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第6話 ギルティ(4年冬) 後
しおりを挟む思わず立ち止まって見つめたら暗闇から人影。
「お久し振りです」
!!!!!
ビックリした~
「わぁ~ 誰かと思ったよ。町田さんじゃん」
「はい」
暗がりにいたのは美羽ちゃんだった。研修の時、空港まで見送りに来てくれて、それ以来かな?
お礼の土産を渡したかったけど予定が合わないとかで、紗絵を通じて渡しただけ。
っていうか、大学で見かけても目だけで挨拶してサササッと逃げるようにいなくなってしまう。避けられてる雰囲気があった。思い当たるような何かがあるわけでもなく、オレとしては哀しかったんだけどさ。
「ごめんなさい、突然来ちゃって」
「いえいえ。今、紗絵は出かけてるよって…… あれ? みんなで飲み会だって言ってたのに。一緒じゃなかったんですか?」
「そのことなんですけど。お話ししたいことがあるんです」
「えっと、それならメッセくらいくれれば……」
オレは言葉を途中で切った。つまりは「直接じゃ無いとダメな話」だってコト。
街灯に照らされた顔は何かを思い詰めているのがわかって、ため息を一つ。
これは絶対にヤバい話だよね?
「わかった。部屋にどうぞって言いたいところだけど、今、紗絵がいないから」
誤解を受けるようなことは禁物だよ。友情にヒビを入れかねないもんね。
「ごめんなさい。サーエがいると話せないので」
「おやおや、なんか深刻そうだねぇ。って言うか、オレのために来てくれたんだろ?それなら、むしろ、ごめんはこっちの方だよ。町田さんの彼氏さんが泣いてないと良いけど」
「そんな! 私、彼氏なんていないし。まだ他の人なんて…… あっ、そ、それは違って!」
わざと茶化した返事をしたけど、なんかヘンなボタンを押しちゃった?
っていうか、彼氏いないんだ? って部分にツッコミを入れる余裕があるほど、オレも大人じゃない。
『現実を見なくちゃいけないときが来たってコトか』
美羽ちゃんは真面目な子だ。きっと、もしもそうだったら紗絵を許せないよね。もちろんオレだって許せないけどさ。
駅前のカフェまでは、お互いに無言だった。
二人の雰囲気が場違いないほどに明るいカフェの席。目の前には蒼白な表情で苦悩する美羽ちゃん。
「まるで自分の浮気を告白しているみたいじゃん」
「私じゃなくて!」
「そうだよね、町田さんではないよね」
苦笑を期待したら、むしろ追い詰めちゃった?
ごめん。
「最低の女だって思われちゃうかも知れないんですけど」
心配はわかる。
美羽ちゃんはオレのコトを今でも好きだし、おそらく恋心に気付いているのも知ってる。
だから、親友の浮気を喋って「片思いしてる男の気を惹くために親友を売る」って誤解されるのが怖いんだ。
「大丈夫だよ。誤解なんてしないから」
オレよりも数段、苦しそうな顔を見れば、そのくらいはわかるよ。
「そんなに悩まないでよ。どうせ時間の問題だったから」
ハッと目が合った。
「あの、ホントに?」
「うん。見ないように逃げてただけだと思う」
それが本音だ。「騙されたままで良いか?」って葛藤もあったけど、KONの時の傷がオレを迷わせたてた。
浮気だけはしないはずの婚約者が、浮気してるなんて、知っちゃったら地獄だからね。
そして、オレ達の婚約はお終いになる。
雨の降る日は天気が悪い。限り無く真っ黒な雲には理由があるのくらい、わかってるんだ。ホントはね。
ギルティ……
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