辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
上 下
103 / 141

第34話 釣り合わなかったのさ 2

しおりを挟む
「ごめんね、話が長くなっちゃって」
「そんなことないです! でも、あの、それを知ってて、何で先輩はその……」
「あ、放っておくのかって?」

 コクン

 陽菜の目は、このまま放置してなるものかと訴えている。

 あぁ、良い子だなあ、とっても真っ直ぐに生きてるなと、瞬は心のどこかがホワッと温かくなった。

「立場を逆にして考えてみてよ」
「たちば、ですか?」
「そ。オレと松永さんとが付き合っていることって周りからどう思われてる?」
「それは、その、あの……」
「ふふふ。ごめんごめん。意地悪な言い方だったね。良いよ。言わなくても」

 笑顔が自然に出せる。

「わかってる。釣り合わないよね? そして、みんなの口に次に出てくるのは『二階堂君《キャプテン》と付き合えば良いのに』じゃないか?」

 クククッと陽菜の眉が動いたのは、そんな言葉を聞いたことがあるからだろう。

「真に愛すべき相手を見つけたヒロインだよ? 真実の愛に目覚めた主役とヒロインって言っても良いかな。そこに嫉妬して未練がましく騒ぎ立てるキモ竹の図って、どう思われる?」

 クスクスクスッと乾いた笑いを立てると陽菜の目がムキになってキッと怒りを見せた。

「そんなの関係ない! 浮気して良いことにならないもん!」

 感情を剥き出しにした怒りの言葉だ。

 救われたなと、と思った。

「ゴメンゴメン、怒らないでくれ。からかっているわけじゃないんだ」
「からかわれてるなんて思ってません! でも、そんなの、あんまりじゃないですか!」

 幾筋もこぼれている涙は見なかったことにしよう。

「ごめん。その意味でもゴメン。ともかく、今、浮気だの、別れるだのを言うのは、オレにとっても部にとってもメリットは一つもないんだよ。だから知らんぷりをするのが一番なんだ」
「先輩はそれで良いんですか?」
「よくはないよ、もちろん」

 そんなの聞くまでもないじゃないか。

「じゃあ! やり方があるはずです!」

 うん、良い子だよ、君は。

 思わず黒髪を撫でてしまってから、慌てて手を戻した。陽菜が頭を預けたがっている雰囲気だ。これは、ちょっとまずい。

 油断したら胸に飛び込んできてしまう。だけど、少ないとは言え人目がある。今も「不審な男女の会話」を、それとなく様子をうかがう人間がいることに瞬は気付いている。

『キモ竹と抱き合っていた、なんてウワサされたら彼女のために良くないもんな』

 クルッと回り込むようにして正面に立って腰をかがめた。距離を開け、かつ目線を合わせるためだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

処理中です...