122 / 141
第38話 陽菜の復活 1
しおりを挟む
瞬はことさらに笑顔を作ってみせる。
「ほら、そんなことよりも、そろそろUPしておけよ。一回心拍数を上げておかないとだぞ」
「わかってる、そんなことぁ」
健が激怒の表情で睨んでくる。
「そんな基本的なことを、今さら得意げに言うんじゃねーよ。この話は後で、キッチリ、落とし前をつけるからな」
「あぁ、それでお前の気が済むんなら付き合うよ。じゃ、オレは荷物を見てるんだろ? お前はレースに集中してくれ」
「何だ、その言い方は?」
まるでマンガに出てくるチンピラのような凄み方をする健の腰に手を伸ばした。
「腰が痛いんじゃないのか? この右側」
「何だよ、急に。そんな話を」
「今のシューズに合わせた筋トレをサボるからだぞ。おそらく股関節の炎症だ。無理すると走れなくなるぞ。気休め程度だけどストレッチだけでも付き合おうか?」
「バックキックとか言う筋トレか? お前さ、一年間陸部に居たってのに、結局、ちゃんとしたトレーニングがわかってねーよな、あんなのが必要だって、どこにも書いてねーぜ」
「違うよ。高速型シューズに合わせた新しいトレーニングメニューさ。なんだったら原田先生に聞いてみれば良い。緑山ではもう取り入れているそうだよ」
「なんだと?」
「ちゃんと、みんなに配ってるトレーニングメニューカードに書いておいたんだぞ。原田先生も保証してるんだ。読んでなかったのかよ」
「そ、それは、お前が、ちゃんと教えないのが」
「何度も言ったぞ? カードにも毎回書いてある。キャプテンからの指示を守っているから、みんなは大丈夫だった。やってないのはお前だけだよ」
トレーニングメニューをキャプテンからの指示という名の下に渡し始めて半年経った。憎しみに染まる健だけが、カードを一切読んでなかったのだ。
「痛かったら無理するなよ。決定的な痛みさえ出てなければ再起可能だからな」
言葉を換えれば、決定的な痛みがでれば再起不能ということだ。その痛みは今日出るのか、明日出るのか。誰にもわからない。
ただ、瞬が見る限り右の腰をかばう仕草が出始めている。時間の問題だ。
「ぐっ、お、ま、え、あっ、くそっ」
「じゃあな」
まだ、何かを言いたそうでいて言葉をなくした二階堂を置いて、さっさと荷物のところに行った。本来は1年生が荷物番を交代で務めるのだが、最近は全て瞬の仕事になっている。
それもまた、受け入れよう。荷物番だって大事な仕事だ。
実際、春の大会の時は女子の下着が消えたことがある。大騒ぎになるかと思いきや、天音が拾って「返すのを忘れていた」と笑って一段落だった。
あの時はヒヤッとした。もしも、ホントに無くなっていたら疑われるのは真っ先に自分だからだ。
「ほら、そんなことよりも、そろそろUPしておけよ。一回心拍数を上げておかないとだぞ」
「わかってる、そんなことぁ」
健が激怒の表情で睨んでくる。
「そんな基本的なことを、今さら得意げに言うんじゃねーよ。この話は後で、キッチリ、落とし前をつけるからな」
「あぁ、それでお前の気が済むんなら付き合うよ。じゃ、オレは荷物を見てるんだろ? お前はレースに集中してくれ」
「何だ、その言い方は?」
まるでマンガに出てくるチンピラのような凄み方をする健の腰に手を伸ばした。
「腰が痛いんじゃないのか? この右側」
「何だよ、急に。そんな話を」
「今のシューズに合わせた筋トレをサボるからだぞ。おそらく股関節の炎症だ。無理すると走れなくなるぞ。気休め程度だけどストレッチだけでも付き合おうか?」
「バックキックとか言う筋トレか? お前さ、一年間陸部に居たってのに、結局、ちゃんとしたトレーニングがわかってねーよな、あんなのが必要だって、どこにも書いてねーぜ」
「違うよ。高速型シューズに合わせた新しいトレーニングメニューさ。なんだったら原田先生に聞いてみれば良い。緑山ではもう取り入れているそうだよ」
「なんだと?」
「ちゃんと、みんなに配ってるトレーニングメニューカードに書いておいたんだぞ。原田先生も保証してるんだ。読んでなかったのかよ」
「そ、それは、お前が、ちゃんと教えないのが」
「何度も言ったぞ? カードにも毎回書いてある。キャプテンからの指示を守っているから、みんなは大丈夫だった。やってないのはお前だけだよ」
トレーニングメニューをキャプテンからの指示という名の下に渡し始めて半年経った。憎しみに染まる健だけが、カードを一切読んでなかったのだ。
「痛かったら無理するなよ。決定的な痛みさえ出てなければ再起可能だからな」
言葉を換えれば、決定的な痛みがでれば再起不能ということだ。その痛みは今日出るのか、明日出るのか。誰にもわからない。
ただ、瞬が見る限り右の腰をかばう仕草が出始めている。時間の問題だ。
「ぐっ、お、ま、え、あっ、くそっ」
「じゃあな」
まだ、何かを言いたそうでいて言葉をなくした二階堂を置いて、さっさと荷物のところに行った。本来は1年生が荷物番を交代で務めるのだが、最近は全て瞬の仕事になっている。
それもまた、受け入れよう。荷物番だって大事な仕事だ。
実際、春の大会の時は女子の下着が消えたことがある。大騒ぎになるかと思いきや、天音が拾って「返すのを忘れていた」と笑って一段落だった。
あの時はヒヤッとした。もしも、ホントに無くなっていたら疑われるのは真っ先に自分だからだ。
1
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説


今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。



マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる