94 / 141
第31話 花言葉は「初恋」 2
しおりを挟む
瞬の口調は、まるで老人が若い頃の話でもするような、しみじみとしたモノだった。
「告白されて付き合い始めた。有頂天になったよ。正直言って嬉しかった。それから何回かデートをしたんだ。学校の帰りに駅前のカフェで珈琲を飲んだっけ。あ、彼女はいつもクリームたっぷりのコールドドリンクでさ。あれはカロリーが高いからよせって言ったんだけど、それは受け入れてくれなかったなぁ」
痒くもないのにポリポリとこめかみを掻くフリをしながら言葉を続ける。
陽菜の顔が見られないままだ。
「彼女が本気でインターハイを目指したいっていうから喜んで協力を申し出たんだ。結果はもうすぐわかる。で、今に至るってわけだ」
そこまで独白のように、ひたすら前を見たまま喋り終わって、ようやく顔を見られた。
そこにあるのは唖然とした表情だった。
「あの…… 先輩、それじゃわからないです」
陽菜からしたら、ドロドロの愛憎劇が語られると思ったはずだ。
『我ながら木で鼻をくくったような話だよな』
瞬は苦笑してしまう。けれども「事実」しか話してないのが自分でも悲しい。
「でも、たぶん、それが松永さんとオレとの全てなんだよ」
松永「さん」と呼んだところで陽奈が息を呑んだ。伝わったらしい。
「それ以上でもそれ以下でもない。あ、今でも家に帰ってからメッセのやりとりをすることがある。内容は練習メニューとか、大会のことだね」
「あの、先輩?」
瞬が何を言おうとしているか陽菜に見当がつかなかった。
「やりとりは8時までの約束なんだ。それも今では陸上関係のことだけだし、たまに、って感じかな」
「え? メッセがですか?」
陽菜は鼻白む。だって、ありえない。
カレカノだと言っていたではないか
陽菜の感覚ならば、いや、普通の感覚なら「毎日、一晩中やり取りして、それでも足りなくてベッドに入ってもお話しようとする」と思うだろう。
陽菜が驚愕している表情を見定めてから、瞬は、ちっとも熱を入れない口調で話を続けた。
「告白されて付き合い始めた。有頂天になったよ。正直言って嬉しかった。それから何回かデートをしたんだ。学校の帰りに駅前のカフェで珈琲を飲んだっけ。あ、彼女はいつもクリームたっぷりのコールドドリンクでさ。あれはカロリーが高いからよせって言ったんだけど、それは受け入れてくれなかったなぁ」
痒くもないのにポリポリとこめかみを掻くフリをしながら言葉を続ける。
陽菜の顔が見られないままだ。
「彼女が本気でインターハイを目指したいっていうから喜んで協力を申し出たんだ。結果はもうすぐわかる。で、今に至るってわけだ」
そこまで独白のように、ひたすら前を見たまま喋り終わって、ようやく顔を見られた。
そこにあるのは唖然とした表情だった。
「あの…… 先輩、それじゃわからないです」
陽菜からしたら、ドロドロの愛憎劇が語られると思ったはずだ。
『我ながら木で鼻をくくったような話だよな』
瞬は苦笑してしまう。けれども「事実」しか話してないのが自分でも悲しい。
「でも、たぶん、それが松永さんとオレとの全てなんだよ」
松永「さん」と呼んだところで陽奈が息を呑んだ。伝わったらしい。
「それ以上でもそれ以下でもない。あ、今でも家に帰ってからメッセのやりとりをすることがある。内容は練習メニューとか、大会のことだね」
「あの、先輩?」
瞬が何を言おうとしているか陽菜に見当がつかなかった。
「やりとりは8時までの約束なんだ。それも今では陸上関係のことだけだし、たまに、って感じかな」
「え? メッセがですか?」
陽菜は鼻白む。だって、ありえない。
カレカノだと言っていたではないか
陽菜の感覚ならば、いや、普通の感覚なら「毎日、一晩中やり取りして、それでも足りなくてベッドに入ってもお話しようとする」と思うだろう。
陽菜が驚愕している表情を見定めてから、瞬は、ちっとも熱を入れない口調で話を続けた。
1
お気に入りに追加
28
あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

とある高校の淫らで背徳的な日常
神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。
クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。
後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。
ノクターンとかにもある
お気に入りをしてくれると喜ぶ。
感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。
してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。




マッサージ
えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。
背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。
僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる