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第18話 闇の中 〜天音〜 3
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健は断言した。
「今と同じだろ」
「同じ?」
「だって、大竹と天音はみんなの前でカレカノだ。そして大竹がいないときにオレは天音の特別な存在だ。今と何か変わる点はあるか?」
「えぇ~ 確かに、健は特別だよ? でも~」
カレカノとは別の存在なのに。いや、だからこそ「特別な存在」と言っているのだろうか?
天音の頭がズキズキと痛む。
家族のような健に、素肌を撫でられて、ゾクゾクしてしまう。これはダメなことのはずだ。しかし、健は「これでいいんだよ」と優しく語ってくる。
「こうして抱きしめさせてくれ。今までと同じだ。こうして抱きしめているときだけ、オレが君を好きだってことを受け入れてくれれば、それでいいんだ」
キュッと抱きしめてくる腕に力が入ったのを天音は感じた。ここまで正面切って言われてしまうと、何をどう断っても傷付けるのは確実だ。
『それなら、受け止められるところだけを受け止めてあげた方が良いのかな? こんな私が、健を一人にしちゃって、傷付けるよりも、できるところだけ受け止めてあげれば良い? 今までくらいなら……』
いや。だめだ。健は「今以上」を望んでいるから、こうして告白しているんだから。
「それってやっぱりヘンだよ」
「ごめん。困らせるつもりはないんだ。オレは天音のことが好きなんだからね。ずっと、ずっと好きだった。だから天音にもっと楽しんで欲しいし、楽しませたい。それだけなんだよ」
微妙に言っていることが変わったことに、天音は気付かなかった。健を傷つけたくない、一人にしたくないという気持ちが強すぎたのかもしれない。
「でもぉ、なんか変じゃない?」
「そんなことはないさ。大竹を大事にするのはオレも認める。もちろん君を独占できるならベストだけど、天音は大竹を裏切るのは嫌なんだろ?」
「そりゃ、そうだよ。あんなに大切にしてくれる人を裏切るなんて、絶対にできないよ」
そんなことは考えるまでもないことだと天音は心底思っている。
愛しているのは瞬だけ!
心の底から言い切れる言葉だ。しかし、健はそこに甘やかな言葉を被せてきた。
「大竹は君を大切にしてくれる。オレも君を大切にする。それもダメなのかい? 今までと同じだ。ただ、大竹の足りない部分をオレが補うだけなんだ。だからこそシェアなんだ」
大切にしてくれるなら良いことなのかな? 普段の天音であれば、あるいは、他の人間が言っていたとしたら、一笑に付しただろう。
けれども闇に包まれて囁かれると、冷静さよりも、天音の子心は「闇」に引っ張られている。おまけに、相手は特別な信頼を寄せている幼なじみだ。
『私が瞬と幸せになっちゃったら、健が孤独になってしまう』
カレカノの幸せを自分だけが得てしまう。そうなったら幼なじみを孤独の闇に落としてしまうのだという申し訳なさは、常に天音を苦しめてきたのは事実だったのだ。
「今と同じだろ」
「同じ?」
「だって、大竹と天音はみんなの前でカレカノだ。そして大竹がいないときにオレは天音の特別な存在だ。今と何か変わる点はあるか?」
「えぇ~ 確かに、健は特別だよ? でも~」
カレカノとは別の存在なのに。いや、だからこそ「特別な存在」と言っているのだろうか?
天音の頭がズキズキと痛む。
家族のような健に、素肌を撫でられて、ゾクゾクしてしまう。これはダメなことのはずだ。しかし、健は「これでいいんだよ」と優しく語ってくる。
「こうして抱きしめさせてくれ。今までと同じだ。こうして抱きしめているときだけ、オレが君を好きだってことを受け入れてくれれば、それでいいんだ」
キュッと抱きしめてくる腕に力が入ったのを天音は感じた。ここまで正面切って言われてしまうと、何をどう断っても傷付けるのは確実だ。
『それなら、受け止められるところだけを受け止めてあげた方が良いのかな? こんな私が、健を一人にしちゃって、傷付けるよりも、できるところだけ受け止めてあげれば良い? 今までくらいなら……』
いや。だめだ。健は「今以上」を望んでいるから、こうして告白しているんだから。
「それってやっぱりヘンだよ」
「ごめん。困らせるつもりはないんだ。オレは天音のことが好きなんだからね。ずっと、ずっと好きだった。だから天音にもっと楽しんで欲しいし、楽しませたい。それだけなんだよ」
微妙に言っていることが変わったことに、天音は気付かなかった。健を傷つけたくない、一人にしたくないという気持ちが強すぎたのかもしれない。
「でもぉ、なんか変じゃない?」
「そんなことはないさ。大竹を大事にするのはオレも認める。もちろん君を独占できるならベストだけど、天音は大竹を裏切るのは嫌なんだろ?」
「そりゃ、そうだよ。あんなに大切にしてくれる人を裏切るなんて、絶対にできないよ」
そんなことは考えるまでもないことだと天音は心底思っている。
愛しているのは瞬だけ!
心の底から言い切れる言葉だ。しかし、健はそこに甘やかな言葉を被せてきた。
「大竹は君を大切にしてくれる。オレも君を大切にする。それもダメなのかい? 今までと同じだ。ただ、大竹の足りない部分をオレが補うだけなんだ。だからこそシェアなんだ」
大切にしてくれるなら良いことなのかな? 普段の天音であれば、あるいは、他の人間が言っていたとしたら、一笑に付しただろう。
けれども闇に包まれて囁かれると、冷静さよりも、天音の子心は「闇」に引っ張られている。おまけに、相手は特別な信頼を寄せている幼なじみだ。
『私が瞬と幸せになっちゃったら、健が孤独になってしまう』
カレカノの幸せを自分だけが得てしまう。そうなったら幼なじみを孤独の闇に落としてしまうのだという申し訳なさは、常に天音を苦しめてきたのは事実だったのだ。
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