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第15話 今の君が 1
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天音の声はか細い。
それだけに、込められている気持ちが真剣なのだと伝わってくる。
「お母さんに言われたの、お前は汚いって」
「えっと? お母さんに? 天音が汚いって言われたの? なんで?」
そこで慌てて「こんなに綺麗なオレの天音に、何で、そんなコトを言うんだい?」と自分も囁き返してから「ほら、ナイショ」と耳を差し出した。
呼吸三つ分のためらいの後で「ほら、私の初めての人のことだよ。絶対にしちゃいけない相手だったの。だから、お前は汚い、汚れてるって、すっごく叱られたの」と、途切れ途切れの告白。
とっさに「相手は誰だよ?」と聞き返そうとして、それが正解ではないことに気付いたのは奇跡に近い。
そして、全ての知識と想像力を動員して導き出したのは「おそらくは不倫だ」と考えたのだ。直感と言っても良い。
『ひょっとしたら相手は中学の教師か?』
そこまで具体的に考えてしまった。
もしも、この時「相手は誰だよ」と追及していたら未来は変わっていたのかもしれない。しかし、瞬の優しさは、天音の「汚れている」という言葉と、ついこの間の自分のセリフを結びつけるのが先だった。
考えてみれば、あの時からおかしかったのだから、もっと早く気付いてあげれば良かったと自責の念も入っている。
「この間、オレが汚いものが嫌いって言ったからか?」
あくまでも囁き声だ。だから、抱き合っているのは必然の行為なのだ。
コクン
頷いた後、頬に伝わってきたのは嗚咽である。
「しゅん、にぃ~ んぐぅ、きらわれたくぅ、ないぃ。でも、わたしぃがぁ、いけぇなくってぇ」
涙声を聞かなくても、頬をくっつけ合っているから涙が流れているのがわかってる。傷つけたのは自分なのだ。そんなつもりがなくても、また人を傷つけてしまったと瞬は胸が塞がれる思いだった。
それだけに、込められている気持ちが真剣なのだと伝わってくる。
「お母さんに言われたの、お前は汚いって」
「えっと? お母さんに? 天音が汚いって言われたの? なんで?」
そこで慌てて「こんなに綺麗なオレの天音に、何で、そんなコトを言うんだい?」と自分も囁き返してから「ほら、ナイショ」と耳を差し出した。
呼吸三つ分のためらいの後で「ほら、私の初めての人のことだよ。絶対にしちゃいけない相手だったの。だから、お前は汚い、汚れてるって、すっごく叱られたの」と、途切れ途切れの告白。
とっさに「相手は誰だよ?」と聞き返そうとして、それが正解ではないことに気付いたのは奇跡に近い。
そして、全ての知識と想像力を動員して導き出したのは「おそらくは不倫だ」と考えたのだ。直感と言っても良い。
『ひょっとしたら相手は中学の教師か?』
そこまで具体的に考えてしまった。
もしも、この時「相手は誰だよ」と追及していたら未来は変わっていたのかもしれない。しかし、瞬の優しさは、天音の「汚れている」という言葉と、ついこの間の自分のセリフを結びつけるのが先だった。
考えてみれば、あの時からおかしかったのだから、もっと早く気付いてあげれば良かったと自責の念も入っている。
「この間、オレが汚いものが嫌いって言ったからか?」
あくまでも囁き声だ。だから、抱き合っているのは必然の行為なのだ。
コクン
頷いた後、頬に伝わってきたのは嗚咽である。
「しゅん、にぃ~ んぐぅ、きらわれたくぅ、ないぃ。でも、わたしぃがぁ、いけぇなくってぇ」
涙声を聞かなくても、頬をくっつけ合っているから涙が流れているのがわかってる。傷つけたのは自分なのだ。そんなつもりがなくても、また人を傷つけてしまったと瞬は胸が塞がれる思いだった。
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