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第27話 嘲笑 ~男と女~ 2
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女は、心の中で「え?」と訝しんだ。
歪んだ性欲を持つ男に言葉の刃をぶつけたつもりだ。
しかし、男は「ふむ」と小さく頷いて見せただけだった。気に食わない。
母親として、娘がエッチすることを快く思っているわけではないが「父親」の呪縛から逃れる第一歩であるなら目をつぶっても良いと覚悟を決めている。
そして直接確かめたわけではないが、恐らく相手は夜に忍び込んで来る隣家の長男だろうとあたりもつけてある。
弟思いの優しい子だ。幼い頃から知っている。その辺の悪い男に騙されるくらいなら百倍マシに思えた。
万が一子どもができてしまっても見逃すだけの腹は決まっていた。
早い話、娘が彼氏とエッチしても、母親として見過ごしてしまおうと決め込んでいたのだ。だからこそ、日曜日にホテルのニオイをさせて帰ってきた娘に知らぬフリができた。年末にお友達と温泉に行くと言われても見過ごせたのだ。
事実として、隣の息子は「友達と出かける」と言って、泊まりがけで遊んできたらしい。「親を騙して彼氏と旅行する」のは、けっして喜んで見るべきことではない。
しかし、年頃なりの健全な男女付き合いをしてくれているなら、それを咎める気持ちになれるわけがない。むしろホッとしているのだから。
娘が彼氏と旅行に行った。
母親としては「友達と旅行に行くのなら」と騙されてあげるべきだと思った。 父親の呪縛と比較すれば、そっちの方がはるかにマシだった。
母親としては、いつまでも 父親の呪縛に囚われているのであれば、哀しみが強くなってしまうが、かと言って、あの歳で男と体の関係になっているのを笑って見過ごすのは、それなりの「諦め」が必要なのだ。
だから、男にも絶望させてやりたい、不安を与えてやりたいという嗜虐の気持ちが抑えきれなかった。
「あの子、このところ日曜日は毎週のようにデートみたいよ。安いホテルの匂いをさせて、疲れた顔をしてかえってくるもの」
多少のハッタリはいいだろう。自分のオモチャが他人に寝取られる苦しみを味わえ。
お前が手を出した娘には、もう彼氏がいて、毎週のようにたっぷりとセックスしてるんだよと嘲笑ってやりたい。絶望させてやりたい。そんな気持ちがこめられたセリフだ。
男の顔がいくぶん歪んだ。ふん、いい気味だ。
「そうか。相手を知ってるの?」
ようやく男が緊張したらしい。少しばかり溜飲を下げて女はコーヒーカップを持ち上げる。
「言う必要があって?」
鼻で嘲笑う。
苦しめ、苦しめ、苦しめ。
『え?』
気に食わない。明らかに緊張をほどいた。歪んだ愛情を注いだ「娘」を寝取られた男が、その余裕は何なのだ?
歪んだ性欲を持つ男に言葉の刃をぶつけたつもりだ。
しかし、男は「ふむ」と小さく頷いて見せただけだった。気に食わない。
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