辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

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第19話 接吻  〜天音〜 2

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 後で考えれば、この時の天音は、過去の体験がのしかかり、正常な判断ができなくなっていたのだろう。

 しかし、それは言い訳に過ぎないと、自分で思ったのは確かだ。

 ともかく、この時だって、ギリギリで、踏みとどまっていた。その混乱する頭が、なぜか腕の不自由さを感じている。

 持ち上げられたTシャツが半ば脱げていて腕に絡まっていた。
 
『何かおかしくない?』 

「考えてみろよ。今までと何が違う?」
「それは、その……」

 考えてみると確かに瞬とのことでいろいろアドバイスしてくれたのは健だった。今までもやってきたと言う言葉には頷く部分がある。

 もうちょっと話を聞く必要を感じた。少なくとも「それって変だよ」の一言で切り捨てて健を傷つけてしまうことを恐れたのだ。

「どういうこと?」

 腕の自由がほしくて、袖を抜いてしまった。半ば脱げてしまったTシャツは首に引っかかっているだけになる。幸いブラをして来たし、この暗さならろくに見えないはずだと計算した。

『お部屋でハグした時は、ノーブラだったことだってあったもんね。今さら、この程度を気にする関係じゃないわ』

 天音の中の誰かが「だって健は身体を求めて来たりしない。だもん。だから気にしなくて良いの」と囁いている。

 家族なら、身体を求めてくるはずがない。

 ハッキリと理性では意識できないことだったが、天音にとってそれは重要なことだった。

 健の両手は背中を直接撫で下ろし、自由に動き回っている。背中だけではない。時にお腹の方まで愛しげになでつけ、敏感な脇を撫でてくる。

 正直に言えば、感じてしまう。しかし嫌な感じがないのは相変わらずだ。

 自分が敏感に反応してしまうことだけは隠したい。だから、手を意識しつつも、天音の意識は話の「先」にだけむいていた。

「天音がしたいのに大竹が苦手なこと、したくないことをオレが引き受けるだけだよ。そうしたら、裏切ったことにならないだろ?」
「彼に苦手なことなんてあるのかな?」
「例えば、さ、あいつは真面目すぎるだろ? 楽しく遊んだり、くだらない話をダラダラしたり、そんなことは苦手なはずだ。カラオケだって嫌がるもんな」
「うん。カラオケは嫌みたい」
「オレだったら、そういうのを付き合ってあげられる」
「う~ん。だけど」

 ためらいつつも「それだけだったら問題はないのかな?」と思ってしまう天音だ。

「それにさ、天音にかけてる時間は膨大なはずだよ。あの秀才君は、勉強時間に困ってるんじゃないか?」

 あっと思った。
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