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外伝8 指輪 前編 7

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 大島が何を考えているのか、さっぱりわからない。

 しかし、その態度は堂々としていて、一点の曇りも見られない。だから、大島としては、自信を持って言っていることなのだろう。

 紗絵は混乱が深まるばかり。

 大島の真意どころか、言葉の意味が分からない以上、反発する余地もない。

「小仏先生の過去に何があったのかはわかりません。でも、たぶん、オレと同じようなんじゃないかなって思いました」
「違います」

 言下に否定した。

「違わないです」

 意外にも、正面から、それを否定されてしまった。その押しの強さの後ろ側に「正義」というマントにくるまれたが立っているのがわかっている分だけ、紗絵はひるまずにはいられない。

「先生も、昨日までのオレと同じです」

 ビシッと言い切る言葉に、紗絵は反発する勇気を喪った。

 そう。大島は、紗絵の「闇」を見抜いている。そこから助けたいと思ってくれているのがありありとわかるのだ。

「お願いです。オレと付き合ってください」
「私は、誰かとお付き合いできるような人間ではありません」

 座った状態のまま腕力だけで、グイッとテーブルを回りこんだ大島は「あなたがどんな人間なのかってことと、オレと付き合えるかどうかって関係ないんじゃないですか?」と、光に満ちた瞳が覗き込んできた。

 手を伸ばせば届く距離に近寄っているのに、不思議と「身の危険」を感じなかった。

「関係ありますよ。私はダメな人間なんです。だから、あなたと付き合えません」
「えっとぉ。小仏先生がダメかどうかなんて、付き合えるかどうかと関係ないんじゃないですか? だって、オレはそのダメな部分ごと好きになったんだから」
「す、好き?」
「はい。小仏先生…… いえ、小仏紗絵さん。あなたが好きです」
「で、でも、、あの、そんな、だって、さっきお礼に付き合うって言いましたよ」
「本来、オレは付き合ってくださいなんて言える立場じゃないんで、お礼にって口実を使っただけですよ」
「え? それってヒドくないですか?」

 いくらなんでも「お礼に付き合ってあげる」っていうのは、ドン引きなオレ様発言だと非難できてしまうはずだ。

 大島は「作戦ですから」と笑顔で言い切ったのだ。
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