辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
上 下
75 / 141

第24話 疑惑の冬 1

しおりを挟む

 11月に入っていた。

「だ~い好きだよ」

 いつものセリフが表示されてから既読はつかなくなる。

 いつもの通りだ。

 夜八時。

 わかっていることだとは言え寂しさを感じてしまう瞬だ。

『これを不満に思ってはダメなんだぞ』

 自分に言い聞かせなくては。

 自動的に、夏休みの終わりに言われた天音の言葉が勝手にリフレインしていた。

「いっつも私のために時間を取らせてごめんね。私も我慢するから、一日のは自分のために使って?」

 そんな申し出だった。天音の顔はあくまでも優しかった。

 あの時は自分のことを考えてくれたのだろうと感激して受け止めた。彼女が優しくしてくれたのだから。

 実際、毎晩のやりとりに朝の弁当作り、トレーニング関連の勉強、トレーナー絡みの講習と、あらゆることが確実に時間を削いでくる。しかも進学校の授業は予習なしでは厳しいし、毎日のようにある小テストでも満点を目指すと時間がかかる。

 やるべきことは山のようにあった。平日の睡眠時間は連日4時間を切っていた。

 限界は見えていた。

 けれども、今思い返せば意味が違った。。生きている価値を実感出来た日々だった。

 しかし優しい恋人の気遣いを無下にすることは出来ない。だって天音は考えてくれたのだ。寂しさを感じたら申し訳ないぞと自分に言い聞かせた。

 いつからだったろうか。

 天音は次々と、瞬の時間を作ろうと提案してきた。練習のない日は、当分、会うのを我慢するというのもそのひとつだった。

 秋の終わりになる頃は一緒に帰る時以外、学校の外で会うことはなくなっていた。

「今度の休みに会わない?」
「せっかく練習がないんだし瞬は自由に過ごして。もうすぐ中間だし、勉強もするんでしょ? 私は私で自主練するから大丈夫。あ、でもエッチしたいなら、ウチに来る?」

 そんな風に優しく言われれば、そこから「じゃあ、やらせろ」と言えるほど厚かましくない。むしろ、最後の部分は、おためごかしというもの。「デートはしたくないけど、セックスは自由にどうぞ」と言い出す彼女なんているわけがない。

 きっと、ホントは会いたくないのだろうなと思って引っ込むのが彼氏としての優しさというものだ。

 瞬は、そう思っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

とある高校の淫らで背徳的な日常

神谷 愛
恋愛
とある高校に在籍する少女の話。 クラスメイトに手を出し、教師に手を出し、あちこちで好き放題している彼女の日常。 後輩も先輩も、教師も彼女の前では一匹の雌に過ぎなかった。 ノクターンとかにもある お気に入りをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

処理中です...