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外伝7 後編 春遠からじ 4
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おそらく、自分自身の感慨を追い払おうとしたからだろう。紗絵はつい言葉を出していた。
「二股でしたっけ」
「え?」
ギョッとしたように、目を開ける大島。
その目を見て、慌てて「ごめんなさい」と我を取り戻した紗絵。
他人の傷に触れて良いはずがない。
案に相違して、大島は薄く笑って見せた。
「さっきの話ですね。あれ、ちょっとだけウソです」
目を閉じた大島は「少しカッコをつけました」と吐き捨てた。
「カッコをつけた?」
「はい。ネトラレですよ。彼女には男がいたんです。単なる幼馴染みだと言ってたんですけどね」
なんと答えるべきなのか、紗絵は迷ったが、勝手に言葉を続けたのである。
「仲良くしてるのは知ってましたよ? でも、幼馴染みだって、まあ、それは付き合った後に聞いたんですけど。とにかく、オレが告白してOKしたなら、他に付き合ってる男がいるなんて思うわけがない」
「その幼馴染みと、彼女さんが、こっそり付き合っていたのですか?」
「みたいですよ。最後まで認めなかったけど、身体の関係は認めましたからね。もう、わけが分かんないですよ」
大島は自嘲のような歪んだ笑みを浮かべた。
「身体の関係がある人がいるのに、大島先生にOKをしたんですか?」
「どっちが先かはわかりませんけどね」
ふっと息を吐き下ろした。
「ずっと、オレが初めてだって思ってました。でも、向こうが先だったのかもしれない。わかりません。 ……彼女とは大学も学部も同じだったんです。ただ、サークルだけ違ってて、オレはサッカー部。彼女はボランティア部でした。で、夏休みくらいから、なかなか会えなくなってきたんです。後から思えば、彼女が予定をわざとズラしていたんでしょう」
だんだんと饒舌になって行くのは、何かのストッパーが外れてしまったからだろうか。
「彼女の誕生日が9月で、約束したんですよ。始めは渋っていたのを、ちょっと遠出するって言ったらノッてきたんです。後から考えれば、幼なじみ彼氏に見られるのを警戒してたんでしょうね。ま、こっちは、そんなことは知らないから、デートとは別にサプライズで誕生日になる瞬間にプレゼントを渡そうと思って行ったんですよ」
「そこで何か見ちゃったとか?」
「よくわかりますね。お互い実家ですからね。若かったんだなぁ。きっかり0時に渡そうって、彼女の家の前に着いて電話したら、なんと家の前の小さな公園で鳴ったんです」
紗絵は、いつの間にか、保冷剤ではなく、その手で冷え切った背中を撫でていた。意識していたわけでもなく、自然とそうしていたのだ。
「二股でしたっけ」
「え?」
ギョッとしたように、目を開ける大島。
その目を見て、慌てて「ごめんなさい」と我を取り戻した紗絵。
他人の傷に触れて良いはずがない。
案に相違して、大島は薄く笑って見せた。
「さっきの話ですね。あれ、ちょっとだけウソです」
目を閉じた大島は「少しカッコをつけました」と吐き捨てた。
「カッコをつけた?」
「はい。ネトラレですよ。彼女には男がいたんです。単なる幼馴染みだと言ってたんですけどね」
なんと答えるべきなのか、紗絵は迷ったが、勝手に言葉を続けたのである。
「仲良くしてるのは知ってましたよ? でも、幼馴染みだって、まあ、それは付き合った後に聞いたんですけど。とにかく、オレが告白してOKしたなら、他に付き合ってる男がいるなんて思うわけがない」
「その幼馴染みと、彼女さんが、こっそり付き合っていたのですか?」
「みたいですよ。最後まで認めなかったけど、身体の関係は認めましたからね。もう、わけが分かんないですよ」
大島は自嘲のような歪んだ笑みを浮かべた。
「身体の関係がある人がいるのに、大島先生にOKをしたんですか?」
「どっちが先かはわかりませんけどね」
ふっと息を吐き下ろした。
「ずっと、オレが初めてだって思ってました。でも、向こうが先だったのかもしれない。わかりません。 ……彼女とは大学も学部も同じだったんです。ただ、サークルだけ違ってて、オレはサッカー部。彼女はボランティア部でした。で、夏休みくらいから、なかなか会えなくなってきたんです。後から思えば、彼女が予定をわざとズラしていたんでしょう」
だんだんと饒舌になって行くのは、何かのストッパーが外れてしまったからだろうか。
「彼女の誕生日が9月で、約束したんですよ。始めは渋っていたのを、ちょっと遠出するって言ったらノッてきたんです。後から考えれば、幼なじみ彼氏に見られるのを警戒してたんでしょうね。ま、こっちは、そんなことは知らないから、デートとは別にサプライズで誕生日になる瞬間にプレゼントを渡そうと思って行ったんですよ」
「そこで何か見ちゃったとか?」
「よくわかりますね。お互い実家ですからね。若かったんだなぁ。きっかり0時に渡そうって、彼女の家の前に着いて電話したら、なんと家の前の小さな公園で鳴ったんです」
紗絵は、いつの間にか、保冷剤ではなく、その手で冷え切った背中を撫でていた。意識していたわけでもなく、自然とそうしていたのだ。
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