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外伝8 指輪 後編 4

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 紗絵の前髪をそっとかき分けて、チュッと額にキスする仕草がとても優しかった。

「あの時、君は、自分には教える義務があるって言ったね」
「確かに、言いましたけど」

 恋人がわずかに唇を差し出してきた。チュッと紗絵から応じた。それはまるで紗絵の愛を確かめる仕草に見えて、ついつい、チュッ、チュッ、と何度も唇をつけてしまった。

 満足げに微笑んだ恋人は「もしも、君の過去がなかったら、そんな義務を感じていたかな?」とイタズラッ子の表情で覗き込んできた。

 紗絵が答えに困るのを見越してだろう。言葉が続く。

「君と付き合い始めたときはさ、そこまで思ってなかったんだけど、よくよく考えてみると、さっちゃんが過去に学んだからこそ、こういう風に行動できるんだって思えたんだよ」
「反省はしました。だから、それが形になるように行動してきたのもホントです。でも、とっても愛し合っていたはずの相手を裏切った最低な女だという事実は変わらないんです」

 紗絵の言葉を、今度は遮らずに優しい目で見つめたままだ。

「どんなに反省しても、私がクズみたいなことをしたのは事実です。それに、そのオトコとヘンタイみたいなエッチもしてしまいました。さっきのあれだって」

 紗絵の巨大な胸を使ったワザのことだと伝わったのだろう。恋人の手が胸に伸びてきた。コクリと頷いて、優しく揉み始めてくる男の手に委ねたまま、話を続けた。

「そのオトコに練習させられたんです。いっぱい、いろんなヘンなことをさせられました。好きな人が…… 私のことを信じてくれた大切な人がいたのに、裏切ってしまったんです。そんな女と本当に結婚していいのか。しんちゃんには、ちゃんと話さないとダメって思いました」
「それで、こうして話してくれてるわけだ?」
「はい。私がダメな女だって、ちゃんと話すべきだって。あ、勘違いしないでくださいね。私はしんちゃんのことが大好きです。あんな形で始まった交際ですけど、今では世界一愛してるって断言できます。この後の人生を一緒に生きていけるならとっても嬉しいって思ってます。でも、しんちゃんにとって、どうなのかは別です。だから、こうして話して、聞いたしんちゃんが考え直すのなら…… それを受け入れます」

 真剣な表情で「しんちゃんの気持ちを正直に言ってください」と口に出した言葉は微妙に震えている。

 それに気付いたのかどうか。しんちゃんは、眉を真ん中に集めて、困った表情をしながら言った。

「う~んとさ、正直に言うと」

 息をするのも忘れて、次の言葉を待つ紗絵だ。
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