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第28話 終わりを待ちかねて 1
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春を迎えて、瞬も三年生になっていた。
一学期の中間試験がもうすぐだ。終われば、すぐにインターハイ予選となる。瞬に限らず3年生は部活と試験勉強の両立に追われていた。
「よっ」
たまたま会った天音に片手を上げて声を掛けると部室へ向かう。
口元に微妙な笑顔を浮かべつつ、同じ道。
ぎこちない動きだが、ペコッと頭を下げたのは挨拶のつもりだろうか?
微妙に天音の足取りが速くなっていた。
並んで歩く時間が気まずい。天音もおそらくそうなんだろう。
足取りは「普通」だった。かつてのように、膝の悪い瞬に合わせて歩く彼女の姿はなくなっていた。
内心でふぅ~っとため息をつく瞬。
『やっと、約束が終わる』
インターハイを目指す天音を応援すると約束した。そこまでいけば約束は果たしたことになるはずだ。
『まだ、動けない。あと少しだ。インターハイ予選が終われば、後は自由になれるんだ』
既に瞬の中で天音とは終わっている。しかし、形の上ではまだ付き合っていることになっている相手だ。こんな時に誘うのは義務だろうとも思う。
「テストが終わった日なんだけど」
部室はグラウンドの外れにある。久しぶりに二人で歩いていた。校舎から3分ほどの道のり。付き合い始めてしばらくの頃、瞬はこの時間が好きだったのを思いだしている。「彼女と二人っきりになれる時間」だったから。
『今は、すっかり変わっちまったけどな』
本当に久しぶりに、精一杯の忍耐力を振り絞って天音をデートに誘った。といってもコーチングに目一杯でバイトをしていない。講習会の費用のせいで万年金欠だ。デートと言っても帰りにカフェに寄ろうというだけの誘いだ。
「なあに? え? テストが終わった日? えっと、その時って、みんなでテストの打ち上げにカラオケに行こうって話になってるんだけど。瞬も来る?」
軽やかな笑顔が小さく首を傾けながら返してきた。どんな男でも心を奪われる偽りの笑顔だった。
一学期の中間試験がもうすぐだ。終われば、すぐにインターハイ予選となる。瞬に限らず3年生は部活と試験勉強の両立に追われていた。
「よっ」
たまたま会った天音に片手を上げて声を掛けると部室へ向かう。
口元に微妙な笑顔を浮かべつつ、同じ道。
ぎこちない動きだが、ペコッと頭を下げたのは挨拶のつもりだろうか?
微妙に天音の足取りが速くなっていた。
並んで歩く時間が気まずい。天音もおそらくそうなんだろう。
足取りは「普通」だった。かつてのように、膝の悪い瞬に合わせて歩く彼女の姿はなくなっていた。
内心でふぅ~っとため息をつく瞬。
『やっと、約束が終わる』
インターハイを目指す天音を応援すると約束した。そこまでいけば約束は果たしたことになるはずだ。
『まだ、動けない。あと少しだ。インターハイ予選が終われば、後は自由になれるんだ』
既に瞬の中で天音とは終わっている。しかし、形の上ではまだ付き合っていることになっている相手だ。こんな時に誘うのは義務だろうとも思う。
「テストが終わった日なんだけど」
部室はグラウンドの外れにある。久しぶりに二人で歩いていた。校舎から3分ほどの道のり。付き合い始めてしばらくの頃、瞬はこの時間が好きだったのを思いだしている。「彼女と二人っきりになれる時間」だったから。
『今は、すっかり変わっちまったけどな』
本当に久しぶりに、精一杯の忍耐力を振り絞って天音をデートに誘った。といってもコーチングに目一杯でバイトをしていない。講習会の費用のせいで万年金欠だ。デートと言っても帰りにカフェに寄ろうというだけの誘いだ。
「なあに? え? テストが終わった日? えっと、その時って、みんなでテストの打ち上げにカラオケに行こうって話になってるんだけど。瞬も来る?」
軽やかな笑顔が小さく首を傾けながら返してきた。どんな男でも心を奪われる偽りの笑顔だった。
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