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第37話 インターハイ予選 2
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その原田が、瞬に対して、まるで友達に対するときのような笑顔で語りかけてくる。
「ところでさ、大竹君。トレーナー扱いだとアスリート入試の枠にならないけど、総合型の方を受けるつもりがあったら言ってね。オレが推薦書を書くからさ。ぜひ、ウチに来てよ。好きな学部を言ってくれれば、どこでも押し込むよ」
大学駅伝の覇者であるオッサンは、人の良さそうな笑みを浮かべると、楽しそうに瞬の肩を叩く。
「ありがとうございます」
お世辞であっても、そう言ってもらえると嬉しい。報われた気がした。
それにしても、こんな大物が予選会場にふらふらとやってくるなんてありえないはずだ。何が目的なんだろうと瞬は訝った。
『やっぱりスカウトだよな? 誰が狙いだ?』
有力選手はあらかたインプットされている。しかし、原田先生のお眼鏡に適うタイプは見当たらない。天音も健も含めての話だ。
実は、天音も健もこの大学のアスリート入試を狙っているとのウワサだ。陸上部のワクは毎年二人。原田先生の指名で無条件に合格すると言われている。ただし、インターハイ出場は最低限のラインだとも言われているのだ。
予選の日に、わざわざ原田先生がやってきた理由がわからなかった。
「こんにちは!」
二階堂が割り込んできた。
「原田先生ですか!」
いきなり相手に名前を聞くとか! あまりにも失礼な態度に肩を小突くが気にした様子はない。
しかし原田も頭の悪い高校生の扱いに慣れているのだろう、気を悪くした様子も見せず「あはは、ボクもだいぶ有名になったみたいだね」と笑って見せる。
言外に「お前のことなんて知らないからあっちに行け」という大人のサインだが気付けないのだ。
「ボク、若葉高校の二階堂健と言います。えっと、来てくださってありがとうございます。先生の大学は憧れなんです。先生の大学のアスリート入試、ぜひとも指名してください」
どうやら、自分をスカウトに来たとでも勘違いしたのだろう。ペコペコと頭を下げているが、言っていること自体はものすごく厚かましい。
こういう時でも人あしらいの上手い原田は怒りも見せずに「うん、ウチは実力主義だからね。力さえあればどんどん受け入れるよ」と笑って応えているが、目が笑ってなかった。
「ところでさ、大竹君。トレーナー扱いだとアスリート入試の枠にならないけど、総合型の方を受けるつもりがあったら言ってね。オレが推薦書を書くからさ。ぜひ、ウチに来てよ。好きな学部を言ってくれれば、どこでも押し込むよ」
大学駅伝の覇者であるオッサンは、人の良さそうな笑みを浮かべると、楽しそうに瞬の肩を叩く。
「ありがとうございます」
お世辞であっても、そう言ってもらえると嬉しい。報われた気がした。
それにしても、こんな大物が予選会場にふらふらとやってくるなんてありえないはずだ。何が目的なんだろうと瞬は訝った。
『やっぱりスカウトだよな? 誰が狙いだ?』
有力選手はあらかたインプットされている。しかし、原田先生のお眼鏡に適うタイプは見当たらない。天音も健も含めての話だ。
実は、天音も健もこの大学のアスリート入試を狙っているとのウワサだ。陸上部のワクは毎年二人。原田先生の指名で無条件に合格すると言われている。ただし、インターハイ出場は最低限のラインだとも言われているのだ。
予選の日に、わざわざ原田先生がやってきた理由がわからなかった。
「こんにちは!」
二階堂が割り込んできた。
「原田先生ですか!」
いきなり相手に名前を聞くとか! あまりにも失礼な態度に肩を小突くが気にした様子はない。
しかし原田も頭の悪い高校生の扱いに慣れているのだろう、気を悪くした様子も見せず「あはは、ボクもだいぶ有名になったみたいだね」と笑って見せる。
言外に「お前のことなんて知らないからあっちに行け」という大人のサインだが気付けないのだ。
「ボク、若葉高校の二階堂健と言います。えっと、来てくださってありがとうございます。先生の大学は憧れなんです。先生の大学のアスリート入試、ぜひとも指名してください」
どうやら、自分をスカウトに来たとでも勘違いしたのだろう。ペコペコと頭を下げているが、言っていること自体はものすごく厚かましい。
こういう時でも人あしらいの上手い原田は怒りも見せずに「うん、ウチは実力主義だからね。力さえあればどんどん受け入れるよ」と笑って応えているが、目が笑ってなかった。
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