辛かったけど真の彼女ができました

新川 さとし

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第16話 世界が全て敵になっても 2

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 あの子が死んだ? そんなウソだ! だって、あんなに綺麗な顔をしていたじゃん。傷口なんて見えなかったじゃん!

 次の瞬間、何かを叫んだ自分と、暴れようとして上手く行かずにベッドから堕ちた自分、そして白衣の集団に取り囲まれている自分を微かに覚えいた。

 が変わった。

 メガネをかけた真面目そうなスーツ姿が淡々と説明している。

約款やっかんにあります通り、契約者との接触があれば、自転車乗車員に対しての賠償責任を負うケースとなるとあります。本件は、接触を回避した結果と解されますので賠償責任は発生いたしません。したがって、保険金のお支払いは不可能です」

 保険会社の人だというオジサンが「今回の事故は、自転車に乗っていた子どもの自己責任と言うことになります」と、サラリと結論を出してきた。

「トラックの方はどうなんですか?」
「それは、規定通り、相手側も保険に入っていましたので弊社と相談しまして」
「違います! 自転車に乗っていた子に対してですよ!」
「トラックと、本件事故は法的に無関係ですので、賠償責任は何も発生しません」
「えええええ!」

 がまた変わる。

 医者の顔が目の前だ。

「君の膝は一定以上の力が掛かることに耐えられなくなったんだよ。でも、リハビリを励めば、普通ではわからない感じで歩けるようになるからね」

 つまり、普通とは違う歩き方しかできなくなったと言う結果だ。しかし、そんなことはどうでもいい。

「先生。じゃあ、バスケはいつからできるんですか?」
「スポーツをするなんて、とんでもない。万が一の場合、膝から骨が飛び出すことになる。今後、間違っても走ろうだなんて思わないことだ」

 当たり前の顔をしたスーツ姿は、当たり前に絶望を突きつけてきた。


 がまた、飛んだ。

 自転車に乗っていた子どもの家だ。父親と母親が連れて行ってくれた。笑顔の写真が飾られた仏壇に、瞬は何も言えなかった。

 健が指を突きつけて非難してきた。

 なぜか、今の顔をしている。

「お前が殺したんだ! お前さえいなければ、渉は、今も生きていたんだ!」

 手が首に回される。

 苦しい。息ができない。脚が動かない……
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