
「もちろんさ。嫌だったら、あんな風になるわけないだろ? もう無理ぃって言ってるのに、それから何回搾り取ったんだよ」

 プニュッと紗絵の頬を指で突いてくる。それは、からかってくる時の表情だ。

「そんなこと、言われたら恥ずかしい…… です。でも、わかりました」

 
 一瞬、下を向いてから「あの」と声を小さく震わせた。


「ん?」
「このままだと、ちょっと不安なんです」

 そう言いながらも、受け入れてもらえた安心感で表情がニヤついてしまっている。しかし、しんちゃんは「不安」の一言に反応してしまったらしい。

「え? 何か不安になる要素あった? オレ、今、全部オールOKって言ったよね? なんだったら、これってプロポーズの再現だよね?」
「はい。でも、言葉だけだと、しんちゃんはごまかすかもしれないので」
「え? そんなことはしないよ!」

 本気で焦るオトコの頬に、チュッとキスをした紗絵は耳元で囁いた。

「もう一回、搾り取らせてくださいね」
「わああああ! さっちゃん、そ、それぇえ!」

 一回では終わらなかった。朝まで続いてしまった…… いや、しまった愛情表現のおかげで、しんちゃんは身動きもできないほどに消耗した土曜日であった。


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