辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
上 下
134 / 141

第42話 自縛  ~天音~ 1

しおりを挟む

 私はひどい女だ。
 
 始めは健が少しでも傷つかないようにって思ってたはずだった。いろいろ我慢をした。途中からは、そんなものもどっかに行っちゃったけど、それでも健が傷つかないようにしたい気持ちはどこかにあった。

 それは本当のことだった。

 でも、いざ健が傷ついた場に居合わせても、私の心はそこになかった。

 心に穴が開いてたから。

 お弁当。

 毎朝、瞬が持ってきてくれるお弁当。

 もう、最後のつながりになってしまったお弁当。

 今週から届かない。

 もちろん、気遣いしてくれる瞬だもん。いきなりのことではなかった。予選の終わった夕方にメッセが入ってたって健が後から教えてくれた。

 そう、この半年、瞬からのメッセは健から教えてもらうしかなくなってる。

 全部、私がいけなかった。

 瞬だけは特別で、みんなと別IDを使ってたのが間違いだったんだよ。だから簡単に奪われてしまった。

 ハーフ&ハーフを破った罰だ、と健は言った。

 健の執着心が異常だと思ったのは去年の二学期だった。だけど、まさかここまでになるなんて思わなかった。

 年末に温泉が私をダメにした。

 ショックで、私は何かにあらがう力なんて残って無かった。言われるがままに、パスを教えてしまった。「罰だ」って言っていたから、何日間かのことだと思ってた。ちょうど悪い子にお仕置きするみたいに。

 でも、健はIDを返してくれなかった。パスも変えられてしまった。

「だって、返したら、また約束を破るつもりだろ? 必要ならオレがメッセを中継するよ。約束を守るつもりがあるなら、お前がIDを持っててもしょうがないだろ」

 そう言い張った。でも、今さらの部分はある。私のスマホを全てチェックするのが当たり前になっていたから。「ハーフ&ハーフ」を守らせるためと押しつけられた約束だ。

「約束を守るんだったら、オレがチェックしても良いはずだ。それができないって言うんなら約束を破っているからだって疑うのが普通だろ?」

 そんな風に言っていた。

「天音が約束を破るんなら、大竹に何をしちゃうか自分でもわからないよ。ヤキモチ妬いちゃうからさ」

 それがいつもの脅し方。

 それが言葉だけではないことを私は知っていた。クリスマスの時だって、瞬が来てたら危なかった。手下のようになった仲間と「楽しい動画を撮ろうぜ」とヒソヒソとやっていたのを私は聞いてしまったから。

 ゾッとした。

 私が何とかしなくちゃ。それしか頭には浮かばなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

処理中です...