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第34話 釣り合わなかったのさ 2
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「ごめんね、話が長くなっちゃって」
「そんなことないです! でも、あの、それを知ってて、何で先輩はその……」
「あ、放っておくのかって?」
コクン
陽菜の目は、このまま放置してなるものかと訴えている。
あぁ、良い子だなあ、とっても真っ直ぐに生きてるなと、瞬は心のどこかがホワッと温かくなった。
「立場を逆にして考えてみてよ」
「たちば、ですか?」
「そ。オレと松永さんとが付き合っていることって周りからどう思われてる?」
「それは、その、あの……」
「ふふふ。ごめんごめん。意地悪な言い方だったね。良いよ。言わなくても」
笑顔が自然に出せる。
「わかってる。釣り合わないよね? そして、みんなの口に次に出てくるのは『二階堂君《キャプテン》と付き合えば良いのに』じゃないか?」
クククッと陽菜の眉が動いたのは、そんな言葉を聞いたことがあるからだろう。
「真に愛すべき相手を見つけたヒロインだよ? 真実の愛に目覚めた主役とヒロインって言っても良いかな。そこに嫉妬して未練がましく騒ぎ立てるキモ竹の図って、どう思われる?」
クスクスクスッと乾いた笑いを立てると陽菜の目がムキになってキッと怒りを見せた。
「そんなの関係ない! 浮気して良いことにならないもん!」
感情を剥き出しにした怒りの言葉だ。
救われたなと、と思った。
「ゴメンゴメン、怒らないでくれ。からかっているわけじゃないんだ」
「からかわれてるなんて思ってません! でも、そんなの、あんまりじゃないですか!」
幾筋もこぼれている涙は見なかったことにしよう。
「ごめん。その意味でもゴメン。ともかく、今、浮気だの、別れるだのを言うのは、オレにとっても部にとってもメリットは一つもないんだよ。だから知らんぷりをするのが一番なんだ」
「先輩はそれで良いんですか?」
「よくはないよ、もちろん」
そんなの聞くまでもないじゃないか。
「じゃあ! やり方があるはずです!」
うん、良い子だよ、君は。
思わず黒髪を撫でてしまってから、慌てて手を戻した。陽菜が頭を預けたがっている雰囲気だ。これは、ちょっとまずい。
油断したら胸に飛び込んできてしまう。だけど、少ないとは言え人目がある。今も「不審な男女の会話」を、それとなく様子をうかがう人間がいることに瞬は気付いている。
『キモ竹と抱き合っていた、なんてウワサされたら彼女のために良くないもんな』
クルッと回り込むようにして正面に立って腰をかがめた。距離を開け、かつ目線を合わせるためだった。
「そんなことないです! でも、あの、それを知ってて、何で先輩はその……」
「あ、放っておくのかって?」
コクン
陽菜の目は、このまま放置してなるものかと訴えている。
あぁ、良い子だなあ、とっても真っ直ぐに生きてるなと、瞬は心のどこかがホワッと温かくなった。
「立場を逆にして考えてみてよ」
「たちば、ですか?」
「そ。オレと松永さんとが付き合っていることって周りからどう思われてる?」
「それは、その、あの……」
「ふふふ。ごめんごめん。意地悪な言い方だったね。良いよ。言わなくても」
笑顔が自然に出せる。
「わかってる。釣り合わないよね? そして、みんなの口に次に出てくるのは『二階堂君《キャプテン》と付き合えば良いのに』じゃないか?」
クククッと陽菜の眉が動いたのは、そんな言葉を聞いたことがあるからだろう。
「真に愛すべき相手を見つけたヒロインだよ? 真実の愛に目覚めた主役とヒロインって言っても良いかな。そこに嫉妬して未練がましく騒ぎ立てるキモ竹の図って、どう思われる?」
クスクスクスッと乾いた笑いを立てると陽菜の目がムキになってキッと怒りを見せた。
「そんなの関係ない! 浮気して良いことにならないもん!」
感情を剥き出しにした怒りの言葉だ。
救われたなと、と思った。
「ゴメンゴメン、怒らないでくれ。からかっているわけじゃないんだ」
「からかわれてるなんて思ってません! でも、そんなの、あんまりじゃないですか!」
幾筋もこぼれている涙は見なかったことにしよう。
「ごめん。その意味でもゴメン。ともかく、今、浮気だの、別れるだのを言うのは、オレにとっても部にとってもメリットは一つもないんだよ。だから知らんぷりをするのが一番なんだ」
「先輩はそれで良いんですか?」
「よくはないよ、もちろん」
そんなの聞くまでもないじゃないか。
「じゃあ! やり方があるはずです!」
うん、良い子だよ、君は。
思わず黒髪を撫でてしまってから、慌てて手を戻した。陽菜が頭を預けたがっている雰囲気だ。これは、ちょっとまずい。
油断したら胸に飛び込んできてしまう。だけど、少ないとは言え人目がある。今も「不審な男女の会話」を、それとなく様子をうかがう人間がいることに瞬は気付いている。
『キモ竹と抱き合っていた、なんてウワサされたら彼女のために良くないもんな』
クルッと回り込むようにして正面に立って腰をかがめた。距離を開け、かつ目線を合わせるためだった。
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