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第33話 暗闇に蠢くもの 1
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瞬は、笑顔を無理やり作り出した。
「オレの誕生日は2月だったんだよ」
陽菜は「それが?」という顔をした。陽菜にとっては当たり前の情報だ。
「ははは。君はプレゼントもメッセージもくれたね、ありがとう」
「いえ! 先輩にはたくさんお世話になってます。当たり前ですから!」
可愛らしいカードと趣味の良いタオルをプレゼントしてくれた。イニシャルと「Thank you」が刺繍されていたのは、恐らく陽菜が入れてくれたのだろうと思う。
「誕生日に君からもらったのが家族以外からの唯一のプレゼントだったよ」
「え?」
ニコッと笑って「彼氏の誕生日を忘れていたらしいね、松永さんは」と言うと、陽菜が息をひっつめて目を見開いた。
「まさか、天音先輩から何も?」
軽く肯くと、またしても、小さく「ヒッ」と声を立てて、その瞳が瞬に向けられている。
「普通の一日だったよ」
そう。
瞬の誕生日は極めて普通に過ぎていた。
練習が終わって、天音は皆と一緒に帰っていった。あえて誕生日のことを自分からは言わなかったのは意地のようなもの。
あの日、あえて違っていたところを探せば、練習の話だけでも返事をしてきたというところ。
しかし、それだけだった。むしろ、返事をしてきたのに誕生日が置き忘れられているという事実は心に突き刺さった。
『彼氏の誕生日も眼中にないのかよ』
さすがにショックは大きい。その程度のことすら関心がなくなってしまったのだろうか。それとも、その程度のことすら装うのをやめたのか。
忘れるはずはないのだ。天音の机にあったカレンダーは三月までのタイプだった。年を越えた2月。この日に大きく○を付けていたのを天音がわざわざめくって見せてくれたことがある。
あれは何だったのか? いや、自分の存在って、いったい何なのか。
さすがに悔しかった。
「オレの誕生日は2月だったんだよ」
陽菜は「それが?」という顔をした。陽菜にとっては当たり前の情報だ。
「ははは。君はプレゼントもメッセージもくれたね、ありがとう」
「いえ! 先輩にはたくさんお世話になってます。当たり前ですから!」
可愛らしいカードと趣味の良いタオルをプレゼントしてくれた。イニシャルと「Thank you」が刺繍されていたのは、恐らく陽菜が入れてくれたのだろうと思う。
「誕生日に君からもらったのが家族以外からの唯一のプレゼントだったよ」
「え?」
ニコッと笑って「彼氏の誕生日を忘れていたらしいね、松永さんは」と言うと、陽菜が息をひっつめて目を見開いた。
「まさか、天音先輩から何も?」
軽く肯くと、またしても、小さく「ヒッ」と声を立てて、その瞳が瞬に向けられている。
「普通の一日だったよ」
そう。
瞬の誕生日は極めて普通に過ぎていた。
練習が終わって、天音は皆と一緒に帰っていった。あえて誕生日のことを自分からは言わなかったのは意地のようなもの。
あの日、あえて違っていたところを探せば、練習の話だけでも返事をしてきたというところ。
しかし、それだけだった。むしろ、返事をしてきたのに誕生日が置き忘れられているという事実は心に突き刺さった。
『彼氏の誕生日も眼中にないのかよ』
さすがにショックは大きい。その程度のことすら関心がなくなってしまったのだろうか。それとも、その程度のことすら装うのをやめたのか。
忘れるはずはないのだ。天音の机にあったカレンダーは三月までのタイプだった。年を越えた2月。この日に大きく○を付けていたのを天音がわざわざめくって見せてくれたことがある。
あれは何だったのか? いや、自分の存在って、いったい何なのか。
さすがに悔しかった。
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