辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

文字の大きさ
上 下
58 / 141

第19話 接吻  〜天音〜 2

しおりを挟む
 後で考えれば、この時の天音は、過去の体験がのしかかり、正常な判断ができなくなっていたのだろう。

 しかし、それは言い訳に過ぎないと、自分で思ったのは確かだ。

 ともかく、この時だって、ギリギリで、踏みとどまっていた。その混乱する頭が、なぜか腕の不自由さを感じている。

 持ち上げられたTシャツが半ば脱げていて腕に絡まっていた。
 
『何かおかしくない?』 

「考えてみろよ。今までと何が違う?」
「それは、その……」

 考えてみると確かに瞬とのことでいろいろアドバイスしてくれたのは健だった。今までもやってきたと言う言葉には頷く部分がある。

 もうちょっと話を聞く必要を感じた。少なくとも「それって変だよ」の一言で切り捨てて健を傷つけてしまうことを恐れたのだ。

「どういうこと?」

 腕の自由がほしくて、袖を抜いてしまった。半ば脱げてしまったTシャツは首に引っかかっているだけになる。幸いブラをして来たし、この暗さならろくに見えないはずだと計算した。

『お部屋でハグした時は、ノーブラだったことだってあったもんね。今さら、この程度を気にする関係じゃないわ』

 天音の中の誰かが「だって健は身体を求めて来たりしない。だもん。だから気にしなくて良いの」と囁いている。

 家族なら、身体を求めてくるはずがない。

 ハッキリと理性では意識できないことだったが、天音にとってそれは重要なことだった。

 健の両手は背中を直接撫で下ろし、自由に動き回っている。背中だけではない。時にお腹の方まで愛しげになでつけ、敏感な脇を撫でてくる。

 正直に言えば、感じてしまう。しかし嫌な感じがないのは相変わらずだ。

 自分が敏感に反応してしまうことだけは隠したい。だから、手を意識しつつも、天音の意識は話の「先」にだけむいていた。

「天音がしたいのに大竹が苦手なこと、したくないことをオレが引き受けるだけだよ。そうしたら、裏切ったことにならないだろ?」
「彼に苦手なことなんてあるのかな?」
「例えば、さ、あいつは真面目すぎるだろ? 楽しく遊んだり、くだらない話をダラダラしたり、そんなことは苦手なはずだ。カラオケだって嫌がるもんな」
「うん。カラオケは嫌みたい」
「オレだったら、そういうのを付き合ってあげられる」
「う~ん。だけど」

 ためらいつつも「それだけだったら問題はないのかな?」と思ってしまう天音だ。

「それにさ、天音にかけてる時間は膨大なはずだよ。あの秀才君は、勉強時間に困ってるんじゃないか?」

 あっと思った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

パパのお嫁さん

詩織
恋愛
幼い時に両親は離婚し、新しいお父さんは私の13歳上。 決して嫌いではないが、父として思えなくって。

一夏の性体験

風のように
恋愛
性に興味を持ち始めた頃に訪れた憧れの年上の女性との一夜の経験

マッサージ

えぼりゅういち
恋愛
いつからか疎遠になっていた女友達が、ある日突然僕の家にやってきた。 背中のマッサージをするように言われ、大人しく従うものの、しばらく見ないうちにすっかり成長していたからだに触れて、興奮が止まらなくなってしまう。 僕たちはただの友達……。そう思いながらも、彼女の身体の感触が、冷静になることを許さない。

今日の授業は保健体育

にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり) 僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。 その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。 ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...