辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
上 下
120 / 141

第37話 インターハイ予選 2

しおりを挟む
 その原田が、瞬に対して、まるで友達に対するときのような笑顔で語りかけてくる。

「ところでさ、大竹君。トレーナー扱いだとアスリート入試の枠にならないけど、総合型の方を受けるつもりがあったら言ってね。オレが推薦書を書くからさ。ぜひ、ウチに来てよ。好きな学部を言ってくれれば、どこでも押し込むよ」

 大学駅伝の覇者であるオッサンは、人の良さそうな笑みを浮かべると、楽しそうに瞬の肩を叩く。

「ありがとうございます」

 お世辞であっても、そう言ってもらえると嬉しい。報われた気がした。

 それにしても、こんな大物が会場にふらふらとやってくるなんてありえないはずだ。何が目的なんだろうと瞬はいぶかった。

『やっぱりスカウトだよな? 誰が狙いだ?』
 
 有力選手はあらかたインプットされている。しかし、原田先生のお眼鏡に適うタイプは見当たらない。天音も健も含めての話だ。

 実は、天音も健もこの大学のアスリート入試を狙っているとのウワサだ。陸上部のワクは毎年二人。原田先生の指名で無条件に合格すると言われている。ただし、インターハイ出場は最低限のラインだとも言われているのだ。

 予選の日に、わざわざ原田先生がやってきた理由がわからなかった。

「こんにちは!」

 二階堂が割り込んできた。

「原田先生ですか!」

 いきなり相手に名前を聞くとか! あまりにも失礼な態度に肩を小突くが気にした様子はない。

 しかし原田も頭の悪い高校生の扱いに慣れているのだろう、気を悪くした様子も見せず「あはは、ボクもだいぶ有名になったみたいだね」と笑って見せる。

 言外に「お前のことなんて知らないからあっちに行け」という大人のサインだが気付けないのだ。

「ボク、若葉高校の二階堂健と言います。えっと、来てくださってありがとうございます。先生の大学は憧れなんです。先生の大学のアスリート入試、ぜひとも指名してください」

 どうやら、自分をスカウトに来たとでも勘違いしたのだろう。ペコペコと頭を下げているが、言っていること自体はものすごく厚かましい。

 こういう時でも人あしらいの上手い原田は怒りも見せずに「うん、ウチは実力主義だからね。力さえあればどんどん受け入れるよ」と笑って応えているが、目が笑ってなかった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

処理中です...