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第1話 如月(2月) 後
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ミューちゃんの家に泊まると送ってきた昨夜のメッセージにも返事をしてなかったから余計に怖いんだろうな。
ふふっ。
「一応、メッセはしたんだけどぉ。見てくれてなかった?」
「見たよ」
「あ、そうなんだ」
何十通も入ってたね。オレは一度も返さなかったけど、ちゃんと見てたさ。ウソつき女が、どんなウソをつくか。
今朝も送って来たけど「時間」が実に興味深かった。
5時半に「おはよう。まだ寝てるよね? 目が覚めちゃった」で始まった。
それが今日の朝一。
既読スルーしてたら「起きてるんだよね?」が7時8分。
その間にナニをしていたのか想像に難くない。浮気相手と泊まったら、朝一番のエッチは定番中の定番だ。
あの時、オレはロビーの片隅にいたって知ったら、どんな顔をするかな。
お前は婚約者の頭上で他の男とサカっていたんだぞって、言ってみたくなるよ。
画面を見返せば、その後に「怒ってる?」のスタンプが立て続けに二つ送られてきてる。スタンプにしたのは男の相手をするのに忙しかったからなんだろうな。
改めて送ってきた時間を見たら、その後で腕を組んで朝食ブッフェに降りてきたことになる。しっかり写真を撮らせてもらったよ。もう「証拠」は十分に揃ってるから、これはオレ自身を納得させるためだ。
手が震えたけどね。
腕を胸に抱き寄せるようにして、楽しそうに歩いている姿を写真に撮ってしまえば、もう用はなかった。楽しそうにブッフェスタイルの朝食を男にも取り分けて、仲良く食べてる姿をチラッと見てから帰ったよ。
「朝ご飯食べた?」
のんきなメッセが送られたのは8時12分だった。
ひょっとしたらチェックアウトの後だろう。お気楽なことを言ってくれちゃってるけどさ、もう、ずっとメシなんて喉を通らねーよ。
おそらく、ここで男は出勤したのだろう。一変してメッセが怒濤のように来始めた。
《怒ってるの?》
《急にお泊まりしちゃってごめんなさい》
《でも、みゅー達とだから心配ないよ》
《ごめんなさい。やっぱりこの頃遊びすぎだよね》
全部未読スルー。
『そして、今に至るってわけさ』
不安そうな顔をしてるな。へへっ、もちろん、その心配は、大当たりだよ。
紗絵がしなだれかかって「ごめんなさい」と全身で甘えようとしてきた。
『そーはいくかよ、汚らしい』
何時間か前には、あの男にしなだれかかってたんだろ?
細い体を抱きしめるフリをしてネックレスの留め具を外した。立ち上ってくるシャンプーの匂いがいつもと違うのが悲しい現実だ。
紗絵が顔を上げてキスしようとしてきたから、さりげなくかわした。
きたねーウィンナーを咥えたかもしんない唇なんていらねーの。触んな!
「ネックレス、壊れてるね」
抜き取ったネックレスをぷらんとさせて「外れちゃってるよ」アピール。
「え? やだ、直さなくっちゃ。たっくんにもらった大事なネックレスなのに」
本気で焦った顔で伸ばしてきた手をサッとかわす。
「そうだよね。ずっとこれを着けてたもんね? 今朝も着けてた」
「あ、うん、もちろんだよ! 大事なネックレスだもん。指輪も、これも外すなんてありえないもん」
女は怖い。平然とウソをつけるんだよね。
ヤツの腕を胸に押し当てるようにして抱えていた「腕を組んだ写真」を拡大してみたら指輪は映ってなかったじゃん。
指輪は外すんだね。
そして、あの男に抱かれてるときもそのネックレスを着けてたんだろ? 吐き気がするぜ。
本当は触りたくもないけど仕方ない。
今までプレゼントしたあらゆるモノは、夜のうちに全てゴミ袋にぶち込んでアパート前のゴミ置き場に捨ててきた。今日が燃えないゴミの回収日で良かったよ。
やっと出せたって感じだ。
後は、これと靴だけになった。
「そうか~ いっつもつけてくれてたんだ。とうとう壊れちゃったね~」
そう、壊れたんだよ。
表面には笑顔という仮面を貼り付けながら、腹の中で「クソビッチ!」と罵詈雑言の嵐が止まらない。
「ごめんなさい」
「いやいや、いいんだよ。こんなものは簡単に壊れるものさ。壊れてみると、すごく簡単だったね」
「たっくん?」
「なんだよ」
「怒ってるよね? ごめんなさい。これから気をつけるから」
これは、急な外泊の分を謝ってるつもりなんだろうな。
紗絵の小さな肩が緊張で震え始めていた。
ふふっ。
「一応、メッセはしたんだけどぉ。見てくれてなかった?」
「見たよ」
「あ、そうなんだ」
何十通も入ってたね。オレは一度も返さなかったけど、ちゃんと見てたさ。ウソつき女が、どんなウソをつくか。
今朝も送って来たけど「時間」が実に興味深かった。
5時半に「おはよう。まだ寝てるよね? 目が覚めちゃった」で始まった。
それが今日の朝一。
既読スルーしてたら「起きてるんだよね?」が7時8分。
その間にナニをしていたのか想像に難くない。浮気相手と泊まったら、朝一番のエッチは定番中の定番だ。
あの時、オレはロビーの片隅にいたって知ったら、どんな顔をするかな。
お前は婚約者の頭上で他の男とサカっていたんだぞって、言ってみたくなるよ。
画面を見返せば、その後に「怒ってる?」のスタンプが立て続けに二つ送られてきてる。スタンプにしたのは男の相手をするのに忙しかったからなんだろうな。
改めて送ってきた時間を見たら、その後で腕を組んで朝食ブッフェに降りてきたことになる。しっかり写真を撮らせてもらったよ。もう「証拠」は十分に揃ってるから、これはオレ自身を納得させるためだ。
手が震えたけどね。
腕を胸に抱き寄せるようにして、楽しそうに歩いている姿を写真に撮ってしまえば、もう用はなかった。楽しそうにブッフェスタイルの朝食を男にも取り分けて、仲良く食べてる姿をチラッと見てから帰ったよ。
「朝ご飯食べた?」
のんきなメッセが送られたのは8時12分だった。
ひょっとしたらチェックアウトの後だろう。お気楽なことを言ってくれちゃってるけどさ、もう、ずっとメシなんて喉を通らねーよ。
おそらく、ここで男は出勤したのだろう。一変してメッセが怒濤のように来始めた。
《怒ってるの?》
《急にお泊まりしちゃってごめんなさい》
《でも、みゅー達とだから心配ないよ》
《ごめんなさい。やっぱりこの頃遊びすぎだよね》
全部未読スルー。
『そして、今に至るってわけさ』
不安そうな顔をしてるな。へへっ、もちろん、その心配は、大当たりだよ。
紗絵がしなだれかかって「ごめんなさい」と全身で甘えようとしてきた。
『そーはいくかよ、汚らしい』
何時間か前には、あの男にしなだれかかってたんだろ?
細い体を抱きしめるフリをしてネックレスの留め具を外した。立ち上ってくるシャンプーの匂いがいつもと違うのが悲しい現実だ。
紗絵が顔を上げてキスしようとしてきたから、さりげなくかわした。
きたねーウィンナーを咥えたかもしんない唇なんていらねーの。触んな!
「ネックレス、壊れてるね」
抜き取ったネックレスをぷらんとさせて「外れちゃってるよ」アピール。
「え? やだ、直さなくっちゃ。たっくんにもらった大事なネックレスなのに」
本気で焦った顔で伸ばしてきた手をサッとかわす。
「そうだよね。ずっとこれを着けてたもんね? 今朝も着けてた」
「あ、うん、もちろんだよ! 大事なネックレスだもん。指輪も、これも外すなんてありえないもん」
女は怖い。平然とウソをつけるんだよね。
ヤツの腕を胸に押し当てるようにして抱えていた「腕を組んだ写真」を拡大してみたら指輪は映ってなかったじゃん。
指輪は外すんだね。
そして、あの男に抱かれてるときもそのネックレスを着けてたんだろ? 吐き気がするぜ。
本当は触りたくもないけど仕方ない。
今までプレゼントしたあらゆるモノは、夜のうちに全てゴミ袋にぶち込んでアパート前のゴミ置き場に捨ててきた。今日が燃えないゴミの回収日で良かったよ。
やっと出せたって感じだ。
後は、これと靴だけになった。
「そうか~ いっつもつけてくれてたんだ。とうとう壊れちゃったね~」
そう、壊れたんだよ。
表面には笑顔という仮面を貼り付けながら、腹の中で「クソビッチ!」と罵詈雑言の嵐が止まらない。
「ごめんなさい」
「いやいや、いいんだよ。こんなものは簡単に壊れるものさ。壊れてみると、すごく簡単だったね」
「たっくん?」
「なんだよ」
「怒ってるよね? ごめんなさい。これから気をつけるから」
これは、急な外泊の分を謝ってるつもりなんだろうな。
紗絵の小さな肩が緊張で震え始めていた。
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