辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
上 下
114 / 141

第35話 綻び 10【R-18】

しおりを挟む
 ベッドで半ば頭を持ち上げた少女は、ひどくあどけない表情に怯えた目をしていた。

 その表情だけを見れば幼女のようだった。

「そうだ。悪い子だ。パパの言うことを聞かない子には、悪いことが起きるんだと教えたな?」
「わた…… し、わるい、こ……」
「そうだな。温泉ではあんなに抵抗しやがったが、ふん、一度思い出せば、こんなもんだ。この間もイキまくったし、今回は、もっとだ。どうだ? もう、わかっただろ、天音はパパ無しではいられない身体になるんだって」

 女を意のままにしたという自信に満ちている。事後に力なく横たわる姿は男としての達成感をもたらすのだろう。男の声は次第に大きくなる。

 ここで挑発して、反発したところに、もう一度セックスして教え込む。

『そろそろ、徹底的に「わからせ」てやらないとだからな』

 そのためには、この間仕入れた情報すら、利用するのが男のやり方だ。

「最近は男が出来たんだって?」

 ニヤリと笑って見せるが、反応はない。 

が言っていたぞ。毎週、日曜日にホテルに行ってるってな」

 毎週に、アクセントをつけている。

「年末の温泉以来、オレとは二度目だったよな? じゃあ、他は誰と行ってるんだ? まさかパパにウソをつくような悪い子じゃないよな?」
「うそ、つぃてない。あまね、うそなんて、つかなぃ」

 ひどく物憂げで、舌っ足らずな口調だった。さっきの余韻に浸っているのだろうと男は気にもとめない。

『家の中でヤッてた時もこんな感じだったよな。あの時よりもひどくなってるが、なぁに、身体がオンナを思い出すと、こうなる体質なのだろう』

 男は勝手に納得している。それよりも、娘がホテルに行く相手を突き止める必要がありそうだ。

「じゃあ、ちゃんとパパに教えなさい。誰とホテルに行ったんだ?」
「パパ、だけー」

 ひどく幼い口調だ。

「ウソじゃないな? ウソをついたら、悪い子だぞ!」
「ちが、うの。あま、ね、わるい、こじゃ、ない」
「ウソをつくのは悪い子だ! 正直に言いなさい」

 イヤイヤと顔を振りながら、その目から涙が流れた。

「どうやらウソじゃないらしいな」
「ぅそ、っかないょお」
「それにしても、お前のその口調なんとかならないのか? ヤルたびにひどくなっているじゃないか!」
「おこらなぃでぇ」

 コロンと身体を丸めてしまった。

「わかった。怒らないから。代わりにちゃんと言うんだ」

 男は、ちょっと考える。

『こんな口調になったら曖昧な質問が通じなくなるからな。具体的に聞くしかない。まあ、代わりにウソが言えなくなるのだから、便利と言えば便利だ』

 男は知らないが、これは心的な傷を負った人間が陥る一種の「逃避行動」だ。心を通さない受け答えをするのも幼児退行に近い現象とされている。けしてウソがつけないわけではなく、、全てが投げやりになり、守ろうとしなくなるだけのことだった。

 しかし、温泉でしたときに感じた違和感というべきか。自分以外の男がいるからこそ、あれほど抵抗したのではないかと、男は疑った。

 母親の挑発《うそ》だろうと楽観することも出来ない気がした。

「パパ以外の誰かとセックスしたか?」

 ズバリと聞けば「うん」と答えた娘に仰天してしまった。

 いったい、誰とだ?

 許せなかった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

秘事

詩織
恋愛
妻が何か隠し事をしている感じがし、調べるようになった。 そしてその結果は...

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

処理中です...