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第7話 一緒に復讐を 3
しおりを挟む【美羽の回想】
サーエが突然やってきた。今まで無かったことだ。それだけでも嫌な予感しかしないのに、来るなり「シャワーを貸して」と頼まれた。
お手伝いさんに頼んで、すぐお風呂を用意してもらった。買ったばかりのパジャマも出してもらって用意した。
それから2時間。
泣いてたんだって一目でわかる顔で出てきた。パジャマの間から覗いた肌が真っ赤になってるのは、きっと、強く肌をこすってたからに違いない。
確定だ。
私から聞くわけにもいかないから、布団を二枚敷いてもらって並んで寝た。
電気を消した後もすすり泣いていた。そして、しばらくしてから「どうしよ、たっくんの顔が見れない」と泣き声まじりの声がした。
一応は止めたけど、相手はサーエの第一希望にしてる会社の人だ。面接の練習をしてもらえるなら、悪い話じゃない。本当に、面接の練習ならばだけど。
危惧していたことが起きてしまったらしい。あ~ 先輩になんて謝ろう。私がついていながら。
でも、どうする? 警察? それともお父さんに言って弁護士さんを使う? ともかく話を聞かなきゃか。
辛いとは思うけど、まず、話を聞かないと。場合によっては病院よね。
「面接の練習だったはずでしょ?」
「雰囲気が大事だからって。ちゃんとしたシティホテルだったし。そういうこともあるのかなって部屋に入ったの」
馬鹿! って思っちゃったけど責めても仕方がない。襲う男が悪いんだもん。そう思いつつも、あんな男を信じるからだと言う苛立ちが「騒がなかったの?」と聞いてしまった。ごめん。優しくなりきれないよ。
でも、シティホテルなら一流ホテルでも少し騒げば誰かが気付くハズよ?
「あのね、暴力っていうか、言うことを聞かないと就職ができなくなるようにするぞって。それにね」
「それに?」
「ホテルに着いてきたのはお前だろって。婚約者に、ホテルに着いてきた写真を見せるって言われて」
記念だ、と言われて部屋に入ってから写真を撮ったらしい。ベッドが後ろに写り込んでいるから、確かに、そんなのを見せられたらビックリするだろうけど……
先輩なら、信じてくれるに決まってるのに。なんで、そんなレベルの低い脅しに?
さすがに、イラッとしてしまう。でも、悪いのはあの男だ。落ち着け、私。
「そこから、少しだけって言うから……」
触られることを許し、一枚ずつ脱がされ、とうとう身体を許してしまったらしい。男の、そんな口車に乗せられるなんて。決して愚かな子じゃないのに、サーエは人を信じやすいというか、本当に、悪意に弱いのだ。
今までは私と一緒だったし、なんていっても大野先輩が付きっきりだったから、悪意に晒されることに慣れてない弱点が出てしまった。
ずっと泣いているサーエを一晩かけて説得はしてみたけど、結局、できたのはお医者様に行ってモーニングアフターピルをもらうことだけだった。
あぁ、絶対、このままじゃ終わらないよね? お父さんに弁護士さんを紹介してもらうのが一番だってわかってるのに納得してくれない。
どうしよ?
先輩に、言わなきゃ。でも、本人が言わないのに、私が横から言えないよ。
あぁあ! どうしたらいいの!
【回想終了】
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