辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

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第18話 闇の中 〜天音〜 2

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 健の声はいつになく情熱的だ。

「まず、ありがとうって言うよ」
「え?」

 健の言ってることを断ったのに礼を言われた。「何が?」と返すしかなかった。

「だってさ、今、都合が良い話って言ってくれたよね? 天音にとって、瞬を裏切らず、オレの気持ちを受け入れるのは都合が良いってことだ。つまりオレのコトが嫌じゃないってことだろ?」

 再び背中が撫でられている。

「だ、か、ら。健の気持ちを受け入れたら、それって裏切りになっちゃうでしょ?」

 そう言いながらも「さすがね、裏切るのも、健を傷付けるのも避けたいと思っているのを分かってくれるんだ」と考えている天音だ。

 また、Tシャツの中だ。ではブラの紐まで登ってくると、そこでサスサスとしてから、また降りていく。

 妙な感覚が生まれてしまうのが鬱陶しい。隠したいと思うからこそ、止めてと言えなかった。もしも「やめて」と言い始めたら「感じてきたんだ?」と思われてしまう……ばれてしまうのが怖かった。

 そんなアンビバレントを無視して、健は言葉を強めた。

「それは違うよ。絶対に違う」

 断言する言葉は、思ってもみないほど冷静で力強い。

 思わず天音は首をかしげてしまう。

『こうやって断言するときって、必ず、何か理由があるはずだよね?』

 子どもの頃からの付き合いだけに、それは知っているのだ。

「天音が好きな相手と…… 彼と別れろなんて言わないし、オレのコトだけを好きになれなんて言わない。裏切らなくて良い。ただ、シェアできないかなってことなんだ」
「シェア?」
「そう。半分ずつ。オレは幼なじみとして特別だろ? でも、大竹の方が先に付き合ったんだから、あっちが彼として優先だ。オレは後回しでいい。天音の中で公平に扱ってくれればオレは満足できるから」
「そんなことできるわけないし、瞬が認めるわけないでしょ」

 彼女をシェアするだなんて、そんな話を聞いたことがない。

「できるさ。それに、大竹とカレカノってのは、もうみんな知ってるじゃん? だから、そこはオレが引く。あくまでも彼氏は大竹だ。オレは影の存在で良い。天音のことが大好きだから」

 引く? なんかヘンな気がすると思ったが、モヤモヤした気持ちが浮かぶだけで、否定の言葉が見つからなかった。そして、チラッと頭に浮かぶのは「健を 一人こどくにしなくてもすむかもしれない」という甘い結論だ。

 天音の 逡巡ためらいを見て言葉が勢いづいてきた。
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