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第37話 インターハイ予選 3
しおりを挟む原田の眼差しを見て、ヒヤッとした。
『二階堂って、まったく評価されてないんだ?』
厳しい眼差しは言外に「実力があれば、とっくにこっちから声を掛けてるよ、のぼせ上がるんじゃねーぞ」と怒鳴っているようなものだ。
「お、おい。二階堂」
「なんだよ、うるせぇんだよ。原田先生はオレのコトを見に来てくれたの。記録員でしかないお前が口を挟むんじゃねーよ」
あ、こりゃダメなパターンだと瞬は察する。仕方なく原田先生に目顔でお詫びをして離れることにした。
「先生、それではまた」
「おー 今度、メシでも食いに行こう。電話するからな」
「ありがとうございます。それでは」
頭を下げて別れると一分と経たずに、二階堂が後ろからどついてきた。おそらく「じゃあ、私は忙しいから、これで」と追い払われたに違いない。
明らかに不機嫌な二階堂だった。
「なんで黙ってたんだよ」
「何を?」
「原田だよ、原田。お前が知り合いだってこと黙ってたじゃん。舐めてんのか、テメェ」
「舐めてなんかないよ。ウチの部の公式SNSがあるじゃん? 原田先生はあそこに質問と意見をくださったんだよ? お前は見てなかったのか?」
「ウソだろ! あんなぁ! いくらなんでも、あんだけ有名な先生が来てたらオレが見逃すはずないじゃん、なに、フカシてんだよ!」
「え? でも、ほら冬だったかな? 問い合わせのところに投稿があったじゃん」
「ん?」
「お前が、そんなの放っておけ、二度とこの件は話すなって言ったんだけどな」
「オレがそんなこと言うわけねーだろ。相手は原田だぞ」
「そりゃ、最初は単なる陸上好きの一般人って感じで書き込んでたからね。オレが最初に報告したら、お前が怒鳴ったんだよ。こんなオッサンの書き込み、二度とオレに考えさせるなってね」
二階堂が覚えてないことはわかっている。だから、少しねちっこく思い出させておくことにした。
「ほら、ウチの部の練習メニューやトレーニングなんかの考え方をまとめてあるだろ? そうしたら問い合わせがあったんだよ。もちろん、すぐにキャプテンに話したぜ? そしたら、キャプテンが怒ってね『お前が全部やっておけ、オッサンの書き込みなんて、二度とオレの頭を患わせるんじゃねーぞ』って怒鳴られたんだよね。だから命令通りにしたんだけど?」
健が口をパクパクさせている。怒鳴り返すタイミングを失ったのだろう。
『たまたま、律儀に対応してたら気に入られてさ、後から原田先生だってわかったんだけど、ま、それを教えなかったのはワザとだけどさ。その程度の意趣返しはアリだよね』
心の中でニヤッとできたのは久し振りだったかもしれない。
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